俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第二十九話 蒼一の崩壊

 9月26日

 

《発令所》

 

「北上ぃぃぃぃ!!」

 

俺はモニターに向かって叫んでいた。既にモニターには白い光と爆炎しか映っていない。あらかじめ噴進砲に砲弾を詰め、さらに魚雷を先端に取り付け、少しでも火力を上げたのだろう。そしてそれを敵に叩きつける・・・所謂、自爆だ。

 

「・・・状況は?」

 

俺は震える声でオペレーターの妖精に聞く。

 

「ば、爆心にエネルギー反応・・・。」

 

「違う!!北上のことだ!!」

 

俺はわかっているはずなのについ焦りで怒鳴ってしまう。

 

「・・・!?艤装からの生命反応を受信!!僅かですが、生きています!!」

 

「ったく、驚かせやがって・・・。稼動可能な艦隊に直ちに命令、誘導弾で敵を足止めをするから一瞬の隙を狙って北上を回収・・・に?」

 

俺は最後まではっきりと言えなかった。理由はモニターに移る敵新型の行動に目を奪われたからだ。

 

ゴッパァ・・・ガァァァ・・・ギュルルル!!

 

敵新型の脇にあった化け物の首が離れたと思いきや鎧のような身体がいきなり沈みかけの北上の身体を包み込みんだのだ。

 

「何・・・が起こって・・・いる?」

 

『も、目標の識別反応をロスト!!同時に・・・北上の識別反応が・・・アンノウンに・・・切り替わりました。』

 

識別反応がアンノウンというのは味方に属さない信号を出す未確認の艦・・・通常は深海棲艦と判断している反応だ。つまり・・・。

 

「深海棲艦が艦娘を侵食・・・取り込んだとでも言うのか!?」

 

俺の言葉を裏付けるように取り込まれた北上は敵新型の鎧のような物体に包まれ、脇には先ほどと同じように化け物の首が生えていた。もうそこには重雷装艦北上の面影は無かった。

 

「提督・・・。」

 

怒り、悲しみ様々な感情が自分に生まれていくのを感じ、拳を強く握る。それに気づいてか傍らにいた霧島が何かを言いたげに呼ぶ。俺は震える足取りで鎮守府全体に同時に放送できる通信機を取る。

 

「鎮守府全体に通達。現時刻を以って鎮守府全指揮系統を霧島に移動。以降の作戦行動は彼女の命令に従ってくれ。」

 

言い終えた俺は震える足取りで発令所の出口に向かう。

 

「て、提督!!」

 

「なんだ、霧島。」

 

「何をおっしゃっているんですか!!今の言葉の意味がわかっているんですか!?」

 

「あぁ、もちろんだ。」

 

「提督は諦めるというのですか!?まだっ「時には諦めも肝心とはよく言ったものだ。もう、あれは北上ではない。」本気で言っているのですか、提督!?」

 

「そうだ。今の俺(・・・・)には何もできないからな。」

 

「提督!!」

 

「部下を失った指揮官は不要だ。それにもう・・・俺は提督ではない。」

 

俺はそう言って発令所から出た。発令所の外でも霧島の呼ぶ声が聞こえるが気にせず俺はある場所へ向かう。

 

《発令所》

 

「・・・っ!!」

 

私は提督の出て行った出口に向かって叫んだが何も意味が無かった。そんなことは計算せずともわかっている。でも、しなければならなかったのだ。

 

『て、霧島さん!!目標が移動を開始!!』

 

「くっ・・・固定砲で再度砲撃よ!!敵にはまだ障壁は健在でしょう。皮肉にも敵の身体には攻撃は当たらないわ。陽電子砲が整うまで時間を稼いで!!」

 

『りょ、了解。』

 

『レーダーに新たな敵反応!!数はおよそ20!!』

 

「敵の増援!?展開可能な空母及び射程に入っている艦は増援に攻撃を!!」

 

『りょ、了解!!』

 

返事を見ても明らかにみんな動揺していた。提督が指揮を放り捨てたからだ。提督の気持ちは痛いほどわかる。絶対生きて戻ることを命じていた。でもそれがついに破られたのだ。提督の責任ではないはずなのに、それを自身の責任として受け止めてしまい、あんなことを言ったのだろう。提督・・・。

 

 

 

 

 

提督が発令所を出てからもう何分経ったのだろうか。現在も敵は鎮守府目掛けて侵攻している。敵の増援は空母の艦載機や戦艦組の砲撃で何とか防いでいるが肝心の新型艦は徐々に鎮守府へ近づいてきているのだ。今も固定砲で砲撃しているものの、障壁に阻まれ一向に被害を与えられない。だが、着弾で生じる爆風でなんとか進行を僅かながら阻害できている。

 

するとモニターに映っていた新型の両脇にあったイ級のような首が口を開け、また砲撃をしたのだ。そして砲撃したのを確認した後、鈍い衝撃が発令所を襲った。

 

「何が起こったの!?」

 

『敵砲弾が鎮守府本館に着弾!!本館地上施設消滅!!』

 

「なんてこと・・・。」

 

『さらに被害増大!!鎮守府全域に敵の砲撃が!!』

 

「陽電子砲は!?」

 

『被弾を確認。被害甚大です・・・。』

 

『敵新型さらに接近!!最終防衛ライン突破されます!!』

 

「そんな・・・。」

 

私はその報告を聞いて何かが砕け散ったような気がした。先ほどの提督も同じようなことを覚えたのだろうか・・・?

 

 

 

《?????》

 

カシャン・・・ビー!!

 

 

 

《発令所》

 

『!?第一カタパルトに再度出撃反応!!』

 

「大井・・・かしら?弔い合戦のつもりなのかしら?」

 

『い、いいえ!!反応は・・・アンノウン!?です!!』

 

「どういうこと!?」

 

次から次へと起こる事態に私は着いていけず、何がなんだかわからなくなったのを覚え、答えを得るために問う。

 

「あなたは何者なの!?」

 

私の問いに答えが返ってくるかなどわからないのに・・・




さてはて、どうなることやら・・・。

え?北上の行動はどこかで見たことあるって?キノセイデスヨ。
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