9月26日
《?????》
俺は発令所を出てある部屋を目指した。
俺は目的地の扉に着くと、横に設置されていたコンソールにパスを打ち込みロックを解除する。
《?????》
この部屋は鎮守府大改装のとき私室として作らせた部屋だ。だが、それは表向きで実際には俺の実験室となっていた。まぁ、実験というか置いてある機材を隠すための部屋だが。部屋の中心には艦娘の改装やサルベージに使う機械と同じタイプの建造機が設置され壁にも埋め尽くすように機械が置いてある。全て悟られぬよう、俺自身の手で運び込んだものだ。そして俺は建造機の傍らにあるコンソールを操作する。
「これで・・・終わりか・・・いや、始まると信じないとな。」
俺の呟きと同時に建造機に液体が注ぎ込まれる。艦娘の肉体を構成するS.V.Lだ。そして注ぎ終えると上部の蓋が開く。俺は建造機に付けてある梯子を上り蓋から建造機に入った。そして蓋を閉める。
ゴボァァ・・・
思ったより呼吸はできるようだ。どうやらS.V.Lは飲み込んでも水のように苦しくなく酸素を取り込めるというのは本当だったらしい。そして機械の蓋を閉める。すると傍らの機械が動き出す。あらかじめ蓋を開け、もう一度閉めると起動するように設定されているからだ。そして、サルベージの時と同じように電圧が流れているのがガラス越しから見える機械のディスプレイで確認できる。これもまた、電気分解は起こっているはずなのに俺は痛くもかゆくも無い。まったく、親父のノート様様だな。だが、時間が経つにつれ、俺は意識が遠のくような気がした。
「もう限界・・・か?それもまた良いの・・・かな・・・。」
いつの間にか瞼も重くなり、視界は暗闇に包まれた。
『・・・じゃ。』
「んあ?ついに幻聴まで聞こえるようになったか。もう、本当に終わりそうだな・・・。」
『お主、何者じゃ?』
「幻聴・・・誰の声だろう?」
『我は幻聴ではない。』
「そう言われてもなぁ・・・。」
『我は船の魂じゃ。』
「船の魂だと!?」
『ようやっと話を聞いてくれるようになったな。』
俺には憶えがあった。親父のノートにもあった。『幻聴が聞こえた』と。
『して、お主は何者じゃ?見たところ、船ではないようだが。』
「俺は人間、桐生蒼一だ。」
『人間じゃと?これまたおもしろい。して、お主はどうやってここにいる?』
「ここって、機械の中じゃないのか?」
『お主の肉体は機械というものにあるのだろうが、今お主の魂は我の中にある。』
「船の魂の中か・・・。アンタの名前は?」
『我には名前は無い。』
「何故?」
『我は造られていないのだ。人間の妄想で終わった船だ。我は一応戦艦と呼ばれていたな。確かマル5計画とでも言ったか。』
「戦艦・・・マル5計画・・・。超大和型戦艦か?」
『おぉ、そうじゃ。よく知っておるの。』
「まぁ、俺も軍人だしな。」
『深海棲艦といったかの?』
「逆に良く知っているな。」
『沈んでいった者たちの声で知ったのじゃ。して、お主は何故ここへ?』
「俺が・・・艦娘になるためだ。」
『艦娘・・・戦時の艦艇の魂を宿した者たちじゃったな。お主は何ゆえ人を捨て、艦娘になる?』
「もう失いたくないからだ。仲間を・・・家族を。」
『ふむ・・・お主の決意、半端じゃないのう。相判った。我の力、微々たる物だがお主に授けよう。』
「感謝する。」
『その力でおぬしの守りたいものを守るがよい。』
そう言ってさっきまであった超大和型戦艦の魂の気配は消えた。そして身体に力が入るようになる。
「これが・・・艦娘、か。力が漲る。」
俺は機械内に設置された一つのボタンを押す。すると機械上部の蓋が開かれた。俺はすぐさま機械から出る。白衣のままS.V.Lに浸かったので服にはS.V.Lが染み込んでいて黄ばんでいた。俺は部屋のロッカーを開け、新しい服に着替える。
「まさか、本当に着る事になるとはな・・・。」
そう、今着ている服は俺が万が一で艦娘になったときに着る服だったのだ。黒い胴着に正反対の白い袴、さらに陣羽織を模した蒼い上着だ。俺は着替えると一呼吸置いて机に置いていたタブレットを持って操作する。これで第一カタパルトへ工廠に予備として置いていた大和型の艤装が運ばれる。今は鎮守府全域に避難命令を出していたはずだから誰にも悟られないだろう。俺はすぐに第一カタパルトへ向かった。
《第一カタパルト》
大人数用のリフトに俺は乗る。そしてタブレットでリフトを降ろし、出撃準備に移る。
「それにしても、艦娘になったばかりで出撃、しかも鎮守府の命運がかかっているというのは荷が重いねぇ・・・。まぁ、艦種が戦艦、それも造れないほどの性能があったとされる超大和型とは・・・ここは願いが叶ったというべきか。」
リフトが規定の位置に着くと目の前の出撃盤に光が灯る。このカタパルトを考案したのは俺だ。どうすればいいのかは当然わかる。すでに艤装準備も完了しているとタブレットに表示されているのを確認するとリフトにタブレットを置き、出撃盤に乗る。すると当然のように出撃サインが発信される。
『あなたは何者なの!?』
当然発令所にも出撃サインが発信されたのだろう、霧島の声が聞こえる。
「この声は、霧島か。俺だ、桐生蒼一だ。」
『て、提督!?なぜあなたがそこに!?』
驚くのも当然だろう。
「悪いが今は説明している暇は無い。」
『わかりました。して、指揮を放棄してまでの策をお教え願います。』
どうやら霧島は冷静に先ほどの俺の心理を読み取ったようだ。俺は勢い良く質問に答えるように叫ぶ。
「超大和型戦艦一番艦桐生、さて・・・参ろうか!!」
今日で一気に二章ラストまでもっていきます(その分来週は投稿が少なくなるかもしれませんが・・・)。