第三十ニ話 遺された者たち
10月1日
《鎮守府・提督室》
私は一人で書類を片付けていた。そう、ここの今の主は私だが、本来の主ではないのだ。そう、部屋の名前の通り、提督の部屋なのだが・・・提督は、5日前に消えた・・・のだ。
「今日もこれといって大変な書類は無さそうね。」
一応書類に目を通しているが、私にもよくわからないものばかりだった。ほとんどが似たような書類で処理は適当だった。これらは提督は紙の無駄使いといつも愚痴のように言っていた書類だった。
「霧島さん。」
書類を片付けていると青葉が部屋を訪れた。
「今日の最終報告です。」
「そう・・・もう夕方か・・・この頃時間が過ぎるのが早いわ。」
「そうですね・・・。」
私は報告を読みながら愚痴をこぼす。提督は私たちの何もかもを変えてくれた。そして、去る時にもまた全てを変えていった。鎮守府の艦娘、妖精、舞鶴にいる全員が責任を感じ、以前のような活気は無くなっている。本当の責任は誰にも無い。私たちが非力だったから提督が艦娘になってしまい、それでも提督の身一つを犠牲にして敵を倒した・・・本当にこれを倒したと言って良いのだろうか?私たちは提督の死を踏み台にして生きているのだ。何のために私たちは生きているのだろうか。
「霧島さん!!」
「大淀、どうしたの?」
青葉と今日のことを確認していると大淀が血相を変えて提督室へ入ってきた。
「て、提督のと思われる艤装の発見と回収に成功しました!!」
「ホント!?」
「はい!!本日1724にてイムヤさんたち潜水艦隊が資源輸送任務の帰投中にレーダーに巨大な反応を見つけ探照灯で照射したところ艤装であることが判明。同34にて回収作業を開始。同57にて回収完了とのこと。艤装の状態は損傷が激しく修復が必要とのこと。脚部の艤装についても回収完了。よって使用された全艤装が回収成功です。」
「でもどういうこと?爆発で四散しなかったのか?」
「どうやら自爆直前に艤装自体を解除したようです。だから爆発に巻き込まれなかったのかと。回収時の損傷は戦闘時にできたものと思われます。」
「そう・・・確かに自爆前に艤装を解除したならば自爆直前の沈んでいく提督の状況と合致するわね。」
「そうなります、後もう一つ、大本営からの指令書です。」
「・・・これは!?」
そして一枚の書類を見て私は血の気が引いた。題名は『第一次杜松諸島奪還作戦計画書』だった。そして内容には『作戦会議を行うため、呉鎮守府に参加する基地の司令官は出席せよ』とのことだった。
「大淀!!これを見て。」
「・・・非常にマズイですね。」
「どうしましょう。提督の事は大本営にも報告していない、舞鶴だけの極秘事項・・・どうしましょう・・・。」
「・・・確か提督が第一回サルベージ時に舞鶴を離れたときに緊急コードを残していたはずです。それで提督のご親友の神代一佐に助けを求めては?」
「そうね、今は藁にでもすがりたい気分だから、やるしかないわね。確かキーは・・・。」
私はすぐに記憶から緊急コードを探り出しそれを通信機に打ち込み通話を試みる。
『こちら神代一佐。このコードは確か・・・どうしたの、舞鶴に何かあったの?』
すぐに見知らぬ声が聞こえた。だが、神代一佐と言っていたので本人だろう。
「私は舞鶴鎮守府所属の霧島です。」
『、蒼一の秘書艦ね。どうしたの?蒼一じゃなくてあなたが連絡を寄越したということは何かあったの?』
「はい・・・少々言いにくいのですが提督が・・・事実上亡くなられました・・・。」
『嘘・・・そんな!?』
すぐに神代一佐の驚きの声が聞こえる。そして混乱しているのかわからないが徐々に声が小さくなっていった。
『・・・それで、何があったの?』
だがそれもつかの間、弱弱しい声で詳細を聞かれた。すぐさま私はあの日起こったことを全て話した。
『そう・・・ついにやりやがったわね・・・そう・・・馬鹿ぁ・・・。』
全てを聞いた神代一佐は全てを悟り、落胆しているようだった。
『という事は、連絡の内容は近々ある作戦の会議のことねそれと、このことを知っているのは?』
「内容はその通りです。それと知っている者は舞鶴所属の者のみです。」
『そう・・・しかし、私に一番に連絡してくれたのは助かったわ。これは一部の人間には知らせてはいけないようなものだからね。人間が艦娘になる技術しかり、蒼一不在の事しかり・・・。わかったわ。すぐに私も動くわ。今から言う報告書を作ってほしい。これで作戦事態に参加しなくて済むかもしれないわ。』
私は神代一佐から指示を聞いてその通りに書類を大淀に作ってもらう。内容は『舞鶴防衛戦最終報告書』だ。どうやら作戦への参加を見送ることで提督不在の事を隠そうとするみたいだ。
「できました。これをすぐにFAXで大本営へ送ればよろしいんですね?」
『あぁ、それを受け取った上は舞鶴を直接的な作戦参加を見送るはずよ。一応元帥許可がいるけど幸い元帥は私のお父さんでこちら側なの。私がこちら側の上司を通じて事情を説明すればすぐに許可が下りるわ。』
「わかりました。」
『それまで、舞鶴を・・・あの人が守ったものを頼む。』
そう言って神代一佐は通信を切った。提督が守ったもの・・・それは私たちだ。命に代えてまで守ったもの・・・それほど提督は私たちのことを・・・。
「っ!!」
そう思うと視界が霞んできた。ものの価値は失ってから気づくとは良く言えたものだ。日ごろ感謝をしていたものの、結局私たちはなにも提督に恩を返せなかった。でも、失った今、そんなことを考えても意味がない。今私たちがやるべきことは提督が命がけで守ったものを守ることだ。
「大淀、全員を集めて。今後の事を改めて考えるわ。」
「わかりました!!」
まだ、止まれない。絶対に。そう思って私も提督室を出た。
はい、提督が死んだまま新章突入です。