俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第三十三話 動き出した者たち

 10月1日

 

《大本営・神代一佐執務室》

 

私は舞鶴からの報告を聞いて沈んだ気分になった。当然でしょうね、何せ幼馴染である親友が・・・いいや、それ以上の人が死んだんだもの・・・。それを悲しまない人間がどうかしている。

 

「はぁ・・・結局使ってしまったのね・・・。使うのは構わないけど、遺されたこっちの身も考えてほしいわ・・・。多分何かは遺しているでしょうけど、艦娘ではわからないでしょうね。ほんと・・・!!」

 

今は部屋に篭って夜通し泣き続けたい気分だけど今の私にはやらなければならないことがある。こういうときにこそ遺された人間が動かなければならないのだ。

 

「失礼します。神代一佐、舞鶴から報告書が届きました。」

 

「すぐに読むわ。」

 

私は部下から渡された報告書を見る振りをする。何せ私がが指示した内容が書かれているのだから読まずともわかる。

 

「これはすぐに山口海将補に指示を仰がねばならないわ。私はすぐに報告しに行く。」

 

「わかりました。」

 

俺は平静を装ってすぐに上司である山口海将補に連絡を入れた。

 

「はい、山口だ。」

 

「神代一佐です。今はどちらにいらっしゃいますか?」

 

「今は橘海将のところにいる。後日発令の杜松諸島奪還作戦について話し合っているところだ。丁度良い、君も来てくれ。そちらも何かあったのだろう?」

 

「えぇ、とても大事な用が。すぐに参ります。」

 

ツイてるな。二人が一緒にいるなら報告をしやすい。何よりも作戦会議中なら保身派にも感ずかれない。私はすぐに橘海将の執務室へ向かった。

 

《橘海将執務室》

 

「神代一佐、参りました。」

 

「入ってきなさい。」

 

「失礼します。」

 

俺は橘海将の合意を得て部屋へ入る。

 

「山口将補から話は聞いた。何かあったのかね?」

 

「はい、かなり悪い報告です。」

 

「・・・報告を。」

 

「はい。9月26日、舞鶴鎮守府司令官桐生蒼一提督が殉職したと思われます。」

 

「何だと!?」

 

「落ち着きたまえ。詳細を。」

 

「はい。同日、舞鶴鎮守府に杜松棲地からと思われる大艦隊からの襲撃を受けたそうです。この中に新型艦が一隻存在し、先のケル棲地に現れた機甲棲姫と同じ特殊な障壁を展開できる模様。さらに艦娘一人を吸収し、己が体へとした模様。機甲棲姫を撃破したときに使われた陽電子砲は敵砲撃で使用不可になり、打つ手なしかとなった時、一隻の未確認艦が敵新型と交戦したとのこと。そしてその艦は・・・桐生と名乗ったそうです。」

 

「それは!?」

 

「はい、桐生司令官は極秘案件であった『人間の艦娘化』を発動し、自身が艦娘となり敵と戦闘したそうです。そして敵を巻き込む自爆を決行、敵新型は撃破、代償として彼の死が・・・。」

 

「そうか・・・こうなってしまったか・・・。だが、行動を評価するとすればまさに彼は司令官の鏡とでも言うべきかな。」

 

「えぇ、元々指揮能力が高い彼に新たな力が加われば敵無しと思われましたが、こうなってしまっては・・・。」

 

「彼が提唱したサルベージ・・・これは使えないのかね?彼は艦娘になったのだろう?」

 

「それが・・・彼は大本営を立つ時にサルベージに関わるものを全て抹消しています。存在を知っているのは私たち上層部と彼の腹心であった現技術研究部総括部長白鳥幸也ですが、原理・中枢を知っているのは彼のみです。」

 

「そうか・・・確かに私は報告では簡単な原理と可能性しか伝えられなかったな。まぁ、これも保身派に悪用されるのを防ぐためだったのだろう。まったくどこまで先を考えていたんだろうか。」

 

「えぇ。まったく、当為周到なやつですよ。」

 

「確かに・・・ですがまだ手がかりはあるかもしれません。」

 

「手がかりとな?」

 

「はい。実際に蒼一は艦娘化に成功しました。ですが、その考え自体舞鶴でも知る者は無く、知っているのは我々とお父さんのみ。ですが非常用に備えていたとすれば何かしら舞鶴に残っている可能性があります。」

 

「確かに、悟らせないためにも裏で準備をしていた。機材も同様、艤装もだ。何かしら隠し部屋か何かでも造っていそうだな。」

 

「えぇ、ですが保身派への対策も考えねばなりません。我々が動けば確実に察知される可能性が・・・。」

 

「それが一番のネックだからな・・・。して、舞鶴の方には何か指示は出したのかね?」

 

「はい。先ほどの連絡時に作戦参加を見送れるようにするための書類を作らせ送るように指示し、その書類はすでに受け取りました。作戦自体が大規模なため、元帥命令で作戦参加を見送り、その特異個体の分析を任せるということでいかがでしょう。」

 

「なるほど、それならば良いな。」

 

「えぇ、事態はかなり危ないですからね。後は呉の司令官をどうするか、ですね。あそこも保身派が選定した人間でしたね。」

 

「こうも散らばっていると最初から用意したように見えるな。まぁ、それが狙いなのかも知れんが・・・。ひとまず報告書を見せてくれ。」

 

「これです。」

 

「・・・ふむ、これは不自然なところは無いな。理由として『提督の過労』を使ったのも良いな。よし、すぐに元帥に緊急作戦会議の許可を貰おう。表向きは舞鶴の壊滅とでもしようか。一応敵新型にこっ酷くやられたようだし、資材の喪失からの出撃不能と提督の過労。これで大丈夫かね?」

 

「はい、それで大丈夫です。しかし問題は保身派がどう動くかですが、艦娘を吸収する特異個体となれば表立って動けないでしょう。」

 

「それは最重要案件だな。元帥とも口合わせをしておく。君たちは各執務室で待機していてくれ。」

 

「わかりました。」

 

私と山口将補は橘海将の部屋を出て平静を装って各自の部屋に戻った。

 

 

 

《会議室》

 

現在、元帥発令の緊急会議が開かれることとなり俺は会議室にいる。周りにも30人弱の幹部が揃っている。だがほとんどが海軍再設置時に家柄で選ばれた人間ばかりで保身派だらけ。真に国を守ろうとしているのは数人程度だろう。

 

「さて、皆に集まってもらったのは他でもない。日本海側最重要拠点である舞鶴鎮守府に一大事が起こった。」

 

ザワッ

 

お父さんの言葉で会場が騒がしくなる。近くないのに騒がしい奴らだこと。そんなに自分の身が大事か・・・。

 

「詳しくは報告を受けた神代作戦部総括部長から説明してもらおう。」

 

「はっ!!では説明いたします。事は先月26日、舞鶴鎮守府へ大規模な襲撃がありました。根源は北西の杜松棲地からと思われます。さらにこの中に新型艦が一隻存在していたそうです。この新型は最近出現した機甲棲姫と同じ一極集中型の障壁を展開が可能な特異個体だと判明しました。さらに当艦は艦娘を吸収したという報告もあります。機甲棲姫撃破に使用した陽電子砲は敵の砲撃で機能停止となりましたが、一名の艦娘の特攻で敵新型艦を撃破、特攻した艦娘の無事で事態は終息しました。ですが受けた被害は大きく、資材を敵砲撃による誘爆で貯蔵してあった大部分を喪失、艦娘にも甚大な被害が出たそうです。これに加え、事態を変えようと舞鶴司令官桐生蒼一は連日過度な執務を行い、それが原因で過労で倒れたと報告を受けました。これにより秘書艦からまもなく行われる杜松諸島奪還作戦への参加は難しいとの具申を受けました。以上です。」

 

「ご苦労。こうなった以上、作戦参加は難しくなる。さらに新型艦の情報が不十分だ。もしこれが目標海域である杜松棲地から侵攻して来たとすれば作戦時には甚大な被害が出ることは火を見るよりあきらかだ。よって舞鶴の作戦参加を見送り、新型艦についての情報分析を重視、さらに支援艦隊に変更しようと思う。」

 

「待ってください。」

 

「ふむ・・・八村海将、どうしたのかね?」

 

「確かに受けた被害は甚大です。司令官の尽力も評価できるでしょう。ですが司令官に関しては代えが効きます。よって新たに人を派遣し、予定通り作戦に参加させる方が被害を少なくできると思います。」

 

やはり来たわね・・・保身派どもめ。よりにもよって保身派のトップか・・・だがコイツを封じれば終わりね。

 

「ふむ・・・確かにそれも一考だ。だが、舞鶴は以前こちらが派遣した人間のせいで人間不信になってしまっている。桐生司令官はそれの回復に努め、今の正真正銘の日本海側最高拠点舞鶴がある。ならば現在舞鶴の忠信は彼に集まっている。それにまだ舞鶴の人間不信が彼だけにのみ回復している場合、新たに人を派遣し提督を解任したとなれば事態は以前の状態に戻り、彼の尽力が無駄になってしまう。これは様子見にしておいた方が良い。」

 

「むぅ・・・その通りですな。失言でした。」

 

ふぅ・・・どうにか引き下がってくれたわね。まぁ、最深部の事情を知らないのに加えて、大本営を越えたと言われる舞鶴が陥落寸前という方に目が行って策を講じれないんでしょう。

 

「よし、他に意見は無さそうだな。神代一佐、後の事を任せる。」

 

「了解いたしました。」

 

「では、これにて緊急会議を終了する。報告は視察が完了次第、また別の場で開示する。以上、解散。」

 

《神代一佐執務室》

 

「ふぅ・・・終わったわね。後は・・・彼女たちに任せるしかないわね。幸いにも舞鶴には北上がいる。だから何かしら見つかる・・・はず。」

 

私は自分の執務室で一息ついていた。会議の後、お父さんのところで今後の命令書を受け取った後、蒼一のことを詳しく話した。その時のお父さんの反応には当然悔いが見えた。蒼一の単体戦力は逸脱していた。そのこと以外にも蒼一とは個人的な付き合いがあったのも原因だろう。実際、お父さんと蒼一のお父さんは同期である。お父さんは作戦部出身で私と同じ、蒼一のお父さんは技術部と今の私たちと似ているような気がする。

 

「蒼一・・・絶対、許さないんだから。絶対に・・・絶対にぃ・・・っ!!」

 

私の呟きはいつの間にか泣き声に変わっていった。




今回は大本営回です。よくよく考えたら人間があまりにも出ていなかった・・・。
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