俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第三十五話 確固たる想い

 10月4日

 

《鎮守府・工廠》

 

「今更・・・今更なんで諦めるの!?」

 

私は霧島の言葉に我慢できず叫ぶ。それに反応して私に工廠内の視線が集まる。

 

「北上・・・?」

 

「なんでそんなことで提督が帰ってこないかもしれないと思うの!?私たちが諦めてどうするの!?提督は私たちを命がけで守ってくれたんだよ!?なのになんで霧島たちは提督が敵になるかもしれないという可能性だけで諦めきれるの!?おかしいよね!?何で命がけで守られた私たちが提督の事で命を惜しむの!?」

 

「そ、それは・・・最悪の場合私たちだけの問題ではなくなるのよ?最悪、日本自体が・・・・・・。」

 

「それで良いじゃん!!だって私たちは全員提督に守られて、助けられてきたんだよ!?それなのに・・・それなのに!!唯一私たちを人と同じように見てくれて、守ってくれた提督一人のために死ぬことが恐いっての!?私たちが本当に守るべきなのは私たちを道具として見る日本なの!?それともちゃんと一人の女の子として見てくれた提督のどっちなの!?」

 

「・・・。」

 

私の叫びに工廠内が一気に静かになる。当然だ。これが言い訳だということぐらいわかっている。自分勝手だということぐらいわかっている。でも、言わなければならない。言わないと気が済まなかったのだ。

 

「・・・Хорошо。」

 

「・・・?」

 

静かな工廠に一つの声と拍手が聞こえた。私たちは音のした方向を向く。そこには未だ拍手をしている響の姿があった。

 

「私も北上と同じ意見だ。提督は必ず帰ってくる、そう信じている。いや、帰ってきてもらわないと困る。だから私も残る。提督のためならこの小さな命、喜んで捧げよう。

 

「響・・・。」

 

「私もです。提督は親友と再び会わせてくれた。その恩、今こそ私の命を懸けてでも返すべきです。」

 

「加賀・・・。」

 

「みなさんの言うとおりデース。霧島、提督は私たちの全てを救ってくれマシタ。この恩はキッチリ返すべきデース。」

 

「お姉様・・・そうですね、増えた執務のせいでおかしくなったのかもしれませんね。提督には必ず帰ってきてもらいます。北上、ごめんなさいね。」

 

「んにゃ、私こそ怒鳴ってゴメン。」

 

「じゃぁ、サルベージを・・・始めましょう!!」

 

霧島の号令で工廠は一気に慌しくなる。提督のために鎮守府が一丸となったのだ。

 

 

 

『各計器チェック完了。オールグリーン。』

 

『最終絶縁体に異常なし。』

 

「ここでS.V.Lを注入するのね。ジェネレーターへS.V.Lの注入を開始して。」

 

『了解。S.V.L注入開始。完了まで12』

 

「次は鋼材を投入するのね・・・注入が完了次第鋼材を投入して。」

 

『了解。S.V.L注入を完了。続いて鋼材を投入。』

 

「鋼材の溶解を確認してから媒体を投入、そして最後に電圧をかける・・・これで全ては整う。後は・・・。」

 

「提督の魂次第か・・・大丈夫。必ず笑って帰ってくるから私たちも笑って迎えれるようにしておこうよ・・・。」

 

そう言ったものの、やはり恐い。提督が帰ってこないかもしれないと考えると・・・。いいやダメだ。あれだけ大見得切って否定したんだ。だから・・・帰ってきて・・・。

 

『鋼材の溶解を確認。』

 

「わかったわ。ペンダントを投入して。」

 

『了解。媒体を投入します。』

 

「続いて最終絶縁体を解除。S.V.L電荷開始。」

 

『最終絶縁体の解除を確認。これより電力供給を開始します。』

 

その声が聞こえた時にはすでにジェネレーター内部を見るためのガラスは泡立つ気泡で見えなくなっていた。

 

『電力供給、基準値への到達を確認。』

 

「そろそろペンダントに魂があるとしたら反応が出るはず・・・。」

 

霧島の言葉に全員が固唾を飲みジェネレーターを凝視する。

 

ヴゥゥゥゥ!!

 

だがそのまえに鎮守府の非常サイレンが鳴り響いた。

 

「どうしたの!?何があったの!!」

 

『哨戒機より入電。鎮守府に接近する艦隊を発見したとのこと。数は依然不明。』

 

「こんなときに!!みんな、戦闘配置よ!!」

 

「はい!!」

 

「それとサルベージは一時中断、電源は落とさなくて良いわ。」

 

「了解。」

 

「私たちも行くわよ!!」

 

《第一カタパルト》

 

「大淀、敵の様子はどう?」

 

『既に第三防衛ラインを突破。後27で第二防衛ラインも突破されます。』

 

「その二つはほとんどダウンしているから意味はないわね。それで、敵の数は。」

 

『目視なので確実性はないですがおよそ50ほどですが中に戦艦棲姫を二隻確認。』

 

「厄介ね。鎮守府からの支援も頼れない。事実上私たちだけね。みんな、気合入れていくわよ!!」

 

「霧島、それ私の台詞です。」

 

「各艦隊は順次出撃、手当たり次第交戦。各個撃破を狙うわよ!!」

 

『了解!!』

 

 

 

「戦況は!?」

 

『敵数、減少しています。後方にも援軍見えず。』

 

「目の前の敵さえ倒せれば良いと言うことね。でも・・・。」

 

そう、今私たちの目の前にいる敵は戦艦棲姫が二隻だ。こちらは三分の二が残っているが傷がない者はいない。さらに空母勢はほとんどが中破している。敵は制空権を捨てて優先的に空母を狙ってきたのだ。そう、目の前の敵を撃破するには砲雷撃戦しかないのだ。だがそれも現在試している。だがこちらは疲労と損傷のせいか砲撃も雷撃も当てれず、攻撃を受け次々と撤退している始末なのだ。

 

「くっ・・・提督っ!!」

 

誰しもが呟いた言葉であろう。無いはずの希望にすがるしかないのだ。そんな気も知らずに戦艦棲姫はゆっくりと楽しむように笑みを浮かべながら近づいてくる。

 

ドウン!!

 

「何!?」

 

いきなり後方からとてつもない砲撃音が聞こえ、それを確信した時には砲弾は戦艦棲姫に着弾し、後退させた。

 

「後方からの・・・砲撃?一体誰が・・・?」

 

『よ~お前ら~。生きてるか~?』

 

「こ・・・この声は!?」

 

『しっかしひでぇなぁ。工廠に一人ぼっちで、しかも裸で放置するなんてさぁ。まぁ、訳は知っているから良いんだけどさ。せめて誰か残していてくれよなぁ。大淀が発令所にいてくれて助かったぜ。』

 

「提督!!」

 

いつの間にか私の視界は霞んでいて声も涙声になっていた。それはみんな同じことだろう。

 

『みんな、すまなかったな。文句は後で全て聞く。罰だって受けよう。だが、今は俺に任せろ!!』

 

その声が聞こえた時には提督は私たちがいた場所を通り過ぎて文字通り、戦艦棲姫二隻に殴りこんでいた。

 

「私たちだっていけます!!みんな、行くわよ!!」

 

『はい!!』

 

提督が砲撃で吹き飛ばした一隻に私たちは殺到した。もう一隻は提督が怪物の腕を掴んで無理やり私たちから離れていっていた。チャンスは今しかない!!

 

「全艦、砲撃用意・・・撃てぇ!!」

 

ドドン!!

 

「ナ・・・ナンダト!?」

 

悲鳴のような声が聞こえ、戦艦棲姫は一気に損害が増大する。後一回総攻撃をすれば倒せる!!

 

「おらぁぁぁ!!」

 

「グッ!?」

 

「・・・はい?」

 

提督の咆哮のような声が聞こえた時には先ほどまで相手取っていた戦艦棲姫に提督が相手取っていた戦艦棲姫がぶつかっていたのだ。提督が戦艦棲姫をここまで引っ張ってきてもう一体に勢いをつけてぶつけたのだ。

 

「今だ!!一斉砲撃!!」

 

「は、はい!!」

 

提督の力強い声で呆けていた私たちはすぐさま立ち直って砲を向ける。未だ戦艦棲姫は背後に携えた怪物同士が引っかかっているのか身動きを取れないでいた。

 

「撃てぇ!!」

 

ズドドドッ!!ドドーン!!

 

派手な爆風と音を撒き散らして戦艦棲姫は二隻とも撃破される。

 

「何とか、勝てたようだな。そいじゃ、家に帰ろ・・・う・・・か。」

 

バシャン

 

「提督?提督!!」

 

提督の弱弱しい声が聞こえたと思った時には既に提督は海面に倒れていた。よくよく提督を見てみると先ほど現れた時とは違って、いたるところに傷が見えた。そう、私たちが戦艦棲姫の片方と戦っている間、提督は一人でもう片方の戦艦棲姫と戦っていたのだ。むしろ轟沈しなかったことに驚きだった。私と榛名が提督に肩を貸して鎮守府へ曳航して行った。その後急いで病室棟へ運び込まれた。

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