10月7日
《ブリーフィングルーム》
俺は先の戦いのことを把握するため説明を受けていた。まぁ、本命は違うんだけど・・・。
「先の戦闘で再起時から約数分の間、提督のパーソナルデータを登録した後も変わらないアンノウン反応。これはやはり・・・。」
「あぁ。実際になった俺だからこそ言えるが、確実にあの時の俺は深海棲艦化していたな。やられた時に敵の事が憎いと思っていたらいつの間にか溢れるような力が生まれたからな。多分そうだろう。」
「そして、自爆直前にも同じ反応が確認されていますが、これは?」
「自爆するためにかなりのエネルギーを集めようとしたからな。そん時にまた収まったはずの怨みが出たんだろう。」
「現在、提督からは例の反応は出ていませんが・・・。」
「何時どうなるかわからない、か・・・。艦娘になった以上、感情の起伏には気をつけないといけないということか・・・。厄介なことだ。」
「そうなりますね・・・。」
「それに艦娘になったことは極秘事項だ。本部なんかには悟られたくないな。そう言えばかなり日が経っているが、杜松諸島奪還作戦はどうなった?そろそろ前段階の作戦会議があるはずだが・・・。」
「それについては大丈夫です。舞鶴は先の戦闘での損傷で支援艦隊に変更となりました。理由に提督の過労を使っていますので作戦会議には参加しなくて良いそうです。」
「ほう・・・あの保身派をよく納得させれたな。」
「神代一佐の尽力のおかげです。」
「・・・アイツにでかい借りができちまったな・・・。俺の一件、誰に話した?」
「神代一佐は神代元帥、橘海将、山口将補の三人にのみ話したそうです。」
「そうか・・・。まぁ、負担が減ったのは好都合だが・・・そういえば先の襲撃時の敵艦隊の出所はわかったか?」
「十中八九で杜松棲地からと思われます。」
「そうか・・・つーことは俺が道連れにした艦種がまだいる可能性もあるな・・・。」
「そうですね・・・これはかなり被害が出るでしょうね・・・。」
「だからと言って今から参戦するのもな・・・ただでさえ私怨まじりの作戦から抜けれたんだ。少しは痛い目にあってもらいたいが・・・実際に痛い目を見るのは直接戦う艦娘だからな・・・これはどうしようかね・・・。」
「これは支援でどうにかしなければなりませんね・・・。」
「結局そうなるか・・・。会議に参加はしなくていいが一応指令書が届くんだよな?つーことは無理難題がいっぱい詰まっているよなぁ・・・頭痛いぜ・・・。」
「仕方が無いですよ。クソな指揮に従って命を散らすより断然マシです。」
「そうだよな。支援艦隊だから安全なところからの攻撃ばかりだろうから楽だろうな。ケル諸島とヒサ諸島は大丈夫か?」
「はい。何とか敵からの襲撃は無い状態です。」
「沓島と冠島の二つの要塞と鎮守府の迎撃システムについては?」
「沓島要塞と冠島要塞の稼働率は38%までに復旧。鎮守府全体の損傷も回復しつつあります。鎮守府の迎撃システムは67%までに回復しています。」
「こう考えるとかなり傷は深いな。だが、よくここまでがんばってくれたな。ありがとう。」
「いえいえ、提督から頂いたものに比べたら私たちの働きなど微々たる物です。」
「そうか・・・さて、復帰したことだし、動こうかな。」
「動くとは?」
「もちろん、艦娘になったんだ。艦娘としても働かないといけないと思って「それはダメです。」え~なんで~?」
俺はがっつり落ち込んだフリをする。
「何ででもです。あなたの状態が極秘事項なんですよ?あなたが一番わかっているでしょう。」
「つまんね~な。せっかく艦娘になったと言うのに・・・。」
「つまんなくて結構です。それよりもご自身の立場を理解してください。」
「わーってるよ。それじゃ、提督らしく部屋に篭って溜まった書類にでも目を通しましょうかね。」
「ぜひともそうしてください。」
俺は本命である霧島の説得に失敗して提督室にしぶしぶ戻った。
《提督室》
「鎮守府の資材被害は軽微・・・だが陽電子砲の被害が大きすぎるな・・・。被弾による誘爆の危険性の排除や修理諸々を考えたら一ヶ月は余裕でかかるぞ・・・。奪還作戦には到底間に合わないな・・・。」
「とは言え、舞鶴は直接火砲を交えるわけではないですので心配は無用では?」
「まぁな。だが、敵の反撃を考えたら陽電子砲は存在だけでも大きな役割を担ってくれる。小事であろうと大事であろうと万全を期して挑むのが最善の策・・・と俺は思っている。だからこそ、切れる手札は多い方がいい。」
「なるほど・・・ですが現状は・・・。」
「あぁ、大きすぎる存在ゆえ、こうして悩んでいるって訳だ。」
「理由がわかっているからこそ、悩むというわけですか・・・。」
「そーゆーこと。動かせるのは艦娘と未だ傷が完治していない固定兵器群のみ・・・。戦力としては十分以外何者でもなく信頼できるもの・・・だが、安心できるというのとは違うんだよなぁ・・・。」
「・・・。」
「だって敵が何をしてくるかもわからない。予測だが、もし四国という大棲地を奪還した俺たち舞鶴、それを敵が目の敵にしているとすれば、昨今の敵の新型ラッシュも辻褄が合う。そして陽電子砲の肩書きは敵の新型すら葬り去った超兵器。そう言った後ろ盾があればみんなが持つ恐怖も薄らぐ・・・そう思っていたんだが・・・やっぱ上手くいかねぇな・・・。」
「今も最初も何手先も・・・心理も・・・見えたような行動・・・。一体、あなたの目には何が見えているのですか?」
「見えているものか・・・何を言っても・・・笑わないか?」
「笑いません。」
「そうか・・・俺の目に映っているものは・・・。」
俺が一息入れると霧島も固唾を飲む。
「俺に見えているのは・・・誰も欠けること無く、みんなで笑っていること・・・それだけだ。そしてそれを俺の視界だけでなく現実にするために
俺は恥ずかしさのあまり顔を手で覆う。今更だが何故俺は断らなかったんだろうか・・・いや、俺が変われたのかもしれない。親父の遺志を継ぐために親父のように一人で背負おうとすることを止めたからであろうか・・・まぁ、どっちにしろ言ったという事実は変えられない。俺は未だ反応を見せない霧島に恐る恐る目を向ける。
「・・・。」
「あのう・・・霧島さん?反応が無いのは逆に恐いのですが・・・。」
「・・・提督。」
「は、はい!?」
「やはり提督は提督ですね。」
「?」
「その言葉を聞いて安心しました。あなたは何も変わってなどいない、私たちの知る桐生蒼一であるということに安心しました。」
「どういうことだ?いくらなんでもわからん・・・。」
「それでいいのです。」
「ようわからん・・・。」
俺は疑問しか浮かばなかった。霧島が何が言いたいのかサッパリわからなかった。
「さて、提督。そろそろ仕事を再開しましょう。」
「あ、あぁ。」
俺は霧島に促されるように仕事に戻った。結局その後霧島は先ほどの事には触れようとはせず、俺の疑問は残った。
ちょうど一段落ついたので少しばかり間を空けます。リアルで用事が溜まっているので・・・。