俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第四十二話 表と裏

11月24日

 

《西波島海域》

 

ここは現在も砲撃音が止むことは無かった。戦艦棲姫・空母棲姫は撃破されたがまだ一体、島に居座る集積地棲姫が残っていた。そしてその集積地棲姫とは現在、扶桑たち第二主力艦隊が直接火砲を交え一水戦と三水戦が援護にあたっていた。

 

「扶桑ー!!」

 

「あ、提督!!よかった、助かりました。」

 

だがそこへ蒼一たち第四要撃部隊が到着した。

 

「全員無事のようだな。今まで一艦隊だけでよく持ちこたえてくれたな。」

 

「一水戦と三水戦の方々のおかげです。」

 

「そうか。では、今日最後の攻撃といこうか。全艦、目標を集積地棲姫へ定めろ。一斉射撃だ!!」

 

蒼一の号令で機動部隊以外の艦娘全員の艦砲が島にいる集積地棲姫へと向けられた。

 

「・・・撃てぇ!!」

 

ズドドド!!

 

数え切れないほどの砲門から砲弾が射出され集積地棲姫へと襲い掛かる。

 

「どうだ?」

 

砲撃による爆煙や土煙によって集積地棲姫の被害状況がわからないでいた。そして数秒が経つとようやく煙が晴れてボロボロの姿で立っている集積地棲姫の姿があった。

 

「アツメタブッシハ・・・ヤラセハシナイ!!」

 

「・・・あれを食らって健在とはな。しかし他の新型と違って障壁は薄そうだ。もういっちょ、一斉射、撃てぇ!!」

 

ガガガガガガッ!!

 

先ほどよりも何倍も大きい砲撃音が鳴り響いた。そしてさらに大きい爆煙を上げた。

 

「アァ!?アァァァ!!」

 

「くっ!?」

 

爆音に続いて甲高い悲鳴が聞こえた。

 

「断末魔か・・・?」

 

確かに断末魔のような声だった。そしてそれを裏付けるように爆煙が晴れるとそこには集積地棲姫の姿は無かった。そして海域の暗雲が晴れる・・・はずだった。

 

「これで西波島海域は奪還か。なんとか目だった被害は無しで済んだな。全艦、神威と合流を図りその後鎮守府へ帰投す『提督、大変です!!』どうした!?」

 

蒼一が海域奪取を宣言し鎮守府への帰投を指示した刹那、通信越しに焦りがわかる翔鶴の声が聞こえた。翔鶴たち機動部隊は空母棲姫撃破後は西波島海域周囲の警戒にあたっていた。

 

『観測機から報告です。西波島後方に薄っすらですが敵の影が。それも無数に!!』

 

「どーりで暗雲が消えないわけだ。」

 

『さらに報告!!敵の中には多数の鬼・姫級を確認したとの事・・・。』

 

「・・・っ!!迂闊だった。確かこの西波島の後ろには北平島があったはずだ・・・。つーことはこの西波島棲地は囮だったというわけか!?」

 

『提督!!さらに敵艦隊接近!!』

 

「躊躇している暇も無いか・・・。現時刻を以って作戦要綱を全て破棄、現海域から撤退する!!直ちに神威との合流を図る。以降の行動は各艦隊の旗艦に任せる。全力で神威を目指せ!!」

 

『は、はい!!』

 

一段と焦った蒼一の声を受け艦隊に動揺が走るが今はそんなことをしている暇は無い。各艦隊は旗艦に従い各々神威を目指した。

 

 

 

《艦娘母艦神威・指揮所》

 

なんとか無事に全員が神威に搭乗することができた。艦娘たちは休憩部屋で休んでいるが蒼一はそのまま指揮所でナビ妖精たちと突如現れた敵艦隊の動向を見ていた。

 

「敵艦隊の動きはどうなった?」

 

「どうやら西波島に到達後、そのまま滞在しているようです。」

 

「数は・・・数時間前までの西波島棲地にいた数よりは当然多いだろうな・・・。これは舞鶴の全戦力をまわしても難しいだろうな・・・。一旦戦力増強を図るしかないか・・・。」

 

「そう・・・ですね。この数は前例がないです。鎮守府強襲時以上の数ですから。」

 

「そうだな。あの時は百程度、鬼・姫級は一隻だったが今回は数は無数、鬼・姫級も二桁はいる・・・これは厄介以上だ。」

 

「どうされます?」

 

「現状維持がギリギリだろう。それにしても迂闊だった。棲地一つが囮だとはな・・・してやられた。敵さんを少々侮っていた。それがこの様だ。さて、大本営にはどう報告しようか・・・。」

 

「しかし大艦隊が現れたということは北陸海域にはもう一つ棲地があるということでしょうか?ならば舞鶴よりも近い柏崎泊地なら少しは情報を掴んでいそうですが・・・。」

 

「そうだ、そこがおかしい。柏崎の場所なら西波島棲地は哨戒範囲に引っかかるはずだ。だが書類上では(・・・・・)俺たちが見つけたことになっている。何かあるぞ。」

 

「提督が言う保身派・・・ですか?」

 

「裏に何かあるなら十中八九そうだろう・・・厄介だな。」

 

「それほどなのですか?」

 

「あぁ。奴らの言動一つ一つが憎たらしい欲望の塊と言っても足りないくらいだからな。まぁ、俺がいる限りそいつらの指一本たりともここには触れさせやしないしそいつらと戦うのは俺だけで十分だ。」

 

「お言葉はありがたいですが・・・これだけは言わせて貰います。くれぐれも、あのようなこと(・・・・・・・)は今後一切しないでください。」

 

「うっ・・・わかっている。」

 

まぁ、妖精が言うあのようなこととは自爆だろう・・・。まぁ、俺も二度とやりたくないがな・・・。

 

指揮所で西波棲地の動向を伺っている内に蒼一たちを乗せた艦娘母艦神威は舞鶴鎮守府へ帰投した。

 

 

 

《鎮守府・港》

 

鎮守府に着くとすぐに霧島が出迎えてくれた。

 

「提督、お疲れ様です。鎮守府、異常なしです。」

 

「出迎えありがとう。それからお疲れさん。」

 

「当然のことをしたまでです。それよりも・・・。」

 

「既に知っていると思うが作戦は失敗・・・それどころか最悪の事態になってしまった。状況説明は明日に繰越だ。今は攻略隊には休んでもらいたいからな。・・・つーか俺も休みたい・・・。」

 

「了解しました。ごゆっくりお休みください。それまではこの霧島が鎮守府を守って御覧に入れます。」

 

「あぁ、頼んだ。んじゃ、ちょっくら寝てくる・・・。」

 

蒼一はそう言って自分の部屋へと帰り、霧島は指揮を執るために発令所へと向かった。

 

―はずだった。

 

 

 

《提督室》

 

蒼一は部屋に戻るフリをして提督室へとやってきた。無論、今日見つかった不自然なことを確認するためだ。椅子に座りPCを立ち上げ、携帯を取り出す。報告書を作りながら携帯を使う。

 

『あら、蒼一。どうしたの?新棲地攻略は成功した?』

 

「いや、その逆だ。敵の罠に嵌っちまった。」

 

『何ですって!?あなたが!?』

 

「ったく、毎度思うがお前は俺を何だと思っているんだっつーの・・・先に見つけた西波島にあった棲地、あれ自体が囮だった。制圧直後にさらに後ろにあると思われる棲地からであろう大艦隊が押し寄せてきた。幸い偵察を念を押してさせていたから戦闘は避けれたが、西波棲地攻略は難しくなってしまった。」

 

『そう・・・疲れていると思うけどすぐに報告書を出してちょうだい。どうも保身派が何故かそっちのことを気にしているみたいなのよ。』

 

「やはりか・・・。」

 

『やっぱ蒼一も・・・。』

 

「どうやらお前も感づいているようだな。確かに俺は敵の罠(・・・)に嵌った。だが敵は(・・)深海棲艦ではなく・・・保身派の老人共だ。」

 

『あなたから言われると妙に納得できるわね・・・。』

 

「どうやら敵は一枚岩じゃ無さそうだな。非常に迷惑かつ厄介。まぁ、それを打ち破ることに意味があるのだがな。」

 

『まったくもってその通りね。』

 

「それで、そっちでは何か他に動きはあったか?」

 

『一つあるけどまだわからないから保留ね。』

 

「保留で済むならいいんだが。」

 

『不吉なこと言わないでよね。』

 

「それで明日にでも作戦報告書をそっちに送る。それで先に伝えておきたいんだが戦力の増強を頼みたい。現状、西波棲地は大戦力で一気に攻略し間髪いれずに北平棲地も攻略しなければならない。だが今の舞鶴の戦力では全艦隊をまわして五分といったところだ。」

 

『現日本最強戦力を誇る舞鶴でそれなら他の鎮守府・泊地では到底無理ね。』

 

「最強だって?」

 

『上層部がよく言っているわよ。』

 

「面倒なことだ。それで、何とかなりそうか?」

 

『それなら丁度いいわさっき保留って言った件なんだけど。』

 

「舞鶴の戦力増強案がそっちで既に出たのか?」

 

『うーん、ちょっと違うわ。またなんだけど大本営で新造艦が建造されたの。』

 

「それで、また舞鶴にか?」

 

『まぁ、そうなるわね。』

 

「艦種は?」

 

『それなんだけど・・・補給艦って言っていたらしいの。』

 

「補給艦・・・これは聞いたことが無いな。正真正銘の新型か。訓練は・・・その調子だとゼロだろうな。」

 

『そうなのよ・・・用途も実戦が無い本部じゃ不明のままでね。それで保身派が役に立たないと印を押したみたいで舞鶴に転属しようって話になったの。』

 

「吹雪の時と一緒だな。」

 

『それがちょっと違うの。どうやら新艦種ということで保身派が興味を持ったのか保身派が主導で彼女の情報を集めているらしいの。』

 

「ほー・・・。」

 

『んで後はそっちが頷くかどうかだったんだけど、どう?』

 

「・・・まぁ、いいだろう。無駄なものなど無い。必ず役に立ってくれるさ。」

 

『なんかあれから過保護になってない?』

 

「身をもって知っただけだ。大切なものの重みを。」

 

『そう・・・。』

 

「用意するのは報告書と案件書でいいのか?」

 

『そうね、その二つがあればすぐにそっちに配属されるわ。』

 

「わかった。後は案件書だけだな。」

 

『まさか今作っているの?』

 

「まぁな。」

 

『はぁ・・・。あなたって人は・・・。』

 

「なんか言ったか?」

 

『何にも。それじゃ、頼んだわよ。』

 

「りょーかーい。」

 

そう言って蒼一は携帯を閉じて数分ほどキーを叩いた後、プリントしてまとめ封筒に入れ用意を整えたところで椅子から立ち今度こそ休むために自室へと向かった。




今話からまた更新を再開すると同時に改編も今日中に終わらせ・・・たいです。一応改編で内容が変わる話も少々あるので、読み返してもらえればありがたいです。
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