俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第四十三話 影を持つ娘

 11月25日

 

《鎮守府・提督室》

 

今日の朝、報告書と案件書を送ると夕方である今大本営から返信が届いた。どうやら真那の言う通りこっちを待っていたようだ。

 

「提督、大本営からの書類のようですがいつもの研究の物とは違いますね。」

 

「今朝作戦の報告書と戦力増強願いを出したところ、急遽舞鶴に新しい艦が配属されることになった。」

 

「また、ですか。」

 

「ここは養成所じゃないんだけどね~。」

 

「そしてここはだらける場所でも無いんだがな・・・。」

 

そう、今目の前には北上が来客用であるはずのソファに寝そべっているのだ。もう日常と化してしまったことだが、これでいいのだろうか・・・?まぁ、いつもはこれに第六の四人が加わって騒いでいるのだがな・・・。今日は昨日の疲れが残っているのか四人揃ってこれまた北上の反対側のソファで四人仲良く昼寝をしている。

 

「まぁ、今日は都合が良いな。」

 

「ほう?何かるのかい。」

 

俺がそう呟いたのに反応したのかさっきまでだらけていた態度はどこへやらと言わんばかりの真剣な目を持った北上が横へ来て書類を覗き、霧島も反対側から覗く。

 

「まぁな。今度着任する艦は新型、それも新艦種だ。補給艦、いわば後方支援に特化したものだろう。」

 

「それじゃぁ戦力増強にはならないのでは?」

 

「そうだろうな。多分保身派が身を守るために必要以上に戦力を大本営に残しているのか同じ保身派の息がかかったところへ回しているのか。まぁ、どっちにしろ同じだ。」

 

「それでこの娘に何かあるんだよね?」

 

「あぁ。どうやら真那から聞いた話じゃこの娘は保身派が直々に情報収集をしているらしい。だがそれは表向きで、裏は舞鶴を探るための偵察訓練を行っていると俺は解釈している。」

 

「ん~確かにそう取れなくはないね。それにこっちは大本営すら知らない機密の宝庫、そりゃぁ保身派も動くだろうね。」

 

「吹雪の時はまだそこまで機密は無かったが今は違うからな。」

 

「それで保身派の狙いは?」

 

「舞鶴で開発中の防衛兵器群、そして俺が秘密裏に行っている実験を想定しているんだろう。」

 

「秘密の実験、人間の艦娘化ですね。」

 

「前者はともかく後者は絶対に向こうに知られてはならない。証拠は不十分だが備えはあった方がいい。無実だった場合はすまないことをしてしまうが仕方が無い。着任はまさかの明日だ。よって直ちに鎮守府に規制をかける。当然内容は俺が艦娘になっていることだ。霧島、すぐに頼む。それと青葉と大淀を呼んでくれ。さらに対策を練る。」

 

「了解しました。」

 

霧島は指示に従って部屋から出て行った。数分後、部屋のスピーカーから放送が聞こえた。先ほど霧島に頼んだことだ。ちゃんと疑いの目を向けないようにと念を押していた。それは言ってなかったがナイスだと思う。そして放送終了後数分も立たないうちに霧島と大淀、青葉が部屋に来た。

 

「提督、お呼びでしょうか。」

 

「青葉です。やはり先ほどの放送が関係しているのですね。」

 

「まぁ、そんなとこだ。さてっと―――。」

 

一通り話した後、解散となり次の日を迎えた。

 

 11月26日

 

《提督室》

 

「本日付で舞鶴鎮守府に配属されることになりました、補給艦・速吸です。よろしくお願いします。」

 

「ご苦労だったね。ここを歩くには迷うだろう。北上。」

 

「は~い。」

 

「彼女に案内を頼むといい。これでもここの最古参だ。頼りになるだろう。配属は・・・急なことだったからまだ決まっていないから追って通知する。以上だ。」

 

「あのう・・・。」

 

「なんだい?」

 

俺の話が終わると速吸は何か聞きたそうにしていた。

 

「提督は・・・あの桐生博士でよろしいのですか?」

 

「そうだが?」

 

「やっぱり!!お会いできるとは光栄です!!私、博士に憧れているんです!!」

 

突然の事でちょっと引いてしまった。先入観で彼女を見ていたのでインパクトが大きすぎた。

 

「そ、そうか。それで、具体的にどんなところが・・・?」

 

「えぇっと、やはり桐生博士といえば生み出される技術の数々ですね。」

 

「そうか、それは良かった。」

 

少し脈はあるな・・・。

 

「そっ、それでできれば、提督の下で直々にご指導を受けたいのですが・・・。」

 

「・・・わかった。霧島の補佐ということで取り計ろう。だが今日はゆっくり鎮守府を見てくるといい。まずは鎮守府に慣れないと仕事は難しいからな。北上、後のことは頼む。」

 

「は~い。それじゃ、こっちだよ。」

 

「失礼しました。」

 

北上に連れられて速吸は部屋を後にした。

 

「さて、どう思う?」

 

「脈ありですね。特に提督の傍を希望したことが怪しいです。提督はどうですか?」

 

「俺も脈ありだと思う。彼女が俺自身に憧れを抱いているのは事実かもしれん。だがその後理由を聞いたときの彼女の目には曇りがあったように見えた。憧れ云々を言っている時とは大違いだった。」

 

「よく見ていますね。」

 

「観察眼には自信があるからな。さて、どうしたものか・・・。一応警戒は継続だ。」

 

「わかりました。」

 

さて・・・本当にどうしたものかね・・・。

 

「それと夕張に数日は技術会議は中止にすると伝えておいてくれ。余計な勘ぐりは避けたいからな。」

 

「ではすぐに伝えてきます。」

 

「頼む。」

 

そう言って霧島は再度部屋を後にした。一人になったところで考えを張り巡らせる。

 

「さて、少し罠でも張ろうか・・・いや、無実だった場合はかわいそうだ。相手の行動を見てから動くしかないか・・・。」

 

思考しているといつの間にか時間は過ぎてしまったようだ。その後は普通どおり歓迎会をやった。みんな疑いの目は向けず普通に接していたのでよかった。後は何もなければいいのだがな・・・。




ちょっと速吸がかわいそうですがこの娘以外に適任がいなかったのです・・・。
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