俺、技術屋だよな?   作:かんせつ

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第四十四話 潜む影

 12月1日

 

《鎮守府・提督室》

 

ここ数日、速吸には何も動きは見られなかった。それは良いことなのか、こちらが抜けていたのか・・・それが不明なのが俺の警戒心を募らせていた。大本営にいる真那にも色々相談したがまったくもって何も掴めていない。おかげで時たま仕事の手が止めて傍らで指南書を読みながら俺の仕事を見ている速吸の様子を見てしまうほどだった。どうやら彼女自身、支援艦だからか直接的な戦闘には向かないことがわかった。だからこそ支援以外でできることを探したいと言うのが俺の指導を受けたい理由らしい。

 

「さて・・・どうしたものか。」

 

ジリリリッ!!

 

思考の海に浸っているといきなり引き上げられた。それは机に置いてある非常用通信のベルだった。俺は急いで受話器を取った。

 

「どうした、何があった?」

 

『哨戒機より入電です。鎮守府へアンノウン反応の艦隊が接近しているのをレーダーで確認したとのこと。数は不明です。』

 

「わかった。すぐにそちらへ向かう。直ちに哨戒機を増やして艦隊の正体を掴め。」

 

『了解です。』

 

「霧島、速吸。謎の艦隊が鎮守府へ接近中だ。おそらく深海棲艦の攻撃だろう。発令所へ向かうぞ。」

 

「わかりました。」

 

「りょ、了解です!!」

 

俺はすぐにヘッドセットを付けて発令所へ急いだ。

 

《発令所》

 

「状況報告!!」

 

『接近する艦隊は深海棲艦の艦隊と判明。数はおよそ80。後102で沓島要塞の迎撃範囲に入ります。』

 

「わかった。鎮守府全域に非常事態宣言を発令、総員第一種戦闘配置!!稼動可能な艦隊はすべてカタパルトへ集合するように通達!!」

 

『了解。非常事態宣言を発令。総員第一種戦闘配置、地対艦迎撃用意、鎮守府戦闘形態へ移行します。非戦闘員は直ちにシェルターへ避難してください。』

 

「鬼・姫級は?」

 

『少しお待ちを現在解析中・・・反応無し。』

 

「わかった。稼動可能な艦隊は?」

 

『資源輸送任務に出ている第三第四水雷戦隊以外の艦隊全てが稼動可能です。』

 

「そうか。ならば沓島冠島の要塞のレーダー以外の電源を落とせ。上級艦がいないとは言え数が多い。下手な反撃で消費は増やしたくないからな。そして全艦隊を以って一気に敵を殲滅する。」

 

『了解しました。直ちに両要塞の迎撃設備の電源を落とします。』

 

『稼動全艦隊の集合を確認。』

 

「艦隊指揮はそれぞれの役目を果たすように。」

 

『了解!!』

 

「例によって霧島はここで待機だ。」

 

「いつも通りですね。」

 

「艦娘の中で一番指揮が取れるのがお前だからな。」

 

「褒められている気はするのですがちょっと悔しいですね。お姉様方と一緒に出撃できないのは残念です。」

 

『敵艦隊が空母機動部隊の攻撃範囲に入ります。』

 

「攻撃を許可する。可能な限り敵艦を撃破、直接戦闘までに数を減らせ。」

 

『了解。』

 

鎮守府正面カメラからの映像では第一第二機動部隊の空母から無数の艦載機が発艦し敵へ向かうのが見えた。

 

『機動部隊の攻撃成功!!敵艦隊に甚大な被害!!そのまま敵艦隊は進行、砲撃範囲内に入ります。』

 

「よし、各艦隊旗艦の指揮に従って各個撃破せよ。」

 

『了解!!』

 

『艦隊、砲雷撃戦を開始。』

 

偵察機からの映像なのか艦隊を上から見た映像が発令所のモニターに映る。

 

「どんどん敵の数が減っていますね。これが噂の最強艦隊・・・。」

 

傍にいた速吸が素直な目で感想を言う。真那の言ったとおり舞鶴の実力はかなり評価されているようだ。

 

『敵艦残り僅か。敵に撤退行動見ゆ。』

 

「よし、追撃戦に『提督!!敵後方に新たな反応!!これは!?』どうした?」

 

追撃戦の指示を出そうとした瞬間、一人のナビ妖精が切羽詰った声を上げる。

 

『反応を解析、数は4。』

 

「増援とは言えそれだけならば・・・『艦隊構成が軽巡ツ級2隻、それから・・・。』どうした、早く・・・っ!?」

 

次の報告をしない妖精を見ると顔が恐怖で凍りついていたのだ。

 

『敵艦隊に・・・防空棲姫と戦艦棲姫の2隻確認・・・。』

 

「なんだと!?」

 

「提督・・・。」

 

確かに姫級は驚異的な戦闘能力を有している。だが敵だけが驚異的な戦闘能力を有している艦がいるわけではない。自惚れだとは思うが事実上はそうなのだ。俺は自分の手を見るが戸惑ってしまう。何せまだ正体が不明である速吸の存在が俺を躊躇させる。

 

『敵増援が攻撃を開始!!被害が増大中!!』

 

「くっ!!」

 

モニターの艦娘反応は各艦隊からの被害報告で見る見る赤くなっていった。それはこちらの被害が甚大だということだ。増援艦隊とは距離はあるはずなのになんという威力・正確さだ・・・。加えてツ級2隻に防空棲姫と来れば艦載機はすぐに落とされてしまう。

 

「提督・・・。」

 

迷っている暇はないか・・・。

 

「・・・全艦隊は鎮守府正面より撤退。鎮守府の設備迎撃で時間を稼げ。それから、霧島。」

 

「はい。」

 

「後の指揮を任せる。」

 

「了解しました。」

 

「どっ、どう言う意味なんですか!?」

 

状況が飲み込めていない速吸は慌て始める。

 

「んじゃ、行って来る。」

 

俺はそう言い残して発令所を後にした。

 

《廊下》

 

『第二波誘導弾攻撃、効果見えず。』

 

『固定砲も効果見えず。』

 

『敵増援、以前接近中。最終防衛ラインまで後87!!』

 

俺は廊下を走りながら無線による報告に歯軋りする。どれも良くない報告だ。

 

『誘導弾は軽巡ツ級及び防空棲姫が機銃によって迎撃、砲弾は有効範囲外なのが理由かと。』

 

「なるほどな。おっと着いた。」

 

《第一カタパルト》

 

俺はカタパルトまで進んでいくリフトの上で着替えていた。そして着替え終わるのと同時にリフトは出撃口に到着する。俺はすぐさまリフトから出撃盤の上に乗る。

 

「戦艦桐生、参る!!」

 

巨大な艤装を背負い出撃口から勢いよく出撃する。

 

「固定砲の攻撃を中止、稼動可能な艦はすぐさま第一出撃口に集合!!」

 

俺は出撃後すぐに艦隊の再編を行うため集合を頼むがほとんどが中破で撤退していた。行動可能なのは後方にいて無事だった第一第二機動部隊、そして第二主力艦隊、第一第四要撃部隊のみだった。その中でも撤退している艦は多く実際に行動できる艦は半数ほどで、それだけで姫級二隻を相手にしなければならないのだ。

 

『提督、いかがいたしますか?』

 

「空母勢は無理だな。敵の対空能力が高すぎて被害が洒落にならん。敵撃破には打撃部隊であたるしかないな。」

 

『大丈夫ですか?』

 

「幸い敵には空母はいないから大丈夫だろう。鎮守府へ通達。誘導弾の一斉射の準備!!攻撃目標は秘め級2隻。」

 

『了解!!完了まで09。』

 

「誘導弾の一斉射と共に一気に攻撃を仕掛ける。まずはツ級を撃破する。そうすれば空母からの支援を受けれる。」

 

「了解!!」

 

『準備完了!!いつでもいけます!!』

 

「よーし・・・撃てぇ!!」

 

合図をした瞬間頭上に跡雲が浮かんだ。誘導弾が頭上を通過したのだ。

 

「突撃ぃ!!」

 

さらに号令をかけて一斉に敵に切り込んでいく。

 

「主砲一斉射、放てぇ!!」

 

ズドンッ

 

狙いを定め主砲を一斉射する。戦艦棲姫は誘導弾で身動きが取れないでいる。すなわちツ級を唯一撃破できるチャンスなのだ。全員の砲撃がツ級へ殺到する。

 

「挟叉!!次!!誘導弾、ロック、発射!!」

 

さらに攻撃の手を休ませず確実な誘導弾を発射する。砲撃で撃破できればよかったのだがさすがにこの距離じゃ有効打にはならないようだ。

 

シュンッ

 

艤装から誘導弾が発射されツ級へ一直線に向かう。そして着弾し爆炎を撒き散らし撃破する。

 

『ツ級2隻の撃破を確認!!』

 

『戦艦棲姫、行動を再開。』

 

「全空母に通達。直援機を要請。戦艦棲姫へ攻撃を開始!!」

 

『了解。攻撃隊、発艦!!』

 

要請を出してすぐ、頭上を艦載機が追い越していく。ツ級を撃破したことで艦載機も攻撃可能になる。だがまだ防空棲姫が残っている。

 

「よし、俺は防空棲姫の相手をする。残りは陽動を頼む。散開!!」

 

俺の号令で艦隊は即座に広がる。日ごろの訓練の成果を直接見ることができるとはな。

 

『攻撃隊より入電。戦艦棲姫1隻を中破!!さらに攻撃を続行します。』

 

どうやら空母勢も戦果を上げているようだ。もう少しで落とせるだろう。後は目の前の防空棲姫を倒せば終わりだ。。

 

「主砲、構え・・・撃てぇ!!」

 

俺も役目を果たすべく砲撃を続行する。砲弾は挟叉だったが格上からの砲撃の爆風だけで防空棲姫は大幅に姿勢を崩した。そこを誘導弾で集中砲火して撃破する。

 

『戦艦棲姫1隻の撃破を確認!!』

 

「こっちも終わった。一応レーダーで確認してくれ。」

 

『レーダーでも撃破を確認。敵艦隊の反応、全て消失!!撃破完了です!!』

 

「なんとかなったな。全艦隊に通達。これより鎮守府へ帰投する。作戦完了だ!!」

 

その言葉で無線で色とりどりの歓喜の声が聞こえた。少し煩いくらいにだ。だがまぁ、当然だろう。

 

「さって、後は・・・。」

 

俺は無線を一瞬切って呟く。そう、俺には一つだけ戦いが残っているはずなのだ・・・。




毎回提督の戦闘力がチート性能なのと襲来する艦隊がおかしいのには目を瞑ってもらえると助かります。
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