まずは、自分の出来ることをする。だから、一色の手伝いをしないとな。それに、約束もしたし。そう考えて、学校に向かった。
午前の授業も終わり、いつものようにペストプレイスに向かおうとする。肩を誰かに捕まえられる。
「比企谷、話がある」
振り向いて見ると、そこにいた人物は葉山だった。表情はいつもと違い真剣だった。
「何だよ、話って?」
「ここでは言えない。だから、場所を移すぞ」
葉山はそう言って、勝手に移動し始める。俺はめんどくさいと、思いながらも従い、葉山についていく。ふと思う。いつもと違う違和感を。こんなときに、必ずどこかの腐女子が騒ぐのだが、一切聞こえず、静かだ。教室を出るときに見てみる。腐女子の海老名さんが申し訳がなさそうにこちらを見ていた。そして、海老名さんの隣にいる女子生徒、由比ヶ浜もこちらを見ていた。彼女の目に写っていたのは、何かに期待しているような目だった。
場所は変わり屋上。ここにいるのは、俺と葉山だけ。無理矢理連れ出された俺は、不機嫌そうな声で聞く。
「それで、話って何だよ?」
葉山は真剣な表情で話し出す。
「わかっているはずだ。話は奉仕部のことだ」
あぁ、なるほど。そういうことか。由比ヶ浜があんな目をしていたのは、こいつに期待したんだ。もう、葉山が言いたいことはわかる。それでも、確認のため聞く。
「それが何だよ」
「君は奉仕部にいるべき人間だ。もう一度、彼女達とやり直せ」
やっぱりだ。俺を奉仕部に戻そうとしている。だけど、それは無理だ。俺は戻るきはない。それにもう、元の関係には戻れない。戻れないところまで俺達は終わっている。
「俺は戻るきはない。それに、お前は部外者だ。この事にもう関わるな」
この話を終わらそうと言う。部外者にこれ以上、この話をしたくはなかった。それに、関わられたくはない。
「待て、確かに俺は部外者だ。でも、君達がそうなってしまったのは、修学旅行の件が関係しているのだろう。なら、俺も関係していることだ」
「あぁ、そうかよ」
こいつは駄目だ。何を言っても関わってくる。俺が奉仕部に戻るまで。別のことで諦めさせるしかない。
「1つ聞いていいか?」
「何だ」
「お前はあの二人に頼まれたから、俺を奉仕部に戻そうとしているのか?」
「………結衣には頼まれたよ。ただ雪ノ下さんとは話していない。でも、二人とも君に戻って欲しいと思っている。俺はその助けをしたい」
聞いていないことも話しやがって。でもわかった。頼んだのは、由比ヶ浜だけだと。まったく、イライラしてくる。こいつは俺のことを一切考えていない。俺が悪いと決めつけている。だから、話の本質がわからない。話にならない。もう話すことはない。そう思い、俺は立ち去ろうとする。
「待て!君は逃げるのか!」
その言葉を聞いて、立ち止まる。逃げるだと。今度は葉山に言われるとは。俺は絞り出すように言う。
「……俺はもう他の部に入っている」
「……それは聞いている。君が辞めればいい。一応、君のところの部長には許可をもらっている」
そんな…そんなわけがない。藤咲が認めるはずがない。俺の奉仕部の退部を応援してくれた。協力してくれた。そんな藤咲が言うはずがない。こいつは嘘をついている。もういい。くだらない。そして、俺は屋上を出ていく。葉山が何か言っていたが、もう聞こえない。俺には届かない。
今回は葉山と話す回でした。葉山のこの行動でどうなっていくか、藤咲が比企谷君の退部を許可した理由、そういったところを上手く書けるようにしたいです。次回はクリスマス会議に出るところです。