ひさしすぎてよくわかんない
強い衝撃を受けて、私は目を覚ました。
失念していた。油断しすぎていた。
遠くから聞こえてくる人々の怒号や悲鳴。
そして爆発する音や、焦げた木や建物の匂い。
何が。
どうして。
どうなり。
こうなった。
主役格たる私が置いてけぼりになっているこの状況。
まるでお話の状況説明役にさせられたかのように、すんなりと頭のなかに情報が流れてくる。
「木の葉へと向かった者たちを襲った輩が、キナにかけられた術を解いてしまったなんて!そんな情報、私は何処から!」
おかしい。可笑しい可笑しい。その情報を得るためのフラグは?トリガーは?こんな情報誰しも上げてこないで私の頭に流れ込んでくる。天啓などではない。
置いてけぼりよ。どうして置いてけぼりを食らってるって言うの?
………まさか、この∣出来事《・・・》は何かしら原作に関係するもの?誰?誰だ。
未来を変えるのは難しい。私ごときの力じゃ誤差を積み重ねて大きな相違点を生み出すぐらいしかないのだし。
この話はスピンオフ?小説?外伝?それとも映画版?
足りない。情報が足りない。足りなさ過ぎて∣本筋《げんさく》さえわからない。
良くないことが起こるのは虎呑兄弟。それは確実だ。
それによるとは言えこの暗さ、獣臭さ。隣にはキナとレイシが横たわっている。
サスケはどこにいる?
周囲を確認すれども廃材廃屋元人間。地獄絵図と表現する有様だ。
……今、私の近くでとても獣臭い息が。
おーけ。現実逃避はやめて逃げよう。
私は何故か嚥狼の足元にいる。唐突過ぎ。
私ぐらいなら二人をどうにか連れて行くことはできるだろうけど、この国から出られちゃえばお終い。
幸いこう言う物を土地に縛り付ける事も逃げ出せない檻を作ることは広範囲なら出来る。
この二人とサスケと私で脱出して、あの化物をもうここに繋ぎ止めちゃえば……名案ね。
サスケの居場所知らないけど!
……やっぱ無理。
なんであんな化物を私がどうにかしなきゃいけないの?
何はともあれこれをしでかしたのはこの国の人たちじゃない!
なによ!つらい。
なんで、助ける必要もない。
力があるから救わなきゃならないなんてそんなのずるい。
精神がつらい。
思ってみれば私が見ず知らずの人のために何かをするなんて慈善的な人間でもないのになんでここまでこんな事しなきゃならないの?
強いから助けなきゃいないわけじゃない。
自分を守るために強くなってんのにそのせいで危険に飛び込まなきゃならないなんてちゃんちゃらおかしい。
全世界の人間なんて守りたくないし、幸せなんかを願わない。
ただ自分の周りの人が幸せならそれでいいのよ。世界平和なんて絶対に訪れないのだし。
∣手の届く範囲《サスケとふたり》だけでも連れて脱出しなくては。
「二人共!起きなさい!」
寝てる?二人にビンタしたり揺さぶったりしてもなかなか起きない。
何故か起きない。
………
「うふぁえ??」
レイシに電気を流してやっと起こす。
起こす?蘇生?わからないけどレイシが起きちゃえばキナは担げばいいでしょ。
「よし!サスケと合流して逃げるわよ!」
「え?…はっ!待ってください嚥狼が!」
「そんなこと知らない。逃げるの。これは命令よ。解き放たれた以上私があれと関わる理由もこの国を助ける義務もないのだし。」
「ですが」
「何度も言わせないで。誰もが英雄なわけじゃない。私はアレと対峙したくない。」
「でも!」
「でもじゃない!嫌!嫌なの!助けてよ。ヤダヤダヤダ!!この国の奴らは逃げるくせになんで私は逃げちゃだめなの?武功をたてたいわけじゃない!そんなことをするためにここに来てない!死にたくない。死にたくない!死にたくない!!」
ふと、私を後ろから抱きしめる人がいる。誰?
私はとっても辛いからこの場に止めようとしてほしくない。
辛い。
怖い。
死にたくない。
辛い辛い辛い
誰か助けてよ。
「ミコ。落ち着け。」
「サスケっ!無理無理!サスケちゃんも助けるの?嫌よ?嫌!お家に帰りたい!赫映様の元に帰りたい!
いやぁ!辛い怖い死にたくない!」
「分かった。でが、とりあえず立て。逃げるぞ。」
・・
幸い嚥狼は私達を追ってこなかったが、街中はパニック状態だった。
逃げ惑う人、泣き叫ぶ子供。
そんなの私達は無視してただただ関所に向かう。
関所も混乱していた。
「木の葉の方!」
「私たちは逃げます。この国の問題はここ国の者でなんとかしなさい。」
「ですがあなた方は忍びでしょう?武器あるのなら……」
「あんなものを隠し持っておいて何かあれば助けろと?ふざけるな!」
無理矢理手続きを門兵にさせて私たちは山を駆け下りる。
八十八の鳥居を急いで駆け下りる。
「待ってください!本当に、逃げても大丈夫なんですか?嚥狼はすべてを喰らい尽くしたら……。」
「あ。」
なんてことだ!そうだ。うっかりしていた。
この国の奴らなんかはどうでもいいけど他の国は。この国にいた事はどの道わかってしまうのだ。それであれを封印できていないとなったら国際問題。被害がどこかしら出てくれば卑しくこちらをせめて来るだろう。
幸い鳥居は門の近くまである。
鳥居は境界隣ってあの里自体を封じることができるかもしれない。
「ミコ。どうする?俺達だけであれは倒せるか?」
「実力は万全であるなら大丈夫だけど、メンタルが無理。」
「狼は」
「狼は泳げる。」
「戻りましょう。戦うんです。」
レイシは覚悟を決めてるようだけど私は無理。
一度逃げたら、諦めてしまったらもう怖くて出来ない。
「戦うなら貴方一人にして。キナは目覚めないし、私はは限界よ。」
「限界ったってこのままじゃ!」
けれどね、私。
一つだけこの事件で頑張れることがあるでしょ?
二人を助けるために何人の人が死ぬのか、どう未来が変わるのかわからないけれどここで私の精一杯は鳥居を利用した結界だ。
「鳥居って、結界の役割も果たすわけ。本当の、本当の最終手段。」
私は常に帯刀していた打刀を取り出す。
ミオヤ様から賜った儀式刀、祝打刀・雨呼
普段は雨乞いに使うのだけれど今回は違う。
鳥居を隔ててあちら側とこちら側を完全に分ける。
チャクラを刀に集中させ、刀から世界に放出させる。
目を閉じて境界を形どり、形成させる。
瞑想に近いのかもしれないし、ゾーンに入っているのかもしれない。
「贄は内に有る魂を。代償は漢方の発展速度を。
払え給え、清め給え。繋ぎ止め給え。」
世界は私の味方をする。
鳥居をトリガーに様々な神聖を宿らされた物が呼応して結界を作っていく。
あ、やば、チャクラが。
「一体何を?」
「ミコがこちらとあちらを分けた。もう二度と出てこれないようにな。」
「え、それなら中の人達は!」
「……諦めろ。」
二人はなんか喋ってるけど、私はチャクラ不足で眠気マックス。The眠気オブザイヤー受賞しちゃう。
「キナとレイシだけでも助けられてよかったと思ってるのよ。だって」
・・
おはよう私。おはよう世界。
気がついたら寝ていて病院です。どうもありがとうございます。
あのあと気絶しちゃたかー。そして病院か。やっぱあれ言っちゃいます?
「知らない天井だ。ここは病院か。」
ミコ知ってる。ナースコール押すんでしょ?どこよ。
だいたいは寝てても押せるようなァーっとあった。
よし、押した。押したよー私!看護師さんとお医者さんいらっしゃ~い!!
「心配してきてみれば、もう起きてたか。」
お、ビビッときちゃうこの感じは、ミオヤ様。
「赫映様!ミコたった今起きました。結界なんて初めてやったから手加減が。」
「わかってる。上出来だ。やり方はまんまあいつだから、まぁ、それもうだろうけども。」
「アイツ?アイツって誰です?」
「ん、あぁ。医者らが来るから俺は戻るが、今回はよくやった。色々話があると思うから、終わったらそのまま家に帰ってろ。報告はサスケの方から聞いている。」
「わかりました。」
その後色々高官から怒られたりしたけれど、あそこを封印したことは怒られなかった。
現状どうなってるから知りようがないけど、きっとこんな感じにふたされたものはたくさんあるんだろうね。
嫌になっちゃうな。