ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

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バレンタインじゃーーー!(今更)
今回は話数でいくと14話にあたるので、できれば2月14日の2時14分に投稿したいという密かな野望がありましたが、圧倒的に間に合いませんでした^^;少々悔しいですね。

さて!皆さんのおかげでお気に入りが100人を突破しました!思い付きの短編から始まったこの作品ですが、まさかここまで膨れ上がるとは感慨無量でございます。本当に、本当にありがとうございます!!
これからもなにとぞ「ただ、遠くから…」をよろしくお願いいたします\(^o^)/

お待たせしました。それではどうぞ!


《バレンタイン&お気に入り100突破記念》どたばたValentine 前編

「戸宮さん!」

 

「ど、どうしたんですか園田さん」

 

「これを……」

 

「あ、ああ……こっこれってひょっとして――」

 

~~~~~~~~~~

 

「バ レ ン タ イ ン チ ョ コ!!?」

 

 叫びとガバッとひっくり返る布団の音が、同時に響き渡った。小鳥が囀ずりに、カーテンの隙間から眩しい日差しが此方へ届いている。目の前に居た筈の園田さんはどこにも居なくなっていた。

 

「なんだ夢か。そうだよな、現実だったらある意味困るっての」

 

 何より今日は、バレンタインデーではない。2月12日だ。

 現実であって欲しかった強がりを言葉に隠して、俺は着替えの入ったタンスを引いた。

 

 フフ、バレンタインごときで動揺する戸宮計じゃない。万年チョコレート0の俺を舐めてもらっては困るよ。え、親友の希から貰えないのかって? 毎年貰えてないことでいじられてるよ!! おそらく今年も希にいじられる運命である、スピリチュアルやね。それもあって、俺は二重の意味でバレンタインが憂鬱だ。

 

 バレンタインなぞどうでもいいんだ。体温計で測って……熱は、ない。

 

「きたあああああ!!」

 

 インフル治ったぁぁ! ばんざーい! 解熱されてから2,3日、ようやっと完治したか!!

 

 先週の金曜から本当に大変だった。散々無茶したから解熱にもかかって、ずっと唸るはめになったのだ。今週の水曜に熱は下がってくれたものの、そこまでは地獄でしたよ。なんであんなに意地を張っていたのだろうと今になって思う。

 

 まあ、悪いことばかりでもなかった。だって、“あの人”もとい園田さんと雨の中で相合傘を……。熱がぶり返すかもしれないから思い返すのをやめた。顔を洗うため鏡に映った自分を見たら、気持ち悪さ100点満点の顔をしていた。

 

 

 1週間と3日ぶりにコンビニでデザート&水のいつものコンビを買い、会社に向かう。これからはお前達を見捨てたりはしないからな!とコンビが入っているビニール袋に目をやっても返事はない。虚しい。と、晴れて完全復活したわけだがやるべき事は山積みだ。

 

 今週に入ってインフルにより木曜まで休みを取ったから仕事がたまるたまる。丸々一週間回って今日は金曜とはいえ、休日も出勤しないと追い付けなさそう。俺はインフルへの恨めしい気持ちを紛らすかのように、スマホのメール画面を起動した。

 

『希。突然で悪いけど、仕事の後神田明神で会えないか?』

 

「これでよしっと」

 

 俺はメールを送信して、足取りを急いだ。

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽

 

 

 

 

「おはようございます。おかげさまで元気になりました!」

 

 心機一転、すっきりとした気持ちで仕事場に帰ってきた。皆が大丈夫か、もう治ったかと温かいお言葉を掛けてくれて嬉しかった。持つべきものは仲間ですな。

 

 例外もあるけどね。

 

「無事だったから良かったけれど、もしあのまま我慢して拗らせたらどうなっていたかわからないわよ」

「ごめんね絢瀬さん、心配お掛け申した」

 

 絢瀬さんだけには唯一説教されました。あの時異変を悟って止めようとしてくれたのに、大丈夫だと適当な誤魔化しをしたから無理もない。心配してくれていたのは素直に嬉しい。

 

「御詫びに俺のデザートあげるよ」

「……ふん、それで許すと思う?」

 

 やけくそでお菓子を引き合いに出したら眉がピクッと動いたぞ、欲しいのかな。

 

「仕方ないや。ちゃんとした方法を考えるよ」

「許すか許さないは置いといて。くれるって言うならいただいておこうかな♪」

 

 からかおうと思ったらうまいことやられた。絢瀬さんは強かった。

 

「おはよう、仲良し夫婦。そして戸宮。退院おめでとう!」

 

 絢瀬さんと一点張りのやりとりをしていると課長がやって来た。課長が夫婦と口にした途端絢瀬さんがぴたりと静かになった。だよなー、俺なんかと夫婦扱いされたら彼女はさぞ怪訝だろう。

 

「誰が夫婦ですか。入院もしていませんがねぇ」

「お前さ、表情の変化には鋭いのにそういう所は鈍いのな」

「どういう意味です?それとまた心を読んだのですか。もっとその力を有効な事に使ってみてはいかがでしょう」

「ハハハ、口の減らん奴だ。それでこそ戸宮だけどな。たまった1週間分の仕事、頑張れよ。遠くから応援してるわ!」

「どうもですー」

 

 それほど応援されてない感が否めないのはさておき、仕事頑張らないとな。たまっているのは事実だ。

 

「はぁ。とりあえず頑張ろう、絢瀬さん」

「う、うん」

 

 絢瀬さんの顔が赤い。さては絢瀬さん、インフルぶり返したな!? ……あら、違う?

 

 

 

 

 

 昼休みに差し掛かって女性社員の皆様がチョコを渡し始めた。2月14日は日曜で基本会社に顔を出す機会はないから、今日渡すのがいいと判断したのだろう。義理チョコや友チョコから本命チョコまで、入れ替わり立ち替わり行き交っていた。

 

 隣の絢瀬さんはというと女性社員からモッテモテで、大量のチョコを貰っていた。とんでもない数だ。モテる男より貰ってないか?普通困惑するのではと思っていたが、慣れているのか絢瀬さんは平然としていた。

 

 冷めた目でバレンタインの現場をぼんやり眺めていると、奥の方で男の同期が女性社員にチョコを渡している姿が目に入った。男が女に――

 

 

 たがが外れた音がした。俺の変なスイッチが入った音だ。

 

「これだああああっっっ!!」

 

 椅子から大声で叫んで立ってしまい、痛い目で見られました。泣ける。もうこの際どうでもいい。

 

 これだ!!そうだよ、バレンタインは女の子だけが渡すとは限らない!男子から女子に渡すという発想を置き去りにしていた!!つまりだ。俺が園田さんにチョコを渡してもアリなんだ!

 

 万年チョコ0でもいい、今朝の夢でお腹一杯だ。それが俺の今年のバレンタインだ。いい夢を神様ありがとう。夢で園田さんにバレンタインを貰ったそのお返しを夢でしたいところだが、難儀すぎて実行できる可能性を感じないから現実にてお返ししよう。

 

 夢でのバレンタインを現実のバレンタインでホワイトデーとして返す。誰も想像だにしないであろう俺の猛突進な思考はヒートアップしていく。

 

 名付けて「逆・ヴァレンタイン大作戦」。

 まんまじゃないの。もう少し考えようはなかったのだろうか。「バレンタイン」の「バ」を気取って「ヴァ」に変換しただけではないか。

 

 そうと決まれば明日にチョコを作って明後日に控えるバレンタインで渡す!

 ……いざ対面したらそんな勇気は出ない上に園田さんの居場所知らないじゃん。

 

「やっぱダメだ……」

 

 絶望的だ、後でどうするか考えよう。

 

「ねえ、戸宮君」

「何? 絢瀬さん」

「明後日って会社に来る?」

「たまった仕事片付けなきゃいけないから午前中は行くつもりだけど」

「よかった。仕事、手伝ってあげようかなと思って」

「助かるよ。それじゃあ御厚意に甘えようかな」

 

 絢瀬さんいい人だなー。わざわざ休日の午前を割いて手伝ってくれるなんてね。なんて思ってたら、お腹が鳴った。

 

 なんか買ってくると告げて、仕事場を抜け階段を下りていたらメールの着信がきた。

希からの返信だ。

 

『ええよ。また後でね』

 

 よっしゃ、彼女からOKが出た。バレンタインうんぬんの前にやることがあるからね。

 

「戸宮くん!」

 

 声が聞こえて振り返る。そこには同期の女の子が立っていた。このシチュエーション……もしかするともしかするかもしれないぞ。俺の生まれてはじめてのバレンタインチョコが―――――

 

「ティッシュ落としてたよ!」

「へ?」

 

「はいっ、どうぞ♪」

「アリガトウゴザイマース」

 

 ありがたい。ありがたいけどさ。

 

 

 

 

 バレンタインのくそったれえええ!!




世の中そんなに甘くない!チョコレートは甘い!

バレンタイン記念でありますがお話としては番外ではなく、本編のくくりとなっております。戸宮はチョコを貰えるのか!そして園田さんにチョコは渡せるのか!?

それではまた次回!
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