ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

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アニメでもバラエティでもそうだけど、ガツガツとうまそうに食い物頬張られたら腹が減る。いい迷惑だぜ!



どたばたValentine 中編

 仕事が終わり、希と待ち合わせの約束をしている神田明神に俺は訪れていた。

 

 ここに来るのはインフルを患いながらも我慢しようと決意した先週の金曜以来だ。神様はあの一日を耐えきるという願いを聞いてくれなかった代わりに、園田さんと引き合わせてくれましたね。ありがとうございます。

日は暮れて暗いのに、神田明神から感じる神聖な風格は衰えない。

 神田明神の雰囲気を味わう折、ちょっとだけ春が近付いているのがわかる、しかし吹かれると震え倍増のの風を身に受けて、希を待っていた。

 

 

 むう、希が来てもおかしくない時間なのだが……。彼女のパターンからいくと何か仕掛けてくるんだろうね、わかってますよ。さあ、どうくるのかな?

 

 希は正面から出てくることはわりと少ない。この前みたく後ろからぬっと現れたり、気付けばそこにいたりと神出鬼没ガールなのだ。気を抜くと不意を突かれる。

 後ろから来ることはないと思うんだ。同じ手を二回連続で使うほどぬるくないはず。前もない。隠れていて脅かしてくる場合もなくはないが、見破った事が何度かあるので確率は低い。

 

 だとすると……

 

「来ないのかな、帰ろう」と、神田明神を出ようとしたところで奇襲をかけてくるんじゃないかなあ。

 それ以前に、これほど本気になって深読みすることなかったわ。もう不意突かれてもいいや。

 

「お待たせ!」

 

 普通に正面から出てきたし。無駄な体力を使ってしまったぜ。まあいい、早速本題に入る。

 

「急に呼び出して悪いね希。用件は他でもない」

「うん」

「この前はごめん!!」

「ええっ?」

 

 これが俺の用件。そんな事だけのために呼んだのかと思われるかもしれないが、大事な事だ。親しき仲にも礼儀あり。

 

「仕事のためとはいえ、希の忠告を無視して、しかも変な騙し方して逃げただろ?ちゃんと謝りたかったんだ」

「あー、先週の。別にええよ、なーんも気にしとらへんから」

 

 厚意を仇で返したのに寛大すぎる。希、俺が悪かった。二度とあんな事はしないよ。

 

「本当にいいのか……?」

「そうやね、今から焼肉奢ってくれたら嬉しいなっ♪」

「……マジ?」

 

 根にもっていらっしゃったようです。

 

 

 

 

▲▽▲▽

 

 

 

 

「美味しかった~。計くん、ごちそうさま!」

「また機会があれば行こっか。今度はワリカンだがな……財布がヤバイ」

 

 希はとても満足げだった。連れていってなによりだ。彼女と出掛けるのは長い付き合いで今日が初めてだった。今まで神社でしか会っていなかった方が変な話だけども。

 

 あれ、絢瀬さんとの買い物が俺の人生最初で最後の女の子とのお出掛けになると思っていたが……地味に今日が人生二度目のお出掛けになっているじゃないか!?

 

 

「うわー、人生わからないもんだな」

「おっ、なにやら意味深やんな~?」

「こっちの話さ」

 

 からかわれるのはごめんだから、はぐらかしておく。あざとく笑う希は此方の魂胆を見透かしていそうで、色んな意味でコワイ。

 

「へんなの……そや、ところで計くんはバレンタインチョコも貰えた?」

「まだ。明後日時間が空いたら報告しに行くけど、例年通りの結果になるだろうよー。じゃ、またな。気を付けて帰れよ」

「ほなー」

 

 バレンタインに関してはズタボロだ。どうせ毎年0だから期待はしていない! ……していない。

 

 気を取り直して、スーパーでチョコ作りの材料と器具を揃えなくては。園田さんにこちらからチョコを渡そうなどずいぶん身も蓋もない、自分にしては大胆なポッと出の計画を立ててしまったと思う。度胸といい、それ以前に明後日会えるかどうかといい、問題点は多々あるがやるだけやってみる。

 

 行事というものは、テンションをいつもと違う方向へ持っていくんだなと痛感した。

 

 

 

 スーパーに赴いた俺は、材料を模索を開始した。閉店間近なだけはあり、お客は殆ど居ない。器具はもうカゴに入れたから、残すところは材料だけだ。牛乳・卵・バターをはじめ、ショコラミックス、トッピングと集める物が多い。女子凄いな。たくさんの材料を使いこなしてチョコに限らずお菓子を作ってしまうのだから。

 

 お菓子作り経験ゼロの俺が成功する保証はない。よって、なるべく簡単な手作りで着実に成功を収めたい。

 ちゃっちいチョコでも思いを込めて作れば、きっと伝わる。信じていい聞かせて次の求める材料のあるコーナーへ足を運んだ。

 

 お、ここだここ。目的の材料が置いてあるコーナー。トッピング素材を調達するぜ。

 

 俺がそのゾーンへ曲がると、そこには人影があった。それはなんと、明後日俺がチョコを渡そうと考えている相手――園田さんだった。

 

 

 ……彼女のカゴには、チョコを作る材料。

 

 

 

 俺は刹那に悟った。チョコを渡したい相手が園田さんにはいるのだと。

 

 相手が彼女にとって大好きな人であり、只の知り合いだとかそんな間柄ではないことも。

 

 具体的根拠はないがわかる。

 

 

 

 なぜなら――――園田さん(貴女)は真剣に悩みながらも、楽しそうな表情(かお)をしていたから。

 

 

 だからといって俺はここでドラマのワンシーンのように自分の買い物カゴをドサッと落とすわけでも、声を掛けるわけでもなかった。

 

 ゆっくりと、その場を去った。

 

 微笑ましい空気に水は差したかない。あの人を見た時、会った時の挙動不審とは一線を画する程、今の俺は冷静であった。

 

 

 チョコは渡す。逃げないと決めた以上、しっかりやり遂げる。何も難しくはないんだ。動くかもしれなかった(・・・・・・・・・・)恋が、やはり動かない、変わらないと確定しただけだ。

 叶わない恋と、確定しただけだ。

 

 あの人には好きな人がいるに違いない。しかしながら、叶わなくてもいい。あの人が幸せならそれでいいんだ。嘆くつもりは毛頭ない。

 ただ遠くから見ていれるだけで幸せな、俺のあの人に対する恋のスタイルを改めて思い出せば良いだけのこと。

 

 泣けてきたりするのかと思えば案外違い、現実を受け入れられた。それよりも全力でチョコを作る! という気持ちの方が大きかったからかもしれない。

 

 バレンタインが終わったら、スッパリと諦めよう。最後の想いを込めて、貴女にチョコを渡します。

 

 

戸宮計()は、園田海未(貴女)が好きです

 

 

 

 

「――できた」

 

 翌日の土曜、半日かけてチョコを作った。頑張ったら一応形になってくれた、ハート型のシンプルで大きめのチョコ。美味しく食べていただけたら幸ですな。

 

 明日はいよいよ決戦の、決戦なんておおげさか。待ちに待ったバレンタイン! 忙しくなるだろうから、早めに寝ようかな。

 

 電気を消して、おやすみなさい。




次回でバレンタイン編終了の予定です。
今度は投稿までに時間がかかると思われるので、申し訳ありませんが気長にお待ちいただけたらなあと。
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