ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

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廊下で人とすれ違う瞬間、相手が通りやすくなるようにふちに避けようとした時、相手側が自分と同じ方向に避けてくれようとして、互いにたじろいだ…なーんて経験はありませんか?(知らんがな)

ではでは、はじまりはじまり~。


誰と行く?

 俺は自室にて悩んでいた。カーペットに置いた、月曜、帰宅する前に同期に押し付けられ……オホン。貰ったチケット、俺はコレとにらめっこ状態にあった。

 

 結論から言うと、使い道がなくて困る! チケットの詳細を読んだところ今週末までしか使えないらしく、先延ばしに考える事もままならない。

 本日は早くも木曜で、とどのつまり決断する時間はあまりないのだ。

 

 男友達や男同期を誘う? ……男二人っきりで遊園地へ行くのか?楽しいといえば楽しいだろうけど気が乗らない。

 

 ぼっちで……それは寂しすぎる。

 

 

 気兼ねなく、楽しく出掛けられそうな相手――

 

 

 希かな。スマホを取り出して希をコール。呼び出し音を聞きながら、彼女が出るのを待った。

 

『もしもし。計くんどうしたん?』

『やあ希。同期から遊園地のチケット貰ったんだけど相手が居なくてさ。今週の日曜、一緒に行かない?』

『ウチと……?』

 

 希の声のトーンが急に高くなった。なんでかはわからないけど。

 

『んー、行きたいのはやまやまなんやけど……ごめん!ちょうど日曜は空いてないわ…』

 

 彼女は申し訳なさそうに答えた。残念ながら、希には用事があったようだ。

 

『わかった。他の友達をあたってみるよ』

『男二人組で行くん?』

『男と二人で遊園地はな……そうではないよ』

『となると相手は女の子やんな。ちゃんとエスコートしてあげなきゃあかんよ?』

『お前は母親か! ま、ご忠告ありがとう』

『楽しいお出掛けになるとええな~』

 

 その後少々希と雑談して、通話を終えた。ダメでしたか。残るあては……絢瀬さんぐらいか。彼女もダメだったら諦めてぼっちで行こうかな。

 とはいえ、絢瀬さんへの連絡手段はない。明日会社で訊いてみるか。

 

 

 

 

 

▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 次の日、仕事が終わって絢瀬さんに話を持ちかけてみたのだが……

 

「絢瀬さん。遊園地のチケット貰ったんだけど、日曜日一緒にどうかな?」

「ごめんなさい。日曜日は空いていないの」

「戸宮の奴フラれてやんのー!!」

「やかましい!」

 

 断られた直後、同僚の煽りをくらった。茶化しだとわかっていても、案外こういうのはムキになってしまうものだ。

 

「おーい戸宮! 私日曜暇だから付き合ってもいいけど」

 

 そんな中、ワイルドな色気がチャームポイントの、だけどオヤジくさい所がたまにキズな女部長が、お出掛けに賛同してくださった。やったねこれでぼっち遊園地回避!

 

「本当ですか?!いいですね行きましょu」

「女の子となら誰でも良いんだ……?」

 

 絢瀬さんの冷たいオーラを察知して固まった。

ちなみに同僚共はゲラゲラ笑っている。てめえら……!

 

「ハハ! あんな怖い奥さんがいちゃあ後輩もくえないね。やっぱ白紙って事で」

「奥さんて何すか!待ってください!!

あっ……ああ!部長ォォォォォ!!!!!」

 

「ううう……どうしてこうなるんだぁ」

「さあ、どうしてかしらね?」

「アヤセサンコワイデス」

 

 

 

 

 

 

 って事で、絢瀬さんもダメでしたと。まあ、ね? 一人の遊園地も赴きがあるでしょう!

 

「フフ……どこに赴きがあるんだろうねぇ」

 

 夜のとばりが落ちた駅のホームに、虚しく、男の独り言が溶け込んだ。

 

 ありふれた悲しみの果てにぼんやり電車を待っている折、ホームからちらりと見える、マンションの屋上の端に留まっているカラスが目に入った。

 じっと観察していると、なんとカラスはホーム内まで飛んで入り込んで来た。不快そうな視線を向けるサラリーマンや好奇の目でそれを見る幼稚園児など、辺りに居た者の反応はそれぞれ違いがあったが、カラスはまるで意に返さない。

 

 俺はというと人数こそ少ないものの、人がいくらか居る中へ怖じ気づかず突如ここに降りて来て、しかも全く動じる様子のないコイツの図太い神経に面食らっていた。

 

 カラスは暇そうにチョロチョロ歩き回っている。人慣れしているな?なんとなく俺はコイツに興味を持った。

 応答してくれるはずもないのに、人に聞こえない程度の声でぼそりと話し掛けてみた。

 

「暇そうだねお前」

「グァ」

 

 当然の如くスルーされると想定していただけに、これまた驚かされた。コイツ、こちらを見て鳴いた。奇跡的にも意志疎通に成功しているっぽい……?

 

 調子に乗って、思わず俺は問いた。

 

「暇ならさ。一緒に遊園地行かないか?」

「グァァ……」

 

 カラスは俺を憐れむようにもう一声だけ鳴いて、何処かへ飛び去っていった。腹立たしさを覚えつつも、憎めないヤツだと感じた。金輪際あのカラスと逢うことはないと思うと、こんな出会いも一期一会と言えるのだろうか?

 

 カラスに対する物思いにふけっていたら、遊園地に誰と行こうが、もう何でもいいと思えてきた。誘うのも面倒だ、ぼっちで行くかなー。

 

「こんばんは。日増しに春が近付きつつありますが、まだまだ夜は冷えますね」

「こんばんは園田さん。そうですね、未だに手袋が手放せません……うおぁっ?! いつの間に!?」

「たった今ホームに降りてきたのですが……」

 

 後ろから園田さんに声を掛けられて驚いたというのもある。だが本質はその部分ではなく。

 

「カッ、カラス! カラスとの会話は……聞いてませんよね?」

「カラス? いったい何の事ですか?」

「いいえ、他愛もない事です」

 

 胸を撫で下ろした。聞かれていただなんて事態だったらと想像するだけで死ぬほど恥ずかしい。

 

 また、俺がわりと自然に園田さんと話せているのは、度重なる邂逅と、この間の通勤。なおかつそれ以降も朝に顔を合わせたので、普通に挨拶したり会話したりする上では慣れてきたためである。

 

 その結果!顔を合わせればお互いに挨拶するぐらいの仲になったのだー! 1ヵ月前の俺では考えられなかった。一目惚れした人を見ているだけじゃなくて挨拶もできる、こんなに幸せなことはないね。

 

 

「おや、手に持っているそれは?」

 

 園田さんが、カラスに提供しようと持ちっぱなしだったチケットに気が付いた。

 

「遊園地のチケットですね。誰も一緒に行く相手が居なくて……ハハハ。一人で行くことにしましたよ」

 

 隠す必要もない、俺は彼女に現状を教えた。むしろあなただったからこそ、さらっと言えたのかもしれない。

 

「相手がいない…のですか」

「気にしていない、と言えば嘘になりますけど。それほど凝ることもないかなって。ですから問題ございません!」

 

 園田さんは、黙って俯いてしまった。暗い気持ちにさせてしまったかな?

 

「妙な事を言ってしまってすみません、話を変えましょう」

「私でよければ………」

「はい?」

「私でよければ! あ、貴方にお供します!!」

 

 

 

 

「えっ……? ええええええええ!?」

 

 

 ―――顔を上げ、頬を赤らめた彼女からとんでもない一言が飛び出した。




カーラースー!なぜ鳴くのー?
カラスの登場です。
…こいつが実は重要なヤツでしてね(大嘘)
いや、コイツの出番は今回きりです(笑)

では、次回までさらばでござる!
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