ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

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当初は短編のつもりでしたが続きを思い付いたので、連載してみることにしました。
というわけで改めて「ただ、遠くから…」を書いていきます。

▼ まだまだ つづくよ!


突然のハプニング

 電車に乗ったはいいものの、未だ緊張から解放されない。なぜなら、今日はあの人が同じ車両にいるからだ。たいていは乗った時違う車両であることがほとんどなのだが、たまにこういう時もあるんだよなぁ……。

 

 おかげさまで顔はずっと真っ赤。それなりに距離はあるが、あの人は自分から見て向かい合う形で立っている。基本的に自分はよほど疲れていない限り席には座らないスタイルなので、自分も立っている。万が一目が合ったらとてつもなく動揺すること間違いなしなので、スマートフォンを取り出していじりつつ時間を稼ぐことにしよう。

 

 

 乗った駅から目的地まで4駅ある。今は……1駅目にさえ着いていない。うわぁ、このバクバク状態にあと4駅分も耐えなきゃいけないのか。心臓に悪いですぜ、このままだと倒れるんじゃないのか? ってくらいにドキドキしている。勘弁してくれよ……でも、あの人を今日も見れて幸せ。美しすぎる。まさに女神!こっち見てくれー! おっと、見られたら困るんだった。

 

 

 パチッ

 

 

 何かが落ちた音がした。下を見ると、そこにはストラップ。ははは……びっくりした。誰が落としたかは知らないが拾いますかね。人助けは嫌いじゃない。ストラップを拾って、体勢を元に戻す――

 

 

 と、目の前にはあの人が居た。

 

 

「ぅえ?」

 

 変な声が出てしまった。まさか持ち主って。

 

「ありがとうございます!そのストラップは私ので……」

「……ぅ」

 

 こんな時にうまく声が出ない。あの人は不思議そうに此方を見ている。ただでさえ赤い顔が、もっと赤くなる。そんな見つめないでくだされ、倒れてしまいます!! しかし、手にストラップをのっけたまま固まっているわけにはいかない。

 

「……あっ、は、はいっ。どうぞ」

 

 なんとか口が動いてくれた、あとはさっさと渡してとりあえず切り抜ける……できるだけ早くな!チキンの俺にはこの状況はきつすぎる。俺は彼女へ手を伸ばした。

 

 ぎこちなくも手を動かして、ストラップをあの人に渡す。やった! 渡せt

 

 

「うおっ……」

「きゃっ!」

 

 これは……電車が揺れた?

 

 状況を頭で理解しても、時すでに遅し。俺はバランスを崩して、あろうことかあの人の方へ倒れこんでしまった。だが片足が体全体が倒れるのを察したのか踏ん張ってくれて、あの人を押し倒すという最低最悪の事態は回避。反射に感謝である。

 

 バランスを崩すとは! 危なかった、ってうええええ手握っちゃってる!? 柔らかくてあったかい……。いや違う違う、そんな場合ではない。しかも顔近っ!!?

 

 彼女の澄んだ瞳は慌てた自分を映している。待って、最早思考が追い付かない。いつの間にか呼吸は荒くなり、人生最速であろう速さで鼓動が刻まれていた。

 

 沈黙が生まれ、周りの視線が集まる。あの人は唖然とした顔をしていて、やがて何が起こったか認識すると――顔がみるみる赤くなっていった。

 

 もしかして空気的に自分がわざとやったみたいになってる!? マズイぞどうしよう!!

 

 

 とその時、蒸気が吹き出し、ドアが開く音がした。

 

 

『駆け込み乗車は危険ですのでお止めください』

 

  1つめの駅に着いたのだ。幸いにもそのことが混乱した頭を動かして、平静を取り戻すに至った。

 

「ごっ、ごめんなさい!!!」

 

 瞬時にあの人から離れて深々と頭を下げ、電車を降りた。本来ならまだ乗ってないといけないのだが、今はこうするしかできなかった。あの人を戸惑わせてしまったことだろう……自分が情けないよ全く。

 

 ため息まじりに時計を見た。よかった、次に来る電車に乗れば会社にも間に合いそう。

 

 手にまだ少し、あの人の温もりが残っていた。事故とはいえあんなに接近するなんてな。思い出すと少しニヤけてしまう。

 

「そういうこともあるよな……へへ」

 

 嬉しさゆえに独り言。騒動で喉が渇いたな、自販機へ飲み物を買いに行こうか――あれ?

 

 何か、握っている。ハプニングに気をとられててまったく気付かなかった。なんだろうこれ。俺は握り込んだ掌を開いた、するとそこには。

 

 

さ っ き の ス ト ラ ッ プ

 

 

 ちょっ、どういうこっちゃ? まさか。

 

 まさか、焦っていたあまり手を離したときにせっかく渡せたはずの(・・)ストラップをそのまま引っ張ってきちゃったとでも?

 

「うわああああ!!」

 

 頭を抱え込んだ。ストラップを持ってきてしまったということはすなわち、面と向かって彼女に会って返さなければならないことを意味する。でなければ泥棒でしかない。どう返す? 思い付かないぞ。もういいやまずは仕事行こう。切り替え大事。

 

 

 ううう……頭からあのハプニングが離れない。ストラップという名の絶望的問題の打開策も見つからないし。はぁ、こんなので仕事大丈夫かな。

 

 




ただ、遠くからという小説名のくせに接近しましたねwまだ話が色々頭の中で完成しきっていませんが、まったりやっていこうかと思います。
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