過ごしやすい暖かさカモーン!
入り口を抜けて、俺と園田さんは通路の地面に描かれている誘導矢印に沿って奥へ進んだ。ジェットコースターみたいなスリル満点系やアドベンチャー系の方に人が流れているのか、人だかりはできていない。
「次の方ー」
そうこうするうちに係員が俺達を呼んだ。じわりじわり進行する屋根付きアトラクションカーがこちらに来る。俺は足場に気を付けながら乗って座ると、溶接されている作り物の銃に手をかけた。
試しに、動かしてみる。上下左右挙動の幅は同じ。レーザーが標準の目印となって、それをモンスターに搭載されている的に合わせて撃つ仕組みっぽい。モンスターを撃ったのに応じてポイントが加算され、全5つに分かれるステージに渡りシューティングが行われるそう。
要するに、すべてが終わるまでにどれほどモンスターに命中させられるかで勝負は決まる。
「いってらっしゃいませー」
きちんと整ったことを確認すると、係員の送り出しとともにカーが乗り場を離れていった。
園田さんはというと、さあ来いといわんばかりに威風堂々と銃を構えていた。気迫がすごいな、俺も集中しなくては!!
ほのかな暗がりに、銃の赤い装飾が異彩を放っていた。
いよいよ銃撃の場が露に。作り物だが殺伐とした空間に、動植物が凶暴化したというありがちな雑魚らしい雑魚モンスターが立ち並んでいる。
1体あたりから得られるポイントは少ないが、最もモンスターを撃ちやすく、重要な切り出し地点となる――Frist-stageだ。
難易度の低いここでしこたま稼くぞ……。俺はプッシュ式の銃の引き金を引いた。まったなしの初撃は
スコアカウンター微動だにせず。
外したようだ。悲しいかな、大げさな実況を心の中で展開した分返ってくるこの恥ずかしさよ。
普通にやろう、平常心がいいよねやっぱり。続いて引き金を引く。
二弾目、外れ。三弾目、外れ。
(あっれー??)
四弾目、五弾目……大外れ。
園田さんにシューティングは得意と豪語したけど! さもわかっているかのように分析してたけど!
ぼ、ボロが出たようでございまする。あれは今となっては少しばかり昔の記憶――中学時代遊びで友達とテーマパークに行った時だったか、シューティング系統のアトラクションに乗って、友達に圧勝したことがあった。
前例があった故にいけると思ったんですよ。But,過去の栄光はあの場限りのまぐれの強さに過ぎなかったのだ。SHOOTINGは甘くなかった。
諦めてたまるか。ノリノリで勝負を引き受けてくれた園田さんをガッカリさせたくない! 気を取り直して、次々と撃つ。当たらなくはないが数撃ちゃ当たるといった感じで俺の銃撃はひどい有り様であった。
~☆~☆~☆~
全弾命中。良い感じです! Second-stageが終了して、これからThird-stageに入ります。この調子で気を抜かず、先のFinal-stageにそびえている親玉モンスターを討伐です!
はて、戸宮さんの方はどうでしょう? 何気無く彼のスコアカウンターを見ると。
「2100P……?」
「おおっ!?」
戸宮さんは咄嗟にスコアカウンターを手で覆った。
「まっ、まさか!2100Pなんてそんな――21000Pですよ!園田さんはっと、すごい!23000Pですかっ!ははは!」
「えっと……」
私は彼をどうフォローするか迷った。彼はうまくいかなかったようですから、激励の旨を伝えて……それでは彼の面目が立たない。返答に詰まっていると、彼は覆った手を離した。
「恥ずかしながら散々でしたよ? フフ……ですがね、残る3つのステージで一気に取り返しますから! 覚悟してください、勝負はこれからです!」
「戸宮さん……」
戸宮さんは何食わぬ顔で宣言した。だけど私はどうも彼かいっぱいいっぱいに見えたので、様子を伺ってみることにしました。
「……くそっまたか、もう一発」
Third-stageに入って、その後も彼はほとんど外してしまっていました。
「くっ」
なかなか当たりませんね……。
「あ……」
惜しい!
「……」
大外れ。
「もう一回!」
彼はなお諦めずに一生懸命撃っていました。しかし、そんな姿が私の心に火を付きました。
「戸宮さん!」
「あっ、はい」
「まずは敵の的をよく観察してみてください」
「えっ?」
放っておけません。彼が撃てるように私が導きます!
「それで、こうやって銃を向けて相手に狙いを定めて」
「は、はい」
「焦らずに素早く撃ち抜くのです!」
「わ……わかりました。こうですか?」
「あとは落ち着いて引き金を引けば当たります」
慎重に彼は標的を見据えた。何秒かそれ睨んでいましたが、程なく彼は不安と緊張に打ち勝って一撃を放ちました。
一撃は真っ直ぐに伸びて――見事に標的を捉えました。
「やった当たった!当たりましたよ!!」
「やりましたね!」
すっかりはしゃいでハイタッチを交わす。
気分が乗って、私は自分が撃つのも忘れて彼の銃撃に没頭しました。
「今度はあのモンスターを!」
「お任せあれ! ……あ、外れた」
「油断は禁物です。次はそこを!」
「よ~し……」
「園田さんが教えてくれたおかげで随分撃ち抜けるようになりました! しかもボスまで撃破できちゃいましたね、ありがとうございます!!」
「頑張りが実を結んだんですよ。すぐあんなにたくさん撃てるようにあなたが成長してとても驚かされました」
「えへへ……」
「………さて、戸宮さんが十分に撃てるようになりましたし、準備は整いましたね? 5本勝負で決着を着けましょう!!」
「ご、5本?!」
「カーがもう1周流れてしまうので降りてください!」
「「すみません…」」
係員さんに促され、急いで私達はカーを降りました。並び直そうと出口へ行こうとしたらその係員さんがにこやかに、
「それにしてもアトラクションが終わって向こうから出てきた時はびっくりしましたよ。お二人さんときたら1つの銃を握って寄り添ってるんですもの。ラブラブですね~」
そうだったんですか!?1つの銃を握って寄り添う……? つまり戸宮さんに教え始めた時からずっと!?
「あああ……」
顔の温度が上がっていく。無我夢中だったせいで気付いていませんでした! 知らぬ間にそんな破廉恥な事に……!?
恥ずかしくなって、私は彼の顔を見れなくなったのでした。
~☆~☆~☆~
「本当に良かったんですか?」
念のため園田さんに問う。アトラクションのエキシビジョンマッチをすることはなく、不戦に終わったからだ。
「良かった、とは?」
「SHOOTING EDEN。5本勝負をすると」
「あんな事を言われてはもう入るに入れません…」
園田さんがどう思っていたかはわからないが、行かなかったのは俺と同じ理由だった。係員にああ言われて入る勇気が無くなっていたので助かった。俺にとってラブラブだなんて言葉はとんだ発熱剤である。
ふう……お出掛けはこれで終わりではない。緊張はほぐれてきたけどここからどうする? まだ真っ昼間で……そうだ昼食だ!
「いい時間ですし、あそこのテーブルでお昼にしませんか?」
「お腹が空いてきましたね。そうしましょう」
腹が減っては戦はできぬ。まあ戦どころか至上の奇跡なんだけどねー。
一息つけそうと安堵してテーブルに向かう。が、次の瞬間視界の隅に俺はあるものが目に留まった。留まってしまった。
「えりち、そろそろお昼食べへん?」
「そうね」
希と、絢瀬さん。
二人の予定って遊園地だったのか!! 雰囲気からして二人は友達同士? なんつー偶然だ!? そんなの聞いてないぞっ!
そしてたまたま俺と園田さんが来た遊園地に二人で遊びに来ていた……こういう事ですかい? まるで偶然のバーゲンセールだな。
鉢合わせても皆知り合い。だから別段気兼ねがある訳じゃないが、自分の直感が告げた。
「なんとなく鉢合わせない方がいい」とな!
彼女らの視界に俺が入らぬように、綺麗に体の向きを斜めに転換。ただの直感だからまだわからないけど、回避行動だ。慌てないで直感は間違っちゃいない。
た、頼むぞ……どうかバレないで?
ミッフィーの口が × になっているのが謎過ぎる