ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

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家庭用電灯に灯るおやすみモードの光をじっと見ていると、不思議な気持ちに駆られます。微かに拡がる薄明かりが独特の世界へ私を引き込んで――。

流石に無理があったね☆


フラグを回避したい男

 二人に注意を払う。如何にしてうまくやり過ごそうか。希に関しては俺を見慣れているため、此方が目に入ればすぐに気付いてしまうだろう。

 

 考えに考えていると、遊園地の遥か上の大空を黒羽の鳥が縦断してゆくのが見えた。こんな時に限って不吉だぜ――おっとそれどころじゃない、と我にかえり再び思考する。

 

「顔色がすぐれませんが……」

「お腹が鳴りそうだったので抑えてました♪

ささ、テーブルへ!」

 

 明らかに様子が変わって動揺しだした俺に、園田さんが不安をのぞかせた。俺は心配を掛けまいと笑顔を作る。

 

 幸いにも俺と園田さんペア、希と絢瀬さんペアが今向いている方向はあまりお互いを視認しづらい位置にある。テーブルまで行けば距離も十分に離れてくれる。

大丈夫だ、これは無事に事が過ぎ去るルートに違いない。いわば過ぎ去ルートってか!

 

 直後冷風が吹き荒れた。

 

「園田さん。俺のせいかと」

「何の事ですか?」

「あはは……」

 

 そうだよ。慌てることもなかったじゃないか。ほら、考えてる最中にもうすぐテーブルさ。大丈夫大丈夫。

 

 

「近くにテーブルはないかしら」

「う~ん」

 

「――ゲっ」

 

 思ってもみないありがちな転落劇に体が小さく跳ねる。動揺君めでたく再来。めでたくない。聞こえてきた会話でいくと彼女らは場所を見つけ次第昼食をとる。すなわち非常に高い確率でこのテーブルに来る!!

 

「ハァ……」

 

 これだけはとっておきだったんだがな、こうなれば最終手段(・・・・)を使うしかあるまい。

 

 俺ははじめに元々着用していたニット帽を深く被った。髪型が完全に隠れるように。続いてバッグから……こいつだ!サングラス! しまいに、ネックウォーマー!!

 これらをそっと纏って口元を隠すと。どーだ!!俺だとわかりゃしないだろう? なんとかなると信じたい。

 

 十八番(おはこ)の変装。かつて園田さんに対して失敗したのを機に反省し、伊達眼鏡ではなくサングラスをかけることで分かりにくさアップ! ネックウォーマーを付着し口元を隠して特徴を軽減! ニット帽はこれといって狙ってなかった。今日被ってただけ!

 

 来るなら来たまえ、以前の俺とは違う。パワーアップした変装act.2だ。act.3は無い。今度はきっと見破られないでしょう。

 

「戸宮さん?」

「日差しが眩しくて……おまけに風邪も吹き込んで寒くなってきましたね」

 

 わかっている。隣の人が急いで色々と着用したら驚くのも無理はない。それっぽい言葉を並べて奇行の自然化を図る。強行突破であるが、面倒事にならぬためです。どうかお許しを。

 

 

「向こうにいいテーブルがあるやん!」

 

 希が発見して予想通り二人が向かってきた。だが畏れるなかれ。既にこちとら変装(カモフラージュ)済み。二人組がテーブルで食事を済ませる中でバレないこと、かつ俺達も食事を済ませて別の場所へ移動する。

これで万事解決だ。

 

 

「絵里! 希!」

「海未ちゃん!」

 

 とか思ってたら、近くに来た彼女らに園田さんがびっくりしたしたような、感嘆混じりの声をあげた。

 

 え。彼女は今、希の名前も呼ばなかったか?

 

「前にもばったりと帰り道で会ったわね、海未」

「そうなん?」

「ああ……そんな事もありましたね」

 

「な……!?」

 

 

 俺が間抜けでした。忘れていたんだ。園田さんと絢瀬さんは友人関係にあったことを。

 

()は園田さんと同行している者ですが…皆さんはお友達同士なのですか?」

 

 喋るのはあまりよろしくないが希の件が気になった。声の調子を自分のできる限り微妙に変えて話し掛ける。

 

「はい。高校からの」

 

 返ってきたのは肯定。

 

(つ、つまり……)

 

 

 俺は園田さんと知り合いで希と親友で絢瀬さんと会社での同期。

 

 園田さんは二人が高校からの友達でついでに俺と知り合い。

 

 希も二人が高校からの友達で俺と親友。

 

 絢瀬さんも同様に二人が高校からの友達で俺とは会社の同期。

 

 

(おいおい嘘だろ!??)

 

 

 戦慄した。ここに居る俺含む4人は良くも悪くも少なからず全員が全員にそれぞれ繋りを持っている事になるのだから。そしてその4人が集結している事に。

 

 

 

 

~☆~☆~☆~

 

 

 

 

 立ち話もなんなので、食事を4人で同じテーブルでとろうということになった。

 

「お二人は付き合ってるん?」

「ちっ、ちち違います!」

「彼の言う通りです!違います!」

「ふふ……」

 

 途中、爆弾発言が希から放たれることも。真っ赤になって、首を降る。

 

 やっと会話に慣れてきた。どうやら希・絢瀬さん共に俺を“戸宮”とは別人と思っているようである。成功の兆しあり。

 昼食を食べ終わったら、流れ解散になると思う。正念場だけど食べるだけなら問題はない。

 

ネックウォーマーだけを外して、割り箸を持った。口元が晒されるとリスクが多少なりともあるが髪型と目が隠れているのでそうは危なくない。

 

 普通ならサングラスも外した方が良いのは心得ている。しかし外したら終わるためそうはいかない。第一、誰もサングラスには突っ込まないからそんな必要も現状ない。

 

 

「サングラスを付けていたら食べづらくはありませんか?」

 

 突っ込みが出てしまった。よりよって回避も困難な突っ込みが。厳密に言うと、困難には値しない。大丈夫という旨を伝えればそれまで。

 

 悩まされるのはおおまかな回避自体ではなく、彼女が気を遣ってくれたのをあしらう形にしないようなグッドアンサーを返すことなのだ。

 

 数秒考え、俺は答えた。

 

「どちらかというとニット帽が邪魔ですね」

 

 あえなく頭からニットを取った。平穏から瀬戸際へ。

次に何かあってサングラス(最後の砦)が崩れたらバレてしまう。サングラスのおかけで、「戸宮に似てるな」で済む範囲に留まっている。

 

 希は俺がニット帽を取った際、目を細めた。誰ともわからない(実は俺だが)男が、親友と同一人物なのかもしれない――そんな疑いの目。笑いそうになっているようにも見えなくはない。バレてるのか? 希のことだし下手すればもっと前から見破っているのかも。

 

「あなたって……」

「はい絢瀬(・・)さん。何でしょうか」

 

 

「え?」

 

 質問が来そうだったので、何でしょうかと言っただけなのだが……何かおかしい部分があったのだろうか。

 

 

「あなた、なぜ私の名字を知って……?」

 

 

―――あ。




「回避できないフラグもある」を念頭に仕上げました。
墓穴を掘った彼はどうするんですかね…私もわからな(ry

そうそう。μ’sのファイナルライブに参戦する方、楽しんできてくださいね!
ではでは~。
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