ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

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読み返して気付きましたが、前書きを書かなかったのは前回が初めてだったみたいなんですよ(どうでもいい)

はじまりはじまり~\(^o^)/


なんだかんだでデートは終わっていく

 コーヒーカップ。上流から下流にかけて流れる川の水のように飄々と敷地を廻る――優雅なラプソディ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、思っていた時期が私にもありました。

 

「お好きに回していただいて構いませんよ!」

「えいっ!!」

「おっ?速――え……ちょっ、ちょっと待ってくだ……おあああああっっ!?」

「ふふふっ、気持ちがいいですね♪」

 

 園田さんがハンドルを回して数秒後。世界がめくるめく加速、宵のもとい酔いの明星が輝き出した。つまり回りすぎて吐きそうである。

 

 恐ろしいまでの回転力だ。こんなに廻るものだったのか。そ、そう…コッヒーカップにおいてはこれくらいが普遍なんだ、そうかそうか!そうに違いない!(強引に)納得して俺は身を任せた。

 

「お助けを……ぎにゃあああああ!!」

 

 嬉しげに回す女性、絶え間ない猛烈螺旋に断末魔を叫ぶ男。一種のホラーとすら化していたカップに、同じアトラクションに居合わせ嗜んでいた方々はもちろん通りかかった人々の目をある意味釘付けにさせたのは二人共知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 コッヒーカップで存外フラフラになり、園田さんに少しの間肩を貸してもらって歩いたという情けない逸話は置いておきまして、次に乗ったのはジェットコースター。

 

 肝の座った印象のある彼女であれば難なく楽しみそうだと誘ったのだが…。

 

 

「ぴったり半回転した最も高い地点で何かのはずみでベルトが緩み外れ! 真っ逆さまに空中へ放り出されて上空から地面へ転落……」

「さすがにそこまでの事態にはならないのでは? ベルトが簡単に緩むなら運営できないでしょうし」

 

 アトラクションの入口や後方に並んでいたときから、彼女はそわそわしていた。しかし俺は武者震いだろうかと思い、特に深入りせずにいた。

 

 ところが前方の方まで列が進めば進むほど園田さんが怖がっていると思われる様子が顕著に表れ始めてきて。もしかして怖かったりします? と尋ねると彼女が語りだして止まらなくなり――この手のアトラクションが苦手なのだと発覚したのである。

 

「ダイナミックな路線を車両が勢い良く高速で走るからジェットコースターなのです!油断していたら……」

 

 涙目で力説する園田さん。不謹慎だがそんな彼女もまた、見ていて愛おしく戸宮計はほっこりするばかりでございます。

 

「他のアトラクションに行きますか?」

「それは……」

「この列の方までご搭乗くださ~い」

「はっ!?」

 

 係員の声が掛かる。この列までと係員が誘導したのは俺と園田さんの列までだった。番がジャストで回ってきたか。

 

 園田さんの葛藤が係員の声を聞きつけて止まる。

彼女は青ざめて搭乗口にスタンバイされたジェットコースターを見た。彼女の表情が忙しく切り替わったその様子は、パンパンに膨らんでいた風船が瞬く間にふにゃふにゃの破片に割れるあの過程をなんとなく彷彿とさせた。

 

 

「……もうじき発車ですね」

「万が一園田さんが落ちそうになったら俺が受け止めますので」

 

 この世の終わりみたいな顔でコースターに乗り、発車を覚悟する彼女を慰める。言った後で感じた。行き当たりばったりな上にくさい事を口走ったと。引かれるなこれは。

 

「お願いしますね……?」

 

 痛切にうるうるとした目で俺を見上げて嘆願してきたぞ?よっぽど余裕がないらしい。ふおお、破壊力……破壊力が!!

 

「いってらっしゃ~い♪」

 

 確認が終わり、コースターが動き出した。最初っからハードコースが続く訳ではなく、加速こそするがカーブや走行に突飛した地点はない。

 

 しかしながら宿命は避けられぬ。来てしまったぞ、極端に高いところまで上ってから一気に下る山の形状をしたハードコース、所謂山場!! ジェットコースターを不得手とする者にとって不穏と悪寒を波立てる要素しかない、コースター特有の軋みがカタカタと立ち、天へと上ってゆく。急な角度の坂を漸進的に進み、坂の半分を昇りきって、遂にコースターが頂点へ到達した。

 

 コースターが一時停止。いくらかするうちにMAXスピードで坂半分を下るであろう。

 

 はっ。園田さんはどうなった!?

 

「園田さn」

「コースターは野菜コースターは野菜」

「おやまあ」

 

 

 遊園地を代表するアトラクションの一つ、ジェットコースター。爽快、スリルを両立したこいつは世界的にも大好評で―――

 

 

 

 

「いやぁあああーーー!!!」

 

 

 乗車した人を、絶叫のハイウェイへ招待する。

 

 

 

 

 

 

~※~※~※~

 

 

 

 

 

 

 こんな感じで俺と園田さんは片っ端からアトラクションに乗りまくっていた。いや、正しくは元からそうしていた訳ではない。

 

 実は希たちと別れてからお互いろくに話せずぎこちないまま歩き回っていたのだが、ある時通りかかった所に設置されていたマップを見た際、園内を半ば歩破していた事に気付いたのだ。

 歩くだけで終わってしまいそうだという話になり二人で考えた結果、どんどん乗ろう! という結論に至って、こうなったのである。

 

 それにしても。今朝に落ち合った時、入場したての時、友人や迷子で色々あってから再び散策を開始した時――うぇ、考えてみれば半日中緊張しながら動いていたのか。様々なアトラクションに乗ってる間に固さも取れて、すっかりエキサイトしていたのでもう心配はないが。

 

「いい所にソフトクリームが!園田さん、食べます? 一服も兼ねて」

「思えばずっと歩いていましたね。この辺りでひとまず休憩しましょうか」

「何味がお好みで?」

「抹茶……ですが」

「承知です。買ってくるので少々はぐれない位置にてお待ちを!」

「あっ、待ってください!奢ってもらうだなんて……」

 

 

 この時がいつまでも続いたらいいのに。よくありそうな想いだけども、純粋に、その想いに尽きる。

 

 くどいようだが緊張の嵐、会話もたいしてできない。正直疲労だってする。でも、それ以上にこの人と過ごすひとときがかけがえない。

 

 一目惚れの人だから? 園田さんだから? まあなんにしてもだ。神様、俺は幸せです。

 

 

 

 

 

 平和な日曜午後の遊園地。空模様が、いい味出している。

 

 

 人知れず、俺は薄ら笑んだ。




お話を紡いでいてソフトクリームが食べたくなってきました。太りそうで怖いけれど、デザートは別腹だから仕方ないね。

ではでは~
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