ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

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地球温暖化め……五月中旬だぞ!ちょっとまだ暑くなるのは早いんじゃないの!!?(逆ギレ)

今回で、前からの伏線を回収であります。
ではでは。はじまり、ハジマリ、HAZIMARI……



駅で見かける“あの人”との過去

 落ちた小さなストラップ。忘れもしない、園田さんと関わるきっかけとなったもの。これがなければ俺はきっと、恋焦がれる眼差しを送る毎日を過ごすだけだった。

 

 うさぎをモチーフとした愛嬌あるマスコット。色は褪せ、ボロボロの外見となりつつある。明らかに数年そこらの年季を通り越しており、少なく見積もっても開封して以来十年は経っているであろう。

 

 ……おっとと、ストラップ放置してた。

 

 土埃を払って拾い、園田さんに差し出す。今度は脱兎のごとく逃げたりはしませんのでご安心を。

 

「落ちましたよ。先程俺を呼び止めたのは……?」

 

 元は彼女が大事な話をしようと近付いてきた様子だったので、仕切り直す。あくまでそのように直感しただけなので自信はないが。

 

「……」

 

 

 ところが園田さんはストラップを見つめたまま動かなかった。どうしたのかなと思っていると、彼女はポツリと言葉を紡いだ。

 

 

「覚えてますか?」

 

 

 

 

 “覚えてますか?”

 

 

 意味が理解できず、押し黙る。園田さんの瞳は既にストラップから此方へと向いていた。

 

 何の事だろうか? 彼女がそう言うからには俺が無関係の事だとは解釈し難いが、だったらなんと答えれば。

記憶を掘り起こしまくるも、思い当たる節はない。

 

 答えられそうになく、俺は焦燥する。すると彼女は――突然告げた。

 

 

ストラップ(これ)は、あなたがくれたものなんです」

 

 

 

「俺……?」

 

 

 俺が絞り出した声はひどく小さかった。衝撃の告白に、戸惑いを隠しきれないかったのだ。

 

 

「はい。――あれは小学生にあがって、間もない頃でした」

 

 硬直に蝕まれる最中、懐かしむように園田さんは続けた。

 

 

 

 

 私の家は代々続く日舞の家元で、家系を継ぐために私は稽古に励んでいました。また、道場もあるので武道にも携わっていました。

 

 稽古は当然幼子(おさなご)の時から積んでいたのですが……幼稚園生から小学生になった時、稽古が今までよりずっと厳しくなって。恥ずかしながら、当時の私にとってこの変化はこたえるものがありました。

 

 

 暑い春のある日外へ出た私はとうとう、物陰で泣きそうになってしまいました。

 

 

 

 その時、あなたが現れたのです。半袖半ズボンの服装で右手に天然水の入ったペットボトルを握っていた、まだ私と同じく幼いあなたが。

 

 活発に話し掛けてきたあなたは涙を溜めていた私に気が付くとカプセルを手渡して一言励まして、颯爽と去って行っていきました。

 

 当時は呆気にとられましたが、後々私は何度もあなたに助けられました。辛いことがあってもあなたがくれたストラップを眺めると不思議と心が軽くなったんです。

 

 

 月日は流れて私が会社へ初めて出社する日、今から約1年前のことです。駅で緊張感に苛まれながら電車を待っていると上から誰かが降りてくるのを感じました。

 

 特別なことでもないのに何故かいやに気になって、私は階段を見続けていました。やがて、降りてきた人を目にして愕然としました。

 

 

 ――――あなただったんです。

 

 

 あの時とは違い雰囲気は落ち着き顔付きも大人の男性らしく変わっていて当時の面影は僅かでしたが、私は一目で理解しました。

 

 

 以来私は、ただ遠くからあなたを見ていました。声を掛けれればよかったのですが、男性との関わりに奥手な性格が災いして勇気を出すことができませんでした。

 たまたま起こったひょんな出来事よりあなたと顔を合わることが増えたのに、それでも駄目で。

 

 だからあなたが遊園地へ行こうにも相手が居ないと話してくれた際に、私は決意したのです。

 

 どうしても伝えたかったことをあなたと出掛けられたなら、その日に伝えようと。

 

 

 

あの時(・・・)言えなかった言葉を――――――“ありがとう”、と伝えたかった」

 

 

 

 

 一通り話し終えると園田さんはたおやかに微笑んだ。しかし彼女の瞳には安堵とも悲しみとも取れる、涙が溜まっていた。

 

 

ずっと前から(・・・・・・)あなたの事は知っていたのですが…』

 

 いつか園田さんが言った不可解で意味深な発言。今日遊園地で坊やを泣き止ませるためにストラップをあげた時の違和感。

 

 

 

 すべてが、繋がる。

 

 

 忘れたままで埋没する宿命だった記憶が―――

 

 

 

『おひさまがあっついね!』

 

『……ふぇ?』

 

『きみもしかしてぜんぜんへいき、だった?』

 

『! いえ、あついです!』

 

『なみだ……』

 

『ち、違います!』

 

『うーん。ちょっとまっててね?』

 

 

『はい。これをあげる!』

 

『ストラップ……?』

 

『辛くなったら元気付けてもらってよ! きみには今日からうさぎさん(この子)がついてる!!』

 

『で、でも』

 

『ないている子がいたら助けろって、お父さんがいってたんだ! ロリコンなの? って聞いたらお父さんあわててた! なんでだろうね?』

 

『えっと、えっと……』

 

『ぼくは鳥さんとおいかけっこしてたと中だから、じゃあね!』

 

『ま、まって!!』

 

『んー?』

 

『あなたは……?』

 

『……』

 

 

 

『なのるほどのものじゃないさっ!』

 

『!?』

 

『かっこいいでしょー? マンガでみたキャラクタのまねっこだよ♪ おっとと、鳥さんがあんなにとおくに……こんどこそばいばい!』

 

『ああっ! まって!!』

 

 

 

 ――――雲間を抜けて太陽の閃光(ひかり)がぱあっと地球を覆うみたいにはっきりと、俺の中に甦った。

 

 




暑いからクーラーをつけると楽になる。涼しい。大正義である。救世主クーラーよ、私と共に夏と闘ってはくれまいか?

遅くなりましたが、けりがつきそうです。
園田さんの真意を知った彼は――?
ではでは~


追記: お気に入り、感想、評価等……いつもいつも皆さんありがとうございます!! 長らくお礼申し上げていなかったので、この場でまとめてお礼申し上げさせていただきます。


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