ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

29 / 33
ラブアローシュートで撃ち抜かれたい人生だった。


こんどは少し、近くから…

「やっと、言えました」

 

 園田さんの瞳に留まっていた雫が、頬を伝う。塞き止めていた想いが。ううん、塞き止められてしまっていた(・・・・・・・・・・・・)想いが、指で数えられるほどの少なき雫にこれでもかと強く込められていた。雫を拭い、彼女は崩れてしまった笑みを再び作ろうとする。

 

 

 たまらなく胸が痛い。口がまるで呪術師に呪いをかけられたように動かなくなって、汗が額に生み出された。寒い季節なのにどうしようもなく暑く、喉が乾きゆく。

 

 

 とうの昔に、出会っていたんだ。

 

 園田さんは十数年俺の事を真摯に覚えて忘れずにいてくれた。なのに、俺は簡単に忘れ去ってしまっていた。

 

 自分のこともストラップも覚えていないと知った時、彼女自身はどれほど――――。

 

 観覧車で彼女が顔を歪めたことも合点がいった。俺の発言が、幼き日の出来事やストラップにありのままの感動を向けていた坊やの気持ちをまるごと踏みにじってしまうような内容だったからに違いない。

 

 

 ――もっと早く気付いてあげられたなら。

 

 

「ごめんなさい……」

 

 呪いは解かれ、虚ろに口がそう発した。見ているだけで幸せ、あるいは彼女がよければそれでいい。

 

 

 自己満足だった。彼女の気も知らないで。

 

 

「ごめん……なさい……」

 

 一方的な自分の視点で彼女を見てしまっていた罪悪感が押し寄せる。

 

 

 あぁ、最低だ

 

 

 

「……」

 

 

 園田さんは答えず、おもむろに鞄からあるものを取り出した。

 

 

 開けられていない、古いカプセル。中身はアシカと思わしき動物のストラップ。

 

 

「こ、これは?」

「お礼を言えたときに渡そうと思っていたストラップです。あなたが辛くなったときに少しでも支えとなってくれるように――」

 

 

「……っ!」

 

 

 

 

 

 抑えきれなくなって、俺は泣いた。

 

 

 止めどなく涙が落ちてきて。

 

 

 園田さんも、泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、俺と園田さんは出会いの場所へ赴いた。

 

 多くは語らない。二人であの日を一度、振り返りに来たんだ。

 

 

「園田さん」

「……はい」

 

 

 俺は、俺なりに片をつける。

 

 

 

 

 

「俺と―――」

 

 

 

 

 

 

♯~♯~♯

 

 

 

 

 甲高く目覚ましが眠りから起床へと俺を強制連行する。

 

「あと3分ぐらい、主人を寝かせてあげてもいいんじゃないのかな?」

 

 本音を溢してみる。止まってくれるかもしれない期待を抱いて。

 

『ジリリリリ!!』

 

 はいはい、起きますって。

 

 

 

 

「これと、これでお願いします!」

「お会計538円でございまーす」

 

 駅へ行く前に、相も変わらずコンビニへ。デザートと水。相棒ら(昼食)は必須。さあ、駅へいざ行かん。

 

 

 

 

 

 ……今日は買いすぎたかな。南無三。

 

 

 

 

 

 

 駅の入り口、改札と抜けて階段を駆け降りる。すれ違ったり、共に階段を降りたりたくさんの人と道を交えるも、うち6割の人は気怠そうであった。流石月曜の駅だ。君は人々を憂鬱にするエキスパートだな、かえって賞賛に値するわ。

 

 駅とエキ(・・)スパートか……自重。こういう類いのことを考えるだけで周りが低温に包まれることを俺は学習済みである。

 

 

 ホームに着くと、俺は買っておいた水をいつでも飲めるようにキャップの固さをプシュッと取ってから、人間観察を始めた。

 

 

 む、あれは一月下旬の時に発見したスタイルのいい美人ではないか。そこのおっさんは結構です。 ……前より美人さんの胸が成長してないか?

 

 棒立ちがしんどかったようで美人さんは立ち位置を動いた。今ので胸が揺れ……目の保養だぁぁ。

 

 気分は最高潮。残業が来てもこれなら問答無用に闘える……!

 

 

 

 ――これが一社会人、俺の何気無い日常。

 

 

「おはようございます」

「!? えーと、おはようございます?」

 

 声がしてぎょっとして振り返ると、そこには。

 

「計!」

「な、なに……? 海未ちゃん」

「寝癖が、ついていますよ」

「びっくりした……てっきり美人さんの件かと」

「美人さんとは?」

 

 

 

 そうそう、変わったことがあってね。

 

 

 

 少し……近くなったみたいだ。

 

 

 

 

 ホームへ時間通りに電車が入ってきた。俺と貴女は今日も電車に乗って、会社へ向かう。

 

 




☆過去を通して本当の意味で近付いた二人。そして彼らのこれからは――?

ご愛読ありがとうございました!
AQUA BLUEの次回作にご期待ください!!





いやね、なんだか最終回っぽい形に仕上がってしまいましたので。そして表現が抽象的なものとなってしまい、お詫び申し上げます。完全に作者の文章力不足です。


さて。戸宮が海未ちゃんに何を言ったのか、ここは皆さんのお好きなように解釈してみてください。
解釈次第で、最後の日常パートの見え方が違ってくるかと思われます。

え? 絢瀬さんや希とはどうなるか?
恋の最終的な行方?
そうですね、皆さんのご想像におまか(ry



とりあえずここらでひとたび完結!という事にします。
……またひょっこり続きを綴って現れたら、その時はよろしくお願いします(何様や)

ではでは! 「ただ、遠くから…」を一度でも読んでくださった方から最後まで読んでくださった方までの全ての読者様に感謝の意を表明し、後書きとさせていただきます。


ありがとうございました!!!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。