雪が降ってsnow halationでしたね。
もし雪が降っていない地域の方も、気分がsnow halationではなかった方も、冬のこの季節。是非一度snow halationを聞いてみると良いかもしれませんね。
てなわけでどうぞ!(投げやり)
俺は今、全力疾走している。会社に間に合うとはいっても、走らないととても間に合わないほど時間がピンチに陥っていたのだ。
勢いに合わせてがさがさとコンビニの袋が揺れる。マイデザートはおそらく型崩れしていることだろう。こうなったのは他でもなく十数分前のハプニングが原因で。自身の動揺からとんでもないことになってしまったのである。
あのストラップは鞄の中にしまっておいた。いち早くあの人に返す方法を考え、かつ返さなければならないけど……今は会社だぁぁ!!
だいたいあと200mを切ったか。人にぶつからないようできるだけ丁寧にかわして、角を曲がる。自動ドアをくぐって――着いた!
ハァ、と息を弾ませて汗を拭う。規定の時間より8分前か。思いの外余裕があってほっとした。こりゃ勝ったわ。焦りの表情が和らぎ、勝ち誇った笑みに変わる。社内の時計はどうだ~♪
――時計は2分前を指していた。
「えっ」
血の気は引き、再び全神経が遅刻回避のため再稼働を開始した。「腕時計は間違っていた」なんだこの展開。
仕事場は3階、間に合うか間に合わないかの瀬戸際だ。エレベーター、エレベーター!
全部使われてかなり上の階行ってるし。なんでやねん。急がば回れと? こうなったら階段しかあるまい。今の消耗した体力で3階まで行くのはなかなかきびしいが、背に腹は代えられん。我が体力よ犠牲になってもらおうか。
息を大きく吸い込んで階段を駆け上がる。小学生の頃から階段登りは得意だったので自信はある、時間までに辿り着いてみせよう。
人が飛び出して来てぶつかるという悲劇もなく、無事3階に到達した。満身創痍だが、もう知ったことではない。急いできたテンションのままに勢いよくドアを開ける。
「おはようこざいまーす…!!」
続々と挨拶が返ってくる。上司方に特別な表情の変化はなし。この感じ……間に合った!
間に合えばこっちのもの。安堵し、ドヤ顔気味で自分の机に着地した。鞄を置いて再び汗を拭い、朝コンビニで買った水をイッキ飲み。謎の達成感と、何よりもセーフという事実がおおいに俺を祝福した。
「すごい汗ね……急いで来たみたいだけど、何かあったの?」
歓喜に浸っていると、隣から透き通った綺麗な声が。彼女は同期の絢瀬……えっと、絢瀬……………。
「あぁ、おはよう絢瀬さん。遅刻寸前だったから全力疾走してきた所でさ」
下の名前が思い出せなかった。人の名前を覚えるのは苦手でね。てへぺろ。
ポニーテールが特徴的で、シュシュがなお可愛さと美しさを引き立てている。染めてなどいない、純粋な金色の髪に宝石のような輝きのある蒼眼。メリハリのあるスタイル。素晴らしい。これはモテる。
いけない、邪念は捨て去ろう。とにもかくにも女神なわけで。なぜこんな女神が俺の同期なのか。さらに席も隣という……悪意すら感じるぜ。神様のイタズラかな?
今更ながら、俺の名前は
高校の時は名前をとってコミケとか言われてた。
「遅刻寸前? まだ10分前だけど」
「へぇ。そっか10分前かあ……え?」
「バッチリ間に合ってるわよ♪」
絢瀬さんが笑う。なんて可愛いんだ。だが衝撃はそこではない。
「10分前で遅刻寸前なんて、あなたって案外真面目なのね~」
案外ってなんすか心外だい。
「いやいや。1階の時計は2分前だったよ。今って時間ぴったなんじゃ……ないの?」
「あの時計はずれているから、心配しなくても大丈夫よ」
「あははははっ……」
机にへたれこんだ。時計が両方ずれているオチだなんてそんなのありかよ。
「あら?」
「何でもない。何でもないよ絢瀬さん」
~☆~☆~☆~
仕事が終わり、ただいま帰宅中。朝っぱらからハプニングは起こるわ、遅刻するかと思ったら時計のせいで焦り損だったわ、疲労で仕事に集中しにくかったわ、デザートは型崩れするわで踏んだり蹴ったり。
色々と疲れた、今日は早く帰って寝よう。ふらふらとホームに降りていく。しかし、下降はすぐさま止まることとなった。
――――“あの人”が居た。何の偶然かあの人がこの帰りがけの電車で、自分と同じタイミングにこのホームに居たのを見つけたからだ。
思えば帰りに遭遇するのは初めてだ。そのため俺は、こうなることを微塵にも考えていなかった。
あんなに気まずいことがあって、どの面下げてストラップを渡せようか。いや、渡せない。よってある手を打つことにした。策は、ある。あの人がこちらに気付いていないのが功を成したぜ。
鞄から取り出したのは…ジャジャーン! 仕事に使う伊達眼鏡!!
顔を合わせたのは数瞬でしかない。したがって、まだ顔を覚えられていない、はず。そこへ眼鏡をかけることによって別人にへーんしん!って寸法さ。
眼鏡をはめ、無表情で。何も知らない、何の関わりもないそこらへんを歩いているすれ違っていく人のように、歩き出した。
あの人が立っている地点まで来た。ばれないように目線で様子を確認しつつ歩く。彼女はどうやら何も違和感を感じていないらしい、俺が通ったことにすら気付いていない! 段々と近付いて、正面を横切ってついに――あの人を通りすぎた。
おっしゃキタコレ!! 朝のアイツと悟られていないことが確定した! 作戦に狂いはなかった! でも油断するな、最後まで無表情通りすがり作戦だ。
あの人を通りすぎて離れて2m、5m。任務完了。
さしずめ作戦勝ちってところですな。安心して、肩の力を抜く。これで心おきなく帰――――
「あのっ!」
声?確かに声がした。あの人じゃないはずだ、そう信じたい。
「ナンデショウカ」
まるで壊れかけて今にも停止しそうな機械のように、あるいはそれ以上のぎこちなさで振り返る。
「そ、その……」
声の正体は――やはりあの人でした。神よ、俺はもう万事休すなのですか?
エリチカ登場回でした。エリチカもこのお話に関係してくる…のかな? 話の進行がわりとゆっくりですが、温かく見守っていただければ幸いです。
それではまた次回!ハラショー!