……どうも、お久しぶりでございます。クリスマスということで、番外編を書いてみました。さあ多くは語るまい、リア充爆発しろ!
園田さn――――海未ちゃんと遊園地に行った日から約10ヶ月、今日は12月23日。俺は秋葉原の街中をゆるゆる歩き回っていた。理由は会社が祝日休みで暇だったからだ。海未ちゃんとデートできるものならしたいけれども、誘う度胸など持ち合わせていないのでこれでいい。彼女とは仲良くこそなったが……所詮俺は戸宮計、ヘタレの申し子よ。
腕時計は午後3時前後を指している。まさに絶好のおやつタイムだ。そんな中、漠然と俺は思う。1日1回だけ巡ってくる老若男女問わず愉しみ親しまれる時間、おやつタイムが来たのか、と。されど世の中にはおやつタイムを好かない、興味を持たない人だっているので一括りに老若男女と断定するのはいかがなものか。……埒が明かなくなりそうだ。この思考は消灯しておこうGood night。
さて。考えないようにはしていたが、辺りにはイチャイチャとするカップルばかりだ。しかも、どことなく多くの店や建物がクリスマスっぽい装飾を施している。クリスマスイブはまだ明日、ましてや本番のクリスマスは明後日だというのに……浮かれているのが丸わかりだぜ!
それにしても世界がこの上なくひんやりだ。適当に長袖2枚&寝巻として着ていた心地の良い長ズボンで外に駆り出したのが失敗だった。おまけに手袋も忘れた。ああっ……寒いのも含めて苛立ちが湧いてきた、主には逆上だけども。どうにか抑えなくてはと、俺は全力で理性を呼び起こす。
ところがそうはいかなかった。なぜならそれをする前に、俺は目を丸くするぐらいの衝撃を視界に捉えてしまったからだ。
「えっ……!?」
無意識に、口から間抜けな声がもれる。道路を隔てた反対歩道で、サンタガール衣装のボーイッシュな美女がテイッシュを配っているのが見えたのだ。ちなみにスタイルも抜群にいい。
あの人は――――
「タイプだ……っ!!」
そう、個人的に好みなタイプの女性だった。
俺、直ちに脳内会議を開始する。議員は欲望の権化と性欲の勇者と正直の塊、この3名。たぶん既に結果が出てるね、うん。
欲望の権化がゲスな表情で、
『行け、テイッシュをもらいに行け。目の保養だ』
対して性欲の勇者は渋い顔つきで、
『行かずして後々ムラムラするのは良くないぜよ』
正直の塊いわく、
『サンタガールの元へゴーしたいです』
……わかっていたことだがそれでも予想通りすぎた、判定はゴーサイン。もう止まらない、俺はヘタレなりにあのサンタガールへテイッシュを貰いに行くことを決意した!
小さく空気を吸って、吐く。白い息がほんわりと出る。口角がにんまり上がる。心の準備は完了した!
「テイッシュをくださぁぁぁぁぁい!」
俺は興奮のままに叫び、次いで地面を――――
「はい、どうぞ。ティッシュならここに」
――――蹴ろうとしたのだが、やめた。
ポケットティッシュを携えた手がすぐ横へ伸びてきていたのに気が付いたためだ。声には聞き覚えがあった。まさかの予感がよぎる。
「ゑ?」
ギギギ、と動かしにくい蛇口のようにぎこちなくその方へ向いてみれば、なんと。
「奇遇ですね、計」
チェックのマフラーと色んな花の刺繍が丁寧にあしらわれた冬用ワンピースを身に纏った女神……おっと間違えた、海未ちゃんがいらっしゃった。今日も可愛い、お美しい。
「……や、やあ。そうだねぇ」
俺は「平静を装って」挨拶した。無論、海未ちゃんに偶然にも遭遇できるなんてとんでもないラッキーだ。サンタガール以上にハッピネスな出来事が降りかかってきたのは確かなことだ。が、もしも俺がサンタガールのところへ欲望のまま飛んでいこうとしていたのを海未ちゃんが悟っていたなら、かなりマズイ。
遊園地へのお出掛け以降に知ったのだが、彼女はやましい考えや欲望には厳しいのだ。特に俺が他の女性に目を向けたりするとたいてい怖い。ちょっと前に、さてはそれが嫉妬なのかと考えたこともあるが――さすがにそれはないと思い至った。ゆえに、これは海未ちゃんの性格によるものなのだろうと俺は想像している。
「どうかしましたか?」
不思議そうに海未ちゃんが首を傾げた。どうやら我が目論みには気付いていなかったようだ。助かった。
「えっと、あそこのサンタガールがティッシュを無償で配っているぞ……なんとお得なのでしょう!」
「へぇ、サンタガールですか……」
南無三、焦っていたせいで自ら墓穴を掘ってしまった。聞いて海未ちゃん、ジトっと俺を睨む。これではまるで弱った蛙に対する蛇だ。おおっと失敬、海未ちゃんは女神……っと、馬鹿げた思考を巡らせている場合ではなかった。気まずい状況を打開しなければ。
即興で浮かんだ単語を元に、必死で間を繋ぐ。
「う、うんうん! けどね、俺はあんなサンタガールに興味があるわけじゃないんだよ。ただ海未ちゃんがサンタガールの服着たらどうなるのかなって……あっ」
しかし、俺はその途中で慌てて口をつぐんだ。余計にややこしくなるようなことを喋ってしまったのである。そもそもこんなの、普通に変態発言じゃないか。
「え? ……ええっ!?」
海未ちゃんがきょとんとしてフリーズ、やがて顔を真っ赤にして一歩退いた。
「ぅ……これは違っ、あああ……」
弁解しようとするも、混乱で呂律回らず。背筋に悪寒が走る。なんてこった、俺の人生終わったかもしれない。
何ヵ月かぶりに「ただ、遠くから…」をまともに執筆して痛感したのはですねぇ……戸 宮 が 書 き づ ら い
ちょっとこの作品から離れたうちに奴の特徴をすっかり忘れてしまいました。そして海未ちゃんを少しでも再現できたかが前編を終えた今でも何より心配なところです(笑)
とりあえず細かい後書きは後回しだぜ!
後編にTo be continued。