ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

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2月になりましたねー。春がだんだん近くなってきますね。春の足音とかいうが、まだまだこの寒さじゃ聞こえそうにない。

それではどうぞっ!


同期といざお買い物へ 後編

 ショッピングモールに入ると、大きいスペースに渡って広がる食品売り場をはじめとして、化粧品売り場やサーティ○ンアイスクリーム等々――たくさんの店が並んでいた。ここならば何を買うにも万能そうだ、さぞかし庶民らの味方となっていることだろう。6階建てショッピングモールは伊達じゃないね!

 

「今日は何を買いに?」

「目的の物はあるんだけど、せっかく来たから他の店も回って行きたいかな」

「そっかぁ」

「あっ! あそこの店に入ってもいい?」

「おおっ、どうぞ」

 

 早速絢瀬さんが指差したのは、気取りのないピンクの看板が目印になっているアクセサリーショップと思わしき店。こういう所に入ったことが皆無のため、ちょっとばかり新鮮に感じた。

 

「ここはアクセサリーを売ってるの?」

「アクセサリー、というよりそれを作るためのパーツを主に売っている店かしら」

「へぇ~」

 

 中に踏み込んで品物をよくよく観察してみると確かに、アクセサリー自体よりも小さい真珠とか紐、パーツや工具などがこじんまりと置かれている。

 

「結構幅広くパーツがあるんだな……アクセサリーって綺麗だなって思ってたくらいで、どんなパーツだとか気にしたことはなかったよ」

「意外とアクセサリーって奥が深いのよ」

「アクセサリーを作るの、好きなんだね」

「ええ、どちらかというと作ることの方が好きなのかも……でも、着けることも嫌いじゃないわ。その日の気分に合わせて、作ったアクセサリーを着けて過ごすことも多いの」

 

 絢瀬さんは、いきいきと語っていた。クールで賢いイメージが強い彼女にこんなギャップのある趣味があったとは。

 

「今日はアクセサリー着けてるの?」

「首回りに着けているこれね」

「綺麗だ……!」

 

 そのネックレスは派手すぎず、かつおしとやかすぎないシンプルなネックレス。だが、どこか惹き付けられる。

 

「えっ?」

「ああ、ごめんごめん。ネックレスが綺麗でつい」

「そ、そう……」

「どしたの?」

「いいえ、何でもないわ。そろそろ行きましょうか」

「パーツは買わなくて良かったの?」

「今回は保留ね」

 絢瀬さんがそう言うので、俺達はパーツショップをあとにした。途中で彼女が動揺したような……まぁいいか。それじゃあ、とりあえず!

 

 

「買いたい物があるんだけど、いいかな?」

 

 絢瀬さんはこれといって次に入りたい店が決まっていないようなので、話を持ちかける。俺にも買いたいブツがあるのだ、それはとてつもなく重要なモノで。

 

「もちろん。何が欲しいの?」

「目覚まし時計を!!!」

「時計売り場なら4階ね」

 

 目覚まし時計である。こいつは俺の出勤を支える生命線といっても過言ではない。ショボいって? 異論は認めない。

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 

 戸宮君は店に入るなり、真剣に時計を厳選し始めた。

 

 彼曰く「夜中に目覚まし時計が壊れて、今日の朝は起きれなかった」って。同じ立場だったら私も時計に対して慎重になっちゃうのかな? ふふっ。

 

「イキのいい時計がいっぱいだ!!」

「どんな目覚まし時計をお望み?」

「とーぜん壊れにくいやつ。時計のビジュアルはこの際いいんだ……店員さーん!おすすめの“目覚まし時計”ありますか!」

 

 戸宮君は店員さんの元へ走っていった。よっぽどトラウマみたい。ひょっとしたら、他にもトラブルがあったりして。 ……彼ならあり得そうね。

 

 

『綺麗だ……!』

 

 はしゃいでいる彼にふと、私はパーツショップでの事を思い出した。実際はネックレスの事を言っていたのだけど――真っ直ぐな瞳で、彼が突然“綺麗”だなんて言ってきたからびっくりしちゃった。

 

 同時期に会社に入って、席でも偶然隣同士になり、自然と話すようになった1人の“友達”。彼に出会ってもう1年、付き合いもそれなりに長いし、友達だから一緒に居て楽しいと思うのも当然といえば当然かもしれない。

 

 それでも、最近違和感を感じる。

 

 

 最初はμ’sのメンバーや亜里沙を誘って行くつもりだったけれど皆空いていなくて、戸宮君を誘った。思えば私はどうして、彼を誘ったのだろう。

 そんなの、彼と行きたかったからに決まって……

 

「お待たせ絢瀬さん。時計買ってきたよ!」

 

 やだ、私ったら何を考えてるの!?

 

「じゃん! 二つ買いましたー♪ 備えあれば憂いなし!万が一片っぽが止まっても、予備があれば楽勝だね」

「……」

「なんだよ。しょ、衝動買いじゃないぞ」

「……」

「絢瀬さん?」

 

「へ!?」

「大丈夫? ぼーっとして顔赤いけど熱でもある?」

「ううん! 大丈夫よ。大丈夫だから……」

 

 戸宮君は挙動不審気味の私を見て、首をかしげた。私はそれを隠すように話を逸らす。

 

「そっ、それより時計は?」

「抜 か り な し !」

 

 時計という単語へ敏感に反応して、彼は自慢げにVサイン。その自信満々の笑みに、今はやけに心が揺れてしまう。

 

「じゃあ次!」

「おうっ」

 

 早足になって私は歩き出す。こんなに落ち着かないなんて、本当に風邪でも引いたのかしら?

 

 

 

 

 

 

□■□■

 

 

 

 

 時計を手に入れた。2つもな! 今度は絶対遅刻してたまるかこんにゃろう。

 

 店を出てからは、絢瀬さんと食事含め多種多様の店を回る及びショッピングした。それにしても、心なしか彼女の口数が減ったような。気のせいか?

 

 

「ふぅー……だいぶ回ったな」

「そろそろ帰る?」

「そうしよっか、さすがに疲れた」

「わかったわ」

「時計も買えたし面白いものも見れたし、楽しかったよ」

「今度は壊れないといいけどねー?」

「フフフ。2つもあればもう余裕よ」

 

 しっかし何だこの違和感。なーんか忘れてるような気が…………あ。

 

「絢瀬さん、目的の物って買った?」

「あっ」

「忘れてたみたいだね、一旦引き返そうか」

「私ったら目的の物を買い忘れるなんて……」

 

 違和感の正体はこれだったか。絢瀬さんはポカンとした表情のあとにあたふた、そして最後は気恥ずかしげに俯いた。

 

「ははっ! そーゆうこともあるって!」

 

 面目ない、と絢瀬さん。彼女にも抜けてるとこってあるんだな。寧ろ可愛らしいぞ、ナイスポンコツ。

 

 

 

 

 

「こっ、ここに目的の物が? ふ……」

 

 想定外すぎて笑いが……だって、あの絢瀬さんがだぜ?

 彼女の目的の物は、ショッピングモール1階の食品売り場にあるお菓子コーナーにあった。いやいやお菓子て。

 

「ええ。必要な素材があって」

 

 彼女が手に取ったのはチョコレート。ここでようやく、何故お菓子ゾーンに必要な物があったのか察した。

 

「ははーん……さてはバレンタインチョコを作るつもりなんだね?」

 

 彼女の体がビクンと跳ねる。図星のようだ。

 

「そっかそっか。絢瀬さん頑張って! そして想いを伝えるんだ! 君ならできる!」

 

「も、もう! そんなんじゃないわよ!!」

 

 からかいまくったら、真っ赤になって反論してきた。あらやだ可愛い。

 

 

 あれから調子に乗りすぎて少々怒られたが、無事に買い物は幕を閉じた。自分が乗る駅の改札付近で会ったあたり、絢瀬さんはあの人と同じく自分の近くに住んでいるらしい。

 

 

「じゃあこっちだから」

「私も同じ方向よ」

「なんと! それなら、せっかくだし送ろうか?」

「ではお言葉に甘えて♪」

 

 夕日がちょくちょく眩しい。コンビニや朝以来に通った穂むらを再び過ぎて、道をゆく。穂むらの饅頭はうまい。送ったら家に帰るときに買ってこうかな。腹減ってきた。

 

 なんて思っていたとき、俺は足の前方から誰か歩いてくるのに気付いた。

 道を歩いてくる人はごまんと見かけているので、それほど気にかけることもないのだが、いやに気になった。

 

 駅でもこんなことあったな。言うか早いか、誰が歩いて来るのかわかった。その瞬間、俺は平静を保てなくなって。

 

 

 

 歩いてきて来た人とは――“あの人”。

 

 

 足が止まる。顔がぼっと火をあげるマッチの如く赤くなり、汗が滲んだ。胸が苦しい。

 このままいくとばったり会う、そう考えるだけで緊張と困惑と歓喜――混沌(カオス)の渦へ巻き込まれた。

 

 絢瀬さんも歩いて来る“あの人”を認識したが、彼女が次にとった行動は俺に大きな衝撃を与えた。

 

「海未! ここで会うなんてね。今帰り?」

「こんにちは、絵里。買い物に誘ってくれたというのに、今日は同行できなくて申し訳ありません」

「気にしないで。ちょうど隣にいる、会社の友達の戸宮君が付き合ってくれて――あれ?」

「戸宮君? その方が絵里の会社の友達ですか?」

「そうなんだけどおかしいわ。たった今まで一緒に歩いて来たのに居なくなっちゃった。彼のことだから大丈夫だとは思うけど……」

「何かあったのでしょうか……」

 

 ――どうやら二人は知り合いらしい。俺は気付かれぬうちに近くの陰に隠れ、二人の様子を見守っていた。緊張に耐えきれず逃げたのだ。

 あの人と会っていたら硬直して何もできなくなるだろうし、絢瀬さんの前でそんな醜態を晒してしまうのもどうかと思った。

 

 自分のヘタレっぷりに、激しい怒りを覚える。不甲斐ないのはわかっている。しかしどうしても勇気が出なかった。悔しさに、唇を噛む。

 

「ってまさか絵里! 男性とふ、二人っきりで!? 破廉恥ですっ!!」

「ちょっと海未!?」

 

 どういったことを話しているかここからでは遠くてほぼ聞こえなかったが、あの人が突如叫び、走り去って行くの見えた。

 もうOKかな、絢瀬さんの元へと戻ろう。

 

「絢瀬さん!」

「戸宮君! どこ行ってたの?」

「邪魔にならないように外野に行ってました」

「そうなの? そんな気遣いしなくていいのに」

 

 あの場で居なくなるのは絢瀬さんからすればあまりに不自然な事だろうけど、うまく言いくるめたかな。

 

「それよか友達は?」

「行っちゃった。たぶん色々と勘違いして……」

「そうなんだ。どうする?」

「いいわ、このまま帰りましょう。あの子のことだからすぐに落ち着くと思うし」

「……りょーかい」

 

 あの人が大きく取り乱しただって? 気になるところだが、ひとまず絢瀬さんを送り届けるとしよう。

 

 

 

 

「送ってくれてありがとう」

「いーえどうも。今日はお疲れ様! また来週ね」

「うん、またね」

 

 絢瀬さんに手を振って別れると、俺は足の向きを変えた。穂むらに行くつもりだったけど、予定変更。さっきの出来事で思うところがあったからな。

 

「あの場所に行こう」

 

 俺はぼそっと一人呟き、空を仰いだ。




お出掛け終了!ここ2、3話“あの人”の出番が皆無でしたが久々に登場しましたね。次はどうなるのかお楽しみに!(笑)

それではまた次回。
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