ただ、遠くから…   作:AQUA BLUE

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昨日は節分でしたね。
しかし豆は真姫そこねました。今年が不安。
それではどうぞ!


お見舞い

 まーた月曜だよ、毎週の頭に現れるこいつ。社会人の大半が敵とみなすモチベ低下の塊。火曜から金曜も平日だから、月曜だけ差別化をされるのは月曜が不憫だと思わなくもないが、庇う気はない。

 土日が休日な分、月曜は他の平日と重みが違う。日曜のまったりした一日が恋しいね、けどまあ仕事しないと生きていけないんで、頑張りますかねぇ。

 

 すでに仕事場で仕事を始める準備をしている。ちなみに朝、駅にあの人は居なかった。俺が普段より電車に乗る時間が早かったためか、見かけなかったのだろう。居たら居たで、鉢合わせしそうになった日の一件で心の整理が全然ついてないから、どうすればいいか困っただろうがな。

 

 ……あの人って毎日同じ時間の電車に乗っているのだろうか?もしそうならよほどキッチリとした人なんだな。

 

「でもなんでだろ。それでも一目見たいなぁ……」

 

 あ、本音もれた。

 

「おはようっ戸宮!」

「おはようございます、課長」

 

 すると突然、男が此方へ歩いてきた。この男は今言ったとおり、課長である。どの後輩にも壁なく接し、親しみやすいがしめるところはしめるいい上司だ。

 

 なかなか整った顔立ちに、スーツがよく似合い――いや、男の解説などいらん。強いていうなら独身30歳。

 

「お前失礼なこと考えてない?」

「心を読まないでください。あとですね、そういうのは可愛い女の子がやってのけるからこそ味が出るんですよ」

「言うね~。よぉし俺も言い返すぞ」

「かかってこいっす」

 

 顔を合わせては毒を吐きあうのがお決まりだ。

 

「聞こえてたぞ、さっき。――でもなんでだろ。それでも一目見たいなぁ……。とかなんとか!」

 

 フッ。俺の真似をしてるつもりなんだろうが似てねぇぜ課長よ。

 

「あー、言ってましたね。それが何か?」

「一目見たいって、お前の隣の絢瀬のことだろー!俺はわかってるからなぁ」

「いや違いまs「噂になってるぞ、お前と絢瀬」

 

「え゛っ?」

「仲良く話しててカップル?もしくは夫婦みたいだとか」

「ちょっ。ちょっと待ってください」

 

 なんか恥ずかしくて赤くなってしまった。課長、間違いなくからかってやがる。

 

「どした、何を赤くなっている?まさか本当に」

「違いますって!」

「はは、悪い悪い。からかいすぎたな」

「くそぉ…はい、参りました」

 

 たいてい俺は毒の吐きあいでは課長に勝てるが、思わぬ所を突かれて今日のところは負けた。

 

「それとお前の愛しの絢瀬は今日は休みだとよ」

「(この人は……)そうなんですか。てっきりトイレにでも行ってて居ないと思ってました」

「なんでも高熱らしい。お前も病気には気を付けるこったな」

「お気遣いありがとうございます」

「んじゃな。仕事今日も頑張ろうぜ!」

 

 課長は陽気に振る舞い持ち場へ戻っていった。ふむ、絢瀬さんが高熱か。土曜、一緒に買い物へ行った日に顔が赤い時があって、熱でもあるのかと聞いたが……本当に体調を悪くしつつあったとは。

 買い物の誘い自体は絢瀬さんだったとはいえ、体調が悪くなりつつある中一日中買い物をして回った事は間違いない。送ったときに家の場所はおおかた覚えたし、会社終わったらお見舞いの品でも渡しに行こうか。

 

 

 

 

~☆~☆~

 

 

 

「お~さみぃさみぃ…」

 

 2月上旬のこの季節。寒さはまだまだ超元気。ただいま絢瀬宅へ歩みを進めている。お見舞いの品! は、今日思い立ったためいきなりは用意できなかったので――申し訳程度の品&お見舞いの気持ちを持参してきやした! 品の中身はッ! 疲れたらなにより糖分! 板チョコレート+お水。あちゃー、お水は糖分ではなかったわい。

 

「……着いたか」

 

 外面と心の温度差はシビアである。絢瀬さんの家は自分の家の近所だけのことはありやはり近い。考え事をしてたらすぐに着いた。

 

 人がまわりに居ないので、当たり前なのだが静まりかえっている。しかしこの静まりが俺をじわじわ緊張させてきた。ええい、すぐに終わらせた方が楽だぜ!switch on!

 

 ピンポーン、とインターホンが小さく響いた。躊躇いを捨てて押したことにより、心に弛緩が生まれた感じがする。早く押して良かった。

 

「はーい」

 

 出たのは……絢瀬さんでもその親御さんでもなく。

 

「なんだ天使か」

「天使?」

「何でもありません。絢瀬さんのお宅で間違いありませんか?」

 

 アカン声に出てた。年齢的には大学生くらいか?絢瀬さんと似た蒼眼にメリハリのあるスタイル。美しくもほんのりとあどけなさがある。妹さんかな? ともかく扉の中から天使みたいな子が出てきた。

 

「そうですけど…ああ、もしかしてお姉ちゃんの知り合いの」

「はい、会社で同期の戸宮計といいます。体調不良とお聞きしましたのでお見舞いの品を」

「ありがとうございます♪ 後で渡しておきますね!」

「ところで、お姉さんの様子はどうですか?」

「土曜日からすごい熱で……でも、少しずつ良くなってきていますよ! 水曜日か木曜日くらいにはまた出社できそうって言ってました」

「かなりの重症だったのですね。早くお元気になることを願っております。ありがとうございました、お姉さんによろしくお伝えください。それでは失礼します」

「ありがとうございました! さようなら~」

 

 こうして天使との邂逅を終えた。絢瀬さんが思ってたよりずっと重症だった。土曜の時ちゃんと絢瀬さんの微妙な変化に俺が気を配っていれば……。

 反省しなきゃな。女の子と出掛けることなど俺のような冴えない男にはもう今後無いだろうが、もしも誰かと出掛けることがあったなら、絶対に気を付けよう。

 

 

 さあ、帰るか。そそくさと俺は歩く……お、穂むらじゃん。あの土曜日の帰りに行こうと思ってたけど神田明神に行ったことにより、後々面倒になり行かずじまいだった。今がチャンスだ、寄ってこ。

 

 ガラガラと店の戸を開けると、穂むらの看板娘と絢瀬宅に居た妹さんの天使とは別の天使が何が話していた。

 

「最近海未ちゃんどうしてるかなあ?」

「近頃忙しくて会えてないね。また3人で集まりたいな~。ああっ、穂乃果ちゃん、お客さんだよ!」

「うわあっ、いらっしゃい!」

 

 眼前にまるで弾ける太陽と蕩けるような小鳥がいるかように錯覚してしまったではないか……素晴らしい。1日の間に美女に3人も遭遇してしまった。幸運にもほどがありますよ神様。

 

「穂むらまんじゅう3つください」

「まいどあり~!」

 

 

 

▲▽▲▽

 

 

 

「ありがとうございました!」

「どーもー」

 

 穂むらを出て今度こそ帰る。漠然と穂むらに入ったときの二人の会話を思い出した。会話出てきたうみ……ちゃん? は彼女らの友達のようだがどんな人なんだろう。ま、必要以上に気にすることでもないか。

 

 しっかし寒いなぁ、体がぶるぶる震える。寒波かな、早く布団に入りたいぜよ。

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

 

 

「お姉ちゃーん。会社の戸宮さんって人からお見舞いの品が届いたよ」

「戸宮君から? うー……ありがと亜里沙。そこに置いとて」

「お姉ちゃん大丈夫?」

「まだまだ熱はあるけど、順調に良くなってきているわ。心配かけてごめんね。」

「いいのいいの。早く元気になるといいね!」

「そうね。あと亜里沙、私は大丈夫だから、部屋に戻った方がいいわ。うつるといけないもの」

「わかった。おやすみ、お姉ちゃん」

 

 戸宮君がお見舞いに――治って会社に出たらお礼を言わなくちゃ。

 

 私は体を起こしてお見舞いの袋を手に取った。中身はチョコレートとお水。水って……休みと聞いて急ピッチで準備しようとした彼が頭に浮かぶ。

 

「戸宮君ったら……」

 

 だけど気持ちは伝わったわ。ありがとう、戸宮君。

 

「お姉ちゃーん?」

「うわぁっ!?」

「な、何?亜里沙」

「お薬忘れてて。戸宮さんがどうかしたの?」

「何でもないのよ亜里沙ー♪お薬ありがとね。おやすみなさい!」

 

 不思議そうな顔をしている亜里沙をよそに、私は焦って部屋のドアを閉めたのだった。




思えば恵方真姫も食べなかった。

間違えた恵方巻だ。豆も食べなかった。来年は忘れずに食べたい。

それではまた次回~♪
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