『司令官の想いが一番重要ですから』
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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)
:第13話(改)<時空を越えた縁>
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<<指揮車内:ステルスモード>>
作戦参謀が補足する。
『これからは、一切記録に残さないために”ステルスモード”のみですべての通信を行います。従って、モニター音声もすべて通じなくなります』
『ええ~!それは残念ね~』
イタリア武官が残念そうに言う。
『まあ、仕方あるまい』
ドイツ武官は、割りきりが早いな。
だが彼らも艦娘を担当する武官であり、同志みたいなものだ。せっかくこの場に居るのだから、何とかしてやりたいな。私は作戦参謀に聞いた。
「君のモニター音声を、分配して彼らにも聞かせられないかな?」
一瞬、考えていた彼女は、軽くうなづいて答えた。
「分かりました。貴重な現象ですから、聞けるようにしましょう」
私は直ぐに技師に声をかけたが、彼は既に棚を探っていた。
「はい、コード……ありましたよ」
技師は長いコードと、いろんな接続アダプターを取り出している。
「とりあえず、ヘッドフォンは二つしかないので、一人は簡単なイヤフォンになります」
作戦参謀が自分の身体にコードを接続し、技師がラインをつないでいく。興味深く見ていたイタリアとドイツだったが、期待が大きいイタリアにはヘッドフォンを渡した。ドイツは『これで良い』と言いながらイヤフォンをつけた。ドイツらしいな。
『現地でも、祥高姉さんが全艦娘に、無線を使わないよう指示しています。機密漏洩防止ということもありますが、音声といえども通常回線で漏れると意識が途切れる可能性があるようです』
作戦参謀が英語で説明する。
『なるほどねえ~神秘的ね』
イタリア武官が感心している。ドイツ武官は、メモを取っている。
<<海上:大井親子>>
やがて音声が入ってきた。
『寛代ちゃん、あなたが最後に青葉さんを見た所まで連れて行って』
『こっち……』
『ちょっと待って、寛代ちゃん』
祥高さんは、振り返った雰囲気だ。
『大井さんたちは、どうしますか?もし集中力があるようなら、手伝って頂いても良いですし、難しそうなら、先に埠頭へ戻っても構いません』
『そうですね……この子も居ますし、先に戻ります』
大井が答える。何となく、この大井からは、技術参謀に近い”強さ”を感じてしまう。やはり”母は強し”なのかな。
それを受けて、祥高さんが指示を出している。
『分かりました。夕張さん、お願いします』
『はぁ~、分かりました』
夕張さんも”新生復活”の場面を見たいだろうな。だが彼女は技師でもあるから、いろいろあって、疲れているだろう大井親子の技術的な面でのケアも担当しなければならない。それが役目だから仕方ない。
<<海上:中継禁止>>
『あなたたちも、戻っても良いわよ』
突然祥高さんが、英語で話しかける。ああ、ドイツとイタリアの艦娘がまだ現地に居たな。
そういえば艦娘たちの会話は英語ではないが……仕方ないか。今のこところ、両武官からは、苦情も出ていない……。
『え~っと、出来れば~見学したいです』
ボソッと答えるリベッチオ。なんか変だな。
『そう……』
だが突然、かん高い声が響く。
『コレは何デスか~~~!』
金剛が、何かに気付いたようだ。さすが、目ざとい。
『”同時中継”は、止めてくださいネ~』
無線かマイクを見つけたのだろう。英語で制止する金剛だった。さすがナチュラルな喋りである。
『あぁ~!ああ……』
リベッチオが叫ぶと同時に、こっちのイタリア武官も叫ぶ。
『あぁ~バレちゃったわねぇ~』
『そっちも……』
突然、日向が呟いたかと思ったら『これね!』伊勢が何かを見つけたようだ。
『……』
ドイツ武官も、無言でもう片方のイヤフォンを外している。はは~ん、彼も中継させていたか。なるほど両武官とも、抜け目は無かったか。
「でもね、同盟国って言うこともあるけど、アタシもちょっとは日本語話せるわよ」
いきなりイタリア武官から、変な日本語が飛び出す。ビックリ。なるほど、それで……納得いった。
「同じく」
何と、ドイツ武官もか?さすが過ぎる。
祥高さんは、なおも確認している。
『日向さんと、伊勢さんはどうしますか?』
『出来れば残りたい……』
日向は応えた。
『え~っと……私は日向を支えるから、良いかな?』
これは伊勢だな。どっちがお姉さんなのか、良く分からないな。
『分かりました』
祥高さんは答えた。
<<海上:武人、現地へ>>
夕張さんたちと別れた祥高さんの”サルベージ”部隊は、寛代の案内で現地へと向かう。やがて、ほんの数分で、その地点へ到着したようだ。そのとき現地から驚嘆の声が上がってくる。何事か?
すると通常無線……いや、”ステルスモード”のほうに、意外な艦娘からの無線が入る。
『聞こえるか?祥高殿……いや、美保司令殿の方が良いか?』
私は慌てた。そういえば武蔵様を忘れていたが……てっきり彼女は、そのままブルネイ泊地の埠頭へ向かうのだとばかり思い込んでいた。そうか、武蔵様も特殊な戦艦だから、ステルス無線を持っているんだ。
イタリア武官が黄色い声を上げる。
『キャ~素敵ぃ!誰ぇ~?』
まさか相手が艦娘でなく”美男子”と勘違いしてないか?まぁ、それに近いとも思うが。
『日本帝国海軍の”武蔵”だ。私も実物に接するのは初めてだな』
ドイツ武官も少し興奮しているように見える。大和や武蔵は、そこに存在するだけでも”伝説”みたいなものだからな。
しかし、そもそも彼女は誰の指令で動いてるのか?あ……そうか。出港の理由はどうであれ、今このエリアにいるすべての帝国海軍の艦船は私の指揮下に入るのか……改めて総司令官というのは恐ろしい立場だな。
でも、たとえそうであったとしても、言うべきことはきっちり反論してくるのが艦娘だけどね。
<<海上:伝え聞く”青葉”>>
『司令、聞こえていらっしゃいますか?』
祥高さんが発信する。
私は作戦参謀が差し出したピンマイクを持って返事をした。
「ああ、聞こえている」
『状況はお分かりだと思います。武蔵さんが清霜と共に現地に……』
祥高さんも驚いているようだった。
『美保司令殿か?』
この武蔵様とは今回が二回目だが、やはり不思議な感覚があるな。それは、なぜか相手の武蔵様も同じようだった。
『先ほども言ったが貴殿とも初めてではない感覚があるな。それと、伝え聞く”青葉”か?……なぜだろうか、その艦娘ともなにか、ただならぬ因縁があるような気がしてならない』
”ただならぬ因縁”か、そうだよ。もしこの場に未来のブルネイへ行った艦娘たちが居合わせていたら絶対、苦笑していたことだろう。それは未来へ行ったメンバーだけの公然の秘密だから。
私は確信を持って武蔵様に問いかけた。
「それは何かの縁だと思います。もし武蔵様が差し支えなければ……」
『ああ、当然私はそのつもりで来た。いまは貴殿がこの近海すべての総司令官だろう。遠慮は要らぬ。命令を受けるのは至極、当然のことだ』
さすが武人である。礼と秩序は重んじるタイプだな。これが武蔵様の凄いところだと思わずにはいられない。
青葉さんといえば、未来のブルネイでは、技術参謀や夕張さんと一緒に武蔵様に吊し上げられていた。それがこうして現代に遡って、今度はその武蔵様に助け出されようとしている。まさに時空を越えた因縁だ。
もしこの場に夕張さんが居たら、どんな顔をしていたのだろうか?あの時、現場に居合わせたのは、ここでは寛代と私か。まあ寛代は、大人しいから武蔵様を目の前にしても、ポーカーフェイスのままだろうけど。
『貴殿が祥高殿か。始めてくれ』
武蔵様も準備万端、整ったようだな。
『分かりました』
祥高さんが応える。
<<海上:説明>>
気が付くと、時刻は1600を回っている。暑かった日差しも徐々に傾き始め、空の雲も徐々に黄色く変化している。
無線では海上の祥高さんが説明している。
『これから青葉さんのサルベージ、救出を行います。いまから行うことは一切他言無用です。この場限りの内容ですから外部はもちろん軍部内、美保鎮守府内でも今後も含めて一切話さないようにお願いします』
その場に居る艦娘たちからも、ちょっとざわめきが起こっている。そうだよな、普通に考えても、あり得ない話だ。仮に話したところで、誰も信じられないだろう。
祥高さんは淡々と進める。
『あと絶対に青葉さんが戻ってくる保障はありません。いろいろな条件が必要ですが、まずは地上の私たちが青葉さんが再び戻ってくることを、心から念じてください。その想いが強いほど青葉さんが戻る確率が高まります。あとは青葉さん自身が、どれだけ浮上することを熱望しているかに掛かっています』
ここで、間があった。
『司令、聞こえていますか?』
いきなり指されて、ちょっと驚いたが直ぐ返答した。
「ああ、聞いている」
『地上側では部隊の中心である司令官の想いが一番重要ですから、開始の合図と同時にぜひ、青葉さんへの意識の集中をお願いします……大井さんを復活させたのは司令官です。今回もぜひ、お願いします』
なるほど、そういうことか。私は返事をした。
「わかった。精一杯やるよ」
『よろしく、お願いします』
何となく無線機の向こうで祥高さんが微笑んだような気がした。
イタリア武官は、既に感極まっている様子で、感動した表情のまま無言だ。ドイツ武官も黙って、既にメモを取ることすら忘れている。
『一つだけ質問しても良いだろうか?』
武蔵様だ。
『どうぞ』
祥高さんは答える。
『貴殿はなぜ、この作業を担当出来るのだ?』
誰もがそう思うだろうな。
『私自身が一度沈んでから、戻ってきましたので』
祥高さんは静かに答えた。
『なるほど……分かるぞ』
武蔵様は答えた。私には、正直分からん……そこは艦娘にしか理解できない世界があるのだろう。
<<海上:開始>>
『特に決まった形はありません。私が合図したら、各自で青葉さんのことを念じてください。命令とか懇願ではなくこれからもずっと青葉さんと一緒に居たい、そういう自然な気持ちで本人が目の前に居るようにお願いします』
誰も何も言わない。静かな時が流れるようだ。
『時間も決まっていませんが……そうですね。20分くらい念じて、動きが無ければそのときの状況で私が判断します……司令、宜しいでしょうか?』
良いも悪いも、私には判断できないからな~。
「分かった、任せる」
『美保の司令……』
いきなり武蔵様だ。
「は、はい?」
ちょっと慌てた。
『もっと艦娘たちの良い面に気づけ。そうすると艦娘たちも変わるだろう』
「……はぁ」
まるで作戦参謀のような物言いだったな。それを聞きながら、思わず作戦参謀を見た。彼女も微笑んでいた。良い面か……確かに、良い娘たちだ。そこに異論は無いが。
『可能な方は、手をつないで……この轟沈した辺りを中心に、円陣を組んでください。大破している方は、出来る形で良いです。はい、そうです。ありがとうございます……はい。では始めます』
『私たちも祈りましょう』
『そうだな』
こちらの車内でも、イタリアとドイツの武官が自主的に参加してくれるようだ。さすがキリスト教の背景がある欧州国家だなと思わずにはいられなかった。
「では、私も」
作戦参謀も手を合わせて集中するような姿勢を見せる……彼女はまさに、祥高さん復活の当事者の一人だ。ある意味、心強い援軍の一人だ。
『おい、手はつながないぞ』
急にドイツ武官が言った。あらら……。
『あら~残念』
その行動が無ければ、尊敬したけどね、イタリア武官様。
『では、今から始めます。意識の集中をお願いします』
現場の海上と、そしてこちらの車内でも、”祈り”が始まった。不思議な感覚だな、これは。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。