『青葉さん、君の事はずっと忘れないよ』
------------------------------------------
「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)
:第14話(改)<輝く想い再び>
------------------------------------------
<<提督:青葉の思い出>>
『皆さん、良いですか?』
祥高さんだ。
『生命だけを重視するのでは敵と同じです。この作業には”愛”が必要です。それは皆さん一人ひとりと青葉さん、この相対する二人が、お互いに想いを通わせて初めて成就します。そこからもう一度、新しい流れ……血統が流れ始める。私はそうやって復活しました。でも皆さん、決して頭で複雑に考えようとしないで下さいね。皆さん一人ひとりの、心からの気持ち、純粋な想いが大切ですから』
お前、本当に艦娘なの?秘書艦である祥高さんが時おり見せる深さには、ただ驚かされるばかりだ。
青葉さんか……考えてみたら、私が美保鎮守府に着任早々に、私のことをいちばん最初に認めてくれたのが彼女だった。あの朝、美保湾を望む埠頭での会話が、まるで昨日のことのようだ。まだ一ヶ月とちょっとしか経っていないんな。
私から見た青葉さんは、初めのうちは単なる情報通の記者かカメラマンという印象だった。それがブルネイに来てから急に近くなった気がする。私の受ける印象が一番大きく変わった艦娘の一人だろう。
彼女の記者という立場上、仕方が無いことだが、普通に見たら理解できない行動も少なくなかった。好奇心旺盛な上に頭の回転が速くて着眼点もブッ飛んでいるからな。いつもふざけている艦娘という印象が強かった。それは未来のブルネイで武蔵様に捕まり、技術参謀や夕張さんと一緒に吊し上げられる段階までは、そうだった。
ところが現代に戻ってから、あのブルネイの海岸で見せた謎の涙。そこで私に吐露した彼女の気持ち。それは青葉さんが繊細で弱いのだという意外な一面を知った。
それが一転して、今度は演習前のプレス席での見事な英語の質問と応対。良い意味で彼女の器用さと守備範囲の広さを思い知らされたが。
そして最期は演習の取材中に私たちに警告を発して、そのまま人知れず轟沈か。それは現場の記者らしいとも言えるが、何とも壮絶なものだ。
<<提督:”サルベージ”とは>>
ここまで辿って、私はハッとした。
あの大井も長い間、心に引っかかっていた艦娘ではあった。しかし青葉さんと出会ってからの期間は、ほんの一ヶ月少々だろうか?これだけの短期間に青葉さんという艦娘一人をとっても、あまりにも多くの触れ合いがあり、たくさんの想いが交差していたことに気付かされた。
下手な男女関係とか恋愛感情は少なくとも彼女と私の場合には、まったく無かった。軍隊と言う特殊事情があるとしても彼女との関係は組織内での信頼関係止まりだろうか?もちろん、それだけに留まらない交流も多かった。ただ、それらの内容を私自身が、すっかり忘却していたと言う事実に衝撃を受けた。
艦娘とは一瞬のうちに轟沈してしまえば、それで終わりなのか?指揮官の記憶の片隅にも残らずに忘れ去られてしまうのが艦娘なのか?それでは彼女たちが、あまりにも不憫だ。もしこの”サルベージ”という作業が無ければ、青葉さんも私の過去の記憶の大海原の中へと消え去ってゆく、ほんの一人の艦娘に過ぎなかっただろう。
だが”サルベージ”とは文字通り、私自身の記憶を呼び戻す、貴重な”場”でもあるのだ。そこに、引き上げるべき想い、フックがあるからこそ出来ることだ。
逆にいえば大勢の中の、たった一人の艦娘であっても、これだけの交流があった。それがわずか一ヶ月と言う短期間でも密度の濃い多くの思い出が刻まれていた。
いくら私が鈍感だとは言え、そのまま通り過ぎてしまうには、あまりにも……あまりにも意識が足りなかった。そのことを心から悔い改めた。祥高さんが言う通り青葉さんは、もう還らないかも知れない。たとえ、そうだったとしても私は心に誓った。
”青葉さん、君の事はずっと忘れないよ”
その次の瞬間だった。
『来る!』
寛代のひと言が聞こえた。
<<海上:青葉復活>>
寛代が叫ぶと同時に、戦闘中とは違うノイズが走る。そして波のような水しぶきの音がして大きな歓声が……やったのか?
『報告します!青葉さんが無事に帰還しました。詳細については今から確認いたします』
現場の祥高さんから、報告が入る。
「わかった」
私は応えた。
『すごいわ……やっぱり裸体なのかしら?』
イタリア武官が言うと、果てしなくエロく感じるのはなぜだ?
『しかし……その秘書艦というのは、凄い技術を持っているな』
ドイツ武官も呟く。
『いえ、いつも出来るものではないようですし、記録にも一切残しません』
私は応えた。
イタリア武官が続ける。
『そうね~、まさに現代の奇跡、伝説ね~』
そういう芸術的な表現力は、さすがだと思うんだが。その間も現場からは咳き込むような声と、様子を伺うような音声が断片的に入ってくる。
やがて報告が来た。
『こちら祥高です。青葉さんはまだ精神的なショックが残っているようですが、体調には問題無いようです』
「分かった。誰かを随伴させて、すぐに帰還させてくれ」
私は指示を出す。
『了解しました』
祥高さんが応えた。
そのとき、ドンドンと誰かが指揮車のドアをノックしている。振り返ると、ブルネイ司令……ということは?私はすぐさまドアを開けて車外へと出た。そこにはブルネイ司令と、もう一人、あのブルネイの美人秘書官が立っていた。どういうことだ?
<<埠頭:哨戒艦>>
「五月雨は?」
開口一番、私は聞いた。何となく予想は付くんだが案の定、ブルネイ司令は首を振った。私は「そうか」とだけ応えた。
美人秘書官が敬礼をして続ける。
『沖のタンカーの武装解除は無事に終了いたしました。僭越ながら現地に留まっていた艦娘たちはブルネイ警察の巡視艇に乗せて先に鎮守府へとご案内しています……これは、ブルネイ司令も了承済みです』
『それは、お世話になりました』
思わず社交辞令。
『また、これも出過ぎたことかも知れませんが今、海上で行われている救出活動について、ブルネイ海軍も最大限補佐をいたします。つきましては、これから総司令官と共にブルネイ海軍の哨戒艦にて現地へご案内いたします』
なに?いつの間にそういう話になっているの?
女性秘書官は、やや苦笑しながら続けた。
『無理にとは申しませんが、ブルネイ司令のご提案ですので……』
私はブルネイ司令を見た。彼は言った。
「詳しいことは行きながら話す。今は急ごう」
なるほど、ここで拒否する理由も無いしな。私は指揮車に戻ると、入り口から告げた。
『ブルネイ海軍の哨戒艦で、現地へ赴くことになった。作戦参謀は、ここで技師と待機。各武官にあっても引き続きここで状況を聞いて頂いても、また適当な次官にお戻り頂いても構いません、お任せします』
『承知した。私はしばらく留まるよ』
これはドイツ。
『そうねえ~、私も最後まで、残ってモニターするわ』
これはイタリア。
私は敬礼をした。
『では作戦参謀、現地に私が哨戒艦で向かうことを伝達してくれ。後は頼む』
作戦参謀も敬礼をする。
『承知しました』
私は制帽をかぶると、ブルネイ司令と女性秘書官と一緒に埠頭へ向かう。そこには夕日を浴びて停泊するブルネイ海軍の哨戒艦が待っていた。
船の艦長が埠頭で敬礼をした。
『お待ちしておりました、総司令官殿』
私も敬礼をした。
『よろしく頼む』
やがて夕日で輝き始めた海を、哨戒艦は進み始めた。
<<哨戒艦:操舵室>>
私たちは操舵室に案内された。航海士が私に告げる。
『現地までは、10分もあれば到着いたします』
『了解、ありがとう』
私はそう応えると、ブルネイ司令と一緒に、手近なイスに腰をかけた。あの女性秘書官は、よく見たら軍服を着ているが……遠慮してか、私たちから少し距離を置いて、航海士の横に立っている。
操舵室内には夕日が差し込み、ところどころ計器類に反射して万華鏡のように乱反射している。海面の煌きと相まって、何とも幻想的な状況だ。
「無理を言ってすまなかった」
ブルネイ司令が軽く頭を下げた。そういえば、礼服は着替えて普通の軍服だ。
「いや、構わないさ」
私は制帽を取って答えた。
「五月雨がな……最後に一瞬、意識を取り戻したんだ。でも逝くまでずっと私に詫び続けていてな……あんな良い艦娘が犠牲になる現実に、正直参ってしまった……」
今回は、かなり意気消沈しているようだな。
「分かるよ、無理もない」
私は言った。
<<操舵室:ブルネイの決意>>
「だが技術参謀が例のステルス無線を聞かせてくれて……君のところの秘書艦は、状況によっては沈んだ艦を浮上させられるそうじゃないか?だったらうちの加賀……せめてあの艦娘だけは!何とか助けたいと思って……そう考えたらもう居ても立っても居られなくなって」
ブルネイ司令の剣幕に、私はちょっと引いてしまった。
「そりゃ、加賀さん自身の気持ちも……」
加賀さんは量産型だ。果たしてこの世に対する未練が強いのだろうか?
「わかっている。だが、オレは信じている!あの艦娘は、必ず戻ってくる」
さっきよりもすごい剣幕だぞ。そこまで言われたら、もう何も言えないが。
「オレは鎮守府のタグボートでも何でもいいから、現地へ行こうとしたら、ちょうど桟橋を過ぎた辺りで哨戒艦と出合ってな、もう事情を話して……」
「それでブルネイも巻き込んだのか?」
「まあ、そういうところだ」
マジか?こいつ。こういう行動力はすごいよな、昔から。
私たちの会話の状況を察したのか女性秘書官が近寄ってきた。良く考えたら、この秘書官はブルネイ政府の役人らしいけど、今は軍服着ているから軍関係であるし、でも実際のところ何者なんだろうか?と思ってしまった。
彼女は言う。
『事情は司令から伺っています。ちょうど私たちもタンカーへ調査に向かう途中でしたので、タイムリーでした。機密事項ということで私たちも秘密は守ります。ご安心ください』
ここで彼女は、ちょっと髪をかき上げた。
『もっとも沈没した船が浮上するなんて仮に外部に洩れたとしても、まるで、おとぎ話のようですから誰も信じないでしょうね』
彼女は微笑んだ。やっぱり、この笑顔には弱い。しかも今は夕日が照らす操舵室だから、こういう美人が、なおさら美しく見える時間帯だ……自重、自重!
しかし良く考えたらブルネイ軍にしても、タイムリー過ぎる。タンカーの調査と言うのも、半分本当だろうけど、実際のところは怪しい。まさかステルス無線を聞いていたとは思えないが、ブルネイ側も演習から戦闘後まで、この全海域に巡視艇や哨戒艦を出して、艦娘たちの動向を監視していただろう。彼女たちが何かをやっているくらいの疑いは持って当然か。
まあ、お互い疑心暗鬼になっても仕方がない。今後わが帝国海軍とブルネイ軍は一蓮托生になるのだから、このくらいの情報の共有はあってしかるべきだろう。私は煌く海面を見ながら、そう思った。
--------------------------------------
※これは「艦これ」の二次創作です。
---------------------------------------
サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
---------------------------------------
PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。