「答えは一つ、反撃開始だ」
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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)
:第16話(改)<別ち、また結ばれる手>
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<<海上:つなぐ手>>
既にブルネイの太陽は海中に没し、空は真っ赤になっている。海上では再び、艦娘たちが手をつなぎあって加賀さんのための、”祈り”が始まっている。哨戒艦の甲板でも、私たちだけでなく、手の空いた隊員たちも軒並み祈っている。特定の宗教ではなく、独りの艦娘のために、皆が祈る。それは何とも不思議な、そして奇跡的な構図だろう。
私も目をつぶって意識を集中しようとしていたら、誰かが私をつついた。目を開けて見る、青葉さんだった。彼女は隣に座っている女性秘書官と左手で手をつないでいるが、もう片方の右手を、私に差し出しているのだ。
ああ、そうか。こっちでも手をつなぐんだね……私は自分の左手で彼女の右手を取ると、軽く握った。青葉さんは少し微笑むと、ギュッと強く握り返してきた。その手は、さっきよりも暖かくなっていた。艦娘の掌(てのひら)って、ホントに温かいんだよな。
「おい」
私は、横に立っているブルネイ司令に声をかけた。
「ん?」
彼は私を振り返って、一瞬、何かを言いかけた。でも直ぐに状況を察して、そのまま黙ってうなづくと、私の残りの片方の手を握った。
今ごろ、埠頭の指揮車でも、皆が祈っているのだろうか……ドイツとイタリアは、さすがに手をつながないだろうけど。もし、この場が画像中継されたら、ドイツ武官もイタリア武官と手をつなぐかも知れないな。私はそんなことを考えていた。
<<海上:過去と現在>>
今までも加賀さんと私は、ほとんど縁はなかった。だが確か同じ一航戦だった赤城さんと加賀さんは縁が深いんだよな。この作戦が一段落したら、戦闘の記録(調書)をきちんと取らないとな。今回、赤城さんが戸惑った現象も、整理して対策を取るべきだし。恐らく彼女にとって、何か過去のわだかまりを思い出すような出来事があったのだ。それが彼女の戦意を喪失させたに違いない。もし仮にそういう情報が敵に漏れたら、かなりまずいことになる。
艦娘は多かれ少なかれ、過去の記憶をトラウマのように引きずっていると言う。祥高さんのように、それが強みになる場合もあれば、赤城さんのように逆に不利になることもあるわけだ。今後は、そういう思いを断ち切ったり、メリットとして役立てられるような検討や対策も必要だろう。私と大井との内容も、分析すれば、トラウマ解決への何かのヒントになるかも知れない。
ただ大井の場合は特殊だからな。公式な記録としては正直、残したくない。ここは同じような過去を持つ祥高型三姉妹と、相談すべきだろう。
哨戒艦に寄せる波の音が断続的に聞こえ、時おりブツブツと念仏のように加賀さんの名前を唱える艦娘の声もする。そんな静寂の中、何か不思議な緊張の糸が継続する。
加賀さんか……戦力としては大きいのだが、あの性格はキツそうだ。沈着冷静。何となく日向に似ている感じもする。でも外見とは裏腹に意外と内面は、そうでは無いのかも知れない。まあ、日向もそうだったけど、性格的に表裏があるような艦娘もいるわけだ。そこは人間と同じようなものだろう。そんなことを思っていた次の瞬間だった。
『きたよ!……今度は、間違いない!』
珍しく分析入りの、寛代の叫び声が響いた。やがて、海面が泡立ち始めている。まさに生命の誕生だな。
<<海上:加賀さん復活>>
その瞬間は意外なほど、あっ気なく訪れた。私だけがそう感じたのか?
海上に、水しぶきと共に”復活”した加賀さん。その表情は、いつもと同じ”ポーカーフェイス”だった。ああ、加賀さんだな……安心すると同時に、つい苦笑した。あまりにも、彼女らしいけれど。そして彼女も残念ながら……裸体ではなかった。彼女の戦闘服は、やはりボロボロだった。彼女自身、復活したいという強い意思は持っていただろう。それでも復活した今の自分が、どういう状態なのか、最初は戸惑っているようにも見えた。
「加賀さん!ああっ~良かった……」
赤城さんは、狂喜乱舞している。そして、加賀さんに駆け寄り、激しく抱擁する。赤城さんも、普段はあまり感情を見せないのに、このときばかりは、心底喜んでいるようだ。その笑顔には、計り知れないくらいの価値があるな。
「い、痛いです……赤城さん」
ロボットかマネキン人形のようにぎこちない反応の加賀さん。その表情は硬いながらも少し笑みがこぼれている。この対照的な二人だから、一航戦としてバランスが取れるのだろう。
でも逆に意外だったのはブルネイ司令だ。酒でも入らなければ、バカ騒ぎしない奴だが、このときばかりは私の手を取り、何度も振り回された。関節が抜ける!やめてくれっ。
海上の艦娘たちはもちろん、船上のブルネイ兵士たちも、そして女性秘書官も、もちろん青葉さんも、みんな喜んでいる。
既に空は紅く、海上と空と黄色から紅までのグラデーションに染まって、まさに渾然一体となっている。それは、この地上と、向こう側の世界を、艦娘たちの想いでつないだ、一連の流れを象徴するようだった。鎮守府で聞いている技術参謀や、指揮車にいる作戦参謀たちも、喜んでいるに違いない。そうそう、あの武官たちも、きっと同じだ。
私は報告のために哨戒艦に近寄ってきた祥高さんに、こちらから声をかけた。
「ご苦労、良くやった……」
海上の日没後の紅い光に、ぼんやり照らされた彼女は、少し恥ずかしそうな顔をして答えた。
「いえ、私は皆さんに指示しただけです。これは、みんなの勝利だと思います」
勝利か……今回の戦闘の最大の勝因は、全体が一つになったことだろうか?私はそんな風に考えていた。空を見ると、もう一番星が輝き始めている。あれは、私たちの希望の幕開けを象徴しているのかな……?
のん気にそう思っていた瞬間、事態は急変した。
<<海上:夜間攻撃>>
突如、哨戒艦にアラートが鳴り響いたかと思ったら、艦橋付近がいきなり爆発した。
「なに!敵襲か?」
私たちは反射的に甲板へ伏せた。青葉さんも、あの女性秘書官が引き寄せて、物陰に退避させている。続けて海上の艦娘たちの周辺や哨戒艦の側面に、何本もの水柱が上がる。大きな炸裂音と激しい振動。立っていたら、恐らく転倒していただろう。そして水しぶきが、甲板上にも容赦なく降りかかる。
「散開!」
海上で祥高さんが叫ぶ。悲鳴を上げながら散らばる艦娘たち。魚雷だけではなく、砲弾も次々と飛来している。あのタンカーは既に接収しているから……これは深海棲艦か?
「敵、北及び西方向から多数!」
寛代が叫んでいる。不気味な光跡と共に、飛来してくる砲弾、そして暗い海を這って来る無数の魚雷。まさに闇討ちだな。
「おのれっ!」
武蔵様も叫んで砲撃しているが、彼女は既に自らが皆の盾になって、数発の魚雷をわざと受けたようで、かなり大破している。相変わらず捨て身の戦法?それは武蔵様らしいが……独りで被害を担当するような戦い方は、やめて欲しい。お願いだから。その姿は、あまりにも痛々しい。
辺りは既に、かなり暗くなっており、空母や航空戦艦の戦闘機部隊も出撃は困難だ。この奇襲で既に数名の艦娘が大破した模様だ。私たちが乗っている哨戒艦も、各所で爆発音が響き、甲板も数箇所、大穴が開いて炎や黒煙が噴出している。
「ボートを準備しろ!総員退艦準備!」
艦長が叫んでいる。青葉さんは、あの女性秘書官が支えて、ボートのほうへと向かっている。
「寛代ちゃん!データリンクを!」
祥高さんが何か叫んでいる。
「潜水艦娘の皆さんも、私とデータリンクをお願いします!誰か、代表で一人来てください!」
恐らく敵が居ると思われる方向と反対側になる位置で、傾いた哨戒艦の陰に祥高さんと寛代、それに伊401が集まってケーブルをつないでいる。何かのデータをやり取りするらしい。
傾いた艦の後ろから、艦長が声をかけてきた。
「総司令官、申し訳ございません。この艦は沈没いたします。早急に脱出ボートへ!」
「分かった」
反撃のヒマすらなかったな。私は艦長に敬礼をすると、ブルネイ司令や青葉さんと共に、ボートへと向かった。
海上の艦娘たちは、必死で反撃をしているが、敵の火力は圧倒的だ。奇襲攻撃のために、敵の概要がまったくつかめないのは歯がゆい。もし大井が居れば、敵のことが多少とも分かったかもしれない。だが彼女は既にブルネイ鎮守府へと戻ってしまっているだろう。比叡も大破して、2号と一緒に退避したし……この場に居る私たちだけでは、あまりにも戦力不足だ。今はただ、さっき祥高さんが叫んだデータリンクと言う仕掛けが、何らかの効果を発揮することを期待するばかりだった。
<<夜間攻撃:電探さえあれば>>
私は艦艇に乗るのも久しぶりだったが、海上での実戦は、もっと久しぶりだった。残念なことは今現在、この戦闘が負け戦になりつつあるということだ。相手が深海棲艦では、通常の戦闘でも不利だが、ましてやこの哨戒艦では到底、勝ち目はない。
艦娘たちも必死で応戦している。しかし中破から大破がほとんどの中で、長距離の射程が取れないことが痛い。もっともそれは、まだ距離がある相手も、同じ条件だから、私たちには幸いしているともいえる。そうは言っても一方的に砲撃や雷撃されているばかりで、このままではいずれ押し切られてしまうのは目に見えている。そもそも相手の状況がまったく見えないから下手に魚雷も撃てない。狙いが定まらなければ、魚雷はむしろ危険だ。
私はふと、あの舞鶴沖を思い出してしまった。あの時も、やみくもに魚雷を撃って、ほとんど空ぶりに終わっていた。あの時、敵は優秀な電探を持っていた。あの悔しさは今でも忘れない。そう、電探さえあれば、この夜間戦闘だって……。
私たちは、救命ボートに乗り込んだ。艦長は様子を見ていて、まだ射出しない。そのとき、側にいた青葉さんが無線を受けたようだ。
「司令、祥高さんが、全員に呼びかけています」
「そのまま教えてくれ」
「……通常無線です。これから寛代ちゃんと私(祥高)、そして伊401から、データリンク送信を行います。駆逐艦にはありませんが、軽巡以上の一部の艦娘には、試作データリンク対応無線システムがあります。レーダーと連動できる艦娘は、それを使って可能な限り、応戦を試みてください。設定はデフォルトのままで。非対応の駆逐艦などの艦娘は、出来るだけデータリンク艦の近くで回避を続けて下さい」
「データリンクって言うのは、まだ試作品なのか……」
既に夜間戦闘になりかけている。はるか遠くから、不気味な光跡をなびかせて、繰り出されてくる砲弾と、それに無数の魚雷。敵も最後の戦いを挑んできているのだろう。こうなると、もはや消耗戦だ。
そのとき、哨戒艦の前面に被弾、再び船体が大きく傾く。艦長が指示した。
『限界だ、射出しろ!』
「みんな、しっかりつかまれ!」
私たちはボートと共に暗い海へと放り出された。
<<夜間攻撃:データリンク>>
海域は砲撃や魚雷の炸裂により荒れていた。だが不謹慎ながら、この状況にワクワクしている自分が居た。個人としての私には、もはや何も出来ない状況なのだが、これは必ず打開出来るという妙な確信があった。
まあ、これが司令官としての心持ちなのだろう。どんな状況にあっても、必ず希望は捨てないこと。普通の戦いであれば、艦艇を離れた時点で負けは確定だが、私たちは艦娘と共に闘っているのだ。そして、彼女たちもまた決して諦めないのだ。
「青葉さん、状況は分かるか?」
私がボートに同乗している青葉さんに聞くと、彼女はしばらく耳を澄ますような格好をしていたが、やがて「同調できました」と呟くと、急に周りをキョロキョロし始めた。
「どうした?」
「えっと……すごい」
彼女は、何かに感動しているようだ。すぐにいろんな通信が入っているようだった。
やがて、彼女は祥高さんの代理で私に伝えた。
「司令、祥高さんから、敵艦隊の位置を確認。反撃を開始してよろしいでしょうか?との入電です」
私は迷わず即答した。
「答えは一つ、反撃開始だ」
「了解!反撃開始です、繰り返します。反撃開始……」
青葉さんは通信しながらも、さっきから何かを見ているような感じだ。
「何かが見えるのか?」
「はい、データリンクシステムで、この海域の地図と海図、そして敵の位置が、立体的に見えます。すごい……」
「それは電探じゃ、ないんだよな?」
「はい、電探と言うよりは、無線の音声情報を利用している感じですね。ですからノイズが被ると、情報が断続的に切れてしまいます……でも、複数の艦娘の情報を共有しているようです」
それを聞いて何となく分かった。そのシステムでは、通信可能な艦娘同士で、情報を共有させ、あわせて、この地域の地図や海図とすべて連動させるのだ。そういえばさっき、祥高さんが指揮車でドイツ武官から、この海域の地図情報を貰っていたことを思い出した。あれも使ってこの戦闘エリアの情報を統合的に処理するのだろう。技術参謀辺りが作ったのだろうか?
「これは試作品ですから感度が低くて、やっぱりノイズに弱いです……でも、断片的だったとしてもこれは凄いです。私たちと敵の位置、それに海岸線や海図まで分かります」
「そうか……」
青葉さんは、システムに感動しているようだ。その青葉さんも、実はデータリンク対応艦だったのか。まあ、記者だからな。寛代に近い任務をこなすことも多いからだろう。しかし、このシステムが舞鶴にあれば、あんな戦いはしなくて済んだのに……つい、そう考えてしまう。
「雷撃可能な艦艇は、データリンク艦と協力して雷撃を開始せよと、祥高さんが指示しています」
青葉さんが伝達してくれる。これで、流れは変わるか?
そのとき、ものすごい砲声が聞こえ、振り返ると辺りが砲撃でボンヤリ明るくなっていた。武蔵様だ!噂には聞いていたが、間近で見る46センチ砲は、圧倒的だ。そうか、今までは武蔵様でも、敵艦の場所が特定できなかったのか。それがデータリンクによって、敵の位置が、かなり特定できるようになったわけだな。
武蔵様は、なおも砲撃を継続する。思わず、見とれてしまうくらい、インパクトがある。これに狙われたら、ひとたまりもないだろう。
「敵艦隊、武蔵さんの砲撃で、陣形が崩されていきます!」
青葉さんが伝える。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。