マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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防衛次官から、国際情勢の駆け引きの話を聞いて胃が痛くなる提督だったが同時に、いろいろ考えさせられるのだった。そんな嵐のような次官が去った後も、ブルネイの提督執務室では、参謀と提督との対話が続いていた。自分に内容がなくとも総司令官として立つべき責務。その背後の各署の思いをしっかり受け止めようと決意する提督だった。


第19話(改)<英雄に期待するもの>

「お前に期待するがゆえだ。分かってくれ」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第19話<英雄に期待するもの>(改)

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<<執務室:英雄誕生>>

 

防衛次官はニヤニヤしながら言う。

「いいか?聞いて驚け!さっき決まったんだが、お前はもう、この国にとっては英雄になってしまったんだぞ!」

 

「まさかぁ」

 

「まさかなもんか。明日の午後、お前と祥高はブルネイ王国から表彰される。国家勲章だぞ!」

 

「はあ?」

まったく信じられなかった。表彰というのは正直嬉しいが、勲章一つの重さを感じる。まして艦娘とはいえ、数名の犠牲も出ているのだ。とても貰う気がしない。

「それは断ったら……ヒンシュクですよね」

 

「当たり前だ……」

次官は断言した。ブルネイ国家の手前、これは断れないよな~。

そんな私が心情的に既にオーバーフロー気味なのを感じたのだろう。意外なことに作戦参謀が横から声をかけてきた。

 

「総司令官、あなたは経験が少ないから受けきれないのは分かる。しかしこういうときは、もう戦場で”防ぎきった”という戦果が出ているのだ。そうなってしまうと、その将たる者は一種の看板みたいに祭り上げられてしまうんだ」

 

やだなぁ~。そういう柄じゃないよ、私は。思わず言った。

「マジですか?」

 

「ああ、マジだ。国際情勢なんてそんなものだぞ」

作戦参謀は腕を組んでうなづく。羽黒さんは、へえという顔をしている。

 

「はぁ~」

大きなため息が出た。ドンドン大国の事情に、巻き込まれていく。自分が底なし沼に引きずり込まれていくような感覚だ。相手の得体が知れないだけに、たちが悪いよな~国際情勢って言うのは。

 

<<執務室:駆け引き>>

 

次官は続ける。

「特に、ここブルネイみたいな国だと、そういう傾向は強くなる。いうなれば、お前はもうブルネイの国威掲揚の広告塔みたいな、目立つ存在になるんだ。でも良いじゃないか?お前は前線の兵士ではないが、上に立つ者の前線は、こういった対外関係の調整なんだよ。そこにお前もデビューしたようなものだ」

 

「正直、苦手です」

私は弱音を吐いた。

 

作戦参謀は、次官に同調しながら言った。

「まあ、そういうな。これも任務と思え。それに分かっているだろうが、これは決して、お前個人の勲章ではない。犠牲になった艦娘たちや、戦い抜いた彼女たち、そして我々全員で受けるべき勲章なのだ」

 

「まあ、公的な意識を持てば、分かりますが……」

私は自分に言い聞かせるように言った。

 

今度は次官が続ける。交互に、忙しいな。

「今は簡単にドンパチできない時代だが、水面下では駆け引きが激しい。今回のように勢い余って、小競り合いが起きることもあるが、それを収拾して、うまく誤魔化すのも上に立つ者の仕事だ」

 

再び、作戦参謀も割って入る。

「このブルネイの泊地だって、今までも半分コソコソしてやっていたんだ。それを公に認めさせる絶好のチャンスなんだぞ……わかりやすく言うとな、日本とブルネイが協力して国際社会に、この鎮守府の存在を公然と認めさせるために一発ぶち上げるんだ。ここまで来たら、もう後には引けない。最後まで堂々と押し切るしかない」

 

うへぇ?マジですか?口には出さなかったが、私の気持ちは彼女に、しっかりと読み取られた。

 

「そんな顔をするな。次官も言うとおり、こういう駆け引きは上の者の戦いだ。中央省庁ではな、日本人同士で連日、そんなことやっているんだぞ。祥高姉さんは、そういうのは苦手なタイプだったから、降りてしまった。だが私はな、そういうのが好きなのだ」

作戦参謀は、ニタッと笑った。そしてやっぱり次官も腕を組んで笑っている。お前も好きなんだろう?

あぁ~、政治の駆け引きか。私は、そういう世界は苦手だな。羽黒は、そんな二人の顔を交互に見ている。この可愛い艦娘も、こういった泥沼に巻き込まれていくのか……。

 

「英雄誕生か……」

私は呟いた。実感はなかった。

 

<<執務室:トップの使命>>

 

私は改めて次官や作戦参謀を見た。こんな神経戦みたいな戦いの場にも身をおく次官だ。たまに艦娘の尻を追いかけたり、おちゃらけたり、そんな”遊び心”もないと彼も身が持たないかもしれない。そう考えたら、次官の立場や気持ちが分かったような気がした。実は陰ながら苦労しているのだなと想像したら、この次官とも仲良くなれそうな気がしてきた。(別にケンカもしていないけど)

一方の作戦参謀は艦娘だから、そういうストレスの耐性は人より強いかもしれないな。(あくまでも想像)

次官は続ける。

「国際問題なんて、目立ったほうが勝ちさ。今に見てろ。シナっていう国が今回の黒幕だとしたら、このままは黙っているはずがない」

 

「というと?」

 

「自分たちの非は伏せて、自分勝手な言いがかりをつけてくるってことさ。だいたい、あんな独裁的で覇権的な国家を国連に入れた上に常任理事国なんて、国連自体が頭のおかしい連中ばっかりだ、という何よりの証拠さ」

その辺は、私には分からないけどね。

 

今度は作戦参謀が続けた。

「これを期に艦娘たちも内外で批判の矢面(やおもて)に立たされるだろう。お前の苦手な国際的な神経の戦いの前線に彼女たちも立たされることになるんだ。だが艦娘なんて世間知らずもいいところだ。それを最大限守ってやるのもトップたるお前の役目だ、頼んだぞ」

 

「そうか……」

そう言いながら私は思わず羽黒を見た。彼女は不安そうな顔をしながら、それでも微笑み返してくれた。

確かにそうだ。戦闘能力があっても、それだけでは国家は回らない。その分は司令官が守らなきゃ。

 

次官も言う。

「わが国としても国際情勢という戦場で負けるわけには行かない。使えるコマは全部使う。チャンスは生かす。とにかく内容があろうが、なかろうが、会議の場でも、表向きは、おまえが総司令官だ。ジタバタせずに、きっちり立て!」

 

「ハッ!」

いろいろ聞いて私も腹を据えた。私の決意を込めた敬礼に、次官も作戦参謀も少しは安心してくれたようだ。

 

「それじゃ、まあこんな所かな~」

そういいながら次官は執務室から出て行こうとして、ふと立ち止まった。

 

「そうだ もう1個忘れてたよ!」

忙しいな。

そこで ドアが開いて、ようやくブルネイ司令が戻ってきた。

「おお、防衛次官どの?」

 

防衛次官は、ブルネイ司令を見ると言った。

「おっと、ブルネイ司令!必要なことは、この総司令官には伝えたから……あ、そうだ、司令も聞いてくれ」

 

改まって何事だろうか?ブルネイ司令と私を前にして、次官は説明をする。

「ブルネイ軍からの提案で、今回の犠牲者に対する追悼式が明日の早朝、軍人の共同墓地(国営墓地)で行われる。なお今回は五月雨を始めとした艦娘達への追悼も合わせて行われる。なお艦娘たちの参加は任意。艦娘に限り、通常の軍服での参加を認めると、あの美人秘書からの伝言だ。さあ、明日は忙しいくなるぞ~!覚悟しとけよ」

 

「ハッ!」

私の敬礼を軽く受けつつ、ようやく執務室を退去した次官だった。まるで嵐だな。

 

<<執務室:海軍の威信>>

 

「そうそう~総司令官殿ぉ!」

今度は作戦参謀だけど……なんだ?その語尾の妙なイントネーションは?

彼女はオホンと咳払いをして続ける。微妙に、ひょうきんな作戦参謀ってのは、やはり不気味だなあ。

「明日はな、総司令官は何度も人前に立つわけだ。各所で話すネタは場所によって内容を違えるように、今からでもいくつかネタを考えとけよ~。全部一緒だとなぁ、小うるさいマスコミ連中に、”この司令官は中身がないぞ”って思われるし、新聞にもズラズラ書かれるんだ。別に一般大衆に、お前の中身が無いのがバレても構わんが、それ即ち、帝国海軍の威信が傷つくことにもなる。そっちのほうが深刻だから、よろしく頼むぞ!」

 

ちょっと傷ついたけど、そりゃ責任重大じゃないか?

「また、マジですか?」

 

「ああ、マジだよ」

作戦参謀は、意外に真剣な顔をしている。羽黒さんは、また”へえ”という顔をして、今度はメモを取っている。私の中身が無いとか書かないでね?

 

「そりゃ~大変だなあ~」

私は思わず頭の上に手を伸ばして、ため息をついた。ふと見ると羽黒さんと目が合ってしまった。彼女は反射的に微笑んでくれた。ああ、彼女はホントに天使だなあ(笑)

 

<<執務室:人生の上げ潮>>

 

「まあ、大丈夫だよ」

いつの間にか自分のデスクに座って、書類を整理していたブルネイ司令が意外なことを言う。

 

「オレから見ても、お前はこの短期間で目覚ましく成長している。こうした千載一遇のチャンスを掴んだ者だけが、どんどん未来へと伸びていけるんだ。頑張れ!」

 

「あ、ああ。ありがとう」

親しい彼から、こんな言葉を聞くとは思わなかった。

 

「お世辞じゃないぞ」

彼は腕を組んだ。

 

「オレは本当に、お前が羨ましい。ハーレムみたいな鎮守府に、美人の艦娘たちに囲まれて、演習に来てみれば華々しい舞台まで用意されて。そういう巡り合わせっていうのは、ただ運が良いだけじゃ、得られないんだぞ!」

 

「そうなのか?」

 

「お前も船乗りなら分かるだろうが、人生にも波があるんだ。お前は今、上げ潮に乗っているんだ。まぁオレも、ブイブイ言わせてるお前に精一杯協力して、その波の、おこぼれに与るから、よろしくな」

 

「ははは」

ブイブイねえ~、私は苦笑した。

その間にも作戦参謀と羽黒さんは、執務室のソファに腰をかけて、いろいろ報告をしていた。それを見ながらブルネイ司令は私に言った。

「だいたいの概要は防衛次官から聞いている通りだ。今日のところは、お前も、休んでくれ。明日は早朝から行事が目白押しだからな。ここに来る前に、お前のところの秘書艦や、班長連中……金剛とか日向だっけ?彼女たちにも、明日のことは伝えてはあるから、後の心配は要らん」

 

「ああ、助かるよ」

 

<<執務室:決意>>

 

ブルネイ司令は、デスクに手を置いて言った。

「五月雨は残念だったが……アイツのためにも、このブルネイ泊地は絶対にシナに奪われてはならないんだ。お前も明日はしっかり頼む」

 

「もちろんだ」

私が応えると同時に、ブルネイ司令が立ち上がって手を差し出した。私は直ぐに手を出して、がっちりと握手をした。すると、いつの間にかそこに作戦参謀が手を乗せた。

 

「一蓮托生……だな?」

彼女の言葉に、私たちはうなづいた。

 

「おい、お前も来い!」

 

「は、はい!」

作戦参謀に呼ばれて、最後に羽黒さんも手を乗せた。

 

「これは?」

羽黒さんは、こういうことは初めてだろう。

作戦参謀が説明する。

「皆で一つになるときにはな、こうやって手を合わせて、心を一つにするんだ」

 

「ココロを一つに?」

 

「そうだ、身も心も、そして沈むときは運命までも共にする。それがまさにクルー、それが一蓮托生だ。覚えておけ」

 

「はい、頑張ります」

……そうだな、全員が力を合わせて、わが国を脅かす全ての敵に対して、全力で立ち向かう不退転の決意、これしかない。それが軍人の気構えだ。改めて、そう思うのだった。

 

<<執務室:期待>>

 

決意を込めた掛け声の後、作戦参謀は言った。

「私はまだ、司令と打ち合わせがある。お前は先に休め」

 

「ハッ、では失礼します!」

 

「おい」

 

「ハッ?」

 

「すまんな、いつもの口調に戻ってしまったが……明日は、総司令官として私に平身低頭しなくて良いからな。全員に対して、威厳を持って接してくれ」

 

「……い」

彼女は、何かを言いかけた私を、すぐに制した。

 

「分かっている!それでも、堂々としてくれっ!頼むから!」

作戦参謀の突然の剣幕に、その部屋に居た全員が驚いた。

 

「スマン……だが、お前に期待するがゆえだ。分かってくれ」

 

「ハッ」

私は、急に胸が熱くなった。もう一度敬礼をして、退出した。

 

<<本館:廊下・金剛>>

 

廊下に出ると、外は真っ暗だった。寝るには早いが、明日のこともあるからサッサと自室に戻ろうと思って廊下を歩き出した。

そこでふと作戦参謀の言っていた、明日の演説のことを思い出した。

まずいよなあ~。いきなりネタって言われてもねぇ。人前で話すなんて昔から苦手だ。しかも英語だろ?ここには参考資料も無さそうだし、今さら街に出ても、日本語の書籍なんてないし。

 

悶々として、自分の部屋の前に近づいたら、廊下に艦娘たちがいた。祥高さんと武蔵様に、金剛と日向。秘書艦と班長たちか。ただ一人、知らない艦娘もいる。私が近づくと、艦娘たちもこちらに気付いた。

「hey!提督ゥ~」

金剛は相変わらず元気だな。彼女は目をキラキラさせて言う。

 

「ブルネイの司令サンからは、解散しても良いって言われましたケド、やっぱり私たちは提督の顔を見ないと、落ち着かないネ~」

 

「ありがとう……比叡は?」

 

「あの娘、入渠してても榛名さんにベッタリで……でも、ここは班長だけが来るから良いのデス」

そう言いながらも、口を尖らせて、ちょっと残念そうな金剛だった。

 

<<本館:廊下・武蔵様>>

 

私はすぐに、腕を組んでいる武蔵様に声をかけた。

「武蔵様には、わざわざブルネイまで申し訳なかったです」

 

ずっと気になっていた、彼女がなぜ急にブルネイまで来たのか?ということだ。その疑問には、武蔵様自身が直ぐに答えてくれた。

「案ずるな。ちょうどフィリピン近海で演習をしていたところ、上のほうから、わが艦隊に指示が出たのだ。良く分からんが、海軍省からの直接指示だと聞いた」

 

「そうでしたか」

 

「私自身、ブルネイとは縁がある気がしたからな。普段の私なら、断ったかも知れぬ。本当は他の者も連れて行けという指示もあったが、それは断った。今だから言うが、演習も終盤だったからな。その時点で燃料も弾薬もギリギリだった」

 

「それは申し訳なかったですが……感謝です」

私は手を差し出した。彼女はためらうことなく、握手をしてくれた。なぜか古くからの戦友と再開するような不思議な感覚を覚えた。それは、恐らく彼女も同様に違いなかった。

まさか、その指示を出したのは作戦参謀か次官か?あの辺りは、ムチャクチャやりそうだよな~。前は理解できなかったけど、今回あの二人と身近に接して、良く分かった。ああいう人たちなんだな~って。ただ、軍隊組織には、ああいったイノシシみたいな人たちも必要だと思う。

 

「武蔵様はねえ~、気乗りしないときには平気で断るのよ!」

突然、横に居た駆逐艦娘が口を挟んだ。

 

「おい、よけいなことを言うな清霜!」

武蔵様に付き添っている駆逐艦だろうか?初めて見る顔だな。なぜか武蔵様が、慌てて赤くなっている。

 

「その艦娘は?」

 

「これは清霜だ。私と随走することの多い艦娘だ」

何だか、恥ずかしそうにしている武蔵様って初めて見た。ただ、この二人は、しっかりとした絆で結ばれているんだろう。何を言っても通じ合うような雰囲気を感じた。そういえば、島風もそうだったな……。

 

「お、お願いよろしく……あ、済みません!逆でした」

清霜の慌てる姿に、その場の全員が微笑んだ。何となくそそっかしいが、吹雪を思い出すな。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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