マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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艦娘に続いて、提督の元には各国の特使や武官が入れ替わりやってくる。海外での司令の立場の大きさを痛感する提督だった。ドイツ海軍の男性は諜報部だったが、意外にも彼は自分の心情を提督に吐露するのだった。提督はドイツの軍人と音楽談義に華を咲かせた。しかし、美保鎮守府から緊急の電文が入った。


第2話(改)<特使と心の壁~伝えるもの>

『艦娘って、不思議な存在ですね』

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

(改)<特使と心の壁~伝えるもの>

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<<広場:特使>>

 

『もし、宜しいですか』

そのとき、誰かが私の後ろから声をかけてきた。英語だな。

 

『はい』

振り返ると、そにはアジア人のちょっと背の低く頭がバーコードになっている(失礼!)男性が居た。軍服ではないがアジアのどこの国だろうか?何となく気品はあるから、それなりの立場の人物だと思う。

 

『私はフィリピンから来た特使です。海軍の所属ですがブルネイとは直接交流が無いので今回は特使という形で参っております』

 

『これは初めまして美保鎮守府の司令です』

私が握手をしようと手を差し出したが彼は後ろに組んだ手を動かそうとはしなかった。

 

『ご存知かもしれないが先の大戦でわが国と貴国は敵対した。誠に申し訳ないが個人としての私は、まだあなたと握手をする気になれない』

その言葉に青葉さんや祥高さんなど英語の分かる艦娘たちも、ちょっと引いたような感じだった。だが相手は特使だ。失礼があってはいけないと思い私は軽く頭を下げた。

 

『それは大変失礼しました。私も知識としての歴史しか知らないもので』

彼はちょっと驚いたようだ。いや周りの艦娘たちも驚いたか?

 

彼は私の顔や艦娘たちを見て、ちょっと間を置いてから続けた。

『なるほど、艦娘部隊は女性だけと伺っていたが、それ相応の指揮官が居るわけですな』

 

彼は納得したように言ったが私にはその真意は計りかねた。

彼は続ける。

『本当は今回ブルネイの招請に応えるつもりはありませんでした。ただ参加するあなたが日本の山陰の基地司令だと知りましてな。ちょっと個人的な興味もあって参加した次第です』

 

は?山陰?単なる田舎だぞ。

『先の大戦後わが国の大統領が貴国の軍人を特赦したことは、ご存知かな?』

 

『情報としては知っていますが』

やばい、これ以上突っ込まれたら青葉さ~ん!助けてくれ。

 

『大統領の心を動かした書簡を書いたのが山陰の画家だということも、ご存知で?』

これは知らない!青葉さ~ん……って居ないし!見ると艦娘たちは、ことごとく逃げ出しやがった。薄情な奴らめっ!いや祥高さんは留まって居るけど彼女を見たら”私は知りません”という感じで首を振っているし。

 

でも慌てた私を見た彼はちょっと微笑んだ。

『いや良いのです。恐らく日本の方もほとんど知らないでしょう。ただ、お互いの友好のために後からでも勉強して下さい。それに今日は、あなたを見てちょっと安心しました。そうですよね、もう戦後何十年も経っているから……』

 

彼は自分に言い聞かせるようにやや遠い目をして続ける。

『ご存知のようにアジアを取り巻く状況は刻一刻と変化しています。かつての同盟国であったシナの伸張により、近年わが国の防衛ラインもブルネイ同様に脅かされています。私も個人的感情より、もっと大きな見地に立たねばなと……ああ済みません。今日の出会いが、いい出会いとなることをお互い祈りましょう』

 

『はい』

彼は会釈をして立ち去った。私は思わず祥高さんと顔を見合わせて苦笑してしまった。やれやれ、海外武官って言うのは本当に外交官並みの度量と知識が必要なんだな。

 

山陰の画家については、あとで青葉さんに聞いておこう。

 

<<広場:諜報>>

 

『よろしいですか』

聞き覚えのある声……と思って振り返ったら、長身のドイツだった。

 

『あ!』

思わず声を出してしまった。驚いたのは祥高さんも同じだった。そこには小柄な女の子が居た。何となく寛代を連想した。

 

『口数の少ない子なんですけどね。どうしても来たいって言うので』

このクソ暑いのに黒っぽい服を着ているその娘が例の艦娘か。

 

『ハ、ハロウ』

必死で片言の英語を使う姿はなんとも可愛らしいと言うか。なるほど総統閣下がお気に入りだと言うのも分かる気がするな。

 

『残念ながら、この場には日本の潜水艦娘は誰も来ていませんが』

私はちょっと詫びた。彼は笑顔になった。

 

『ええ、それは存じてます。いえこの娘はとにかく日本の艦娘に会いたいと……そうそう、あなたも艦娘でしたね』

彼は祥高さんを見て言った。

 

『はいドイツ語はさすがに分かりませんが』

そう言いながら祥高さんはその艦娘の前に屈(かが)み込んだ。

 

『こんにちは。今日は遠くからブルネイへようこそ』

祥高さんは、とりあえず英語で話しかけている。

 

でもその艦娘は言った。

『は、はい。ハジメマシテ』

 

これには私も祥高さんも、ちょっと驚いたが、すぐに微笑んだ。

『あら、英語も喋れるのね』

 

『まだ完璧ではありませんが』

そう言いながらドイツ人は周りを気にしながら声を潜めた。

 

『諜報活動に英語は不可欠ですよ』

 

『なるほど』

思わず私も声を潜めてしまった。だが何だか可笑しくなって二人で笑ってしまい周りの注目を集めてしまった。恥ずかしい。でも、これでかなり雰囲気が砕けたようだ。

 

<<広場:諜報部>>

 

『さきほどのフィリピンの特使とのお話、失礼ながら断片的に伺いました』

さすが諜報能力が高いな、このドイツ海軍。

 

『僭越ながら説明しておきましょうか?』

彼は少し微笑みながら続ける。

 

『フィリピンのキリノ大統領に書簡を送った山陰の画家は加納辰夫ですよ。キリノ大統領は妻と3人の子供が日本軍に殺されていたにも拘らず日本人戦犯の釈放に踏み切ったそうです』

 

『よくご存知ですね』

私が目を丸くすると彼はちょっと申し訳なさそうに応えた。

 

『失礼ながらあなたについても事前にいろいろ調べました。済みません』

ちょっと間が空く。

 

彼は何かを考えていたようだが決意したように語り始めた。

『私は海軍の諜報部でもあり貴方の個人的な内容や地域の歴史も少々……フフフまた機密情報を漏らしてしまいましたね』

 

彼はちょっと肩をすくめて言った。

『今回は特別にあなたを信用します。まあ私のことはくれぐれも……』

 

彼は曰くあり気に笑うので私も笑って応えた。

『もちろん機密は護りますが……教えて頂いた情報以上にあなたからの私への信頼のほうが、とても嬉しいですね』

 

そうなのだ。以前私は舞鶴に居たとき陸軍のバカ特高とケンカした事があった。このドイツ兵はそれとは比べ物にならないくらい紳士的だ。また諜報部でありながら信頼感がある。やはり同じ海軍だからだろうか?それは実に不思議な心持ちだ。

 

<<広場:心の壁>>

 

彼も微笑みながら言う。

『私もね普段は心に壁を作っているのですよ。笑顔なんて家族の前でもほとんど見せない……もちろん味方にも笑顔どころか何も気軽に話せない。ただあの艦娘が来てからは……』

 

彼は祥高さんと会話をしているドイツの潜水艦娘を見つめて言った。

『私の中で何かが変わった。それだけは確かなのです』

 

『なるほど……それは分かります』

私はうなづいた。

 

『ここは外地だから話せます。母国ではこんなことは話せませんね。自国のために命を張っているのに海外に居るほうが、むしろ安心できるという。私の立場も因果なものです』

彼は少し寂しそうに笑った。

 

『ただ、あの艦娘だけは信頼が出来るのです。なぜでしょうね』

彼はそう言いつつ祥高さんや金剛と遊んでいるドイツの艦娘を見ていた。

 

『私の相方も同じようです。こうして話せるのも貴方が艦娘の司令だからこそだと思います。ただまだ彼には……』

彼は向こうに居るイタリア軍を見ながら続ける。

 

『イタリアにはこの気持ちは話していません。でも、もし彼が仮に諜報部だったとしても同じ心持ちである可能性は高いでしょうね』

 

私も肩をすくめた。

『艦娘って不思議な存在ですね』

 

『まったく』

ふと見ると金剛とドイツの艦娘が、こちらを見て笑っていた。どことなくあのドイツの艦娘にはちょっと影があるように見える。そういうところも寛代に似ているかもな。

 

『最初にお会いしたときから貴方とはうまくやっていけそうだと思っていました。これからも利害抜きで懇意にして頂ければ幸いです』

これは意外な提案だったが嬉しかった。

 

『いやこちらこそ、よろしくお願いします』

私たちは改めて握手をした。ひょっとしたら、これも彼の諜報活動の一環なのかもしれない。ただ彼とは同盟国でもあるし仮にこちらの機密情報に触れるようなことがあれば、そのとき注意すれば良いだろう。

 

ちょっとカマをかけてみたくなった。

『ちなみに、あなたの出身はどこですか?』

 

『私は……』

やはり彼は一瞬躊躇した。それは立場上仕方が無いだろうな。

 

だが彼は続けた。

『私はミュンヘン出身です』

 

『ミュンヘン?ああ、もしかしてブルックナーですか?』

つい作曲家の名前が口に出た。これも私からの引っかけと言えばそうかも知れない。だが彼は珍しく驚いた表情になった。

 

『おおブルックナーをご存知とは!』

妙に嬉しそうな顔をした。これは本物かもしれない。私は安堵した。彼は信頼しても良さそうだ。

 

<<広場:音楽談義>>

 

そのドイツ兵は妙に嬉しそうな顔をした。

『学生時代にはよく教会学校の聖歌隊でブルックーを歌ったものです』

 

『ほう~ブルックナーの合唱曲を?それは難しいでしょう』

 

『指導する先生がミュンヘンフィルの弦楽奏者でしてね。練習は厳しかったのですが私もブルックナーは好きでしたから、やり甲斐がありました』

 

『うらやましいですね。私が学生時代は吹奏楽か学生コンクール用のコーラスくらいしかありませんでしたから。わが国にはまだ本格的な音楽体験というものは殆ど無くて』

 

『ぜひ一度ドイツへいらして下さい。ウィーンフィルハーモニーとか時期が合えばバイロイトでもご案内しますよ』

 

『それは楽しみですね。ぜひとも……』

そのとき、”あの、すみません”という小さな声がした。

 

振り返ると羽黒さんだった。

「あの、司令、済みません。緊急のお知らせが」

 

メモ紙を2枚手渡された。

「内容をご確認ください。詳細な伝達事項は、追って、作戦参謀または事務次官より直接説明がございます」

 

「分かった」

私が応えると会釈をして羽黒さんは去って行く。

 

『彼女も艦娘ですか?』

ドイツが聞く。

 

『そうですね。彼女は今は前線ではなく本省に居ます』

 

『なるほど日本の軍部中枢に艦娘が居るというのは素晴らしい。それは艦娘の地位向上にも寄与しますね』

ドイツは感心したように言う。

 

<<広場:緊急電文>>

 

彼に応えながら電文を開く。

 

1)美保鎮守府着任指令書 「駆逐艦 巻雲」

1)全鎮守府へ注意事項 脱走兵(マル秘)

 

また着任か~。あまり増えても把握できなくなるな。もう一枚はマル秘?脱走兵とは穏やかでないな。よく見ると手書きでごちゃごちゃ書き込みがある。

”特に巻雲が着任した美保鎮守府が疑われている。すぐに確認を入れておくこと”

 

また穏やかではないな。

 

『緊急事態のようですね。私はこの辺で……』

彼は帽子をかぶり直しつつ去って行った。引き際も見事だな。お互い趣味が似ているとは意外だった。

 

すぐに祥高さんが近寄ってくる。

「大淀さんから、緊急の中継電文が入りました」

 

「緊急?」

 

「本日、着任予定の駆逐艦到着が遅れていることと美保鎮守府司令部にも本省から……その、お持ちの電文が届いたので、どのように対処しましょうか?とのことです」

 

「分かった。まずは無線で、その艦娘への呼びかけと居場所の確認。もし何か事情があったら出迎えを出してやってくれ」

 

「この脱走兵の扱いは?」

 

少し考えて私は応えた。

「直感だが、脱走兵というのは、その着任する艦娘の知り合いだろう。着任が遅れているというのは行動を共にしている可能性が高い。まあ抵抗はしないだろうが……」

 

ちょっと間を置いて私は言った。

「神通を指揮官にして駆逐艦複数で出迎えではなく、こちらから地上捜索部隊を出してくれ。万が一に備えて全員、武装させて」

 

「了解しました」

祥高さんは軽く敬礼をした。やれやれ厄介なことにならなければ良いんだけどね。あ~あ、また地上作戦か。美保鎮守府ってのは本当に変わっているよなあ。

 

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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