マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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明日を前にして緊張する提督は、廊下での艦娘との雑談に華を咲かせていた。それが終わって部屋に戻った提督は、そのままダウン。久しぶりに見た夢は、初めて見る内容だった。翌日早朝からの行事を前に提督は早く起床。それは秘書艦も同様だった。


第20話(改)<消し難き想いを繋ぐ者>

”ありがとう、五月雨……いつまでも君を忘れないよ”

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第20話(改)<消し難き想いを繋ぐ者>

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<<本館:廊下>>

 

武蔵様が、聞いてきた。

「あの青い髪の艦娘は居ないのか?」

 

「いま、休んでいます」

祥高さんが答えた。

 

武蔵様は、ふと思い出すように言った。

「そうか……アイツは復活組だったな」

 

「彼女は青葉と言いますが……気になりますか?」

私は聞いてみた。

 

武蔵様は、腕を組んだ。

「そうだな……」

 

彼女は暗い窓から、月と夜景を見ながら遠くを見るような目をして言った。

「前にも言ったと思うが、あの艦娘には、何かを感じてだな……実は総司令官、貴殿にも懐かしさのようなものを感じるのだ……美保というのは確か山陰の鳥取県だったな」

 

「左様です」

 

「うむ……」

彼女は少し考えるような表情をしたが、それ以上は何も言わなかった。

ただ不思議と、彼女の考えていることは分かるような気がした。また、彼女自身が敢えて何も言わなくても、私には通じているはずだと思っているようだった。

私と武蔵様が、以心伝心のようにして、まるで目だけで会話しているような光景を見た金剛や清霜は、不思議そうに首をかしげている。それでも日向と祥高さんは、私たちの”対話”を理解しているようだった。

 

<<本館:雑談>>

 

しばし沈黙が流れたが、それを破ったのはやっぱり金剛だった。

「提督は、明日は英語でショ?私も頑張るから、期待してネ!」

 

私は苦笑した。

「頼んだよ」

 

「任せるネ!」

金剛は鼻息荒くガッツポーズをする。

(いや、ホントは遠慮して欲しい)

 

日向もボソッと呟く。

「私も、精一杯お支えします」

 

「ああ、頼んだ」

(気持ちは嬉しいよ)

 

祥高さんも静かに言った。

「司令、今夜は、もうお休み下さい。明日は早いですから」

 

「ああ」

ふと祥高さんと武蔵様では果たして、どっちが強いんだろうか?と、どうでも良いことを考えてしまった。でも適材適所、それぞれ用途が違うよな。

しかし、この二人とも普段は物静かな感じなのに、戦場では一番強そうだっていうのも、何ともいえないなあ。

 

このままダラダラ話していても仕方がないと思ったのだろう。祥高さんが号令をかける。

「総司令官に敬礼!」

 

わずか数名の艦娘ではあったが、さすが軍人だ。皆がその言葉に反応して、一斉に私に敬礼をした。私も返礼した。泣いても笑っても、明日からは第二の戦いが始まるのだ……でも正直、早く本土に帰りたいよ。

その思いを悟られたか、敬礼を直った後、日向が呟くように言った。

「司令、あともうひと頑張りですから」

 

「あ、ああ……」

ちょっと恥ずかしかった。今夜も月がきれいだった。私はそのまま、自室へと戻った。

 

<<まどろみ:境界>>

 

久しぶりな感じのする、自分の部屋だったが、中に入ると、もうどっと疲れが出てきて、そのままベッドに倒れこんだ。

いかん!着替えないと、身体の疲れが取れないぞ~っと思ったのもつかの間、いつもの如く、そのまま墜落するように寝入ってしまった。このまま寝てしまうと、また悪夢を見るのかな?でも大井は”復活”してきたから、さすがに、もう大丈夫だろう。そう考えてるうちに、意識が回転し始めた。やがて、暗闇を高速度ですり抜けるような感覚を覚えた。

 

あれ?……どこかからサラサラという波の音が聞える。

 

次第に、ぼんやりと視界が開けてきて、遠くに青い空と、キラキラと輝く広い海が見えてきた。えっと……いつもの、冬の日本海ではない。ここは、あまりにも明るい。

徐々に、周りの景色の輪郭がハッキリしてきた。サラサラという波の音かと思っていたのは、実は草原の広がる見晴らしの良い場所で、そこに風が吹いて、草や花、背の低い木々がざわめいている音だった。

そうか、ここは草原なんだ。でも、海軍の私と、この場所が、いったい、どういう縁があるのか?皆目見当が付かない。

 

その草原は、陽の光を浴びてキラキラしていて、まるで海のように見える。草原の表面に近づいてみると、なんだ?キラキラしていたのは、小さな花だった。やがて視界には小高い丘や、背の低い山が見えてきた。その頂上には、木?何本もの尖ったものが……いや、よく見たら人だった。

さらに眼を凝らしていると、次第にそれは近づいてきた。なるほど、艦娘のように見える。だが、まだハッキリとしない。

 

数人が、こちらに向かって手を振っている。私を見ているのか?そう思っていたら、人の気配を感じた。気付くと、私の居るこちらにも人が……そう、艦娘たちが立っていた。

私の直ぐ傍には、あの穏やかになった大井と、その可愛らしい娘がいる。その娘は、私を見て、ニコニコしている。そして、その隣とか少し後ろ側に、ああ、青葉さんか。彼女も、こちらを見て微笑んでいる。その直ぐ後ろには凛とした加賀さん……相変わらず無表情に近い。ちょっと離れて伊19もいる。何となく、キョロキョロしている。

 

誰も、言葉を交わすことも無く、喋るでもなく。ただ立っている。それでも私がいることは分かっているようだ。ただ何だろうか?まるでマネキン人形のように、生気がない。スカスカなものがそこに、ただ置いてあるといった感じだ。いや、かろうじて大井の娘だけが、無邪気に遊んでいるし、いちばん”生きた”感じがする。

 

ここは何処なのだろうか?

 

死んだ人間、あるいは艦娘たちが集まる場所なのか?それにしては、あまりにも明るく穏やかだ。それに、ここはいつもと違って、大井だけじゃない。今回は、たくさん出てくるんだな。

そして……向こう側にも、艦娘が居た。なあんだ、結構たくさん居るんだな。

でも、向こう側と、こちら側の艦娘とに、なんとなく分かれているようだ。なぜ、二つに分かれているのか?そして、私はなぜ、ここにいるのか?

 

あ、そうか。夢なんだよな。私は、疲れてベッドに倒れたんだっけ。

 

<<まどろみ:出会いと別れ>>

 

夢の中で夢だと自覚するのは、私は珍しくない。ただ、あの大井と見る夢は、夢にしてはあまりにもリアルだ。そして、今見ているこの”夢”もまた、リアルだった。

いや、そもそもこれは、本当に私の”夢”なのだろうか?もしかしたら……そう考えているうちに、向こう側にいた艦娘たちが、こちら側に近づいてきた。軍人の癖で、つい身構えてしまったが、彼女たちは、艤装はおろか、武器も何も持っていない。その軍服も、いつものものと同じ感じだが、ちょっと透けているような、透明な雰囲気がある。(いや、裸体が見えるわけじゃないんだが……ちょっと残念!)

 

近くまでやってきた、その艦娘たちを見て、私は正直、ぎょっとした。何となく覚えているぞ……龍驤に、比叡、龍田、叢雲、扶桑……そして吹雪と……皆、試作型の、”死んだ”艦娘たちじゃないか?するとやっぱり、ここは危ない場所じゃないのか?

 

ただ、向こうから近づいてきた彼女たちの表情は、とても明るかった。それでも彼女たちに生気が感じられないのは、同じだ。もしここが三途の川みたいな、この世とあの世の境界線だとしたら?生気がないのも当たり前だよな。私は、独りで訳の分からないことを考えて、納得している。

 

やがて、向こう側の艦娘たちと、こちら側の艦娘たちと、順番に抱擁を交わしていく。私は……無視されるでもないが、艦娘たちも、私に会釈をしながら、やや事務的な?軽い感じで、私の目の前を通り過ぎていく。

そして向こうから一番最後に、やってきたのが五月雨だった。確か、彼女は頭を撃ち抜かれていたが……この世界では全く傷一つ無い。しかも彼女は、立派な秘書艦の服装のまま、こちらに近寄ってきて、順番にこちら側の艦娘たちと抱擁をしている。とても、凛々しかった。

 

その間も、誰一人として、言葉を交わさない。そういう場所なんだろうな……私は、彼女たちの”儀式”を、ただ、見守るだけだった。

やがて、そのまま向こう側から来た艦娘たちは、引き返すようにして再び、あちら側の丘へと歩き始めた。一番最後に抱擁を済ませた五月雨は、私の前を通過するときに、急に立ち止まった。いや、歩いている感じがしないので、静止したという印象だが。

そして、彼女は私のほうを向き直ると、ゆっくりではあったが、敬礼をしてくれた。当然、私も敬礼をした。

 

あ……

 

五月雨が、ポロポロと涙を流し始めた。や、やめてくれ……こっちまで哀しくなる。

だが五月雨は、泣きながらも微笑んでくれた。それは、”私の涙は、決して哀しみから生じたものではないんです”……ということを伝えているのか。ただ微笑むほどに彼女は涙が止まらなくなっていた。

 

ここは……青葉は居るけど、カメラも無いし、きっと無礼講だろう思ったので、私も思わず泣いた。そう、遠慮なく、自然に涙が流れた。親の前でも、艦娘の前でも流したことの無い涙だぞ。五月雨……結局、君とは、ここ現代のブルネイでは、あまり縁がなかったが、その一途さには、ただ、頭が下がるよ。

 

<<まどろみ:旅立ち>>

 

そう思った瞬間、五月雨は何を思ったのか、急に私に抱きついてきた。私は全身で彼女を受け止めた。瞬間的に、時が止まったような感覚を覚える。私はブルネイ司令ほど長身ではないが、そんな私でも彼女の頭は、やはり胸の辺りに来るんだ……ああ、彼女は最期に総司令官である私のところに挨拶に来たんだな。そう思いながら、私も彼女をそっと抱きしめた。

 

そのとき不思議な風が吹き抜けて、タンポポのような小さな白い花が、いっせいに空中へと舞い上がった。ああ、そうか……あの一つひとつの輝きは、地上から消えていく防人の魂なんだと思った。ここは、それを確認する場なのだ。

その花吹雪の中で、五月雨は私から離れた。そして、もう一度、敬礼をすると……今度は涙を流すことも無く、微笑んで、少し向こうで待っていた艦娘たちと元へと歩み始めた。

 

私……いや、こちら側に居る艦娘たち全員で彼女たちに敬礼をした。

丘の向こうは、こちら以上に明るい。彼女たちが歩いていく方向は、霞(かす)んで良く分からない。でもそこは決して恐ろしいところや、寂しいところではないと思えた。

 

そうか。艦娘たちは、地上へ引き上げられなくても、こういう形で見送ることもできるんだ。いわゆる”成仏”っていうんだろうか?私は仏教徒でも何でもないが、艦娘たちの魂が、この世に未練を残すことなく逝くことが出来るのだと知った。

そして気付いた。総司令官という位置は、あらゆることに責任を持つ重要な位置なのだ。それは地上の戦闘では指揮官であり、戦闘が終われば、戦後処理で走り回る。やがて傷つき旅立つ戦士たちの前には、送り人にもなるのだと。

 

すべてを導き、そして最期を看取って送り出す。それは、自分に内容が有る無し以前に、運命の悪戯というのだろうか?たまたま軍人がそこに居て彼に、ある程度の位置があれば、それで良いのだ。誰でも境界を跨いでつなぎ行き来させる、そんな使命を担う可能性が有るのだと思った。

もともと軍人なんてそんなものだ。国家という大きなものの前に防衛という使命があり、それを果たすべき時と場所に必要な軍人が居れば、それで良いのだ。一人が倒れたら、また新しい一人が立てば良い。ただ、それだけ。

でも、たまたまそこに居た”自分”という個人の内容はさして問題ではない。その個人はただ皆の一途な想いと国家の大計を一つに束ねるだけ。その為には、むしろ私心も何も無い、空っぽな人間のほうが、すべてを受け入れて流し、送り出せる触媒になれるのだろう。

 

私は、そんな必要な場所に”たまたま”一介の部品として、そこに居た軍人に過ぎない。でもそれだけで十分だ。そんな私を国家が期待して使ってくれる。そこに軍人として何の文句があろうか?いや、何も無い。私は帝国海軍の軍人として、誇りを持って国家の前に、国民の前に、そして艦娘たちの前に職務を果たすだけだ。

 

五月雨……私は、既に霞んで消えつつある彼女の後姿を見詰めながら語りかけた。

君にも、特別に優れた内容があったわけじゃないよね。たまたま君も、そこに居ただけだろう。でも君が居たブルネイ側の秘書艦という位置ゆえに君は最大限に輝いたんだ。だから君は全力で立って、秘書艦という使命を全うした。それがあったから、最期に君は立派な姿で旅立てたんだ。そんな君の最期の姿に私も教えられた。だから私も心からの、言葉を送ろう。

 

ありがとう、五月雨……いつまでも君を忘れないよ。

 

ふと振り返ると、青葉さんも、大井も、皆微笑んでくれた。そうだ、地上に遺された私たちも、しっかりと最期まで戦おう。そして必ず全員で無事に本土へ帰ろう。愛する日本へ、愛する故郷へ。

 

<<早朝:廊下>>

 

気がつくと、やっぱり軍服を着たまま朝になっていた……いや正確には、まだ未明というか、早朝だな。やれやれ、またやってしまったか。見れば窓の外はまだ暗い。時計は、午前3時半を指している。だが、早めに準備をした方が良いだろう。私は起き出すと洗面を済ませ、式服に簡単にアイロンをかけた。まあ、こういう生活も仕方が無い。軍人は常に非常時だからな。

 

4時半ごろ、誰かがノックをする。祥高さんだろうと思って扉を開けたら、やっぱりそうだった。彼女は既に式服を着ていた。

「もう起きていらっしゃいましたね」

 

「ああ、こういう式典は先方にも失礼があってはいけないからな」

 

彼女は周りを、ちょっと気にしてから、少し小声で私に言った。

「実は私、あの夢を見ました」

 

「そうか、私もだ」

躊躇(ちゅうちょ)無く私がそう応えると、彼女は少し微笑んだ。思わず私も笑った。何となく……そういうことだ。

 

直ぐに彼女は報告をした。

「今日は0600から国営墓地で式典です。0530には、正面玄関から車が出ます。それに総司令官と私、それに護衛として夕立が付きます」

 

それを聞いて私は言った。

「でも、いざとなったら君も撃つんだろ?」

 

彼女は微笑んだ。

「それも私の任務ですから」

 

「そうだな」

私は、うなづいた。

 

「まだ、お時間がありますから、簡単な食事を準備しました」

そういって彼女は、おにぎりを差し出してくれた。

 

「おにぎりか、何だか懐かしいね」

 

「はい、やはり日本人はこれですよね」

 

「助かるよ」

 

「では、出発10分前に、再度伺います!」

軽く敬礼をして彼女は退去した。

 

窓際のデスクに向かって、私はおにぎりを眺めた。お米の手配も、これを握るための準備も大変だっただろうに。祥高さんって、ある面、秘書艦としても世界最高レベル……いや、仮にケッコンしたとしても素晴らしい奥さんになるだろうな……と妄想してしまった。単純に比較したら、夕立が3人いても祥高さんには足りないかな……もちろん夕立も頑張り屋さんだけどね。

 

しかし祥高さんも、いざとなると押しが強いというか、ちょっと太刀打ち出来なさそうなところが、唯一の欠点かなあ~?もっとも艦娘っていうのは皆そうかもしれない……あ、五月雨とか羽黒さんは違うか?うーむ。考えながら、お握りをぱく付く。

「うまい……」

 

日本人は外地に出ると、味噌や醤油が無性に恋しくなるというが、おにぎりも然りだな。

 

<<早朝:出発>>

 

予定時刻の15分前には、再び祥高さんが来た。10分前には私たちは部屋を出た。私は廊下を歩きながら祥高さんに聞いた。

「他の艦娘たちも来るのかな?」

 

「全員、参加を希望しています。あのブルネイ司令のお兄さんが、トラックを出してくれることになっています」

 

「そうか……」

正面玄関に出ると、黒塗りの車が2台、既に待機して停まっていた。

 

私は車の近くに立っていたブルネイ司令に聞いた。

「豪華な車があるんだな?」

 

「1台は鎮守府のものだ。VIPとか誰が来るか分からんからな。もう一台は、ブルネイ政府……実質は軍だが、そこが廻してくれた」

 

「なるほど」

見ると夕立も、きちんとした格好で立っていたが、居心地悪そうだ。確かに、護衛でなければ、夕立は苦手な任務だろうな。

 

「私も普通の見学が良かったのにぃ~」

ちょっと口を尖らせているが……おい!誤解するなよ、これは任務だ。見学じゃないっての。よく見ると、彼女は長い包みを持っている。多分、祥高さんの機銃だろう。あれが火を噴かないことを祈るばかりだ。

 

おや?向こうに日向が居る。祥高さんが説明する。

「ブルネイ側の護衛として、日向さんにお願いしました」

 

なるほど射撃の腕は、この二人なら適材適所だけど。あの境港の墓参のときの、強烈な射撃コンビだよな。私は苦笑した。

「行こうか」

 

「ああ」

ブルネイ司令の先導で、私たちは車に乗り込み、国営墓地へと向かう。町はまだ、うす暗かった。

 





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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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