『愛すべき艦娘たちに』
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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)
:第21話(改)<追悼式典・防人への賛歌>
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<<早朝:車中>>
私たちは、後ろの車に乗り込んだ。こっちはブルネイ側が準備した車で運転手も、現地の凛々しい青年だった。何となく、あのSP男性に似ている気がしたので、英語でちょっと聞いてみた。
『失礼ながら、君は王宮のSP男性をご存知ですか?』
彼は一瞬、驚いたような表情を浮かべていたが、直ぐに微笑んだ。
『はい、それは私の兄だと思います。彼は王宮に、私は弟で軍に居ります。今日は、よろしくお願いします』
『ああ、頼むよ』
彼は、微笑むと『念のためにベルトをご着用ください』と言いながら、運転を開始する。その笑顔も彼と似ていると思った。車は滑るように正面玄関から町へと出た。日向もうまいけど、彼はもっと上手い。VIPも乗せるわけだから当然か。
「ねえねえ~」
助手席の夕立だ。
「なんだ?」
「トランクに入れたアレ、私が撃つっぽい?」
いきなりそこか?
「いや、基本的には祥高さんが使うと思うけど、状況によっては、お前が撃つだろうな」
「ふーん」
ちょっと考えている夕立。
「夕張が作った、”境港1号”よりも強いのかな?ちょっと古い感じがしたけど」
鋭いな。だけど、”境港1号”って何だよ?いつの間に名前が付いたんだ?
私は、ちょっと意地悪く聞いてみた。
「でも、お前に扱えるかな?境港のときは、”1号”は銃座に据えて撃っただろう?今回は、下手したら素手で構えるんだぞ?」
「ええ~?私だって海の上で主砲とか撃つんだよ。多分大丈夫っぽい」
はい、スミマセン、愚問でした。なぜか祥高さんも笑っていた。
<<国営墓地:正面>>
弟の運転手が言う。
『国営墓地には直ぐに到着いたしますが、式典会場そのものは入り口から少し距離がありますので、お早めにお願いいたします』
『分かった。ありがとう』
そうこうしているうちに、直ぐに国営墓地の入り口前駐車場に着いた。参列者の車もあるけど、報道関係も意外に多かった。ただ、報道は、駐車場には入れないので、近くの道路に軒並み停車している。朝早くからご苦労さんだね。
ただ、場所が場所だけに、プレスの入場や行動は厳しく制限されると運転手の男性は説明してくれた。
『もう直ぐ正面に到着します。お帰りの際は、降りた場所へお越しください。すぐに参りますので』
『分かった、ありがとう』
『司令の行動は、こちらにも無線で入りますので、細かい時間は気にせず、ご自由に動かれて結構です』
『分かった、ありがとう』
同じことしか言わないな、私。
直ぐに墓地の入り口ゲートまで来た。ブルネイ司令は先に到着していて私を待ってくれていた。祥高さんと夕立が下車し、トランクから例の包みを取り出している。事前に許可を取っているのだろう、入り口のチェックでも特に問題は無かった。その機銃は、夕立が抱えた。というか、軽々と背負っているから、彼女が言った、”大丈夫っぽい”というのは本当だろう。
改めて、艦娘は強いなと思った。ブルネイ司令の義兄のトラックもチラッと見えた。美保の艦娘たちも、既に着いているようだな。あいつらも、相当、早起きしてきたんだろうな~、やっぱりタフな連中だ。
<<国営墓地:正面>>
墓地内には多少マスコミ関係者も居るが、さすがに強引な取材は無い。そこは、わきまえるだろう。ここは静かに故人を想う場所だからな。それでも、こんなに来るのか?と思うくらいに、マスコミ関係者は多い。もちろん、ブルネイ側の政府や王宮、それに軍や警察関係も多い。
気のせいか、私と祥高さんも、マスコミから注目されている感じがする。今さら恥ずかしいとか言ってられないが、敵の攻撃をある程度、食い止めたとなれば注目もされるだろう。
もちろん、これは全体の勝利であるが、その象徴的な位置に立つのが総司令官だ。昨日の夢でも思ったが、ここに居るのは、私という個人ではない。そう思えば今まで感じていた重圧が、さほど気にならなくなるから不思議だ。
この式典には、ブルネイの一般市民も結構、居るようだ。昨日のミサイル攻撃で、町にもかなり被害が出ていると聞いた。そういった犠牲者も含めての国葬だと考えれば、ブルネイ一般からの注目度も大きいだろう。
車内では、やや興奮気味だった夕立も、ここでは意外におとなしくしている。この娘も黙っていれば可愛いのにね。まあ、そういう面から考えても、改めて秘書艦であり重巡・祥高さんの渋さが光る。別にそんなに年寄りではないけど、彼女と私とではキャリアが違う。彼女自身、前線が長かったとはいえ、やはり式服につけた勲章の数の差は大きい。特にこういった場所では目立つ。マスコミも、そこに注目している感じがある。ただ今朝の彼女は若干、勲章の種類を間引いているよな。まあ確かに墓地で勲章を、これ見よがしにつけるのはちょっとね。そこは遠慮したのかも知れない。こういう配慮が出来るところもまた、彼女は秘書艦の鑑だよなと思わされれる。
<<国営墓地:会場>>
しばらく歩いて、やがて私たちは式典会場に到着した。夕立は脇へ避け、私と祥高さんは、案内係に従って、来賓席に着く。他にも、ブルネイ司令や、ブルネイ政府機関や王宮、軍関係者が居る。作戦参謀は、来賓側の席に座っていた。次官も見える。よく見たら、後ろのほうに、あのフィリピンの特使まで居たのには驚いた。ブルネイと国交は無いが、特別に招待されたようだ。隣の長身の男性は、アメリカ人のようだが、やはり軍人だろうか?
来賓以外の関係者は、全員周りに立っているが、その中には、艦娘たちや、海外武官の姿……ドイツやイタリアの姿も見えた。技術参謀もいる。さすがに緊張するな。
やがて静かに開会が宣言される。司会進行は、あのブルネイの美人秘書官。喪服を着ているが、それでも美人には違いない。全員が起立して厳かにブルネイ国歌が演奏され、続けて君が代が演奏された。私は久しぶりに”君が代”を歌ったが、意外だったのは祥高さんを始め、艦娘たちのほとんどが口パクではなく、実際に歌っていたことだ。なるほど、艦娘たちは日本人以上に、日本人なのだ。まあ、れっきとした帝国海軍の軍人だからな。当然か。
両国の国旗が掲揚され、粛々と式典が進む。最初にブルネイ軍の代表者が挨拶をして、簡単に祈る。そして参列者代表の献花となる。マスコミ関係者の中にはTVカメラも居るから、これも中継されるのだろう。
やがて、私のところに案内係が来た。ついに来たか。私は誰か代ってくれ~と内心思いながら席を立って、演台へと向かった。
<<会場演台:演説開始>>
明らかにマスコミのカメラが一斉に私に注目している。ドキドキする!私は、エスコート役の人に従って、演台に立った。演台にはマイクが何本か立っており、会場の、たくさんの人が見える。
いかん、やっぱり緊張するぞ!こういうときは、目の前はカボチャやダイコンだ、野菜畑だと思え!……でも、あまり効かない。私は背筋を伸ばして、遠くを見た……木々が豊かな公園だ。ビルが見えるなあ。ここで深呼吸~。
でも、いつまでも黙っているとバカみたいなので、もう話し始めよう。当然、片言の英語だが。私は何度も深呼吸をして、マイクに向かって語り始めた。
『今日、ご参列の皆様に感謝申し上げます。私は日本帝国海軍、美保鎮守府提督であり、演習及び敵襲に対する総司令官の任を受けております。このたびは深海棲艦と呼ばれる敵と、そこに加担するある国との戦いに多くの罪の無い市民の皆様……ブルネイ国民の皆様が巻き込まれてしまったことを、心からお悔やみ申し上げます。同時に我々軍人があまりに非力であったこと、十分お守りすることが出来なかったことを、深謝申し上げます』
ここで頭を下げた私は間を置く。会場は静かだ。風が出てきたな。私は続ける。
『人は、いずれ死にます。生きている私たちが平和な生活をするために家族や国家は最低限必要です。それを守るのが我々軍人です。しかし安全とは、常に脅かされるものです。そして世界は今もなお不安定です。もし誰もが自分だけを見つめていたら?世界は混乱し”力”だけが正義となるでしょう。ところが正義とは分かりにくい。そもそも大国の言うことが正義でしょうか?逆に、個人の主張することも果たして正義なのでしょうか?』
ここで、再び間を置く。私は演台に置いてあるコップの水を飲んだ。
<<演説:後半>>
『私は軍人であり、自分の正義の前に国家安寧を願います。私の指揮する艦娘部隊は、日本の山陰という地方で、空軍と陸軍に挟まれて永らく専守防衛に甘んじて来ました。すなわち攻撃されたら、反撃する……それは、今までの軍人には耐え難い立場です。でも私の部隊の彼女たち、その艦娘たちは違いました』
ここで、来賓席に居る祥高さんを見た。彼女は微笑んでいた。風は強くなったり、弱くなったりしている。今のところマスコミも静かだ。
『彼女等は主体たる国家や市民の前に、ひたすら忠誠を誓います。そして、国民の安全が脅かされる時には、命懸けで戦うのです。激しい戦いの後、多くの艦娘たちは、人知れず散っていきました。私も指揮官として幾人かの艦娘たちを見送りました。それは、想い起こすだけで胸が痛みます』
ちょっと涙が出そうになった。私はハンケチで、汗を拭くまねをして誤魔化した。後ろに居る伊号たちや、大井……来ているな。彼女たちを見ながら続ける。
『でも真実は隠すことは出来ない。私は宣言します。艦娘は真実であり、この時代に与えられた光明なのです。私は決して忘れない。平和の為に犠牲となった艦娘たちを!』
ブルネイ司令を見た。彼はうなづいていた。五月雨……良い艦娘だったな。
『私は艦娘たちを信じます。彼女たちによって人類は救われるのだと確信します。やがて世界は男性だけが支配していた力だけの世界を越え、新たな女性の時代を迎えるでしょう。それは私の確信であります。もはや私たちだけで深海棲艦に立ち向かえません。しかし艦娘たちだけでも、いけないと思います。お互いが認め合い、力を合わせてこそ、世界に平和を作り出すのです』
私は艦娘を見た。あれ?何人かが泣いている。ごめんね、泣かすつもりは無いんだけど。
『犠牲者の上に立つ平和。もちろん、理想は軍の不要な世界でしょう。しかし世界の現実はそうはなっていない。だからこそ、国を脅かすもののために戦い、犠牲になったものには、最大限、報いてやりたい。そう、国家の為に死ねば、幸福になると思いたいのです。公のために犠牲になる者には必ず幸福が来ると……そのように国家が、そして指揮官が約束しなくて、いったい誰が戦えますか?そこには、日本とかブルネイといった、国境はもはや無いのです』
カメラを持った青葉さんが泣いている……ごめん、泣かしたね。でも、シャッターは切っている。頑張れ!
私はまとめる。
『これは万国共通の理念です。私は感謝します。皆さんとの出会いに、そして、ブルネイと日本両国の結び付きに、そして最後に……』
私は再び艦娘たちを見た。彼女たちもこちらを見ていた。私は心をこめて結びの言葉を言った。
『愛すべき艦娘たちに……両国の平和と発展を心から祈念いたします。ありがとうございました。』
そして私はまず一礼、そして来賓たちにも礼をした。会場からは、一斉に拍手。場所が場所だけに皆、控え目ではあるが、それなりに感銘を与えたようで、ホッとした。これが全世界に配信されるんだろうな。だがこれが今、私が出来る艦娘たちへの最大の支援だ。
艦娘たちも概ね嬉しそうにしている。むしろ、そっちのほうがホッとしたな。百パーセントではないだろうが、言い切ったぞ!お前たち!やりきった感があり、ちょっと清々しかった。そのとき、会場周辺に日が差してきた。
私が壇を降りると、近衛兵たちが、号令と共に空砲を撃つ。そして、全員が敬礼をした。一斉に、白い鳩が放たれた。
ブルネイと日本の国旗が、風になびいていた。それは、両国の未来を象徴するようだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。