『いずれ艦娘の基地が設営されることを』
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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)
:第22話(改)<艦娘と諜報そして未来>
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<<散会:そして墓参>>
最後にブルネイの美人秘書官が総括をする。朝日を浴びて彼女もキラキラしている。もちろん、艦娘たちも……特に金剛型の姉妹たちは、頭の被り物が……アレは絶対、王冠だよなと思うんだ。
そして、意外と和やかなうちにセレモニーは無事に終了した。後は各自、墓参したい者は参るわけだな。ブルネイ司令が近寄ってきて言った。
「まだ慌てて直ぐに帰らなくていいからな。こういう場には要人が多いんだぞ」
「なるほどね……」
上に立つというのは、いろんな意味で人付き合いが多くなるんだなと思った。ただ、私はちょっと気になって彼に聞いてみた。
「犠牲になった艦娘たちの墓石もあるのか?」
「ああ、その先にある」
まさか……と思って、ブルネイ司令の指したエリアに行ってみたら、うわ、本当にあった。これには、さすがに驚いた。そこには既に、ブルネイや美保の艦娘たちが、花を手向けていた。金剛がニコニコしながら聞いてきた。
「テイトク~、境港の墓参り、思い出しマース!」
「あ、ああ……」
艦娘たちは器用に、お墓を掃除したり(新しいから、十分に綺麗なんだが)順番に手を合わせている。そんな光景を見ていると、あのドタバタ墓参も、ムダではなかったのだと思えた。
「さっすがですねぇ~、司令の先見の明には感服です!」
比叡に言われても、あまり嬉しくないが……まあ、偶然なのかなあ~。
榛名さんが聞いてくる。
「墓参って、何でしょうか?」
……ああ、そうか。彼女は量産型だから、こういうことはまだ何も知らないんだよな。
しかし、まさか自分がお盆に墓参した翌月には異国の地で、艦娘の墓石に参るようになるとは、想像を絶する世界だ。ここ数ヶ月で私の人生も、いろんな意味で変化の連続だったなと思う。やはり艦娘部隊への着任は、私の人生にも大変革をもたらしたようだな。
「おう、美保鎮守府の艦娘たちは、墓参の方法を知っているようだな、感心だ」
いきなり背後から、寛代を連れた技術参謀がやってきた。
「あ……いや、たまたま先月、実家の墓参に何人か連れて行ったので」
私は説明した。そういう技術参謀は、何となく墓参とか、日本の古来からのしきたりは詳しそうだな。
「ああ、私は一通り知っているぞ。意外とあの祥高が、そういうのに一番詳しいがな」
なるほど、そんな感じがします。
言うそばから祥高さんが、あまり詳しくない艦娘たちに墓参の方法を指導している。東洋的な作法だから、海外のマスコミも興味深そうに取材をしている。その姿を、また青葉さんが撮影して……ややこしいな。
<<会場:大井と青葉>>
壇上からだと良く分からなかったけど、会場には、復活した加賀さんや、大井とその娘も居た。私はつい、大井に声をかけた。
「元気そうだな……大丈夫なのか?大井」
大井は娘を連れているからだろうか?ちょっと恥ずかしそうにして、うつむき加減に応えた。
「お陰さまで……」
私は、なおも続けた。
「北上さんが驚くだろうな……お前が戻ったら」
「そうですね……」
なんだか、以前の大井らしくないな。イメージが狂うというか……私は苦笑した。ただ新しい艦娘たちと、”復活”という内容は希望だ。そこに新しい時代の訪れを感じるのは私だけだろうか?
もっとも私と艦娘たちとの親密な付き合いは、まだ始まったばかりだと思う。まだまだ艦娘についても、知らないことだらけだ。そこは少しずつでも、お互いに情報交換しながら学んで変えていかなければならないだろう。
すると急に青葉さんがカットインしてくる。
「司令!なんで北上さんは”さん”付けで、大井さんは”大井”って、呼び捨てなんですか?」
うっ!いきなり鋭い突っ込みだな。さすが取材記者だ!
「いや、そんなことはない。大井……さん」
ちょっと引きつって大井を呼ぶ私。その姿を見てカメラを構えたままニタニタする青葉さん。
だが大井は、はにかみながら呟くように言った。
「良いんですよ、司令……。私は後ろから、いつも御姿を見ていますので」
「……」
大井と私で赤面しそうだった。
私は青葉さんに突っ込まれる前に反論する。
「だいたいな~青葉さん!君も昨日、復活したばかりだろ?そんなに身体で走り回って大丈夫なのか!」
私の言葉に反論する青葉さん
「大丈夫ですって!取材が私の命ですから!」
まあ、それはそうだ。彼女の言うことに異論は無い、やっぱり元気な青葉さんが一番だ。ところが、青葉さんは急にうつむき加減になったかと思うと、さっきとはうって変わって、少し押さえた口調で呟くように言った。
「でも司令……そろそろ私も、呼び捨てにして下さっても良いんですよ……」
「あ……」
そういうことか、ごめん。気が付かなかった。私とお前の……そういう距離感か。
「分かった青葉……さん」
私は握手をしようと手を差し出したが、今度は青葉の方が真っ赤になってしまった。やれやれ忙しいな。私は、やや強引に彼女の手を取った。あ~、よけいコチコチになってんの。なんだか、こういう青葉って、可愛いよな~。
「あの……その、これからも、よろしくお願いします」
何だよ?かしこまって……でも、まあ良い。青葉も、きっと生まれ変わったんだよな。新生青葉だ。
「ああ、ヨロシクな」
「はい……」
こういった感情の起伏の幅を広げて、艦娘と私たちの関係も、より一層、深まっていくのだろう。
なぜか、そんな私たちを海外のメディアが撮影していた。ちょっと恥ずかしいな。
「テイトク!」
「はい!」
慌てて振り返ると、やっぱり金剛だ。
「ヌ・ケ・ガ・ケは、No、No~!」
チッチと人差し指を立てて左右に振りながら、舌打ちをする彼女だけど。そもそも何でお前の口から、”ヌケガケ”っていう表現が出て来るんだよ!べつに関係ないだろ~。
でも金剛は、腰に手を当てながら、胸を張って言い放つ。
「公衆の面前で、そういうモノを陳列してはいけナイデ~ス!」
「何だよっ、陳列って?」
私は呆れた。
「いやいや、お姉さま~!」
すぐさま横から比叡が乱入する。思わず身をかわす私。だがこの一部始終は、海外のメディアにしっかりと記録されていく。ああ、日本の帝国海軍の恥部が、海外に報道されてしまう……この状況には、ブルネイの比叡と、榛名さんは、もはや付いて来れないみたいだし。青葉と、いつの間に来ていた夕張さんは、ただニタニタ笑うだけ。
でも、少し離れて寛代と一緒に腕を組んで私たちを見ていた技術参謀は、意外に喜んでいるようだった。寛代も、興味津々といった様子だし。その隣で防衛次官が手を叩いて喜んでいるのは論外。あれは道化だ。
おや?そのまた隣には、リベッチオを連れたイタリア武官と、Uボートを連れたドイツ武官が居た。
私は、混乱から抜け出すと、何とか彼らに近づいて行った。
<<会場:日独伊>>
私が近づくとイタリア武官は『チャオ』と言い、ドイツ武官は無言で敬礼をする。当然、私も敬礼で返した。イタリアは高級そうなスーツを着ているが、ドイツ武官は軍服に赤い腕章。見るからに対照的な二人だよな~。
やはりドイツ軍人は独特の威圧感があり、艦娘たちもちょっと引いている。そしてドイツ武官が、ささやくように英語で言った。
『あなたが連れてきた艦娘が持っている機銃、アレは正解でしたよ』
『何か?』
いきなり着目点が凄いな。
『昨日、ブルネイの司令官を狙撃したスナイパーの仲間が、今日も動いて居たようですが、あの機銃を持った艦娘を見て、やはり躊躇したようです』
『未だに狙っていたのか』
冷や汗が出た。
『そうです……ただ、これ以上は彼らも手を出さないでしょう。実力行使よりも、今度は政治的に圧力をかけてきますから』
『国連か……』
『まあ、そういうことです』
やれやれ、厄介な常任理事国だ。
<<会場:米特殊部隊>>
今度はイタリアが、スカーフをいじりながら言った。
『それにネ、この会場にはホラ、おたくの大井の娘?彼女を救い出した米軍の特殊部隊の隊長が居るのよ。向こうにフィリピンの特使が居るでしょ?』
私はイタリア武官の視線を追った。すると、あのバーコード頭のフィリピンの特使が居た。彼は遠くから会釈をしたので、私も会釈をした。確かに彼の隣には、いかにも軍人風の、スキンヘッドの大男が居る。
『あれはネイビーシールズよ。米軍も最近は、シナの動きに目を光らせていて、あのタンカーのことも、事前に察知していたみたい』
『なるほど、やはりそうだったか』
『ただ、あの捕虜を救出する命令は、どうやら米国本国からの指示では無かったみたいね。それでも、情報収集のための特殊事情ということで、特にお咎めも無かったみたいよ』
『良く調べてますね』
何となくイタリア軍の実力を思い知らされた。同時に米軍の特殊部隊の能力の高さも見せ付けられた思いだった。なるほど逆に、こちらに恩を売ると同時に、そうやって牽制して来ているとも言えるわけだ。なかなかしたたかだな、あのバーコード。まあ、悪い人では無さそうだが。いやむしろ、したたかなのは米軍の方か。やれやれ、国際関係は面倒だな。
イタリア武官はクネクネしながらさらに続ける。
『ウフフ、アタシもさぁ~、だてにオネエやってるわけじゃないのよ。日本も、もう少しは諜報力を付けた方が良いわネ』
だから、そこでウインクをするなって。金剛が見たら、また誤解される。
『海軍省にも伝えておきます』
私は、ちょっと苦笑いをしながら答えた。
今度はドイツが口を挟んだ。
『わが国もイタリアには負けていない。どうだ?貴殿は今度、ドイツに視察に来ぬか?せっかくだから、艦娘も何人か連れてきたら良い』
<<会場:次第に混戦>>
『よっしゃあ~、その話乗ったぞ!』
いきなり背後から、作戦参謀が来て驚いた。ドイツとイタリアは、その登場の仕方には驚いていたが、彼らも海軍の作戦参謀自身の存在は、既に知っているようだった。
『だから言っただろう?チャンスは生かせ!』
参謀は相変わらず、ぐいぐい食い込んでくるな。
『いや、しかし私の独断では……』
私はちょっと引いた。
『海軍省なら、オッケーだぞ!』
うわ、今度は防衛次官だ!何だよこいつらの突進力は?
『さっきの演説、良かったぞっ、もう合格だな!あのくらいの話が出来るなら、いつ海外へ飛んでも大丈夫だ!』
次官、持ち上げてきますね。
でも私は思わず躊躇する。
『いや、それはさすがに……美保の艦娘たちとも、まだこれからですし……』
『ドイツはいつでも大歓迎です』
いきなりそこで言うか?ドイツ。
『何?イタリアだって負けては居ないのよ!』
ちょっと……別に、この場で張り合わなくても。イタリアは改めて、防衛次官の方を向いた。
『日本帝国海軍の次官に作戦参謀殿!聞いてくださいって~!イタリアだって、今はまぁ~、一時期よりは、ちょっとは見劣りしますけどね~。でも、欧州はもとよりユーラシアからアフリカにまで連なる広大な情報網を持っているのっ!ぜひ今後も彼の派遣先としてぇ、イタリアも候補の一つとして、ご検討のほど、よろしくお願いするわぁ!もちろん艦娘たちも一緒にネ!そこんとこヨ・ロ・シ・ク!』
なんだ、一気にまくし立てたけど結局は艦娘の情報が欲しいんじゃないか?でも彼はそう言いながら、次官の手を握った。うははは、さすがの次官も冷や汗かいて、苦笑いしているぞ!いい気味だ、もっとやれ!
『テイトクぅ~!』
ああ、やっぱり金剛、お前か~!なまじ英語が喋れるから厄介だよな~こいつも!
『その海外遠征の話、ぜひ金剛もご同行お願いするのデ~ス!』
ちょっと下を向いて、指先をいじりながら、モジモジして訴えてくる。何だよ?これは。
『まだ、決まった話じゃないよ!』
思わず反論する私。
『ええ!お姉さまぁ~!』
だからなんで、そこで比叡が美保とブルネイでダブルでカットインして来るんだよ!
「えーっと、榛名も聞きたいです!」
ちょっと、今度はいきなり榛名さんまで来るか?
……あ、でも金剛型が乱入してしてくると、独伊の武官はさりげなく席を外した。マスコミの注目を集めるから、なるほど彼らは画面に映りこまないように自然に用心するんだろう。それは作戦参謀も同様、さっと下がって行った。
その直後に、日本や海外のメディアクルーが私たちに注目して、私たちの周りを取り囲んだ。ストロボが光る。やれやれ、これも仕事のうちかな?でも次官は、カメラの前でも逃げずにヘラヘラしている。やっぱりミーハーな道化だな、この男は。
<<会場:時間調整>>
私もどちらかというと、人前に出るのは苦手なタイプだ。防衛次官が「おい!逃げるな~」って呼んでいたような気もしたが、無視して、そそくさと混乱から脱出した。直ぐ近くに祥高さんがいたので、聞いてみた。
「私も、もうそろそろ引き上げても良いかな?」
「そうですね……」
彼女は、艦娘たちの様子をチラッと見て言った。
「艦娘たちの墓参も一段落ついているようですし、司令の方で、特にどなたかと、お話をされないようでしたら、切り上げてもよろしいかと」
「次の予定は?」
「次は……」
彼女は手帳をめくりながら答える。
「次は1000からブルネイの軍本部にて、報告会議となっています」
「今、0745だから、微妙な時間だね」
「そうですね……時間まで、どこかで息抜きをするのも良いでしょうけど、狙撃される危険がありますから、いったんは鎮守府に戻るのがよろしいかと思われます」
「そうだね……」
狙撃か。私も、狙われるほど偉くなってしまったのか~。愚息が敵に狙われるほど”出世”したなんて聞いたら、親が驚くだろうな。
そのとき私は近くに大井親子がいるのに気づいた。大井は私を見ると会釈した。本当に彼女は”生まれ変わって”いるよな~。そのとき彼女の娘が私の背面の誰かを指差した。オヤッと思って私も思わず振り返ると、そこにはあの……大井の娘を救出した、米軍特殊部隊の隊長が居た。彼はもう戻るところらしかったが、私は思わず声をかけた。
<<会場:隊長>>
『失礼ですが』
私が声をかけると彼は一瞬警戒した。さすが特殊部隊だ。だが側にいたフィリピンの特使が、彼の肩を叩きながら代りに答えた。
『礼には及びませんよ。米軍としてもあのタンカーは狙っていたのですが、突入する口実が欲しかったようですから』
そんなこと私に話しても良いのか?と思ったが、そこは彼の性格だろう。意外に私は彼には信頼されたのだと感じた。
そのとき突然、大井の娘が走り寄ってきて、隊長にしがみ付いた。慌てた大井が直ぐに追いかけてきたが意外にも隊長は、とても優しい表情になり、そのまま大井の娘を抱き上げた。娘は無邪気に喜んでいた。この光景に、その場に居た者は誰もが笑顔になった。そうだ、この笑顔だ!アメリカ軍とはいえ、この隊長も恐らく家族が居るに違いないと思った。そして私たちは、この笑顔を守るために戦っているのだ。
そう思ったら、もう改めて彼には、何も聞く必要はないと思えた。その気持ちは、彼にも通じたようだった。彼は大井に娘を返すと、無言のまま私に敬礼をしてくれた。私も直ぐに返礼した。彼はマスコミが私たちの様子に気付いて慌てて近づいて来るよりも先に、すぐにその場を立ち去った。
それを見ていたフィリピンの特使は改めて私に言った。
『わが国にも、いずれ艦娘の基地が設営されることを期待しています。実際問題、それがいつになるかは分かりませんが』
そう言って彼は微笑みつつ立ち去った。そうか、そういう時代が来たらいいな。私もなぜか、それが望ましいと思えた。
「ねえ~、これ結局、撃たないの?」
夕立が銃の包みを背中に背負ったまま聞いてくる。物騒な!
「夕立さん、撃たないのが良いんですよ」
側にいた日向が釘を刺す。やっぱり日向はピシッと押さえてくれるな。心強い。
「え~、詰まらないっぽい」
いいよ、詰まらなくて。さすがに祥高さんも苦笑している。思わずこいつは帰ったら、特殊部隊にでも仕立ててやろうかと思ってしまった。
「ぽい?」
血の気が余っているんだろうか?夕立は。
気が付くと、ブルネイの日差しは強さを増してきていた。椰子の木の緑がまぶしかった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。