マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

26 / 51
ブルネイの迎賓館の上階にある来賓控え室へと案内される提督たち。そこではすべてがゴージャスであり、ただ圧倒されっぱなしだった。そこでは引き続き案内の男性から、表彰式の式次第について確認があった。その後、開会までの間、提督が珈琲でも飲んで寛(くつろ)ごうと思う間もなく、内線電話で呼び出されるのだった。


第26話(改)<式典打合せと控え室>

『総司令官殿には、なかなか大変かと存じますが』

 

------------------------------------------

「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第26話(改)<式典打合せと控え室>

------------------------------------------

 

<<迎賓館:控え室へ>>

 

私たちは、普通とは違う特別なエレベーターホールに案内された。そのホール前には、一般の人が間違えて乗り込まないように簡単な柵が置いてあったが、それらは案内係によって直ぐに除けられた。うは~、VIP専用か!もはや入り口の扉の色からして黄金色でゴージャスな雰囲気だぞ。

 

続いて私たちは係の人に導かれ、エレベーターの中へと案内される。片側がガラス張りになっている。外が見えるのだろうか?私がそう思う間もなく、操作パネルの押しボタンを係の男女が、よどみなく操作してくれた。

 

『扉が閉まります』

直ぐに扉が閉まり、エレベーターが上昇し始めると、そのガラスの壁越しに、ブルネイ市街地のパノラマ風景が広がった。

 

「うわぁ~」

夕立が感嘆の声を上げながら、窓ガラスに張り付く。そういえばブルネイの市外を俯瞰するのは、比叡2号失踪事件のとき、鎮守府本館屋上から見て以来だ。もっとも軍事施設と迎賓館では、見える景色がまったく違う。なにしろこっちは来賓に「魅せる」ことに特化しているからな、すべてに於いて格が違う。

 

「ぽい、ぽい~」

無邪気に喜んでいる夕立を見ると、この艦娘を連れて来て、本当に良かったなと思ってしまう。何となく案内係の二人も、微笑んでいる。普通の日本人だと、風景とかに感動しても、何となく感情を押し殺してしまいがちだ。

でも艦娘は自分の感情に素直だ。そこは彼女たちの良い部分かもしれない。

 

そういえば今回、主賓って呼ばれているけど、実際、自分がそういう扱いをされると、正直言って恐縮してしまう。でも、夕立のように、いつもリラックスしているくらいが良いよな~って、思う。それに作戦参謀にも何度も釘を刺されたが、私は帝国海軍を代表している立場だ。自分個人が問題ではなく、代表者であるという、その「位置」を自覚し、堂々と立つことも重要な任務だ。私は改めて腹を据えた。

 

「ぽい?」

夕立が反応すると、エレベーターは4階で止まった。そこで男性の係が案内する私と、女性の係が案内する祥高さんたちと、二手に分かれた。男性は私に言った。

『総司令官殿は私がご案内します。秘書艦殿は別室へ、ご案内致します』

 

『分かった。よろしく頼む』

廊下で、私は祥高さんに目配せをして分かれた。彼女と夕立は少し会釈をして、女性の案内係に従って廊下を進んで行く。

ここ4階の廊下も、すべて厚いじゅうたんが敷き詰められている。窓はないが、廊下の天井には、いちいちシャンデリアと、間接照明でボンヤリと照らされている。階下のロビーの喧騒とは打って変わって、ここは本当にシンとして静寂そのもの。そして当然、空調も完備されている。暑くも寒くも無い、まさに贅沢な空間だな。

 

『では、総司令官殿、こちらへどうぞ』

私は案内の男性に従って、廊下を進んだ。

 

<<迎賓館:控え室>>

 

『こちらでございます』

係の男性に案内されて私は控え室に入る。おお!中も凄いぞ。高級ホテル張りの広さと贅沢さだ。ああ、せっかくならここに泊まりたいな~。調度品は重厚かつゴージャス。何よりも視界が素晴らしい。広々とした窓からは、ブルネイの市街と、あの大きな川が見渡せる。いやはや、今までの艦娘たちと過ごした数日の出来事が走馬灯のように頭を駆け巡った。

 

『こちらへどうぞ』

男性がテーブルのあるソファーを案内してくれたので帽子を取って腰をかけた。帽子はさりげなく男性が受け取り、何か合図をすると、おお!女性が二人出てきた。

 

男性は言う。

『何かお飲み物を、お持ちしましょうか?』

 

『あ、ああ……珈琲を頼む。ブラックで』

 

『承知致しました』

男性が軽く礼をして、目配せをすると、二人の女性は直ぐに奥へと向かう。何とまあ、すべてが初体験で、圧倒されっぱなし。ふっと祥高さんと夕立も、圧倒されているんだろうな~って、考えてしまった。ああ、この場に青葉さんが同行していれば、面白かったのになぁと思った。

 

『失礼いたします』

男性スタッフは、書類ケースから進行表を取り出して、私の目の前のテーブルに1枚、置いた。彼も、自分用の書類を見ながら言う。

 

『これから行われる表彰式の簡単な流れをご説明いたします。主要項目のみ読み上げますので、書類をご覧下さい』

言われるままに、私は書類を手にとって、内容を確認した(なお、すべて英文のため、訳が違うかもしれない)。

 

最初に来賓(ゲスト)入場(これは私ではない)、次に国王(!)と、政府や軍の要人、最後に私たちの入場。うはぁ~、ブルネイの国王陛下のお出ましか。これは緊張するな!

 

そのとき、『失礼します』といって、先ほどの女性たちが珈琲と、簡単なお菓子を入れたお皿を持ってきてくれた。そうだ、この雰囲気はしっかりと記憶しておいて、美保鎮守府の接待マニュアルを作ろう!……と、自分の鎮守府の今後を思う自分自身に、私は思わず苦笑するのだった。少しは司令官も板についてきたかな?

 

<<控え室:式次第の確認>>

 

接待係の女性たちの淹れてくれた珈琲は、恐らく最上級のものだろう。いつも飲んでいる安いドリップ珈琲よりも、何か違う香りがするぞ。しかも私の場合、珈琲はブラックだからなあ……ちょっと、味が楽しみではある。

だが、係の男性は『よろしいでしょうか?』と言いながら、先ほどの続きを確認する。私は『ああ』と言いながら、再び書類に目を落とす。珈琲は後だな。

 

今回の表彰式では、他にもミサイル攻撃の際の救助活動や水上集落が攻撃された際の、軍や警察関係者も表彰されるようだ。ただ、国家勲章の授与となるので、メインは、やはり私たちだということらしい。緊張するなあ。

また表彰式には、ブルネイの国営TVや諸外国のプレス関係の中継も入る。言語は国際的な場であるため、英語で統一。念のためイヤフォンで同時通訳が入る。なお私たちのイヤフォンは、わざわざ日本語に対応してくれるそうだ。さすが主賓ともなると対応が違うのだな。

 

続いて、式次第の説明に入る。

私たちが入場した後で、実行委員の挨拶。続いてブルネイの国歌斉唱(これは現地語)。続いて司会者祈り(これも現地の言語・同時通訳あり)。続いてブルネイ国会議長と同軍参謀の祝辞(いずれも英語を予定、ダメなら通訳つき)。そして今回の概要をまとめたビデオ上映(英語字幕・同時通訳ナレーションつき)。

引き続き各国からの祝辞および祝電。そして国王陛下登壇と、受賞者整列、順に賞を拝受していくが、一番最後は私と祥高さんになるそうだ。で、お決まりの受賞演説。これは日本語でも、会場にはそれぞれ通訳が入るそうだ。あ、そうか。日本語でもいいんだ。それは、ちょっと気が楽だな~。

ここでは、私が全体を代表してひとこと述べるのだが、時間は無制限だということだ。いや、そうは言われてもね~。10分も持つかなあ~。

 

受賞演説が終わると、現地歌手による、祝歌となる。そして最後は日本式に万歳三唱(笑)。そのまま受賞者全体で、国王陛下を中心に記念撮影。閉会。

 

<<控え室:式次第の確認>>

 

『だいたい以上になります……ご質問はございますか?』

 

『いや、特には……』

そもそも経験も乏しいから、式典のイメージがまったく湧かない。もう、流れに身を任せるだけだな~。あとは、居眠りしないことくらいか。そんなことを考えていた。

 

『かしこまりました』

彼はにこやかに笑うと、書類をしまいながら言った。

 

『私の担当は、最初の叙勲式典のみですが、式典終了と同時に、総司令官殿には、その勲章をつけたまま階下に降りて、叙勲パーティとなります』

 

(え!)

それを聞いて私は内心、ゲッと思った。それが顔に出てしまったのだろうか?彼は、ちょっと申し訳ない顔をして言った。

『軍人である総司令官殿には、なかなか大変かと存じますが、わがブルネイ国としての、最大限の感謝の式典でございますし、パーティについては、ざっくばらんな感じですから、さほど緊張なさらずとも大丈夫かと存じます』

 

『そ、そうだね』

私は、恥ずかしくて仕方が無かった。彼は続ける。

 

『第二部のパーティの司会は、政府の秘書長官になりますので、総司令官殿とも馴染みもございますし、内容そのものも第一部とはまた、雰囲気も変わるでしょうから……』

 

最大限、気を遣ってくれている彼には、本当に申し訳なかった。(え!)っと思った自分を反省した。

 

彼は起立すると、女性のスタッフと共に一礼をした。

『それでは、時間までおくつろぎください。開始20分前には、また声をお掛けいたします』

 

そう言うと、彼らは退室した。私は、はぁ~っと脱力した。

 

<<控え室:コーヒー党>>

 

全員が退室したのを見計らって、私はテーブルに置かれたコーヒーに近寄った。子供みたいでバカのようだが、テーブルの横にしゃがんで、コーヒーの香りを堪能する。おお~!良い香りだなあ~。なんだろう、深いって言うか……アア!語彙だけでなく、味覚の表現力も無いから、ちょっと残念だけど。まあ細かいことはいい。冷めないうちに、頂こう。

 

私はコーヒーカップを手に取った。

 

そのときなぜかフッと、あの金剛が思い出された。あれ?あいつは、いつも”紅茶が美味しいネ~”って、言ってたよな。でも意外と金剛って、コーヒーも十分、いけたりしてな。何となく……。私はどっちかというとコーヒー党なので今度、改めて聞いてみて、あいつにコーヒー担当でも任せてやろうか?いや、比叡が良いかな?いやダメだ、あいつは”お姉さま命”だからな。

 

そんなことを思いながら、私は窓の外を眺めながら、まず一口。……うーむ、深い味だ。部屋はベスト、景色も最高、コーヒーも美味しいし今、手にしているこの器も、マイセンかどっかの高級品だろう。コーヒーのお陰で、少しリラックスした。

司令という立場は、外形もそれに相応しく成るよう努めるべきなのだろう。むやみに司令のポストに居るわけではない。こういった行事への参加も、あの次官が言っていたように、十分に意味のあることなんだ……まだまだ、勉強しなきゃ。

 

そう思っていたら急に、電話が鳴ったのでビックリした。危うくコーヒーを吹き出すところだった。危ない、危ない……なんだ?この部屋には電話まであるのか?私は慌てて音の鳴る方向へ行く。大きな鏡のある壁際に電話器があり、私は急いで受話器を取った。

「はい?」

 

「秘書艦様のお部屋から、お繋ぎします」

やや片言の日本語で女性のアナウンスがあって、音声が切り替わる。

 

「もしもし」

 

<<控え室:内線電話>>

 

「あー、スゴいっぽい、ホンとに司令に繋がった~っぽい」

受話器の向こうからは、明るい声……なんだ、夕立か?……って言うか。

 

「いきなり、何の用だよ!」

せっかくのコーヒーが。

 

「ウ~ンっとぉ~」

彼女は受話器の向こうで、何か考えている。

 

「別に何でもないっぽい~」

ガックリ。でもこれが、いつもの夕立か。何となく、のほほんとしている彼女が想像できた。

 

「電話器があるからさぁ~、持ち上げてみたら、お姉さんの声がして、どこに繋ぎますか?って言うからぁ~。”提督”って言ったら、ホンとに繋げてくれたったっぽい」

内線電話まであることも驚いたが、それを直ぐに使ってしまう夕立の、好奇心もすごいよな。まあ、お前らしいけど。

 

すぐに切ろうと思ったが、せっかくだから、向こうの様子を聞いてみよう。

「そっちは大丈夫か?問題無いか?」

 

「うん、問題ない」

直ぐに返事が来た。

 

聞きながら、すぐに自分で”野暮な質問だな~”って思った。

「そうか」

 

「あと、えーっとぉ……」

ちょっと、受話器の向こうで夕立が振り返るような雰囲気が伝わってきた。

 

「今ねえ、祥高さんも、化粧してるっぽいんだよ~」

 

<<控え室:化粧中>>

 

「なに?化粧?」

それを聞いた私は、ちょっと意外な感じがした……が、よく考えてみたら、表彰式っていえば、お祝いの席だ。艦娘といえども女性なんだから、素っぴんじゃあ問題だよな。当然、化粧の一つや二つはするだろう。うーむ、これはちょっと楽しみに思った。

 

でも夕立は相変わらず、あっけらかんと聞いてくる。

「ねえ、ねえ~。そっちの部屋も景色は良いっぽい?」

 

「こっちも良いぞ!」

 

「ちょっと待って ……」

夕立はまた、後ろの祥高さんだろうか?何かを聞いているようだ。

 

「ねえ、そっちの部屋も、行っても良い?」

 

……まあ良いか。

「うん、良いぞ」

 

「じゃあ、行くっぽい~」

(がちゃ)

 

そこでいきなり電話は切れた。あとはツーという機械音のみ……一体、何なんだろうか?この学生気分のような会話は。本当にこれが、これからブルネイ国の表彰式に参加する者の態度なんだろうか?と、我ながら疑問にも思った。

でもまあ、夕立はいつも通りのマイペースだ。それが本来の彼女だし、そういう夕立を見ていると、自分まで浮き足立つことなく、いつも通りの鎮守府に居る自分自身に引き戻される感覚になる。ま、下手に舞い上がるよりは、いつもの自分で居たほうが良い。軍人だから。

 

そこで、ふっと思った。

「普段の自分から、変に舞い上がらないための、”護衛艦”としての夕立なのか」

 

そう呟きながら、一人で苦笑した。彼女も、貴重な役割があるわけだ。

 

すぐにドアをノックする音がして、夕立がドアの外までやって来た。同じフロアだもんな、近い。私はドアを開けた。

そこにはいつもの夕立……じゃあ、無かった。

 

「えっ!」

 




--------------------------------------
※これは「艦これ」の二次創作です。
---------------------------------------
サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
---------------------------------------
PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。