マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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式典は、もう開始されようとしていたが、緊張のあまり夕立は楽屋で休むことに。表彰イベントが始まるとすぐに夕立は寝入っていた。その姿を見て、提督はある想いを抱くのだった。迎えが来て提督と秘書官は案内され、いよいよ舞台袖へと向かう。彼は、そのドタバタした雰囲気に、ふと作戦指令室と同じものを感じて苦笑するのだった。


第28話(改)<夕立の不調と舞台裏>

「非人間的な司令官だって、何人も居るんです」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第28話(改)<夕立の不調と舞台裏>

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<<楽屋:夕立中破>>

 

私は祥高さんに言った。

「夕立は、緊張かな?」

 

「そのようですね」

祥高さんはソファに沈み込んでいる夕立に近づくと、その手を取って言った。

 

「貴方はこういう雰囲気に慣れていなかったのね。もう無理はしなくて良いから、ここで休んでて」

 

ところが夕立は意外なことを言った。

「行きたい……私も行きたいです!」

 

化粧をしているから分かりにくいが恐らく青い顔をしているだろう。その健気さには胸を打たれるのだが……さすがにねえ。

 

祥高さんはちょっと考えて言った。

「分かったわ。貴方がそうしたいならそれでも良い。でも最初から式典に出なくても私たちの表彰のところで会場に入ったら良いから。それまではここで十分に休んでいてね。多分貴方は雰囲気に呑まれただけ。しばらく様子を見たら回復すると思うわ」

 

さすが場数は踏んでいる秘書艦である。

「このモニターで式の進行を見ていて最初の……そうね、祝辞とかビデオ上映は中に入らなくても良いからここにいてね。各国元首の祝辞のあとで国王陛下が登壇されるから、その前のタイミングを見て後ろの方の扉から会場に入って」

 

「ぽい~」

弱々しくうなづく夕立。この艦娘なりに必死だな。しかし艦娘といえどもまったく畑違いの状況になると、やはり調子が狂うらしい。意外と繊細なんだな。

 

祥高さんは言う。

「恐らく国王陛下が登壇されからは式場への出入りも難しくなると思うからタイミングに気をつけてね」

 

……へえ、そうなんだ。

そんな私の思いを悟ったのか祥高さんは説明する。

「こういう式典では警備の都合もありますが、場の雰囲気を乱さないために一番中心的なプログラムが進行している際には場内への出入りが一切、禁止されることがあります。今回はブルネイの国王陛下が参加されますし要人やVIPも多数参加していますから、その可能性が高いですね」

 

「なるほど……だってさ、夕立」

私は夕立を振り返って言った。彼女は弱々しく片手を上げた。本当に気分悪そうだな。

 

<<楽屋:式典開始直前>>

 

そのとき楽屋の壁のスピーカーから女性の声で開会10分前を告げるアナウンスがありモニターからは会場内の開会間近を伝えるチャイムの音が聞こえた。それらを聞いていると、さすがに私もドキドキしてきた。こりゃ経験がないと本当に雰囲気に呑まれてしまいそうだ。こういうことにも場慣れしている秘書艦のすごさを感じた。

 

「祥高さん」

もう直ぐに式典開始だが私は急に祥高さんにひと言、お礼が言いたくなってきた。

 

「はい?」

 

「今までありがとう。ここまで来れたのも君のお陰だ」

 

「いえ、そんな……」

苦笑したような顔をする祥高さんを見ながら、私は続ける。

 

「私がこの夏に美保に着任してから、あっという間だったけど……君の支えなしにはこの短期間での出来事に私独りでは耐えられなかっただろう」

 

「いえ、私だけではないと思います」

やっぱり謙遜する。

 

「……大淀さんや前線で戦う艦娘たち鎮守府の皆で一つになって支えた結果だと思います。私だって何もやってないから申し訳ない限りです」

はにかんだように言う祥高さんだった。

 

私は、さらに続けた。

「そうだな。この表彰は鎮守府全体で受けるべきものだ。それを私たちが象徴的に受けるだけ……でも私個人の想いとしては君には感謝しているよ」

 

「……」

彼女はうつむいてしまった。本当に奥ゆかしいよな、祥高さんは。

 

やがて再び楽屋のスピーカーから開会5分前を告げるアナウンスがあった。いよいよだな。夕立はずっと黙っているが頑張って回復してくれ。

 

<<楽屋:開会映像>>

 

やがて時間になるとモニターに映し出された会場が暗転した。そしてドラムロールと共に派手なファンファーレが鳴り響く。モニターテレビのスピーカーが貧弱なためか時々バリバリと音が割れる。やはり国王陛下ご臨席のイベントだから演奏もブラスバンドか何かの生演奏なのだろう。

 

しかしモニター画面で見るイベントって何となく不思議な感覚だ。とても客観的に見え、舞台との距離を感じる。TV局とか青葉のような取材記者が、どこか醒めて見えるのはこういう感覚かも知れない。

(でも最近の青葉はかなり変わってきたけどね……)

 

英語とマレー語だろうか?男女の司会者が立ち開会をアナウンスする。再び派手なファンファーレ。テレビがビリビリと震えるようだ。

 

ふと隣のソファを見ると、このファンファーレの中でも夕立は目をつぶって寝ていた。私は思わず祥高さんを見た。彼女も微笑んでいた。

 

私は祥高さんに言った。

「夕立は疲れていたんだね」

 

彼女も答える。

「そうみたいですね……」

 

考えてみたら艦娘の寝顔は初めて見るかも知れない。疲れもあるだろうが夕立なりにホッとしたのかな?

 

<<楽屋:守ってあげたい>>

 

夕立は十分、身体も大きいし普通の”娘”の姿をしているが、その寝顔を見ていると何か不思議な感覚に包まれた。これはさっき墓地でアメリカの特殊部隊の隊長が大井の娘を抱き上げたときの感覚に似ていた。なんだろうか?男女の恋愛感情とはまた違う不思議な想いだな。

 

そうだ、この艦娘を”守ってあげたい”という気持ちだ。そして”この寝顔(笑顔)を絶やしてはならない”という使命感でもあろう。私はまだ独身だがもし自分に子供がいたらきっと、こんな感情を抱くのだろう。またこういう感覚こそ軍人として絶対に忘れてはならないものだと思えた。むしろ司令という位置にいながら、やっとこんな感情を抱いたのか。ちょっと気づくのが遅いのではないか?我ながら情けなくなり、どことなく恥ずかしく思えた。

独身の提督なんて珍しいと言っていた次官の言葉を思い出した。あれはこういうことだったのか?

 

そんな私の心情を察知したのか祥高さんが私を見て言った。

「司令、ご自分を責めないで下さい。他の司令たちだって五十歩百歩です。むしろ司令は私が出会った中でも決して次元が低いとか、そんなことはまったくありませんから」

 

「はは、そうかな?」

 

「ええ、そうですよ。もっと自信を持ってください」

 

<<楽屋:ブラック鎮守府>>

 

ここで、急に祥高さんは、暗い表情を見せた。

「司令は”ブラック”といわれる鎮守府の悲惨さをご存知ですか?あそこはもう生き地獄なんですよ」

 

「ああ、まあチラッとは聞いたことがある」

 

「艦娘をロボットか何かとしか捉えない非人間的な司令官だって何人も居るんです。それに比べたら美保は素晴らしいですよ。もちろん艦娘たちも、あまり甘やかし過ぎてもダメですけど。組織の人の上に立つ以上は悩みは付き物です。そこからどう耐えて乗り越えていくか?それしかないと思います」

 

「君は強いね」

 

「いえ、そんなことは……」

彼女は、また謙遜した。

 

でも、ちょっと嬉しかった。

あの次官が言ったように今の立場になって私は、とてもラッキーなのだ。最初は戸惑っていた艦娘部隊の司令という立場。これは私にとっても人間的に成長させてくれる、とてもあり難い環境なのだ。

人間には人との縁という巡り会わせがある。それはきっと人間と艦娘との間にも、あり得るのだろう。

 

「縁か……」

 

そのとき入口のドアがノックされ案内の男性が顔を出した。

『失礼いたします。そろそろ出番になります』

 

『分かった』

私と祥高さんは立ち上がって、出口の方ヘ向かった。

 

「行こうか」

 

「はい」

 

<<舞台袖:待機>>

 

男性係員に案内された私と祥高さんは、廊下を通り舞台袖へと向かう。既に廊下にはスタッフや出演者だろうか?舞台関係者らしい人で、ごった返している。進行上の責任者らしき人が盛んに叫んでいる。歌手だろうか?ケバケバに着飾った人が付き人らしき人と一緒に私たちの脇をすり抜けていく。舞台のほうからは地響きのような楽団の演奏やアナウンスが聞こえる。

ああ、こういうのって……何となく学生時代の学芸発表会とか文化祭のノリを思い出すな。お祭り騒ぎのような独特の高揚感。賑やかなのが好きな人は、こういった雰囲気が良いのだろう。

 

ただこのバタバタした感じは、まるで戦闘中の作戦指令室にも似ていて思わず苦笑した。ここでは作戦の立案と砲弾や艦娘の代わりに分刻みのスケジュールがあって出演者が出番という発射タイミングを見計らっているのだ。向こうに居る砲術長みたいな進行係が、それを必死に調整しているんだ。修羅場って言うのは、どこの世界にもあるのだな。

 

私たちを案内する係の男性も舞台の責任者のような人と予定表を確認している。やがて彼は再び私たちのところへ来た。

『ご案内します、こちらへどうぞ』

 

私たちは、いよいよ廊下から会場への扉をくぐった。

『足元にお気をつけ下さい』

 

舞台の方から漏れ聞こえる演奏や拍手の音を聞きながら私たちは暗がりを進む。大道具みたいなベニヤ板とか何かの資材とか脚立やら道具類が目に付く。その脇を通り抜けて私たちは舞台袖までやってきた。

そこには既にVIPっぽい来賓たちがズラッと並んでいる。それぞれに案内の係員がついていて、いろんな言語で説明をしている。私はその中に見覚えのある人物を見つけた。

 

『あらぁ~ボクちゃん!』

私が声をかけるよりも先に振り返った男性……誰だよ!ボクちゃんって。間違えるものか、お前はイタリアの武官だ。当然、直ぐ傍にはキレイなリベッチオも居る。

 

『ど、どうも』

いきなりで私も変な応答になった。そしてイタリアの隣にはドイツ武官とU-511も居た。この二人は相変わらずの軍服姿でイタリアとはあまりにも対照的だ。

 

<<舞台袖:秘書艦・祥高の戦歴>>

 

やや薄暗い中でイタリアは満面の笑みを浮かべて言った。その雰囲気は、まるでオペラ座の怪人だよ。

『ウフフ、暗がりでもボクちゃんは凛々しく見えるのね~』

 

何だよ数年越しに出会ったような言い方をして!何となく、この能天気さは防衛次官を髣髴とさせる。すぐにドイツも言った。

『今日は貴殿が主賓だ。陰ながら応援している』

 

『ありがとう』

ドイツは生真面目だけど、やっぱり彼とはウマが合いそうだよな。彼らを見て祥高さんも改めて会釈をしている。

 

『あらぁ?』

祥高さんを見てイタリア武官がちょっと表情を変えた。

 

『あなたが噂の秘書艦、祥高さんね。本当に……大したものね~』

彼は祥高さんの胸の勲章を見て言った。それで彼女の戦歴が分かるのだろう。さすがは情報通だな。

 

ドイツ武官も同様に祥高さん見て目を丸くしている。沈着冷静な彼にしては珍しい反応だ。やはり軍人にとって勲章は語らずともモノを言う。彼は思わず呟いた。

『……ぜひ、一度ドイツへ……』

 

祥高さんは直接それには答えずに微笑みながら会釈をした。U-511も何となく秘書艦の凄さは分かるらしく、畏敬の目で祥高さんを見上げている。ドイツとしては艦娘たちの能力向上は実に切実な想いなのだろう。しかし彼は本当に生真面目だよな。前線を退いたとはいえ祥高さんの実力は今回、私も海上で見せ付けられた。彼女なら今からでも部隊のオブザーバーとしてでも十分にやっていけそうだ。

 

『ウフフ、その話は後よ……』

ウインクしながらイタリアが言う。見ると無線機を持ったフロアディレクターらしき人物が手を挙げて来賓たちの列の前の方から順番に舞台へと上げていく。

 

私たちの傍に居た案内係の男性が言った。

『この列の最後尾から順に流れに沿って進んでください。舞台に上がる直線……最後ですが、お二人には少し間を置いて、お待ち頂きます。タイミングを見てディレクターが合図を出しますから、それに従って舞台へと上がって下さい。くれぐれも、ご注意くださいね。舞台の直前で、立ち止まって下さい』

 

『分かった』

進行も細かいんだな。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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