マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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舞台袖で待機していた提督と秘書艦の前に、ブルネイの国王陛下が近寄る。それは圧倒される経験だった。会場のあまりの拍手の多さに、逆に恐縮してしまう提督。そして、表彰式が始まった。そこで衝撃的な映像が……そのビデオ上映は、会場に大きな波紋を投げかけた。しかしそれは、艦娘への理解を深めるものとなった。


第29話(改)<国王陛下と国防の誇り、そして未来>

「むしろ誇りに思うとのことです」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第29話(改)<国王陛下と防衛、そして未来>

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<<舞台袖:陛下来場>>

 

来賓たちが次々と入場していくと、行列も少しずつ前進していく。会場からは派手な音楽と拍手が続いている。こういう緊張と独特の高揚感に包まれて正直、クラクラして酔いそうだ。夕立は無理して、最初っから来なくて正解だったな。

あと数人で、いよいよ私たちの出番か?……と、思われたとき、舞台袖には、ざわめきが起きた。そして急にピンとした緊張感が走り、SPらしき男性が数名、早足で舞台袖までやってきた。

 

……これはもしかして?

 

やがてSP以外の、すべての舞台裏の人たちが一斉に振り返ると、うやうやしく頭を下げた。あ……とても気品のある、ひげを蓄えた男性と、若い女性が入ってきた。

 

ブルネイ国王陛下!

 

……間違いない。白っぽい服に、サーベルと、勲章をつけている。服装よりも何よりも、その気品あるオーラと言うか、雰囲気からして違う。私たちも、当然頭を下げる。すると国王陛下は、なぜか私のところへ近寄ってきた。

き、緊張するっ!……すると、陛下は、英語で私に声をかけて下さった。

『ありがとう、貴方が今回の総司令官殿ですね』

 

『ハッ』

 

『顔を上げて下さい』

落ち着いた、品のある声だ。ゆっくりと顔を上げた私は、心臓が飛び出そうな緊張感に包まれたが……薄暗い中で拝謁する陛下は、とても優しい目をしていた。

 

『今日は宜しく頼みます。こちらに居るのは私の娘です。王妃は体調が優れず、本日は欠席させて頂きます。誠に申し訳ない……』

娘と紹介された王女様は、頭からすっぽりと覆われたイスラム式の衣装だった。それでも、気品を感じさせるオーラがすごい。私と祥高さんは、改めて陛下と王女様に、真心から頭を下げた。彼らの周りはSPが常に囲んでいた。独特の雰囲気がある。

 

経験は無いが、恐らくは日本の天皇陛下も、このような感じなのだろうか?地位があるにもかかわらず、とても謙虚で、それでいて高貴で威厳がある。これが本物の王族なのだ。

直ぐに陛下と王女様はSPと共に舞台へと向かった。ディレクターが少しタイミングを見てから舞台へと導く。同時に会場からは大歓声が上がった。

 

<<司令と秘書艦:登壇>>

 

私と祥高さんは舞台袖で、まだ待機していた。そうだよな、国王陛下と同時に私たちが入場することは、あまりにも失礼だ。でも陛下たちの後から私たちが入るとなると、さらに緊張するぞ。私は、そんなことを考えていた。

 

ブルネイという一国を束ねる国王。その存在は、いち司令官などという小さい存在とは、格も次元も異なる。日頃、艦娘だの深海棲艦だのと日本の片隅でゴソゴソやって、あれこれ悩んでいる自分が実が、どれだけちっぽけな存在だったか?

ブルネイ国王陛下の前では、すべてが消し飛んでしまいそうだ。これがVIPの中のVIP、国王と言う人物なのだな。

 

あれ?……ふと気付くと、今までの緊張感や、変な気分までが一掃されていた。そして私の隣に居る祥高さんも、ボーっとしていた。つくづく今回は私独りで表彰されなくて良かった。実力ある彼女と一緒に受けるからこそ、輝く名誉である。

 

会場の拍手が少し収まると、国王陛下が何かを語られているようだ。マレー語だろうか?英語ではない。ここには通訳用のイヤフォンが無いので正直、良く分からないが、恐らくは国民へのねぎらいと戦闘勝利の喜び、そして後半には”カンムス”という言葉が交じっているから、艦娘について触れて居られるのだろう。最初は静かだった口調が次第に熱を帯びてくる。それに連れて会場の興奮も高まる。ああ、これが真の指導者なのだ。影で聞いている私も圧倒される。

イタリアとドイツの武官は艦娘を連れて既に登壇しているから、実戦にも参加していた彼らに、会場からは惜しみない拍手が送られているようだ。

 

そして、陛下ご自身の紹介で私たちの名前が改めて呼ばれたような気がした。袖で構えていたディレクターが振り返り、”入れ”という感じで手招きをする。私たちが袖から入ろうとすると、会場が急に暗くなりドラムロール。また派手だな~。イタリア武官とか防衛次官なら、喜びそうな演出だが正直、私は苦手だ。

 

さあ、入るぞと言う段になって、なぜか祥高さんが私の手を握った。あれ?何ですか?と思ったが、彼女は無言でこちらを見詰め微笑んだ。

ああ、そうか。司令と秘書艦……つまり艦娘と一つになって勝利したことを、自然に表現するのだと私は理解した。改めて私たちは、手をつないだまま舞台へと上がった。一斉にライトが照らされた。ま、眩しい~!

 

強い明暗のためか一瞬、何も見えなくなったが、祥高さんには見えているのだろう。彼女がしっかりと導いてくれ、それがとても心強く感じられた。私たちは、会場から万雷の拍手をもって迎えられた。

 

<<大ホール:総立ち>>

 

私たちが舞台上に立ってから、しばらくは、なかなか拍手が鳴り止まなかった。そのうちに私も目が慣れてきて、舞台や会場の様子が何となく見えてきた。舞台の来賓たちも、そして会場のお客さんたちも全員が総立ちの状態だ。良く分からないが、こういうのは”スタンディングなんとか”と言って、西洋式では確か、ものすごい大歓迎だったような気がする。

私の人生でも、こんなに大歓迎されたのは初めてだ。会場を埋め尽くす人から来る熱気というのだろうか?圧力感がすごい。つくづく独りで、この場に立たなくて良かったと思う。もしそうだったら”圧倒”されて舞台上で倒れていただろう。

 

手をつないだ祥高さんに促される形で、私たちは四方八方へ向かって、何度も頭を下げて礼をした。やがて司会者が会場を緩やかに制して、ようやく落ち着いてきた。この歓迎振りは嬉しい反面、ミサイル攻撃などで私たちが軍として十分に防御し切れなかったことを思うと、悔しい思いも湧いてくる。

 

エスコート役の女性に導かれて、私たちは来賓席の少し前の、特別に準備された専用の来賓席へと着席した。席に着くと、少しホッとした。落ち着いた私たちは、座席にあるイヤフォンを耳に当てる。おお、日本語で同時通訳がされている。これは分かりやすい。

 

<<大ホール:式典進行>>

 

司会の男女が再び、進行を始める。

 

まずは、このイベントの実行委員長からの挨拶。今回の戦闘を通して犠牲が出たが、ブルネイ軍及び警察関係、そして日本帝国海軍の尽力によって跳ね除けたこと。また改めて犠牲者への追悼の言葉が簡潔に述べられた。

続いて会場全体が起立して、オーケストラピットに居るブラスバンド(軍楽隊)の生の伴奏でブルネイの国歌が斉唱される。申し訳ないが、これは全然分からないので、一応口パク。

 

国歌斉唱の後は、司会者が祈りを捧げる。これは特に宗教は無い私でも敬虔な気持ちになる。

続いてブルネイの国会議長と軍参謀からの挨拶と祝辞。内容は、だいたいイベントの実行委員長のものと、大意は同じなので割愛。

 

今度は、舞台に大きなスクリーンが下ろされて、ビデオ上映が始まる。これはブルネイ国の歴史と、日本帝国海軍の駐留の経緯。そして近年高まる南シナ海を中心とした周辺国家(特にシナ)との微妙な力関係が説明された後、例のミサイル攻撃の場面に入った。

 

<<ビデオ上映:衝撃映像>>

 

この映像で私は初めて市街地へのミサイル着弾……第一次攻撃の被害の大きさを知った。これには、かなり心が痛んだ。ドイツ武官が言っていた、まがい物だから着弾がずれるという話を思い出した。ずれるから、全く見当違いの民間施設にも、容赦なく降り注いだのだ。同時にそれは、敵愾心を湧きたてた。私ですらこうだから、ブルネイ国民はもっと憤るだろう。

 

その後で……あれ?艦娘たちの映像だ。海上のどこかから……あの哨戒艇か、あるいはその他のブルネイの艦艇からだろう。実際の現場でズームレンズと暗視カメラで撮ったようなザラついた映像だ。場面も明るくなったり暗くなったり、時間軸も前後している。だがこれはときどきピンボケになるし、激しくブレるとはいえ特撮映画とか、まがい物ではない。本物の映像が持つ迫力には圧倒される。会場も、しんと静まり返る。

この映像では、通常の艦艇が深海棲艦には、ほとんど無力なのに対し、少女にしか見えない艦娘たちが、次々と撃破する様がきちんと捉えられていた。艦娘が、どれだけの威力を発揮するか?この映像を見るだけでも、手に取るように分かる。

 

しかし映像は同時に、艦娘たちが被弾し、傷つく様も克明に捉えていた。もし大破が続けば轟沈することも何となく分かった……そのとき偶然だろうか?青葉が映し出された。あの警告を発した場面だ。やはりその瞬間、彼女の意識が分散したのだろう、すぐに青葉は被弾した。それでも必死に反撃をしつつ回避を続けるが、ついには火に包まれた。それは見るに耐えなかった。やがて彼女は、あの最期の通信だろうか?何かを叫ぶようにして、そのまま轟沈していく様が記録されていた。

「……」

 

「……」

私と祥高さんは、絶句した。いや、私たちだけではない。艦娘を知る者にも、そうでない者にも、かなり衝撃的な映像だった。

この映像……私は見てはいけないものを見てしまったような気分になった。何も演出がない、淡々とした記録映像がゆえに、逆に青葉自身の必死さ、一途な心情が突き刺さるように伝わってくる。これはもしかしたら、艦娘の轟沈の瞬間が映像で捕らえられた、史上初めてのものではないか?それが他でもない、報道担当の青葉だったというのは、なんとも皮肉めいている。私は、この会場のどこかに居るかもしれない青葉自身の気持ちを察して心配した。

 

この映像はまた、私自身の舞鶴沖の、あの海戦をも彷彿とさせた。あの時も、旗艦が最後に叫んだよな……その大井もまた復活したとはいえ、私の胸は傷んだ。艦娘は、一途なんだ。

 

この場面では、会場からもすすり泣くような動揺が広がった。ふと気づくと、私の隣席の祥高さんも下を向いてうつむいていた。泣いているのだろう。私は思わず、彼女の片方の手を握った。彼女は下を向いたまま、小さくうなづくばかりだった。

 

<<ビデオ上映:祖国防衛>>

 

だが、良くも悪くも、これが艦娘の真の姿そのものなのだ。衝撃的な内容ではあったが、この映像以上に艦娘たちの気持ちをストレートに伝えるものはないだろう。もちろん青葉だけではない。少なくとも美保鎮守府に所属する艦娘たちは全員が、わが国……いや、ブルネイのような同盟国も含めて、皆を守るため、自らを振り返ることなく一途に、必死に戦っているのだ。その想いが痛いほどに伝わって来る。そう思えば、このビデオ上映、そして表彰式には大きな意味があった。映像の持つ力は大きい。願わくば、この映像が世界に配信され、艦娘たちの想いが伝わらんことを。それが轟沈して逝った、多くの艦娘たち。向こう側の世界へと旅立った彼女たちの切実な願いだろう。

青葉は、その一途な気持ちがあったから、復活する事が出来た。そういう気持ちが、まさに艦娘の生命の核心そのものであり魂なのだ。

 

私は祥高さんの手を、改めて強く握った。彼女も空いた手で涙をぬぐった後、私のほうを見て少し微笑んだ。恐らく、彼女も私と同じ気持ちに違いない。艦娘を代表する位置に居る彼女。その瞳には悲しみを乗り越え、誇りを以って未来へと続く祖国防衛の路を、これからも歩み続けるだろう。そんな艦娘たちの決意の総意をも感じさせるのだった。その瞳を見て、私は改めて決意をした。私は司令であり、艦娘たちの提督なのだ。だから、これからも全力で彼女たちを守り、導き、共に歩んでいこうと。

 

<<大ホール:休憩時間>>

 

やや衝撃的ともいえるビデオ上映が終了した。会場が明るくなる。私は少し慌てて祥高さんの手を離した。そして改めて声をかけた。

「大丈夫か?」

 

彼女は申し訳無さそうに言う。

「はい……すみません、お見苦しいところをお見せして」

 

「いや、そんなことはないよ」

それでも今の映像は、まるで大作映画か何かを見きった様な、気だるさが残った。会場全体もそのような雰囲気に包まれている。それに配慮してか、式次第には無い小休止の時間が15分間、急きょ設けられた。祥高さんによると、国王陛下のようなVIPが参席中に、このようなインターバルが挿入されるのは、こういった式典では極めて異例なのだそうだ。

 

会場の進行責任者と司会者が陛下に配慮して、ご機嫌伺いをしている。ただ、こちらから見る限りでは、陛下は非常に感銘を受けたようだ。心配するスタッフに対し”案ずるな”と応えているようだった。また、その隣に居る王女様は、泣いている。

 

私は反対側の客席を見た。お客さんたちも、ほとんどが感動するか、泣いているかのどちらかだった。普段、艦娘と接している私ですら衝撃を受けたのだから、そもそも初めて”艦娘”という存在を知った人が、いきなりあの映像を見せられたら衝撃を通り越して混乱するに違いない。日本では考えられない感じのストレート過ぎるくらいのドキュメント映像ではあったが、会場の雰囲気からすると、その反応は決して悪いものではないようだ。むしろ命がけでこの国を護ったという印象が強いだろう。

 

私はまた祥高さんに話しかけた。

「あの映像はストレートで衝撃的だったけど、結果的には良かったのかな?」

 

「そうですね。あ……」

そう言いながら祥高さんは会場を向いて、小さく手を振った。見ると、カメラを持った青葉が、そこには居た。見ると、その横に夕立が舌を出して立っている。おや、夕立は回復したんだな……。

 

<<大ホール:青葉と夕立>>

 

祥高さんは無線を受けているのだろう、何かブツブツ呟きながら、うなづいている。

すぐに彼女は私に報告をした。

「青葉さんは、あの映像については、心配しないで下さいとのことでした。むしろ誇りに思うとのことです」

 

「そうか、それは良かった」

距離はあるが青葉と私も目が合った。彼女はおどけてブイサインを出していた。良かったな、青葉。私は軽く手を上げて応えた。

 

祥高さんは続ける。

「それから夕立は、ちょっと寝すぎて、陛下のご入場には間に合わなかったようです。しばらくホールの入り口で足止めされていたようですが、この休憩時間になって、やっと入場出来たようです」

 

なるほど。でも、夕立も回復したんだな、良かった。

 

15分休憩の間に、トイレに行く人も居るようで、会場内もざわついている。私も机の上のお茶を口に含んだ。忘れていたが表彰の後、私はまた演説しないといけないんだよな。正直、何も考えていない。さっきの映像の余波が、何も考えさせてくれない。

ふと何気なく会場を見たら、あれ?青葉の周りに、プレスが数人たかっている。

 

直ぐに祥高さんが無線を受け、私に聞く。

「青葉さんから、他の記者に、あの映像の艦娘はあなたですか?という質問を受けて居るそうですが、本当のことを言うべきか、判断を求めてきています」

 

「いや、それはまずいだろう……実はあれが量産型ですと誤魔化しておけ」

 

「分かりました」

量産型実用化が、急速に伝播するのも考え物だが、”復活”が知れる方がまずい。下手すると、ゾンビのような無敵艦隊が出来上がるわけだからな。悪用されると取り返しが付かない。

 

会場の青葉さんは、こちらにチラッと目配せをしてから、他のプレスに応対を始めた。隣に居た夕立も、あわせて取材されているが、彼女は英語はダメだからな。お互い、チンプンカンプンだろう。周りの記者も結局、夕立の取材は諦めたようだ。何だか、解放されてホッとしている夕立が微笑ましかった。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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