「あ~、うらやましいデスね!」
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「艦これ」的「ブルネイの旭日」
(みほ5ん):(改)<おにぎりと予感>
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<<広場:陸軍将校>>
今度はカーキ色の軍服を着た男が近寄ってきた。ああ、陸軍か。境港の陸軍なら温厚そうな人が多いんだが、彼はどこの……勲章に階級からすると本省かな?
「はじめまして」
当たり前だけど日本語だ。今までずっと英語が多かったからホッとするな。
「陸軍省から参りました。今回は、艦娘の演習を外地で行うとのことで、陸軍としても今後は、海軍とも協力する余地があると思いまして……」
見ると意外に若い。これで本省勤務か?思わず作戦参謀を連想するな。
「初めまして、美保司令です」
彼は私の顔を確認するようにしてから、少しうなづいた。
「今のは社交辞令と申しましょうか……本題に参りましょう。実は私は実験隊も指揮していましてね。そちらでお世話になっている”まるゆ”ですが、実は大変申し訳ないと常々思っております」
「はい」
やっぱり”まるゆ”か?しかし、これは意外だな。
彼は続けた。
「あの艦娘は私の前任者が担当しておりましたが海軍本省の作戦参謀殿ですか?”彼”に依頼してからずっと、そのままになっているのです。今となっては、陸軍でも引き取る目処も無いのが正直なところで……いや、今日は美保からも、あなたが参加すると伺って、居ても立っても居られなくなって、取り急ぎ参った次第です」
「それは恐縮です」
若いのに、意外に律儀だな。まあ、だてに本省勤務ではないか。
「まだ当分は、お世話にならざるを得ません。誠に申し訳ない。その分、三柳駐屯地など、鳥取県西部の美保の陸軍には、美保鎮守府には悪いようにしないよう、日頃から伝達しておりますゆえ、堪忍のほどを……」
それを聞いて、腑に落ちる感覚があった。なるほど、美保周辺の陸軍が、妙に紳士的なのは、彼の”威光”もあったわけだ。
「いや、それには及びません。まるゆも、少々浮いては居りますが、たった独りで居るわけではありませんから、お互い様だと存じますので」
私が応えると、彼は白い手袋を外して握手を求めてきた。
「かたじけない、今後ともよろしくお願いします」
侍か?と、思ってしまった。彼は腰に軍刀も差しているし。ただ本省の陸軍担当者が、物分りの良さそうな人で良かったとも思った。
……しかし作戦参謀は、やはり”彼”だと思われていたか。思わず苦笑した。
<<広場:憲兵もいろいろ>>
ふと私は思い出したことがあった。
「お会いして早々に申し訳ないのですが、一つお願いをしても宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
彼は、何でも受けますよと言う表情をした。
「いま私の鎮守府で、脱走兵騒ぎが起きそうな気配があります。陸軍にも海軍省から協力依頼が出ているかとは存じますが、現地での混乱が無いように、ご配慮を頂けると助かります」
彼はなるほど、と言う表情をして応えた。
「承知致しました。憲兵もいろいろですからね。現地には私から良く言い含めておきましょう」
「助かります」
「いえ、お互い様です」
そして二人で敬礼をして分かれた。しかし次から次へと、いろんな人がこの場に集っているものだなあ。まあ、こういう機会でも無いと他の部隊の指揮官とも、まともに交流する機会なんて出来ないものだよな。
そうこうしているうちに、羽黒さんがアナウンスを始める。
『1400から、午後の演習を開始いたします。午前中と同じ場所でもご覧頂けますし、市内各所の公園などからもご覧頂くことが可能です。またブルネイ警察のご協力により、市内各所に視察スポットもご準備しております。案内図が必要な方には、配布しておりますのでスタッフまでお願いします』
ああ~、もうそんな時間か。応対ばっかりしていたら、結局ほとんど食べられなかったぞ。まあ、海外武官並みの対応をするわけだから、これは仕方ないか~。
そのとき、後ろから声がした。
「司令」
<<広場:おにぎり>>
「はい?」
振り返ると、祥高さんがお皿に乗せた”おにぎり”を持っていた。
「あの、司令は食べる暇が無いと思いましたので、簡単に作っておきました」
うわぁ、感動だなあ~。さすが、だてに秘書艦やっていないよな。
「ああ……ありがとう」
涙が出そうになった。ちょっとした心遣いなんだけどね~。こういうところは金剛とか、比叡には無理だろう。もしかしたら、あの羽黒さんとか、美保の鳳翔さんなら、やってくれるかもしれないが(半分願望)
「じゃ、ちょっと頂くよ」
私がおにぎりを取ろうとしたら、彼女は言う。
「まだ1400までは時間がありますから、こちらへお掛けになりますか?もう他の参謀たちも、話しかけては来られないでしょうから」
「ああ、そうだね」
私は彼女と並んで、近くのイスに腰をかけた。
早速、おにぎりを食べる。何だか久しぶりに、おにぎり食べた気がするな。やっぱり日本人は、”おにぎり”だよな。米飯最高。
でも良く考えたら彼女と私は階級も同じで、むしろ戦歴や勲章の数は圧倒的に彼女のほうが多い。今も、彼女の胸に光る勲章がまぶしい。だから技術参謀や作戦参謀のように、彼女から、”タメ口”とか”上から目線”をされても別に、何もおかしくはないのだ。
最近は艦娘だけでなく、一般の軍隊においても女性兵士が増えつつある。しかし、旧態依然たる軍隊内では、まだまだ男尊女卑的な考え方が根強い。私はフェミニストでは無いが、それではいけないと当然思っている。それでも男性というのは、どっかで女性より上に立ちたいと言う一種の潜在意識がある。だからもし仮に、私に対しての彼女の視線が”上から目線”だったら、お互い感情的に、ぶつかっていたかも知れない。
しかし彼女は、少々”押し”は強いけど、普段は控えめだ。そういうところは有り難いと思う。ああ、美保の大淀さんもそういう感じだな。霞は違うけど(笑)
「すみません、ちょっと私も頂きます」
あ、そうか。彼女も実は食べていない。他の艦娘たち……例のドイツの艦娘とかの相手とか、いろいろ、細々と動いていたんだよな。秘書艦は、時には調整役にもなるわけだ。ごくろうさん。
二人でイスに並んで座って、おにぎりをほおばる。わずかな時間だが、初めてホッとしたような瞬間だ。
<<広場:じゃんけん>>
「あ~、うらやましいデスね!」
目ざとい。こういう索敵能力だけは妙に高い金剛だな。
「お前も食べるか?」
「う……」
案の定、金剛は言葉に詰まっている。ふふふ、これは確信犯的発言だ。お前は一人で肉をたらふく食っていたからな。さすがに満腹だろう。
だがそこは、さすがの金剛だった。ちょっと憮然とした表情になって「食べるデス!いただきマ~ス」そう言いつつ、まだいくつか残っている皿から、おにぎりをひとつ掴んで、私たちの向かい側に座った。うん、やっぱりその強引さがお前の”強さ”の証だ。その姿を見ると、逆にホッとするよ。
『あ~!』
なぜデュエットになるのか謎だけど、ダブル比叡もこの状況を発見!雄たけびの合唱している。ところが皿の”おにぎり”は残り”1発”しかない。当然、二人で一瞬にらみ合った後、急に身構えたかと思ったら、左右から同時に手を出した。
『最初はグー、じゃんけんぽん!』
「あ~、しまった」
「勝った~!」
……側から見ていると、どっちが勝っても同じにしか見えないんだが。
でも、買ったほうの比叡は、一瞬おにぎりを見つめたあと、
「こうしましょう」
そう言って、二つに分けて、仲良く分け合っている。ほほう、どっちの比叡か知らないけど、意外に優しいところがあるんだな。こういう、ハッとさせられるような感情があるから、艦娘は奥が深いと思うんだ。
<<背景:艦娘と深海棲艦>>
私は何となく、おにぎりを分け合う比叡たちを見て、平和だなあと思った。この東シナ海に面した川……というか、ほとんど海だけど。先の大戦中は、ここブルネイを基点として太平洋の各地に艦船が出撃した。この国は、まだ親日的ではあるが、さっきのフィリピンの例もある。
あのアジアの大国シナは潜在的に抗日感情があり、近年経済力をつけると同時に政治的な発言力と、それ以上に軍事力を増しているらしい。目の前の穏やかな水面を見ていると、つくづく世界平和なんてこの水面のようだ。
そういえば、あの水上集落への深海棲艦の攻撃もあったし、この川でも何度も奴らの潜望鏡が目撃されている。穏やかそうに見えても、水面下では何が起きているか分からないものだ。
戦後はわが国でも専守防衛論が強まって一時期、軍事費がかなり削られ、武器の開発までが滞ってしまったのが現状なのだ。だから以前は北方共和国やシナなどが、何度もわが国の領海侵犯を繰り返している。
そんなときに突然出現したのが艦娘たちだ。その武器の多くは、なぜか大戦中のレベルではあったが、そもそも莫大な軍事費を費やすことなく、通常の艦艇に匹敵する力が得られる艦娘の出現は、わが国の防衛にとってもどれだけ有利であっただろうか。
そのままであればアジア地域のパワーバランスを崩しかねない艦娘という存在だが、なぜかほぼ同時期に出現した深海棲艦により世界は新たな脅威を抱えた。各国とも、お互いが敵対するどころでは、なくなってしまった。
特にアジア太平洋地域では、わが国の艦娘によって、かろうじてシーレーンが護られており、友好国からも艦娘派遣要請などの引き合いが多い。欧州は遠距離であり、なかなか遠征となると大変だったが、なぜかドイツやイタリアで艦娘が出現し始めたのは、不思議な現象である。
ただ、未だに彼女たち……敵も含めて、いったいどこから出現したのか?どういうメカニズムで動いているのかは、謎のままである。敵にしても、その目的も未だに謎のまま。我々人類と艦娘に対して、異常なまでの敵愾心を持っていることだけは確かなのだが。
しかし相手の目的が分からなければ、この戦いはいつまでも終わらないだろう。
<<広場:深海棲艦の予感>>
執念?敵にもそういうものがあるのだろうか?あの"茶髪の艦娘" 深海棲艦(大井・仮)にしても、執念深さは半端なかった。あいつのことを思い出したら、また鳥肌が立った。まずい、気分が悪い。
「どうかしましたか?」
祥高さんが心配してくれる。湿気の無い炎天下で、しかも海軍の正装だから暑いはずだが、急に悪寒がしてきた。この前見た、”悪夢”では、さほど鳥肌は立たなかったのに、今更なぜ?
そこへ、青葉さんと寛代が来た。
「司令~、午後も私たちは取材を担当しますので出発します」
青葉さんは敬礼する。私は軽く返礼しながら寛代に言う。
「寛代、技術参謀……お前の母さんはまだ居るよな?」
寛代が黙って指差した先に、作戦参謀と技術参謀が並んで何かを話している。作戦参謀も、戻っていたんだ。これは都合がいい。私は腕を押さえながら立ち上がると、二人の側へ向かった。二人は何かを話し合っていたが、私を見ると会話を中断した。
「どうした?顔色が悪いぞ?」
「なんだ?金剛にまた、反発されたんだろう」
笑いながら作戦参謀は言うが、それはあながち間違いではない……いや、それどころではない。
「艦娘は……午後からの演習とは別に、艦娘を出撃体制に持っていくことは出来ますか?」
当然、二人とも怪訝そうな顔をする。
「いきなり何を言い出す?」
「勝手なことをすると、厄介だぞ?」
構わず私は続けた。
「昨日からこの流域に敵が何度も出没しているのはご存知でしょう。演習に出る艦娘以外のすべてのメンバーを出撃待機に……許可とか必要なら、すぐ申請をお願いします!」
私の気迫に押されたのか、いつもと違う雰囲気を感じたのか、二人はやや引きながら分かったといってくれた。
すぐに祥高さんが近くに来てくれた。それを見た作戦参謀は言った。
「秘書艦殿。彼のこの剣幕はどういうことだ?」
何となく事情を察した祥高さんは、私をフォローするように言った。
「美保の指令は、時々直感が……特に深海棲艦が攻撃する直前に感覚的にお分かりになるそうです」
今度は技術参謀が肩をすくめた。
「なるほどね、第六感って奴か。否定はしないが、帝国海軍にはあまりそぐわないな」
思いっきり否定されるか、馬鹿にされるかと思ったが、意外に普通だった。
「出撃体勢は無理だと思うが、準備くらいは出来るだろう。お前は艦娘たちを招集し、指示を出せ」
「私からはブルネイ司令と、ブルネイ国防軍にも伝えておく。用心するようにとな」
やれやれ、少し安心した。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。