マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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国王陛下と王女様から表彰を受けて驚く艦娘たち。そして、提督の受賞演説が始まる。半分、頭がボーっとして倒れそうになりつつも、提督の受賞演説は続き、全力を尽くして終了した。その後、舞台では祝歌が披露され、そのまま万歳三唱、閉会となる。疲れ切った提督は控え室で休むことにするのだった。


第31話(改)<真の勇者降臨と休息>

「多くの未来ある艦娘たちが生まれ育つことでしょう」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第31話(改)<勇者降臨と休息>

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<<栄光の舞台2:真の勇者>>

 

あとから列に並んだ青葉と夕立の前に、国王陛下と王女様が直接、立たれる。一瞬、SPたちも慌てて艦娘たちの後ろへと回っている。陛下たち、お二人は目配せをされ、お互いが身に付けていた指輪とネックレスを外された。何事か?……と見ていると、陛下は青葉に指輪を、王女様は夕立にネックレスを着けられた。これにはSPとエスコート係の女性が目を丸くしている。だが陛下は、とても満足そうな笑みを浮かべられた。

 

そのタイミングを見て、司会者が言う。

『皆様、盛大な拍手をお願いいたします!』

 

会場から万雷の拍手。すると、陛下はそのまま青葉の手をとって共に片手を高くかざされた。王女様は夕立の横に立たれると彼女の肩に手を添えて正面を向き直って微笑まれた。そしてカメラのフラッシュの嵐。眩しい~。

少し間を置いてから陛下と王女様は、係の女性やSPと共に、ご自身の席へと戻られたが、そこで立たれたまま続けて拍手をされている。それを受けて会場の拍手も、さらに大きくなった。

 

「司令……」

祥高さんが私の手を取り、舞台上の全員が手を取るように促した。なるほど、そうだな……私たちは全員が壇上で手をつなぐ。そして一斉に会場へ向けて幾度となく、お辞儀を繰り返した。まるでカーテンコールだな。ふと見れば祥高さん以外の艦娘たち……リベッチオも青葉も夕立も、そしてあのU-511も無表情ながら涙を流していた。この艦娘にも感情はあるのだな、ちょっと感動した。

 

このまま延々と続くかと思われた拍手の渦だったが、司会者が会場を制して徐々に収まって行った。すぐにエスコートの女性が来て、私たちはいったん壇上の元の席へ戻る。青葉と夕立は、急きょ舞台上に設けられた二つの席へと着席した。彼女たちが今日、拝受した装飾品は、どんな勲章よりも輝かしく見えた。受けた彼女たちも万感の思いだろう。

 

舞台上では、また黒子が出てきて素早く演台をセットし、マイクが数本設置された。ああ、いよいよ演説の時間か。私はボーっと考えていた。もう頭が回らなくなってきている。

 

<<栄光の舞台3:演説(序)>>

 

司会者が案内する。

『ではここで、さきの作戦に於ける日本帝国海軍総司令官、美保鎮守府司令による受賞記念講演となります。司令官、前へどうぞ』

 

講演というほど、大した内容は話せないぞと思いながら、私は立ち上がった。会場からは大きな拍手。ああ、もうさっきから頭の中が、ずーっと真っ白なんだけど……それでも軍人だから指示があれば身体が勝手に動く。席を立つと、まずは陛下に。続けて会場の聴衆に向けて軽く会釈をして壇上へと進んだ。歩きながら舞台の表面が、とても磨き込まれていてキレイだな~という、どうでも良い思考しか湧いてこない。

 

会場は先ほどとは、うって変わって凪いだ海のように静かになった。それでも何かを待っているような大きな期待感に満ちている。それは独特の緊張感と圧迫感だ。ただ恐怖ではなく、喜びを共有したいという感情の波だ。そんな聴衆の想いに私は酔ってしまいそうな、まるで雲の上でフワフワするような浮遊感に包まれる。

 

でも気が付けば私は演台のマイクの前に立っていた。もはや、ここからは逃げようがない。私はそこで暫し目を閉じて呼吸を整えた。時間にしたら10秒にも満たない……だが無限に続くかのような感覚に捉われた。

 

再び、ゆっくりと目を開けた私は、おもむにマイクへ向かって日本語で語りだした。

「本日は貴国より身に余る栄誉を賜り心より感謝申し上げます。私は日本帝国海軍の地方のいち部隊である美保鎮守府から参りました」

 

会場に響き渡る言葉。その反響が消えるまで私は、ちょっと間を置いた。既に頭の中は真っ白だ。私は舞台上の艦娘たちを見ながら続けた。

「美保は史上初ともいえる艦娘だけの部隊です。そもそも艦娘とは何か?今日、この会場にお見えの皆様は、先ほどの映像や今、栄光に浴した彼女たちの勇姿を、ご覧になったでしょう。彼女たちがまさに私たち人類に迫る深海棲艦という危機に対して唯一、対抗しうる最後の戦力なのです」

 

え~っと、次はどうする?考えろ私!

「しかし、わが国にあっても今までの彼女たちへの扱いは正当なものとは言えませんでした。単なる機械的な兵器としか扱わない指揮官も未だに存在するのです。しかし私は確信します。今、この瞬間から彼女たちの立場は大きく変わっていくことでしょう!」

 

私は演台のコップの水を少し口に含んだ。

「ただ残念ながら、この地では私たちの力が及ばず、皆様には多大な犠牲を払う結果となってしまったことを、深くお詫び致します」

 

私は頭を下げた。そして続ける。

 

<<栄光の舞台4:演説(本)>>

 

私は直ぐに、前言を打ち消すように続けた。

「しかし艦娘たちの働きにより明らかになったことがあります。今後、私たちが一掃すべき敵は深海棲艦だけではない。今回の戦いを通して私たちは目に見えない”イデオロギー”という新たな敵を明確に白日の下に曝(さら)け出しました。そして彼女たちは全力で戦い抜き、皆様の尊い犠牲を無にすることなく、すべての敵を見事に追い払ったのです!」

 

ここで拍手。訴えながら私は自分で納得した。これは間接的に某国を批判しているが、本当の敵はその背後にも居る。究極の敵は、もはや我々の目には見えないのだ。

「本来であれば、もっと優秀な部隊が来るべきでした。しかし私たち美保鎮守府が選ばれ、この地へと参りました。これもきっと何かの縁だと感じます。この空と海が開けたブルネイの地……私は、ここブルネイの天地を見ていると、自分の故郷である美保の任地を思い出すのです」

 

次第に喉が枯れて来たが私は、そのまま休まずに続けた。

「人は自分が生まれ育った地を”故郷”と呼びます。そこには多くの縁があり、思い出があります。しかし初めて訪れた、このブルネイの地は私の故郷、美保に似ているのです。これが縁……つまり私の新しい故郷となり得る場所だと感じたのです。だからこそ私は守りたい!この地と、この地の人たちを、そして未来を!……その想いが美保の艦娘たちにも伝わったのでしょう。彼女たちもまた必死に戦い抜き、この故郷(ふるさと)を守り切ってくれたのです!」

 

会場からは大きな拍手。私は陛下と王女様を見た。微笑んであられる。よし、続行だ。

「今や、この地は私だけでなく多くの艦娘たちの真の故郷と、なりつつあります。実はいまこの地において新しい研究の成果が実りつつあります。そこからきっと未来へ向けて多くの艦娘たちが生まれ育つことでしょう。私には見えるのです。この南の海を護る希望の未来、大勢の艦娘たちの姿を!新たに生まれ出(いず)る彼女たちは、この地の新たな勇者として定着して行くことでしょう。艦娘たちがここに根付き、共に手を取って発展する礎とならんことを祈念致します!」

 

ここでまた拍手。頭に血が上ってきたのか?熱くなって来たぞ。ちょっとクラクラしてきた。喉も枯れる一歩手前だ。だがこの晴れの舞台で倒れるものか!私は拍手の間に呼吸を整えて、まとめに入った。

「最後に、このような名誉ある賞を賜った陛下に感謝します!そしてこの国の皆様にも心から感謝致します。親愛なる故国、日本と、それを護る艦娘の想いと共に……世界の海を護り両国が共に手を取り合って未来永劫、繁栄して参りましょう!」

 

ここで再び大きな拍手。ああ、もう語ることはないな……もう気力が続かなかった。

「本日は誠に……誠に、ありがとうございました」

 

私は壇上で深く礼をした。万雷の拍手の渦……知らない間に私の額は汗で滲み、演台にも汗が飛び散っていた。いや足元もすごい水浸しだぞ。こりゃ滑りそうだ。

 

<<栄光の舞台5:演説(終了)>>

 

しばらく私は演台の縁を掴んだままジッとしていた。さっきから汗が止まらない。ポタポタと滴り落ちている。こんなに大勢の人の前で演説をするのは初めてだが、よくもまあここまで話せたな……正直言って倒れるほどではないが、何だろう?さっきから身体が動かないんだ。精神の何処かの糸がぷっつりと切れてしまったような感覚だ。

 

拍手は続いているが私の異常な状態に気付いたのだろう。祥高さんが立ち上がると夕立に声をかけた。直ぐに二人が演台に近寄ってきた。祥高さんが言う。

「司令?お身体が動きませんか?」

 

「ああ、そんな感じだね」

私は苦笑いをして応えた。

 

「分かりました。夕立、二人で司令をお連れしましょう」

この辺りの判断は、さすが的確だ……正直、もはや一人では席に戻れないほど精神力を使い果たした。祥高さんと夕立は左右から私の肩を抱えてくれた。そして私たちは演台を降りた。会場からは先ほどまでとは違う、慰労の気持ちがこもった様な優しい拍手に変わった。気が付くと陛下や王女様、それに会場の人たちや、舞台上のすべての列席者たちが立ち上がって、一斉に拍手をしてくれている。

良かった、やり切った。身体はギリギリ動くが、歩く気力まで全部使い果たしていたようだ。

 

<<夕立の成長:報告するっぽい>>

 

舞台上を歩きながら、右から抱えてくれる夕立が声をかけてくれる。

「司令~、報告があるっぽい~」

 

「ん?」

 

「あのね~、さっき休んでいたら身体が火照って……気が付いたら”改”になってたっぽい」

 

「えぇ?」

 

「まあ?」

この、いきなりの夕立の報告には私だけでなく祥高さんも驚いていた。

 

「ごめんなさい、なかなか報告出来なかったっぽい~」

 

「まあ、良いよ」

 

「うん」

そうか夕立も、やっと改になったのか。私は半分、朦朧(もうろう)とした頭で夕立の成長を喜んだ。表彰と成長と……夕立にとっても、今日は本当に意義のあるイベントになったようだ。

 

二人に連れられて席に戻った私は、直ぐに自分の席に戻ろうとする夕立に声をかけた。

「夕立……」

 

「ぽい?」

振り返る夕立。

 

「おめでとう……もっと強くなれ!」

私は力強く、声をかけた。

 

「うん!」

彼女が微笑みながら”普通に”うなづいた。あれ?ぽいじゃないんだ……ちょっと意外に感じた。でもこれを機に少しは”お姉さん”に成長できるかな?この艦娘は。

 

「司令、ありがとう……」

そう言い残して、彼女は席へと戻る。それを聞いて私は安心した。少しは成長したようだな、夕立。

 

<<舞台上:祝歌と万歳>>

 

舞台上では、再び黒子部隊が出てきて演台を撤去する。フラットになった舞台には新たにマイクが設置され、会場は薄暗くなる。司会者が祝いの歌を披露する旨と、歌手の簡単な略歴を紹介する。ああ、さっき廊下ですれ違った、あの歌手かな~と思った。

 

やがて女性司会者が歌手を紹介し、会場から拍手が起こる。スポットライトを浴びて、煌びやかに着飾った女性歌手が出てきた。ああ、やっぱりさっき廊下ですれ違った人か。

あの軍楽隊が演奏するのかと思ったら、いつの間にかステージの後ろの幕が上がり中規模編成のオーケストラがそこに居た。なるほど、国王陛下臨席の舞台では、さすがに軍楽隊のブラスバンドでは、ちょっと厳しいよな。

 

伴奏に続いて歌が始まる。最初は普通のポップス調の曲だった。これで会場は、ソコソコ盛り上がった。私も彼女の伸びのある歌声を聴いていたら不思議と、さっきまでの演説の疲れが回復してきたようだ。さすが音楽の力には大きいものがあるな。

続けては、しっとりとしたバラード。うん、これはしみじみする。私の疲れは更に癒されていく。そして最後は派手な電飾とリズミカルなノリノリの曲。会場も舞台上のゲストたちも、身体を動かしながら盛り上がる。日本では考えられない独特の高揚感だ。そしてフィナーレ。会場は割れんばかりの拍手に包まれた。何度も、お辞儀をする歌手。

 

やがて会場が明るくなり、司会者が全体の起立を促す。最後は日本式に、万歳三唱をするようだ。なかなか味な真似を(笑)

ここで白羽の矢が立ったのは、なぜか青葉。でも彼女は嬉しそうに前へ出た。青葉はマイクを持つと、お辞儀をして言った。

「今日は私の人生の中で最高の一日となりました。では皆様と両国の今後のますますの発展を祈念致しまして、万歳三唱をいたします。では皆様、行きますよ~!」

 

マイクを置いた青葉が、大声で会場に指示する。大きく手を振ってリズムを取るようにジェスチュア。そして全体で万歳三唱をした。とても心地良い一体感に会場は包まれた。

 

<<舞台上:撮影と閉会>>

 

万歳の後は、そのまま記念撮影。カメラマンとアシスタントが手早く指示し、舞台上で国王陛下と王女様の席が準備され、その周りに私たちが立って、撮影。

それが終わると私の直ぐ側に居られた陛下が改めて私の手を握り握手をされた。とても胸が熱くなった。その姿を、また幾人ものカメラマンが盛んにフラッシュを焚いた。撮影される側に回らざるを得ない青葉は、ちょっと悔しそうだな……と思っていたら、ものすごいコンパクトなカメラを取り出して、しぶとく撮影しているじゃん。さすが青葉、プロ根性だね~。

 

やがてオーケストラが調子の良い音楽を奏で、司会者が退場をアナウンスする。まずは国王陛下と王女様がエスコートの女性やSPと共に手を上げながら退場された。会場全体が立ち上がって拍手。やがてゲストが次々と退場していく。私たちもその流れに乗って、そのまま舞台を降りた。

 

舞台裏では、案内係の男性が私たちに声をかけてくる。

『そのまま階下で、パーティとなりますが、体調はいかがでしょうか?』

 

『そうだね……時間はあるかな?』

 

『はい……』

係りの男性は腕時計を見た。

 

『そうですね……20分くらいなら、お休み頂けます』

 

それを聞いて私は祥高さんに言った。

『控え室で、ちょと休みたいが……良いかな?』

 

『はい、休めるときに休まれるのが良いかと存じます』

それを聞いた係りの男性は言った。

 

『では、控え室までご案内しましょう』

 

私は振り返って夕立を呼んだ。

「おーい、夕立!控え室に行くぞ!」

 

「ぽ……は、はい」

私は思わず苦笑した。無理しなくって良いって、夕立。彼女は舌を出して笑った。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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