マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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迎賓館の2Fバックヤードでは、ひたすら黙っていた提督と秘書艦だった。それは仲が良いのか、悪いのか?そしていよいよ会場へ突入!先ほどまでの固い感じの式典とはうって変わって、今度は本当に”ざっくばらん”なパーティで、その変わり様に驚く提督だった。提督は不慣れな雰囲気のパーティに、少し困惑するが、青葉の機転で気分が回復するのだった。


第33話(改)<美女と待機と紳士と淑女>

「そろそろ……出番だね?」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第33話(改)<美女と待機と紳士と淑女>

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<<バックヤード:待機>>

 

私と祥高さんは、会場の裏側で出番を待っていた。お互い会話が無いので黙っている。それでも決して気まずい雰囲気には、ならないのが不思議なところだ。きっとそれが、秘書艦である彼女の”特性”なのだろう。もっとも作戦が緊迫すれば彼女も一方的に押してくるけどね。そんな彼女も平素は割と大人しいんだ。

そういえば大淀さんも似たようなタイプだったな。司令部つきの秘書艦って、みんな似たような傾向になるのだろうか?……あ、霞は例外だ。あの子は最初っから押しが強い。

 

会場からは、あの美人秘書官のスピーチが断片的に聞こえてくる。美人の上に才女だから、きっと知的なことを話しているのだろう。当然、秘書官は英語である。マレー語じゃないんだ。

『……私たちは永らく大国の狭間で苦しんでいました。しかしその苦難から、ようやく抜け出すのです。私たちの希望、それが、あの艦娘たちです。彼女たちは、この国に与えられた天の役軍、素晴らしい精兵たちです。そう、私たちは、いよいよ約束の地を目指せるのです!』

 

彼女は難しい単語を羅列している。”才女”であることは認めるけど……このパーティのどこが”ざっくばらん”なんだよ!むしろ、余計に緊張するじゃないか!だが、この調子だと、そろそろ私たちにも声が掛かりそうだ。でも、あの難しいスピーチの直後でも、私は何も話さなくて良いんだよな?……さすがに式次第が心配になってきた私は念のために、祥高さんを振り返って聞いた。

 

「そろそろ……出番だね?」

 

「そうですね」

あ~バカバカ、私のバカァ~!それで終わるんじゃない、それだけを彼女に聞きたかったんじゃないよ!パーティの式次第のことだ!でも彼女はこちらを見て少し微笑んでいる。まったく緊張していないようだ。その肝の座り具合は、さすがである。やはり経験がモノをいうのかな?しかしマジで、あんな難しそうな話題のあとに私が話す羽目になったら参るぞ。もしそうなったらパーティの最初と最後の二回?私が演説することになるのかな?そりゃ話題が枯渇するって。

 

<<待機:そして突入!>>

 

……とかゴチャゴチャ考えていたら、美人秘書官の声が高潮してきた。

『……それでは、私たちに希望をもたらした美保鎮守府の司令を、この場にお迎え致しましょう!皆様、盛大な拍手でお迎え下さい!』

 

まずい、来たぞ……私が一瞬、ひるんでいると祥高さんが私の手をつかんで来た。

 

「えっ……」

一瞬、焦った。でも今さら、”やめて”とも言えず、かといって立ち止まることも出来ず、私は半分つんのめるような状態で彼女に強引に”牽引”され、二人で会場へと突き進む。ああ~!こんなところでも彼女に”押されて”しまう私なのだった。

 

割れんばかりの拍手の中を、私たちは会場に入る。さすがに、さっきの舞台ほど眩しくはないが人の視線が眩しい、いや痛い。そして気分が舞い上がっているせいか、舞台の簡易スポットライトなのか?会場の様子がほとんど分からない。

 

そうこうしているうちに祥高さんは、小さな舞台の中央部に置かれたマイクの前まで私を引率してくれた。こういうナビゲーターの使命は、きちんと果たす彼女だった。私たちはマイクの前に二人並んで立った。祥高さんは、まず手をつないだまま会場に向かって一礼をする。私もそれにつられて、慌ててお辞儀をした。

会場からは割れんばかりの拍手が続く。さっきの会場とは、また違う独特の緊張感が漂っている。そんな中、私たちは何度も、お辞儀を繰り返した。

 

こうなって来ると、私も腹をくくって彼女にひたすら調子を合わせた。もうあれこれ考えずに、彼女の経験に頼るしかないだろう。そう思うと、ちょっと私も落ち着いてきたようだ。よし、良いぞ……。

 

<<会場:握手の嵐>>

 

拍手が鳴り止まない。でも先ほどとは違って、この会場では司会者が、お客さんの拍手を制することはないようだ。美人秘書官は先ほどからニコニコするだけで、お客さんには特に何も言わない。でも逆に嫌な予感もする。要するにそれは先ほどの式典とは違い、細かい時間配分が、決まって無いってことか?ひょっとしたら時間いっぱい、無制限一本勝負ではないのか?

しかも、ここには舞台があるが、直ぐに上がれる程度の低い壇だ。その上と会場の距離が、ものすごい近い。だから独特の緊張感がある。

 

会場の拍手は続いていたが、やがて私たちに近い場所……最前列に居る人たちが軒並み近づいて来て盛んに握手を求め始める。美人の司会者は、これもまたニコニコして制止もしない。

私と祥高さんは慌てて片っ端から握手対応をする。お辞儀の次は握手の嵐か!まるでどこかの芸能人だな……もう揉みくちゃだ。青葉もニヤニヤしながら盛んに撮影している。まさかブルネイに来て芸能人並みの扱いを受けるとは、想像を絶する。もっとも、このグチャグチャ感は、美人秘書官の言う”ざっくばらん”だけどね。

気が付くと握手を求めてくる人の中に、あのイタリア武官もしっかり紛れ込んでいる。こいつめ、抜かりないな~(笑)。かと思えば道化仲間の日本の防衛次官も、ちゃっかり握手してくる。お前らミーハー過ぎだって。

 

十分くらい、そんな状態が続いただろうか?最後の方になると落ち着いた人たちが順番に握手を求めてきた。その中にはドイツ武官も居た。ああ~彼が居るとホッとするな。この雰囲気に呑まれて感化されたのだろうか?結局、青葉と夕立まで私たちに握手を求めて来た……まあ良いけどね。これも何かの記念だ。

 

<<会場:諜報力と乾杯>>

 

握手も落ち着いてきたところで、ニコニコして美人秘書官が英語で言う。

『それでは皆様、グラスをお持ち下さい』

 

それに従って各自が手近なグラスを取った。私と祥高さんには直ぐに給仕係の男性が素敵なデザインのグラスを持ってきて、そこに飲み物を注いでくれた。一瞬アルコールかと思ったけど、よく見たら中身はソフトドリンクだった。

あれ?ひょっとしてブルネイ側は私がアルコールを絶っていることを事前に、どこかで調べたのだろうか?見れば、あの美人秘書官が、私を見て微笑んでいる……これは間違いない!どこかで私のプロフィールか何かを調べ上げたのだ。やはりブルネイ政府の諜報部は優秀だ。英国仕込か知らないが大したものだ。

わが国日本には、ある程度の経済力や技術力と、人口がある。しかし近年、独立したばかりのブルネイ国は、諜報活動をしっかりしないと国家存亡の危機に陥るという緊張感が常にあるのだろう。シナは今もなおブルネイ沖の海を虎視眈々と狙っている。いつ何時、連中が深海棲艦と共に、この国を襲ってこないとも限らない。

 

そんなことを考えている間に秘書官が、私たちに向かって言う。

『では、乾杯の音頭は今回、ブルネイ防衛戦でも大活躍された美保鎮守の秘書艦であり重巡洋艦でもある”祥高”様に、お願い致しましょう!』

 

いつの間に、あの海戦に名前が付いたんだ?そう思う間もなく会場からは再び拍手。ああ、てっきり私に指名されるとばかり思っていたから、これはちょっと意外だった。それは祥高さんも同様だったらしい。だが、そこはさすが百戦錬磨の彼女だ。躊躇したのは一瞬で、すぐに軽くうなづくとグラスを持ったまま、舞台へと上がった。

 

マイクの前に立った彼女は、ちょっと呼吸を整えてから言った。

『美保鎮守府の秘書艦を務める重巡”祥高”と申します。このたびはブルネイ国より身に余る表彰を賜り光栄至極に存じます。この名誉を今日この場にご参席の皆様と共に分かちたく乾杯の挨拶と代えさせて頂きます。それでは皆様、グラスをお持ち下さい』

 

会場の全員がグラスを持って構える。

『それでは……乾杯~!』

 

会場からも一斉に乾杯の歓声と、グラスが触れ合う音が響く。数名の記者も入っているようで、盛んにフラッシュが焚かれる。ああ、青葉もちゃんとしたカメラを構えて撮影しているな。

 

しかし突然、挨拶を依頼されても、きっちり応対する辺り、さすが秘書艦だ。おまけに英語での挨拶も出来る。かつて横須賀という中央部でブイブイ言わせていただけのことはあるな。単純比較は酷だけど、あのブルネイの美人秘書官と、美保の祥高さんが地上で競ったらガチで良い勝負かもしれない。

そんな下らないことを妄想しながら私は自分に指名されなかった余裕で、独りでニヤニヤしながら見ていた。単なる見物客になると、気楽なものだなと思った。

 

<<立食パーティ:前菜>>

 

乾杯のあとは、そのまま立食パーティとなる。ただ、全体的に緩い感じだ。私は早々に参加者から質問攻めとかに遭うかと思ったけど、さにあらず。皆、意外にもまずは食事を楽しむような雰囲気だ。いくつか並べられた大き目のテーブルの上には、白いクロスに銀色の食器類が並んでいる。各々の上には銀の蜀台が立ち並び、ロウソクの炎が灯っている。

 

奥の厨房から、まずは最初の料理が運ばれてきた。前菜ってやつかな?残念ながら私は料理には疎いので良く分からないけど、鶏肉の切ったものに緑色の茹でたマメみたいな添え物がありドレッシングが掛かっている。それが各テーブルに配膳され、各自が手近なテーブルから好きなだけ小皿に取って、立食かイスに座って食べるようだ。

こういった形式のパーティには不慣れな私ということもあるけど、講演直後の疲れもあるのだろう。周りの人たちも私と会話はしたいけど、私の疲れたオーラを察して遠慮している感じがする。でも今は、その方が助かる。さすがは紳士淑女だな。本物のVIPたちは気の遣い方もどこか違うようだ。

 

向こうに居るイタリア武官や、日本の防衛次官が果たしてどこまでVIPという範疇に入るのかは、何とも言えないけど。少なくとも彼らは私より場慣れしている。にこやかに周りの紳士淑女と談笑してる様は、スマートで格好良い。それだけではない。うちの祥高さんも私以上に場慣れしている感じだ。微笑みながら周りのVIPたちと談笑しつつ、料理を手に取っている。

海軍の武官や指揮官は、こういった海外でのパーティにも慣れておくべきだと誰かに聞いた。だがさすがに最初っからは無理だ。周りが遠慮してくれるなら、これ幸いと私は早々、近くにあったイスに逃げ込んだ。さすがに疲れたなあ。

 

<<立食パーティ:もっと気楽に>>

 

そんな私が壁際のイスに逃げた姿を見て、直ぐに祥高さんが心配そうな顔をして、こちらにやってきて声をかける。

「司令、お体の調子が……?」

 

「ああ、さすがに不慣れなことが続くと、精神的に疲れるね」

私も体力には自信があるが精神力……戦場ならイザ知らず、こういう豪華でキラキラした環境は、正直苦手だ。

 

そう思っていると、料理を持った青葉が私の近くに来て言った。

「でも司令は美保鎮守府に着てから、私たちに”鍛え”られたんじゃないでしょうかねえ?」

 

私は思わずうなづいた。

「そうそう艦娘は、きらびやかだからな……って、何を言わせるんだ!」

 

「えへへ」

青葉は笑った。でも、このやり取りで私も少し気が紛れたのだろう。さっきよりは気分が楽になった。青葉も、たまには気の利いたことを言うんだな。

 

私は座ったままで彼女に聞いた。

「撮影は、もう良いのか?」

 

青葉は少しうつむき加減にカメラをカチカチ操作しながら言った。

「はい、大まかなカットは押さえましたし、本来こういう場での撮影は、なるべく遠慮するものなんです」

 

「なるほどね」

青葉も経験が豊富そうだな……。

 

『貴殿も大変なようだな』

いつの間にか低い声のドイツ武官が来ていた。見るとU-511は、彼から少し離れて、リベッチオや夕立と、何かを話している。

 

『少し不慣れなもので……』

私が申し訳無さそうに言うと、彼は言った。

 

『それは仕方が無いことだ。徐々に慣れていく事だな』

 

『そうですね』

 

彼は艦娘たちを見ながら続けた。

『あの娘たち……そういえば日本の艦娘は言葉が通じないが、それを越えて分かり合える世界があるようだね。人間は、変な壁を作って勝手に苦しんでいるようなものだが、彼女たちは違う。あれを見習って貴殿も、もっと気を楽に持つことだ』

 

『ありがとうございます』

堅苦しい印象を受けるドイツ武官だが、無骨な外見とは裏腹に優しい印象を受ける。きっと、心も温かい男なのだろう。彼の心遣いにちょっとホッとした。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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