マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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ドイツ武官と会話をした提督は、艦娘に関して意外な提案を受ける。それは本省スタッフから出た、海外艦娘の美保訪問と言う内容だった。最初は気分が悪くて食も進まなかった提督も、さすがにお腹が空いてきた。だが食事を取ろうとしたとき提督の昇進が発表され、会場からも祝福される。その雰囲気に彼は、純粋に嬉しく思うのだった。


第34話(改)<腹が減っても戦と栄光を>

「うーん、固いなあ!」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第34話(改)<腹が減っても戦と栄光を>

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<<パーティ:提案と海の幸>>

 

急にドイツは言う。

『先ほど、貴国の防衛次官やイタリア武官と話をしたのだが……』

 

『はい』

何だろうか?改まったように。

 

『我々はブルネイの地で艦娘を中心として一堂に会した。この間、いろいろあったが、お互いも心情的に近くなっただろう』

 

『はい……』

祥高さんや青葉も、ちょっと距離を置いて彼の話を聞いている。この二人も英語はOKだ。

 

『今日、このパーティが終わってから、あのイタリアが言っていた、武官同士どこかで食事でも……という時間は、正直、難しいだろう』

 

『そうでしょうね』

私としては、その方が正直ありがたいんだが……。

 

そのとき会場には給仕係の男女が出てきて、次々とテーブルの上の料理が、順次新しいものに取り替えられていく。今度は何かのスープ……遠くて良く見えないが。取っている人のお皿を見るとエビや何かの貝、それにイカリングと野菜だ。ははあ~、シーフードスープだな。結局私は、あの前菜を食べ損なってしまったか。ちょっと残念だな。

 

私がその光景をボンヤリ見ていたら、ドイツ武官が続けていた。

『……だが、これもせっかくの機会だ。艦娘について知りたいのは、わが国もイタリアも同様なのだ』

 

『は、はい』

ちょっと慌てた私。でも彼は淡々と続ける。

 

『そこで貴国の次官の提案で、貴殿が帰国する際、我々も美保鎮守府まで同行することになった』

 

『はあ?』

思わず私は驚いてしまった。ボーっとしていた気分が吹っ飛んだ。

 

『”同行することになった”……って、それはもう決定事項なのですか?』

私は慌てた。聞いてないぞ。

 

だがドイツ武官は笑った。

『いや正確には貴国やわが国、それにイタリア各々で自国の政府への確認と許可が必要だ。しかし、この話をブルネイ側にも伝えたところ、すぐにブルネイ政府も力添えして下さることになったから、ほぼ決定だろう』

 

ちょっと安堵した……しかし、事前にしっかりと根回ししてブルネイ政府を巻き込むところが上手だな。そこまでやられたら、普通の政府だったら嫌とは言えないだろう。

 

<<次官と武官:ほろ酔い道化>>

 

「そ~いうことだ、ぞっと!」

来たな道化めっ、防衛次官だ。ちょっと酔ってないか?お前は。

 

「そんな顔をするなよ~!これはチャンスだって、言ってンだろう~」

何、指を立てて左右に振っているんだよ?それは誰の真似だよ?

 

私はちょっと疑いの目で返した。

「でも二式大艇では、既に美保鎮守府だけでギリギリの定員ですよ?全員乗れませんって」

だがしかし、彼は言った。

 

「そんなことは百も承知だ~。そこでだ、いま南方から本土に向かっているYS-11を一機、明日着の便でこっちに迂回してもらうことにしたんだぁ。それに乗れば良いって~」

 

私は半分呆れて言った。

「良いんですか?そんな勝手なことやって」

 

また彼は指を立てて、左右に振る。今度は首まで振っている。忙しいな、酔いが回るぞ。

「勝手ではないぞ!いいか?良いも何も、これは日本の国益にかなうことだ……いや、いや世界平和の礎にだってなるのだ!ドイツやイタリアとの有意義な国際親善協力もなるしな!」

 

……はい、はい。次官も、ちょっと息が酒臭いですって。

 

「そーいうことだ、ぞっとぉ!」

また来た……ってか、かん高い声でカットインして来たのは作戦参謀!あなたまで、目が据わってフラフラしながら横から……もう、かなり酔ってませんか?良いんですか!生真面目な作戦参謀の性格が半分、崩壊しかけているうえに、信じられない光景だ。それを見て他でもない、姉でもある祥高さんが一番、驚いて目を丸くしている。

 

ただ、その情景を見た私はふと、お盆の出来事を思い出していた。

実家で酔った挙句に醜態を晒していた、あの生真面目な日向だ。今となっては、あれも良い思い出に……当の日向自身は、どう思っているか知らないが。

 

作戦参謀は、何となく気だるいような、妙~な顔をして祥高さんを見返す。

「な~んですかぃ?祥高姉さんン~文句ありますか~」

 

「ちょっとアナタ……呑み過ぎじゃ」

祥高さんが心配するのも無理は無い。普段の堅物とは大違いだから。

 

「こんなことでもなけりゃねぇ~、お酒なンて飲めまヘンよ~」

ダメだ、もう完全にヘベレケだ。日向もそうだったけど、だいたい普段から真面目そうな艦娘ほど、いざ酒が入ると、その性格崩壊の度合いが凄い。だいたい、その反省で日向は可哀想に、もう二度とアルコールは嗜(たしな)まないと宣言したくらいだからな。でも、それが良いのだろう、彼女にとっては。

 

しかし誰だ?作戦参謀に、こんなに飲ませたのは!……見ると防衛次官がニタニタしている。その後ろから、またもう一人の道化がクネクネして来やがった。

『あらぁ~、意外と弱いのネ』

 

イタリアの武官だよ……やっぱりお前らか?二人つるんで何やっているんだよまったくロクなことしないな!だがイタリア武官は、やや強引に私の隣にイスを持ってきて”強行着陸”をした。強襲揚陸艦みたいなやつだな~。彼も酒臭い。クネクネした動きは別としても話しぶりは、まるで素面(シラフ)だ。海外武官だけあってアルコールには強いんだろう。

 

<<二人の武官:温かい目>>

 

だが彼は私に近づくと、意外な言葉をソッと耳打ちした。

『オタクの作戦参謀さんも日々ストレスで大変なのヨ~。だからさ、たまには大目に見てあげて、ネ!』

 

思わず私は彼の顔を見返した。彼の言うことも実は、まったく見当違いなことではない。そうだ、技術参謀と作戦参謀姉妹は、共に艦娘でありながら、今もなお中央官庁で日々、周りからの妬みや嫉妬や反発と戦っているのだ。いわば”人間の気持ち”という目に見えない”砲弾”に晒されているのだ。だからたまに海外に出た時くらいは弛んでも仕方が無いだろう。

ふと以前、ドイツ武官が言っていた”海外に居るほうが気が休まる”という言葉を思い出した。作戦参謀も、このブルネイで少しは、リラックスしたいのかも知れない。

 

そんな意外とも言えるイタリアの優しさに、私はちょっと感心した。そして、少し離れて見ていたドイツ武官も、イタリア同様に優しい眼差しをしていた。彼ら武官や参謀たちにとっては、砲弾が飛び交う場所ばかりが戦場ではないのだ。改めて、そう思わされるのだった。

 

でも、それと同じことは艦隊司令官にもいえるな。戦場で戦う艦娘と、それを銃後で守る参謀や指揮官。前衛だけでなく、後衛だって立派な”前線”だ。特に作戦参謀は艦娘という立場で、中央で人並み以上の苦労をしているのだ。

 

夕立が気を利かせて、もう一個の椅子を持ってきて私の横に置いた。それを認めた作戦参謀は、「気が利くな、駆逐艦」とか言いながら、崩れるように椅子に座って、ため息をついた。

「はあ~」

 

祥高さんが近寄って声を掛ける。

「あなた大丈夫?」

 

「大丈夫、大丈夫ダッテ……」

何となく、ろれつが回っていない。ただ私も、さっきのイタリアの話を聞いていたから、彼女は単なる酔っ払いには見えない。だから私も彼女には、この戦いも含めて、ねぎらいの言葉をかけたくなってきた。椅子から立ち上がった私は、改めて椅子に座った彼女のほうを向いた。

 

「作戦参謀、いつも艦娘たちを気にかけて頂いて、ありがとうございます。このたびの戦いでも、至らぬ私の補佐をして下さり、感謝にたえません」

そう言いつつ彼女に頭を下げた。周りの人たちも私たちを注目しているのが分かる。

 

しかし彼女は怪訝そうな表情で言うのだった。

「はぁ~?何か言いまヒたかぁ~」

 

……ああ、もう彼女は私の気持ちも通じないところまで逝ってしまったか。そんな彼女を見て、祥高さんが苦笑するやら顔を赤めるやら何ともいえない光景だ。

さすがに青葉も、これは撮影しなかった。武士の情けか同類なのか?……って、おい!青葉。お前、なにウルウルしているんだよ?

「だって司令……参謀の気持ち、すっごく分かるんです~。私も飲もうかな~」

 

いや、やめてくれ。お前が酔うと、別の怖さが出てきそうだから。

 

<<会場:料理と空腹>>

 

そうこうしているうちに会場の人たちの食事も進む。テーブルの料理も少なくなったところから、また順次新しい料理に取り替えられていく。ああ、さっきまでの、あのスープも食べ損なったか。

 

配膳係の人が次に持ってきたお皿を見ると、今度のメニューは肉、あれは多分牛肉だぞ。美味しそうに網目が付いて焼きあがっている。それに白い皿の料理も付いてきた。あっちはグラタンかな?カロリーも高そうだ。どれもこれも普段は食べられない豪華メニューだ。

未来のブルネイ泊地ならイザ知らず、現代のブルネイや、うちの美保鎮守府でも、こんなメニューは、さすがに出すのは無理だ。アレを見ていたら、いい加減に私も腹が減ってきた。

 

さっきまで居た武官や艦娘たちは、さりげなく私の側を離れて、それぞれ会話をしたり、会食を楽しんでいる。この場は積極的に動かないと駄目な雰囲気だな。

既に逝ってしまった作戦参謀は置いておいて、私もそろそろ食事にしようかと思ったとき、彼女がいきなり私の腕をつかんできた。一瞬ビクッとした私は、慌てて作戦参謀の顔を見た。彼女はグラスはどこかに置いたらしく、両手で私の腕をつかんでいる。正直、酔っ払いに絡まれるのは苦手だ。つい実家での日向の醜態を思い出す。作戦参謀も、どことなく日向に似ているから、やっぱり妙な事を言い出すのだろうか?

 

<<会場:正気>>

 

私が少し構えていると、彼女は言った。

「す、済まないな、司令~。さっきまでは、ちょっと……頭が回らずに、失礼した」

 

良かった~。参謀も、ちょっとは正気に戻ったようだな。私は答える。

「いえ、恐縮です」

 

そう答えながら私は、参謀に対していつも卑屈な態度を取るのは失敗だったかなと反省した。だが彼女は、それには触れずに続ける。

「今まで私も、お前には一方的に強く出過ぎていて本当に済まなかったと思っている。前にも言ったが、自分の上に直接の上官が居て、それを補佐するのは、私にも久しく無かったことでな……申し訳ない」

 

「いえ……」

私は中央での彼女の境遇に想いを巡らせていた。祥高さんは一度轟沈してからは、横須賀(中央)を去ったわけだが、その姉妹である技術参謀と作戦参謀は今もなお中央に留まり深海棲艦だけでなく、人間の軍令部や艦隊司令部相手に、孤独な戦いを続けているのだ。

 

「羽黒は良い娘だぞ。あの子には、もっともっと、強くなって欲しい」

参謀は呟くように言った。そうか羽黒が居たか。

 

しかし参謀、さっきから私も腕が痛いんですけど……。そう思っていたら、また腕を掴む圧力が強くなった。ああ、この状況と感覚は、まるで日向を髣髴とさせる。

「イタリア武官に私の立場や気持ちを突かれたときは、ちょっと恥ずかしかった。だから酔った振りをしていたが……ダメだな。中央では周りはすべて敵だ。つい防衛本能が働いた」

 

それは、もはや職業病だと思います。だが彼女は、正面を見据えたまま呟いた。

「祥高姉さんが居なければ私は、お前を奪っていたかもしれない」

 

「はあ?」

腕の痛みよりも、突然のビックリ発言の方が度肝を抜かれた。いきなり何を言うのですか?

 

驚く私を尻目に彼女は続ける。

「祥高姉さんを頼むぞ。お前ら二人とも鈍感だがな、寛代が良いお目付け役になる。フフ、私たち姉妹は、なぜかお前とは縁があるようだな……」

 

そこまで言うと彼女は腕を放した。痛かったが……何かを言いかけた私を制して、彼女は無線を受信したようだ。耳を押さえるようなしぐさをして、盛んに応対している。すると直ぐに、防衛次官と祥高さんが駆け寄ってきた。

 

「オイ!大変だぞっ!」

何か、突発事態か?

 

<<会場:昇進>>

 

身構える私に、防衛次官は急に笑顔になって言った。

「喜べ!お前は少将になったぞ!」

 

「は?」

 

ちょっと酔って赤い顔をした彼は言う。

「鈍いな~、昇進だよ、昇進!さきほど、艦隊司令部から正式に発令された」

 

すぐに祥高さんが言う。

「司令、おめでとうございます」

 

「あ、ありがとう」

正直、実感は無い。

 

『まぁ~!それは喜ばしいことじゃない』

クネクネが再び現れた。彼は日本語も分かるんだよな。

 

そして今度はリベッチオも一緒だ。彼女はスカートのすそを持ち上げて真面目に言った。

『司令官、おめでとうございます』

 

『ありがとう』

……さすが西洋人というか着飾ると人形みたいで可愛いんだな、この艦娘は。

 

『おめでとうございます、総司令官』

あの美人秘書官がやってきた。やはりこの人が一番眩(まばゆ)い感じだ。

 

『ありがとうございます』

 

『ここは一本、抜きましょう』

彼女は軽くウインクする。私は何となく意味を悟った。

 

『あ……ああ、そうですね』

私は基本アルコールはNGだが、この際仕方ないな。彼女は直ぐに、係の人に合図をする。うなづいて奥に入った給仕係の人が、直ぐにシャンパンか何かを持ってくる。

 

別の係の人が、いくつかのグラスを持ってきた。美人秘書官が音頭を取る。

『皆様、良いことは重なるものです。このたびの作戦指揮を取った総司令官が少将に昇進されました。ささやかですが、お祝い致しましょう』

 

威勢の良い音と共に数本のコルクが抜かれ、次々とグラスに注がれる。会場のあちこちからは歓声が上がり、足を踏み鳴らす音。こういうノリは日本では考えられない。

そして乾杯の発声は、そのまま美人秘書官が行った……堅苦しい挨拶抜きで、自然で流れるような進行の雰囲気は、とても良いな。青葉も、ここぞとばかりにシャッター切っている。

 

正直、あまり勝利とか昇進という実感は無かったが、階級よりも、この場の全員が心から祝福してくれているムードが嬉しかった。この純粋に嬉しい感じは……子供の頃の誕生会以来だな。

 

<<会場:祝福>>

 

直ぐにドイツ武官がやってきた。

『おめでとう。貴殿なら、こうなると思ったよ』

 

『ありがとうございます』

相変わらず彼は、さりげなく褒めるのが上手いな。

 

『将の位置があれば総統閣下にも十分、拝謁しても恥ずかしくない位置であるな』

ああ、どうしてもそこに繋げたいわけね。思わず苦笑した。

 

そこへ白い服を着た男性……ああ、料理長か?ワゴンにケーキを乗せて出てきた。あれ?ひょっとして、これはもしかして。

 

その料理長は言う。

『お祝いと伺いまして、急ごしらえで申し訳ありませんが、心ばかりの、私から司令へのプレゼントでございます』

 

小ぶりなケーキだった。その上に数本のロウソクが灯っている。ケーキは小さいし、飾りつけもほとんど無いが……何か、これは純粋に嬉しく思えた。

 

「司令、ケーキの後ろで笑顔!ほらっ」

青葉に急かされて、とりあえずケーキの後ろにしゃがんで笑顔になる。

 

「うーん、固いなあ!」

そう言いながらも、何枚もシャッターを切る青葉。フラッシュが眩しいな。

 

「そうだ、祥高さん!横に並んでください!」

 

「あ……はい」

少し慌てたように、秘書艦の祥高さんが私の横に来る。

 

「はい、笑って~」

数枚撮影すると、青葉は艦娘たちに言った。

 

「そうだ、夕立に……ほらぁ、イタリアとドイツも!」

すぐに私を中心として、艦娘たちが囲む構図になった。

 

「ああ、良いですね~、最高です!」

再びファインダーを覗いて、何枚も撮影する青葉。他の記者たちも、一緒に撮影している。その後ろで、参謀や武官たちがニコニコしながら見ている。

 

やがてイタリアが私を急かすように言う。

『ホラホラ、ろうそくを吹き消すのよ~』

 

良く分からないが、もう現場のノリだな。私はろうそくの炎を吹き消した。すぐに会場からは拍手と足踏み。青葉や数人のプレスが撮影をする。やっぱり子供の頃の誕生会のノリだな。

 

そこでふと思った。うちの鎮守府でも、艦娘たちの誕生日(進水式の記念日?)には、ささやかでも誕生会をやったら、喜ぶかもしれない。形そのものよりも、気持ちが大事なんだよな。私には珍しく、そんなふうに思えた。日本に戻ったら、具体的に考えよう。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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