マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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演説後、写真撮影を求められた提督は、指揮官は顔にも責任を持たないといけないのだと痛感させられた。パーティの後はパレードと聞いて慌てる提督。でも夕立は妙に嬉しそうだった。やがて迎賓館から鎮守府にかけて、凱旋パレードの準備が始まる。提督は少しイライラするが……。


第36話(改)<海軍の未来と女神>

「いや……これが新しい軍隊の形なのかなって」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第36話(改)<海軍の未来と女神>

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<<会場:男も顔に責任>>

 

私の演説が終わると、またしばらくの間は握手の嵐だった。その後、私と写真を撮りたいという人が相次いだ。私は男だから顔には自信が無くても良いかも知れないが今の司令と言う立場は人の上に立つものであり、こういう公的な場所では人と接する機会も増えることを思えば司令としての”顔”にも責任を持たなければいけない。

そういえば過去の政治家の誰かが”顔の責任”みたいなことを言ってた気がする。その言葉の意味が今、初めて分かったようだ。艦娘の部隊に着任した巡り合わせは結果的に、私の責任者としての自覚と成長をも促しているようだ。

 

そう思いつつ私が数人と写真を撮ろうとすると青葉がやってきて言った。

「司令~、そこはやっぱり、こうでなくちゃ」

 

そう言うなり彼女は近くに居た秘書艦の腕をつかんで連れてきた。その祥高さん、最初は「あっ」っと言っていたが直ぐに青葉の意図を悟ったらしく「そうですね」といって私に並んだ。

普通の軍隊ならこういう状況でも男性の司令官とか参謀だけで誤魔化せるだろう。でも青葉に言われて祥高さんと並んで何枚も撮影されていると確かに、せっかく艦娘がいるのに男性司令官だけで写真を済ませてしまうのは何故かもったいない気がした。だから、こちらの方がしっくり来る。面白いものだが艦娘の存在には確かに、こういう効果がある。さすが青葉、着眼点が鋭いな。

 

艦娘は何も知らない人が艤装を付けない素の彼女たちを見ても普通の少女にしか見えない。軍事専門家だって同じだ。彼らが素の艦娘を見ても、その戦力など想像すら出来ないだろう。だから海軍の広報で気軽に写真を撮って華を添えつつ軍事機密も保持される。一石二鳥だ。

 

<<会場:艦娘にも責任が>>

 

……と、そこまで考えて私は、いやダメだと思った。だいたい山城さんや金剛みたいな感情的な艦娘だともしスパイみたいなのが来たら騙されたり上手く乗せられたりするかも知れない。下手したら自分から機密をベラベラ喋りかねない。最悪、艤装を付けたまま敵に寝返ったりすることも考えられなくは無い。そこは今後の課題だな。

 

艦娘という存在は今回の戦闘をきっかけに広く世界に認知されることになった。しかし量産化技術に関しては、しばらくは最高機密という扱いになるだろう。ここブルネイで実用化の目処が立った量産化技術の核心部分は本をただせば未来から持ってきたものだ。すると未来の技術はどこから来たのだろうか……あれ?混乱してくるな。う~む……難しいことを考えるのはやめよう!堂々巡りの哲学の時間になってしまう。そんなのは文系に任せておけば良い、私は軍人だ。

 

既に数名が建造された量産型の艦娘たちを見る限りは彼女たちもオリジナルと何ら変わらない能力と性格を有している。少なくとも量産化技術とは艦娘たちの血と汗と涙の多大なる犠牲の結晶であることは忘れてはならない。出来ればそれが艦娘の居る鎮守府の伝統になって欲しいものだ。

 

あれ?そういえば艦娘の量産化で駆逐艦から大型戦艦まで建造できるはずだが秘書艦でもある祥高型って量産化は可能なのか?私は隣で微笑みながらVIPたちと一緒にカメラに収まっている彼女を見た。

 

既に全員が前線を退き半ば伝説化しているが本来戦艦に組み込むべき技術や予算を重巡につぎ込んだだけではない。私の私見だが恐らく彼女たち三姉妹は改装前からもともと崇高な精神性を持っていたに違いない。だから今でも山城さんや金剛とは比較にならないくらいその志が高い。だからこそ中央では参謀職が務まるしここ美保でも提督代理が可能なのだ。

 

しかし祥高型の彼女たちだけは二度と量産化されない直感がする。私はその方が良いのだと思う。敵には勝ちたいが無敵艦隊などこの世には存在しない方が良い。人類が問うべきは戦闘能力ではなく平和を作り出す優しい心ではないか?そう思って改めて彼女を見ると偶然目があった。

 

「どうかされましたか?司令」

微笑みながら彼女は言った。

 

「いや……これが新しい軍隊の形なのかなって」

思わず、妙なことを口走ってしまったが、彼女は答えた。

 

「そうですね……そうあって欲しいです」

再び正面を向く彼女。フラッシュの光が私たちを包んだ。

 

<<会場:お開き>>

 

ひとしきり撮影が終わったあと、美人秘書官が再び前に立つ。

『本日は美保鎮守府、総司令官の祝賀パーティへの、ご参加有り難う御座いました。短時間でしたが皆様には十分、お楽しみ頂けたものと存じます』

 

やれやれ、ようやく終わったな。私が脱力していると祥高さんが言う。

「お疲れ様でした司令」

 

「ああ、ありがとう。やっぱり秘書艦が居ると心強いね」

 

「いえ……」

彼女はちょっと恥ずかしそうな顔をした。司会ブースでは美人秘書官が帰りの際の諸注意を続けている。

 

『なお王宮前広場から鎮守府へ向かう国道沿いでは凱旋パレードを行います。お車でお越しの方は係員が誘導いたします。引き続きパレードへご参加希望の方は……』

そこまで聞いて私は驚く。

 

「祥高さん、パレードって?聞いていた?」

 

「はい……私は次官から」

おのれ~またしても次官め、伝達漏れだぞ!怒りをぶつける暇もなく、夕立が来た。

 

「すご~い……えっと~、そうすると司令と祥高さんの、お二人がパレードで、私は後ろで護衛したら良いっぽい?」

 

「あ、そうか……」

もうパレードの事を考えるとは、夕立にしては珍しく要領が良いな……これも”改”の効果か?

 

それを聞いて祥高さんも言う。

「そうね……恐らく司令と私は並んでオープンカーに乗車するから、夕立には私たちの後ろか次の車で控えて貰うことになるわね」

 

それを聞いた夕立は目をキラキラさせた。

「うふふ、私も祥高さんのあの銃、一度持ってみたかったんだ~」

 

……おい、お前の狙いはそこかよ!

 

<<会場:広告塔>>

 

『そうだな、シナの連中が執念深く、君たちを狙う可能性も否定は出来ない』

いきなりドイツが来た。

 

当然、イタリアも来る。

『そうよ~だから機銃を構えることで十分相手を威嚇することになるから、それだけでも違うわね~』

 

『そうそう、それで後ろから夕立が、これ見よがしに祥高の機銃を構えていれば威嚇と同時に絵にもなるシナ』

何だよお前、最後のシナってのは駄洒落か?……防衛次官も相変わらずだな。

 

「目まぐるしいが済まない。これもわが国とブルネイの協力関係を内外ともに誇示する大きな宣伝も兼ねていると理解してくれ」

かなり酔いが醒めたらしい作戦参謀もやって来て意外に申し訳なさそうな顔をして言う。

 

「いえ、分かりました」

そうだな。司令というのは良くも悪くも広告塔みたいなものだ。特に今回の作戦では、その意味合いが強くなったといえよう。

 

「ここまで注目されたんだ、日本に帰ってからも、お前たちは忙しくなるぞ~。覚悟しておけ」

防衛次官が脅かすように言う。

 

「はい」

正直実感は無いが、そうなるのかも知れない。

 

会場からはVIPたちが徐々に退出している。またプレスの記者たちも早々に退散している。それを見て私は青葉に聞いた。

「お前はどうする?」

 

「引きの絵は他の通信社から回ってくるでしょうから私は、お二人にピッタリご同行しますよ」

バックを肩から抱えた青葉はカメラ片手に言う。

 

「ねえ他のみんなはTVとかで司令とか見たかな?」

夕立は相変わらず、のん気だなあ~。

 

「あはは、日本に帰ったら、もうみんなで有名人だね~」

青葉が何気なく言うが、それは冗談とも本気とも取れるのだった。

 

<<会場:やっぱり女神>>

 

美人秘書官がやって来て申し訳無さそうに言う。

『これから30分、調整時間を頂いた後に、この迎賓館を出て王宮前広場から国道を凱旋パレード、そのまま鎮守府へと、お戻り頂くコースとなります。目まぐるしくて申し訳ありません。』

 

『いえ大丈夫ですよ。だいたい次官から伺っていますから』

私は笑顔で応えつつも傍にいる次官には半分あてつけていた。だが次官は得意げに、うなづいているだけだ。どこまでふてぶてしいんだ?この野郎~。

 

すぐに、あの係の男性が来て言った。

『では出発のお時間までは控え室へご案内いたします、どうぞ』

 

『ああ、頼む』

私と艦娘たちは控え室へと移動する。

 

廊下でブルネイ司令とすれ違った。彼は言った。

「俺は先に戻るから。お前たちは急きょ明日出発なんだろう?ブルネイの空港に日本の旅客機が到着するそうだな。今日は夕食をとったら後は良いから美保の連中だけで点呼を取って、すぐ休め」

 

「ああ、助かる……祥高さん、それで良いかな?」

 

「はい」

祥高さんは、すぐに各班長に連絡を入れる。それを見ながら私は自分をすっ飛ばしていろいろ展開していくこの状況に、ふつふつと怒りが湧いてきた。何だ明日には直ぐ出発なのか?相変わらず何も聞いていないんだが一体どうなっているんだ?

 

だが私のイライラを察知したのか無線連絡を終えた祥高さんが直ぐにこちを見て言った。

「司令……」

 

そう言いながら彼女は私の手を取ってささやくように言った。

「お気持ちは察しますが、大局的な流れが分かるだけでも良しとしましょう。決して司令を蔑(ないがし)ろにするとか悪意があっての事ではないはずです。私も精一杯、お支えしますから……」

 

そう言って彼女は訴えるような目をした。彼女が言わんとすることは直ぐに悟った。そうだ、せっかくの祝賀パレードなのにイライラしたら台無しになりかねない。私は反省した。

「ありがとう祥高さん」

 

「いえ……」

そう言いながら彼女は微笑んだ。やっぱり女神だ。

 

「ははぁ~ん?」

こら、横から変な声で笑うな、青葉!

 

「えへへ……」

 

<<地階:出発準備>>

 

ちょっとしたイライラはあったものの秘書艦の機転で私も落ち着いた。しかし控え室ではちょっと休んだだけで直ぐに出発時間が来た。係の男性の案内で私たちは地下室にある駐車場へ向かう。ここでもやはりVIP用のエレベーターだ。

 

そして地階では何台ものオープンカーが並んでいた。ザッと見た感じでも、まるでこれから出撃する艦船ようで、まさに壮観だ。ワーグナーの音楽でも、かき鳴らしたくなってくる。

『そうだな、まさにワーグナーが相応しい。さすれば、総統閣下もお喜びだろう』

 

なんだビックリした!ああ、ドイツか。あれ?私は聞いた。

『あなたも参加されるのですか?』

 

『いや、私は単なる見学です』

なるほど見るとイタリアも居るし……要するに偵察だな。

 

私たちは案内されるままにロールスロイスかベンツか分からないが高級そうな白いオープンカーに乗り込んだ。シートも革張りで、こりゃ提督執務室のイスよりはるかに上等だぞ(当たり前か)

 

係の男性が車外から最後の説明をする。

『お分かりかと存じますが運転はすべて担当が行いますので司令には沿道の国民に向けて手を振って頂ければ結構です。安全のため無理に立ち上がる必要はございませんが適宜必要に応じてご判断下さい。タイミングはお任せいたします。ではどうぞ』

 

パレードの車列は意外に長そうだ。私たちだけでなく今回表彰された軍や警察関係の人たち、先導隊、警備隊や騎兵隊、いろいろだ。言い方は悪いがこれも一種の、お祭りだな。

ふと見ると私たちの後ろがブルネイの軍用車だ。青葉と夕立がそちらへ乗車している。そして、こちらに手を振っている。祥高さんも手を振り返している。何だかこの情景だけを見れば、ほのぼのとするなあ~。男だけだったら、こうはならない。やっぱり女神が居ると華になるな。

 

軍用車の銃座には、あの祥高さんの機銃が上手く据え付けられている。あんなゴツいやつを祥高さんは地上から素手で撃ったんだよなあ。しかも狙いは正確……改めて艦娘の底知れぬパワーを痛感してしまう。特に祥高型は飛びぬけていそうだな。あんなのが三つも居たら……恐ろしい。敵が全力で潰しに来るのも分かる。

 

でもニコニコしながら、その銃を舐めるように操作している夕立も、ちょっとね……日向とはまた違った凄みがあるんだよな、お前は。

(ぽい?)……って、言ってるな。私は軽く敬礼を返してやった。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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