マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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いよいよ凱旋パレードが出発する。初めての体験に戸惑いながらも国情の違いを感じる提督だった。慣れないパレードを終えてブルネイの鎮守府に戻ってからサプライズが起きた。その後、提督は班長たちと会話を交わしたが日向の様子がいつもと違う感じだった。


第37話(改)<凱旋と胴上げ>

「司令~!もっと笑顔ぉ~!」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第37話(改)<凱旋と胴上げ>

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<<地階:出発と決意>>

 

やがて先導隊の号令と共に凱旋パレードの車列が動き出す。まさかここまで大きな行事になるとは想像してなかったな。ただブルネイという小さな国の安全保障を考えれば重要なことだ。国家と国民同士の団結になると同時に対外的アピール効果も大きい。

 

今後、日本海軍とブルネイ国は、さらに緊密な軍事協力関係を構築していくことになるだろう。それはまさに一蓮托生であり南シナ海周辺地域の安定化に大きく貢献するに違いない。

 

だが果たして肝心の日本では現在、自国内でここまでの国防意識を保てるのだろうか?それが疑問だ。最近は思想の自由とかを主張して軍部に反対する勢力も蔓延(はびこ)っている。そもそも日本人のように石橋を叩くような国民性では、ここまで盛り上げる国家的イベントは簡単には出来まい。まして美保鎮守府のある山陰では地方ゆえにさらに難しいだろう。

 

それでも艦娘たちは内輪でのパーティやイベントをやりたがるだろうな。私自身は誰かをおだてたり祭り上げるのは苦手だ。でも艦娘部隊の司令なのだから今後は美保の彼女たちが喜ぶことを企画する努力もしていこう。

 

<<パレード:群集と笑顔>>

 

迎賓館の地階から出た車列は先導隊に従って、とてもノロノロと進む。やがて壮麗な王宮の前を横切って、ゆっくりと曲線を沿って王宮前広場へと入る。ここでは既に道端に無数の人だかりがあって驚いた。ブルネイ政府はパレードのことは既に国民に告知していたらしい。皆、歓声を上げて旗を振ったりテープを投げたり完全に、お祭り状態だ。

 

車列が国道に入ると、ここでも一般車両が通行止めになっていて一帯がパレード一色になっていた。道路ばかりでなく沿道にある建物の窓からも軒並みたくさんの人が顔を出している。他のオープンカーに乗っている受賞者たちは皆、ニコニコとして手を振っている。紙吹雪やら風船やら……とても華やかでテーマパークのパレードを髣髴とさせる……いや私自身そんなところは行ったことないから想像だけど。

 

パレード祥高さんには経験があるのかな?私には大衆に愛想笑いを振りまくなんてとても苦手だ。でも司令官は単純に”軍人だから出来ません”といって拒否出来ない立場や事情もある。これは我慢してやるしかない任務だ(笑)。私は祥高さんや前の車列で手を振っている人のマネをして手を振ってみる。

 

「か……硬い、硬いなあ~」

 

「あれ?」

誰が呟いているのかと思ったら私たちの車の直ぐ脇にカメラを抱えた青葉が居た。歩いて私たちを撮影しながら苦虫を潰したような不服そうな顔をしている。そうか車がゆっくりだから徒歩でも十分撮影できるんだな。

 

「なんだよ青葉、不服か?」

喧騒に負けじと私が少し大声で言うと彼女もやや大げさに叫ぶようにして答えた。

 

「司令~!もっと笑顔ぉ~!」

眉間にしわを寄せて訴えるお前に言われなくても十分に分かっているよ!私だって必死に笑っているつもりなんだけど……絶対引きつっている。

 

それからも幾度となく彼女には”笑顔~”って言われた。でも限界……。そのうち青葉も諦めたのか何も言わなくなった。スマン。軍人の頬はきっと防弾のために硬いんだ。

 

「ええ、お気持ちは良く分かりますが将という立場に居る以上もう少し努力された方が宜しいですね」

 

「え?」

何となく隣の秘書艦がそう言ったような……私は慌てて祥高さんを見たが彼女は向こうを向いて手を振っている。変だな気のせいか。

 

沿道にずらりと並んだ大観衆。その前を時々記者やカメラマンに動画撮影スタッフまでも機材を担いで走り回っている。これだけの観衆に取材陣だから、かなりの対外PRになるのだろう。ブルネイ政府もチャンスを最大限に生かしているわけだ。

結局この行事が報道されることで遠まわしに南シナ海でのシナの横暴への批判パレードにもなる。共産主義者たちが好むデモ行進の裏返しのこの”凱旋パレード”とは、さすがブルネイだ。

 

振り返ると夕立は私たちの後ろの軍用車で機銃を片手に金髪を派手になびかせニコニコと手を振っている。その金髪効果もでかいけど夕立ってこういうイベント事になると妙に生き生きして目立つ。その様子は実にしっくり来るんだな。

 

私は思わず祥高さんに言った。

「夕立は、様(さま)になっているね」

 

「そうですね。あの子ってイベントが大好きですから」

やはりそうだよな。確かに夕立は華のある艦娘だ。今度、美保鎮守府で対外的なイベントがあったら積極的に前面に出してやろうと思った。

 

<<パレード:気分はハイ>>

 

沿道にはブルネイにもこんなに人が居たのかと思わせるくらいの群集だ。パレードの後半からは次第に自分が何をやっているのか訳が分からなくなってきた。もともとこういう状況には不慣れということもあるが、きっと運動選手のように少し酸欠状態で気分が”ハイ”にでもなったのだろう。あるいは雰囲気に酔ったのかな?

 

私の顔は引きつったままだと思うが制服に制帽だから遠目には私の表情なんて分かるまい。だが青葉は最後まで不服そうだった。彼女には済まないがパレードは戦場とはまた違った緊張感の連続だ。私だって照れるし疲れるんだよ。ひたすら手を振り、たまに立ち上がって群集に笑顔を振りまくという行為。

夕立を始め艦娘たちは得意そうだが私にゃ無理だな。つくづく行進が終わってから何も予定を入れなかったブルネイ司令の配慮に感謝した。もしかしたら彼もパレードの経験があるのだろうか?

 

ひたすら手を振り慣れない笑顔を振りまき続け、いつもとは違う体力を使い切ったような半ば混沌とした状態で、気が付けば車列はようやくブルネイ鎮守府へ到着した。

 

基地の入り口から敷地内でもブルネイ司令や、あの技師を始めとした職員たちや隊員そして艦娘たちが大歓迎してくれた。少し離れて技術参謀と寛代もいる。

みんなの歓迎する気持ちは嬉しいけど私はもはや精根尽き果て再びダウンしそうだった。

 

<<ブルネイ鎮守府:本館正面玄関前>>

 

ブルネイ遠征部隊の班長である金剛と日向が艦娘たちの先頭で私たちに敬礼をして迎えてくれた。

「司令!コングラッチュレーションでーす!」

 

「お帰りなさい司令」

見事なまでに対照的な二人だな。その後ろに整列している艦娘たちも一斉に敬礼している。

 

私と祥高さんは車を降りると艦娘たちに敬礼をして応えた。

「ただいま……みんな、本当に良くやってくれた」

 

つい今までの演習から戦闘まで、艦娘たちの働きに対して自然に感謝の言葉が出た。一通り行事が終わって区切りが付いたからだろう、私も少し気が弛んだ。

そんな私が敬礼を直ると同時に、金剛が後ろを振り返ると言った。

「全員、ヤルね!」

 

『はい!』

なに?いったい何を……私が状況を飲み込めないまま突っ立っていると艦娘たちがいきなり私の周りに押し寄せてきた。まさかとは思ったが一瞬、私は彼女たちに襲われるかと思って身構えてしまった。安心して気を緩めた分ちょっと反応が遅れた。

 

だが次の瞬間いきなり私は艦娘たちに身体を持ち上げられた。あれ?これは……。

「そぉれ!」

 

『ワッショイ、わっしょい!』

そのまま私はブルネイ鎮守府の正面玄関前で艦娘たちに胴上げされたのだった。その周りに居る職員たちからも一斉に拍手が沸きあがっている。

私の身体は何度も宙を舞った。胴上げか……兵学校時代か、いつの頃か忘れたが学生時分に何かの試合でチーム優勝したときに全員で順番にされた記憶があった。まさか再び今度は艦娘たちに自分が胴上げされる日が来るとは……。

 

しかしお前たちは一体、いつどこでこういう”胴上げ”なんてことを覚えたんだ?椰子の木と青空を見上げながら私はそんなことを考えていた。

 

<<鎮守府:本館正面玄関前>>

 

私の身体は艦娘たちによって本館前広場で何度か宙に舞った。やがて誰かに抱きかかえられ再び地上に降ろされた。最後まで私を掴んでくれたのはやはり班長でもある金剛と日向だった。

 

私を降ろしながら金剛が言う。

「テイトクは軽いネ~。もっとウエイト増やさないと吹き飛ぶヨ」

 

私は彼女の肩から手を離す際にふと”金剛の肩の肉って意外に柔らかいんだな”と感じた。やっぱりこの娘は女子なんだ……そんな想いには直ぐ蓋をして私も応えた。

「はは、私はね~太らない体質なんだよ」

 

「それはイイネ~」

珍しくウインクをしながら笑顔の彼女。十分休養してパワーも回復か。

 

そんなやり取りをしながら私は艦娘もバカスカ食ったらやはり太ったりするんだろうか?素朴な疑問が湧いた。

思わず直ぐ側にいた赤城さんと目が合った。彼女は直ぐに微笑んでくれた。ああ、ここにも女神が……太らない見本だよ。

 

彼女は私のそんな考えは露知らずニコニコしている。その後ろの相変わらずポーカーフェイスの加賀さんとは対照的で笑える。すると加賀さんは私の視線に気づいたのか、”何か?”という感じで目線だけこっちに向ける。いや君はね、そのままで良いんだよ加賀さん。

 

それにしても胴上げ直後の妙な浮遊感で足がフラフラする。艦娘にとっては私一人くらい軽々と持ち上げられるんだろう。

そう考えつつ足を前に出そうとしたらあれ?ベルトが何かに引っ掛かっている。慌てて振り向くと日向が私のベルトをつかんだままだった。

 

「おい日向、もう良いよ」

私は言った。そいえばこの艦娘は何処となく加賀さんにも似ているんだよな。

 

<<正面玄関前:航空戦艦>>

 

「あ……」

いつも感情も表情にもさほど変化が無い彼女だが、このときはハッとしたような顔をして慌てて私のベルトから手を離した。

 

「す、すみません」

私は別に全然気にしてないが彼女は妙に赤くなっていた。妙に可愛らしいな。

日向はなぜか意図的に私から目を反らしているようだった。私は彼女が日本に戻ったら、早々に美保から横須賀へ配置転換されることを思い出した。

 

それを思うと、つい言ってしまた。

「お前にも、本当に世話になったな日向」

 

「いえ、そんな……」

私に話しかけられ、さすがに顔はこちらに向けたのだが、なぜか視線だけは相変わらず私から反らしている。何だよ、また境港の珍道中の再来か?

すぐに伊勢が後ろからやってきて彼女の肩に手を回した。

 

「どうしたのさ?日向~」

この艦娘も一日休んで、ほとんど回復したようだな。安定性もバッチリか。

 

「いや、なんでもない」

日向はいきなり伊勢にまとわりつかれて一瞬ビックリしたようだったが、再びこわばった表情で答えていた。

 

「ふうん……」

伊勢は肩を組んだまま呟くように言った。

 

姉妹型の艦娘にもいろいろな組み合わせがある。さっきの赤城さんと加賀さんは姉妹ではないが、この航空戦艦の二人はれっきとした姉妹艦だ。オリジナルと量産型という違いは有れど壁の無さを印象付ける二人だった。

やっぱり彼女たちは普段から、こんな自然なやり取りをしているのかな?そんな間柄だから伊勢はもうこれ以上、日向には突っ込まないのかな?そう思って見ていると彼女は続けて日向に質問していた。

「なぁ日向~、私も明日から日本に行けるんだって?」

 

ちょっと意表を突かれたような表情をした日向は慌てて答える。

「あっ……ああ、そうらしいな」

 

へえ?珍しく動揺しているような日向だった。そもそも提案したのは、お前だろう?何ボンヤリしているんだと私は内心突っ込んでいた。

 

機嫌が良いのだろうか?伊勢は話題を続ける。

「でもさぁ、日向は日本へ戻ったら直ぐに横須賀へ移動なんだろ?ちょっと残念だなあ……」

 

「……」

日向は黙っていた。彼女の性格からすると自分が提案したとは決して言わないのだろう。私も敢えてここでは黙っておくことにした。ふと見ると、祥高さんも二人のやり取りを黙って見ていた。

 

そこへ今度は最上が来た。

「今回、ボクも日本へ移動するような話を聞きましたよ」

 

『ええ?』

その周りに居た艦娘たちも一斉に声を上げた。あれ?艦娘たちも日向たちの内容を全員が知っているわけではないんだ……ああそうか、共同墓地での話は全員がちゃんと聞いてたわけではないか。

 

「でも美保でなら、うまくやっていけそうだなあ~」

最上は呟いた。

 

それを聞いた伊勢と日向もお互いに目配せをしてうなづき合っている。また祥高さんも軽くうなづく。私はその光景を見てちょっと安心した。

 

「やぁ~戻ったなぁ!」

道化……もとい防衛次官が大声で割って入った。お陰で微妙にギクシャクしかけていた空気が一掃された。彼も使えるところがあるんだな。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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