マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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鎮守府正面玄関前では立ったまま全員に伝達事項があった。それは明日から臨戦態勢のまま本土へ帰還するということ。既に新たな戦いは始まっているのだ。二機の飛行機で本土へ戻ることになるのだが、その人選には紆余曲折が予感された。久しぶりに羽黒を見てホッとする提督だったが残念ながらその気持ちは敢え無く打ち砕かれるのだった。


第38話(改)<本土帰還を前にして>

「どこからそんな情報を……」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第38話(改)<本土帰還を前にして>

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<<正面玄関前:伝達事項>>

 

防衛次官は艦娘たちに伝える。

「立ち話で申し訳ないが皆、聞いてくれ。鎮守府で待機していたメンバーには何となく伝えたが我々は急きょ明日の出発となった」

 

『え~』

と言ったのは夕立の周辺。他にも何人か居たから、やっぱり全員には伝わっていないらしい。私が聞いたときも衝撃的な事実だったが今知った艦娘たちには、もっと衝撃だろうな。

 

次官の後ろから作戦参謀も来た。やっぱり足取りがフラフラしていて怪しい。

「おお、戻ったな……」

 

彼女は見るからに辛そうだ。まさか二日酔いじゃあるまいし。でも艦娘って、ひょっとしたら人間とは酔い方が違うのだろうか?……などと下らないことを考える私だった。

 

参謀は言う。

「聞いてのとおり、いよいよ明日の出発となる。今回は移動する人数が増えるため政府専用機を、こちらにまわしてもらい大艇と二班に分ける……人選は追って伝える。以上だ」

 

何とか伝えた……って感じの作戦参謀だった。要するに頭があまり回らないのだろう。なるほど作戦参謀を弱体化させるためには酔わせたら良いのかと、また下らないことを考えている私だった。あ、作戦参謀が恨めしい眼でこちらを睨んでいる。そんな睨まれたって呑んだのは参謀御自身ですからね。

 

すぐに防衛次官が付け加える。

「ブルネイ司令も配慮して下さって、このあと点呼を取って直ぐに解散する。つまり明日の出発までフリーだ!」

 

なに最後を強調しているんだよ!お前がフリーなわけじゃないんだぞって……あ、一斉に艦娘たちからも歓声が上がっている。そうか要するに外出許可さえ貰えば基地外に繰り出しても良いのか。でも私には到底、外出する元気は無いから無理だが。

 

だがそこに来た技術参謀が釘を刺した。

「皆、聞いてくれ。明日出発するが本土まで平穏無事に戻れるとは考えないでくれ。従って明日から本土に到着するまでは常に戦闘待機常態になることを留意して今から一切のアルコール類は禁止。また外出も19時までには、ここに戻るようにすること、以上だ!」

 

作戦参謀の頭の回らない分を補足した感じだな。しかし防衛次官のバツの悪そうな顔と腕を組んだまま何となくそれを睨みつけるような技術参謀の対比が滑稽である。

艦娘たちも少々ブーイングが出そうな雰囲気ではあったが現実問題、周りの海は敵だらけなのだ。それを忘れてはいけないことは確かだ。さすが技術参謀こういう抑えるべきところはビシッと決めるのが普通の艦娘とは違うところだ。

 

<<正面玄関前:艦娘談義>>

 

その後、美保鎮守府では班長を中心に点呼を取った。伊勢と最上は正式な辞令は後ほどではあるが、軍令部及び艦隊司令部には次官から連絡済ということで仮では有るが本日16:00より美保鎮守府所属となった。各班からの状況報告を受けたあと私は解散の指令を出した。

「技術参謀の言ったとおり各自、羽を伸ばしたいのは分かるが明日からは再び戦場だと心得るように。今日はもう自重して欲しい。以上だ」

 

続けて祥高さんが全体に号令を掛ける。

「以上、解散!」

 

私も敬礼し、艦娘たちも一斉に敬礼した。やれやれ、やっと一区切り付いたか。パラパラと散らばる艦娘たち。

 

私は何気なく、その場に留まっていると、開口一番、大きく伸びをしながら金剛が言った。

「あ~、せっかく外出して楽しもうと思ったのに、仕方ないデスね~」

 

「でもお姉さま、新しい仲間も増えて、本土に戻ったら賑やかになります!」

これは比叡(1号)。

 

「ア……」

そこで何かを思い出したように振り向いた金剛は、ブルネイの比叡(2号)を見て言った。

 

「アナタはここ、ブルネイに留まるのネ?」

いきなり単刀直入な質問だな。金剛らしいけど。

 

いきなり質問されてちょっと驚いたような比叡2号だったが、すぐに質問の意味を理解したようで笑顔で応えた。

「はい、お姉さま。私はここブルネイで生まれましたし、たくさんの思い出が出来ましたから……」

 

本当にこの2号は、しっかりしているんだよな。量産化って微妙に性格修正が入るに違いないと思う。

 

「やはり生まれ育った土地って何かが違うのでしょうね」

長い髪に手を当てながら赤城さんが言った。ああ、まだ君も居たんだ。何となく彼女の視線は加賀さんを向いている。

 

その加賀さんも赤城さんを見て言った。

「正直、私にはまだ分からない。でも赤城さんの言う通りだと思う。それに……」

 

加賀さんは初めて恥ずかしそうに微笑んだ。

「建造されて間もない私もこの短期間で信じられないことをたくさん通過したから……特に漆黒の暗闇で赤城さんが私を呼ぶ声……あの声は決して忘れない。それは私の消し去ることの出来ない思い出になったわ。ありがとう赤城さん」

 

そうか、加賀さんも三途の川から戻ってきたんだよな……私はあのお花畑を思い出した。

彼女は続ける。

「でもゴメンナサイ。私もこの地に留まって戦い抜きたいと思うの。やっぱりいろんな思い出の刻まれた、私の生まれたこの場所は護りたい……それだけは譲れない」

 

「……」

赤城さんも長い髪を少しなびかせながら微笑んでいる。

 

二人の会話を聞きながら私は以前、秘書艦の祥高さんに帰省とか墓参の質問をしたことを思い出した。艦娘の故郷か……美保鎮守府にはまだ量産化のできる工廠は無いけど、いずれは美保出身の艦娘が現れる時代が来るのだろう。

 

「でも」

それまで黙っていた龍田さんが口を開いた。

 

「思い出は私たちの心が作るものだと思うわ。場所や体験は、あくまで私たちの心の活動舞台に過ぎないのよね」

 

するとブルネイの天龍が腕を組んだまま受ける。

「そうだな。俺たちには生まれたときから先人たちの記憶や想いが受け継がれているからな。いつどこで誰と組んで戦おうが、それは後付けに過ぎないんだ。俺たちはこうやって生きて戦いながら同時に心を育てるって感じかな?それがかげがえの無いものになるのだろう」

 

意外に難しいことを言うぞ、この天龍は。しかしこの二人はオリジナルだろうが量産型だろうがホント独特だよな。まあ頼りがいのある二人であることには代わりが無いわけだが。

 

ずっと黙っていた祥高さんが、まだ留まっている艦娘たちに向けて語りかけるように口を開いた。

「皆さんひとまず解散ですが各自くれぐれも責任を持って行動してください。美保鎮守府所属の艦娘の皆さんの外出許可は私が一括して受けますのでもし希望者があれば、あとから私を呼び出してください。今日は夜までずっと無線をオープンにしておきますから」

 

その言葉で全員が軽く敬礼をして各自散って行った。

 

<<正面玄関前:様々な戦い>>

 

「司令、スマン……」

作戦参謀が声をかけてきた。

 

「頭が痛くてな……知っての通り明日は旅客機と大艇と組んで飛ぶが大艇は護衛代わりだ。だから艦娘も二手に分けるが大艇に乗る者は場合によっては着水し直接戦うことになる可能性もある。その人選は、お前に任せても良いか?」

 

「ハッ、お任せ下さい」

敬礼をして返したが良く考えたら私は果たして、いつまで総司令官なのだろうか?もう解任されたのかな?

 

気になったので敬礼を直った後、次官に聞いてみた。

「次官、私はいつまで総司令官なのでしょうか?」

 

「あ~」

頼りない返事をする次官、おまけに視線が宙を浮いている。こいつまたウッカリ忘れていたとか言うんじゃないだろうな?

 

「えっと~、お前も少将になったからなあ~」

いや、それを聞いているじゃなくて……おい視線を反らして頭をポリポリかくなって。いかにも怪し過ぎるぞ!……ってか、お前も酒飲んでただろう!

 

寛代と一緒に居た技術参謀が、いつの間にか私の近くに来て腰に両手を当てて言った。

「司令、あまり細かいことは気にするな。だが普通、人間ってのは権力のある位置が好きなのではないのか?」

 

「はあ、しかしそういう位置が苦手な者も居ります」

私はちょっと肩をすくめて言った。

 

「フン。次官はよく”この位置を利用し尽くすぞ!”とか言っているんだがなあ~まあ、人それぞれか」

そう言いながら技術参謀は笑った。防衛次官はバツの悪そうな顔をした。

 

だがそういうことを、お互いに言える間柄。いわゆる信頼関係がこの二人にはあるんだな。次官と二人の参謀は古くからの知り合いらしいが、それで本省の荒海を渡っているのだろう。かつてはそこに祥高さんもいて三人姉妹と若い次官がタッグを組んでいた。そんな光景が目に浮かぶようだった。

 

一瞬の間があってから、次官は頼りない声で言った。

「司令えっと~、美保に帰るまでは取り敢えず継続だと考えて間違いは無い」

 

「はぁ」

脱力するなあ~まったく。

 

<<正面玄関前:メンバー人選>>

 

私は祥高さんを振り返った。

「祥高さん、聞いての通り明日の機体ごとにメンバーを割り振らないといけない。今日は艦娘たちからの連絡を受けながらで悪いが、メンバーの素案を作ってくれないか」

 

「了解しました」

彼女は軽く敬礼をすると、すぐに作戦参謀に聞く。

 

「明日飛び立って本土へはノンストップで飛ぶのかしら?」

作戦参謀は、ちょっと頭を押さえながら答えた。

 

「ああ何事も無ければその予定だが……深海棲艦やシナの連中が黙っているとは思えない。大艇だけを着水させて、戦列を展開させる必要も出て来る可能性はある」

 

少し思案して祥高さんは聞く。

「今回は、あのイタリアとドイツの武官に艦娘もついて来るのですよね?」

 

「そうだ……武官は各一人、艦娘も一人ずつだ」

 

「本省の皆さんは、どうされますか?同行しますか」

それを聞いて私は最初にここブルネイへ来たときのことを思い出した。そういえばあの時は技術参謀が凄い剣幕だったなあ~。今思うと懐かしくもあり微笑ましいから不思議だ。

 

作戦参謀は、ちょっと頭を抱えるように渋い顔をして言った。

「そこだ……旅客機で美保にいったん寄って、そこから中央へ戻る予定だが……美保にどのくらい滞在できるかによって調整が必要だ。しかし途中でもし戦闘に巻き込まれる可能性があるなら、あまり我々中央の人間が便乗するのも時間的になあ……羽黒もどうするか」

ああ、そういえば羽黒もいたか。

 

「すまん祥高姉さん、あとで本省に確認をするから、その後からでも良いか?」

 

「分かったわ」

作戦参謀も、いろいろ調整で大変そうだな。

 

<<正面玄関前:はぐはぐ>>

 

そのとき正面玄関から黒髪の艦娘が出てきた……噂をすれば影だ、あれは羽黒だ。彼女は私たちを見て軽く会釈をすると作戦参謀の前に歩み寄り敬礼をした……だが作戦参謀は渋い表情をすると手を上げて制した。

「スマンな羽黒。報告はあと一時間後からでも良いか?」

 

「ハッ」

再び敬礼をして応える羽黒。改めて彼女を見ると確かに作戦参謀が言うように線は細いけどホント真面目で感じの良い艦娘だよな。

 

……いかん!これは妄想か?だが私の隣に居た祥高さんも呟く。

「あの艦娘は真面目そうな良い子ですよね~」

 

「そうだね」

秘書艦が私と同じ感想を抱いていたことに、なぜかホッとする私だった。

 

だが私のホンワカした気持ちは、またもやアイツによって打ち砕かれる。

「でもあの艦娘ってスッゴク酒癖が悪いって言う噂ですよ~」

 

「な、なんだ青葉?どこからそんな情報を……」

ビックリした。また鬼(地獄)の情報通が来たぞ、この青葉め!よけいな事を~。

 

でも、ああいう良い子ちゃんタイプの娘ほど、いったん箍(たが)が外れると崩れるのも早いって言うよな。私は関係ないところで妙に納得もした。青葉はこの情景もさりげなくカメラに収めている。今回もたくさん撮ったよな。

 

青葉からの変な情報を私が聞いたことは露知らず羽黒はこちらをチラッと見てまた会釈をした。う~む、やっぱり感じが良い。量産型でも良いから、いつか美保にも来て欲しいな。そうしたらどうしてやろうか……受付嬢とか?いかん、やっぱり妄想が出る。

 

<<正面玄関前:休息>>

 

「司令は、これからどうされますか?」

祥高さんがいきなり聞いてきたので妄想していた私は一瞬ドキッとした。だが既に太陽は少しずつ傾き始めている。ああ、もうこんな時間だったのか。

思えばさっきの食事はまったく食べていない。そもそも今日は朝からずっと出ずっぱりだったから実質、昼食を抜いたようなものだ。だがずっと気が張っていたせいか、ほとんど空腹感が無い。

軍人なんていったん戦闘になればケリがつくまでは食べられないのは当たり前。そういうパターンには不思議と慣れているが今日の場合はちょっと違う。イベントだのパーティだの。軍人でも普段あまり使わない神経を酷使する感じだった。そういう面で疲労したな。

 

私は制帽を取って答えた。

「そうだな、夜の食事まではまだ間があるだろうし私は少し自室で休ませてもらうよ」

 

「それが良いですね」

予想された答えではあったが秘書艦の同意を得るとなぜかホッとした。

 

「では、いったん失礼する」

私はその場に居た艦娘たちや次官に敬礼をして、鎮守府本館内の自室へと戻る。

 

「司令!」

いきなり青葉が声を掛けてきた。

 

私が無言で振り返ると彼女はウインクをして敬礼をしていた。

「今日は一日、お疲れ様でした!」

 

「ああ、お疲れ」

私はふっと表情が緩んだ。周りの艦娘たちも微笑んでいた。私はそのまま手を上げて本館正面入り口の階段を上って行った。

 

やっと落ち着いたな……廊下を歩きながら私はいろいろ考え始めた。

まずは不思議な青葉だ。あの艦娘は最初の出会いから変に馴れ馴れしくも無く、かといって壁も無かった。お互いサイクルが合うんだよな。嫌みの無い独特のマッチング感……例えるなら日向とか、ドイツ武官のような印象を受ける。一種のソウルメイトみたいなものだろうか?

 

まあ青葉はちょっと特殊だとしても、そもそも艦娘部隊というのは男性の司令に女性の秘書艦という組み合わせだ。よく考えてみたらこれで帝国海軍なのだから不思議なものだ。前にも感じたことだが軍隊は特殊な組織だ。しかし人間である以上本来は男性と女性が揃ってこそ初めて何事も上手く回るんだろうと思う。

 

組織では男性が強すぎてもいけないし女性が出しゃばりすぎてもダメだ。両者が上手く調和することで組織として最高のパフォーマンスを発揮できるのではないか?

私が兵学校時代には知力も体力も平均スレスレぐらいだった。決して期待されても居なかったし自分でも正直、将来なんて期待していなかった。

それが気が付けば艦娘部隊の司令官だ。そしてもし今後、私が理想とする組織を美保鎮守府で実現できたら?それは素晴らしいことだろう。それが理想組織であり本当のハーレムになるのだろうか?そんなことを一人で妄想するのだった。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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