マイ「艦これ」「ブルネイの旭日」(第5部)   作:しろっこ

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提督のGR(ゲストルーム)に、大井親子がやってきた。彼女はちょっと深刻そうな表情だった。提督は大井の一挙手一投足に懐かしさを覚える反面、ふと疑念も浮かぶのだった。だが彼女の葛藤の心情の吐露を聞いた提督は再び理解を示すのだった。


第39話(改)<原点回帰と新しい出発>

「もう貴方は司令官です」

 

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「艦これ」的「ブルネイの旭日」(みほ5ん)

:第39話(改)<原点回帰と新しい出発>

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<<本館GR:来訪者>>

 

ブルネイ鎮守府本館の中も午後の日差しで明るいがイベントのあとの余波だろうか?とても静かだ。何だか数日振りにゲストルーム(GR)に戻るような気分だ。

 

やれやれと思いながら階段を上がって自室が見える廊下にきて驚いた。部屋の前に誰かが立っている……小さな女の子を連れた大井だった。しつこいようだが以前の彼女とは何となく雰囲気が変わっている。私は彼女に話しかけた。

「どうかしたか?大井」

 

「司令……お話が」

少し深刻そうな顔をしている

 

「分かった。中で話そうか」

彼女はうなづいた。

 

そういえば以前、日向とかブルネイの五月雨がゲストルームに来たときには深夜という時間帯もあったけど上官と部下とはいえ男女が密室で二人っきりになるのは抵抗があった。だが今の大井は娘を連れている。そのことで1対2という形が何らかのクッションになるのだろう。仮に青葉がここに来ても後ろめたい気持ちは、まったく起こらないはずだ。私は彼女たちと一緒に部屋に入った。

 

<<本館GR:大井親子>>

 

「そこのソファに適当に腰かけてくれ、お茶を入れよう」

私が言うと、大井は慌てたように首を振った。

 

「それは出来ません!私がやりますから……司令はお座りになって!」

 

その剣幕に思わず私もタジタジになってしまった。

「あ……そう」

 

でも直ぐにハッとしたような顔をして慌てて詫びる彼女。

「す、すみません司令!失礼しました……でも、お掛けになって下さい」

 

何となく、この剣幕というか雰囲気は昔のままだな。

「ははは……懐かしいな大井」

 

思わず口をついて出た。私のそんな言葉にホッとしたような表情を見せた彼女は恥ずかしそうに会釈をしながら奥の簡易厨房へと向かった。

私は大井と入れ替わるようにしてソファに座った。目の前に居るのは境港の夏祭りで見かけた、あの女の子だった。

 

「……」

あどけない瞳で私を見上げているがやっぱり……人間じゃないよな。話しかけて良いものかどうかつい考えてしまう。

 

「こんにちは」

取りとめも無く私は言った。

 

「こんにちわ」

ああ、普通に日本語が分かるんだな。そういえば夏祭りのときにも美保の艦娘たちと誰かが、お友達になったとか言っていたな。

 

「君いくつ……歳は?」

 

「うーん、ワカラナイ」

その台詞に私はドキッとして冷や汗が出た。何と言うか……やっぱりこの二人は親子なんだと改めて思わざるを得なかった。だがそれらも含めて受け入れなければと思うのだ。

 

「すみませ~ん」

そう言いながら大井が、お茶とジュースを持ってきた。そしてお茶を置くと彼女もソファに腰かけた。

改めて正面からみると間違いなく大井だ。実体で再会するのは何年ぶりだろうか。でも彼女はいつも私の側に居たような心地がするから妙な感覚を覚える。やっぱり私が悪夢で何度も見たことが大きいのだろう。それはまさか生霊みたいなものか?いやそんなことはあるまい。

 

私は改めて声をかけた。

「海の上ではバタバタしていたが……良く戻ったな大井」

 

「はい……」

娘の手を軽く握りながら彼女は応えた。

 

<<本館GR:変わらない大井>>

 

「先ほどは済みません司令……私ったらつい」

大井は再び詫びた。

 

「いや構わないよ。私もこの一ヶ月ほどで艦娘たちには相当鍛えられたからなあ」

そう言って私は笑った。

 

彼女は失礼しますと言いながら娘にジュースを飲ませている。その雰囲気は母親そのものなのだが……でもやっぱり大井だな。

 

ただ私はその光景を見ていてふと疑問に思った。

「その娘は、お前が”向こう側”から戻ってからも”お前”のことが分かったのか?」

 

そうなのだ。大井は”あっち側”から”こちら側”に戻ったら、その雰囲気から形相まですべてが変わってしまったからな。

 

しかし彼女は特に表情を変えることなく答えた。

「そうですね。私もそれが心配でしたけど……ウフフ。それでもこの娘にとっては”私”は”私だった”みたい」

 

それを聞いて私はなぜか安堵と同時に妙な不安に駆られた。つまり純粋な子供の目線からは敵も艦娘もさほど区別が付かない。やはり両者の本質は同じなのだろうか?そんな疑問が湧くのだ。根本的に深海棲艦は、本当に私たちの敵なのか?と考えてしまう。

 

<<本館GR:大井の不安と懸念>>

 

私は聞いた。

「それでお前の相談とは何だ?」

 

「あっ……そうでした」

大井は改めてハッとしたようだ。この辺りの短絡的な雰囲気は昔のままだな。

 

彼女はポツポツと語り始めた。

「私は司令を信じていますけど、私はともかくこの娘は普通ではないから……今後私たちがどうなっていくかが心配なの」

 

「ああ分かるよ。だが大丈夫、安心しろ。境港の境内でも言ったと思うが私は陸軍とは違う。それにお前が戻ってきた以上はその娘も含めて仲間だろう。どこかに売り飛ばすようなマネはしないさ」

私は言った。

 

彼女は安堵したような表情を見せた。

「それで安心だわ~」

 

だが彼女は直ぐに表情を曇らせた。

「でも司令だって、いつまでも美保に居るわけでは無いでしょう?」

 

「ああ……まあそうだが」

 

「その先のことを考えると……いつまでも私たちは軍には居られないと思うの」

なるほど確かに司令(私)が変われば大井の事情を汲む者が来るとは限らないし軍隊は特殊だからな……私が居る間に大井も親子揃って身の振り方を考えておくべきだろうか。

 

そのときふと私は祥高さんを思い出した。それに復活組は美保に何人も居るじゃないか?私は彼女に言った。

「確かに数年先の私の移動の際までに、お前たちの身の振り方は考えるべきだ。しかし安心しろ大井。復活した艦娘は決してお前だけじゃないんだ。お前の事情を汲む者が美保には何人も居るんだ」

 

それを聞いて彼女は明るい表情になった。

「ホントですか?……嬉しい」

 

「ああ、お前は独りじゃないんだよ」

そう言いながら美保の艦娘たちがとても心強く感じられるのだった。

 

<<本館GR:心情の吐露>>

 

「司令……」

さりげなく娘の相手をしながら再び深刻そうな表情を見せる大井。

 

「何だ?」

 

ちょっと言い難そうな雰囲気だったが彼女はポツリポツリと語り始める。

「ホントは私、司令の前に顔を出すのも怖かったの……ううんハッキリとは覚えていないんだけど私が異形の風体で何度も美保鎮守府に行った時も正直行きたくはなかった」

 

「そうか」

 

「でも異形の集団に居ると自然に鎮守府を攻撃しなければいけないという憎しみの心しか湧かないの。それでも美保に近づくと……ううん、司令に近いと思うだけで足がすくんでしまったの」

 

「……」

淡々と語りながらそれでも必死に記憶を辿ろうとしている大井。娘はあどけない表情のまま彼女の手にまとわり付いている。

 

「私、舞鶴で沈んだときからの記憶が曖昧なの……だけど司令とは何度かおぼろげに出会ったような記憶があるの……何かご存知でしょうか?司令」

訴えるような目で私を見詰める大井。

 

私は応える。

「ああ、私は何度もお前の夢を見た気がする」

 

大井は急にうつむいた。肩を震わせて……泣いているのか?娘が心配そうに見上げている。彼女は”大丈夫よ”と言っているようだ。

 

やがて搾り出すようにして大井は続ける。

「二度と戻ってはいけない、そう思うんだけど体が自然に美保に向いて……夏祭りの私はそんな感じで気が付いたらあそこに居たの。皆と写真を撮ってすごく嬉しかったけど現実の自分を振り返ると苦しくて……みんなの前に私は顔なんか出せないのに……でも北上さんは昔のまま私を受け入れてくれて……本当に心の底から戻りたかったの……」

 

私は黙ってハンケチを渡した。それを受け取った大井、女の子も一緒に彼女の目の周りを拭っている。

「ごめんなさい司令……この娘も貴方に出会えないと思った原因なの」

 

複雑な事情がありそうだが、そこは問うまい。彼女は再び顔を上げた。

「私、舞鶴の貴方……作戦参謀が大っ嫌いだったの」

 

それは予想できた。相変わらず単刀直入に正直に言うよな大井は。この辺りは昔のままだ。

「ああ、済まなかった」

 

私のこの返事で安心したのだろうか?彼女は急に明るい表情になって堰を切ったかのように一気に話し出した。

「だから沈んでからも貴方が憎い!その一点で自分を保っていたかも知れない。敵の中で頭角を現したのも、何度も美保鎮守府を攻撃し続けたのも、ただその想いがあったから……でも何度目の攻撃だったかしら。急に美保を攻撃するのが苦しくなってきたの。夏祭りの後からかしら」

 

「……」

 

「何度も強がってみたけどダメ。ドンドン苦しくなって……私の中に二人の自分が居るようで苦しくて気が付いたら海の上だった」

 

「ああ」

 

彼女は微笑んだ。

「皆優しい……変わった。海の上に出る前に私は確かに司令の声を聞いたのよ。それがあったから全部を委ねて……だから私はこの地から生まれ変わろうと決心したの」

 

「そうか」

 

「今は皆で日本に戻るのが楽しみなの。もう独りぼっちじゃないし」

彼女の笑顔を見て娘も笑っていた。本当に可愛い子だよな。

 

「いろいろあったが、良かったな大井」

私は言った。

 

「うん]

応えた彼女の表情は、まるで舞鶴の頃の少女ようだった。これですべてが戻っていく。そんな感覚だった。

 

「もしお前が再び美保で戦うことになったら私の指揮を受け入れてくれるか?」

私は聞いてみた。彼女は言った。

 

「もう貴方は司令官です。美保のみんなの、そして私の」

彼女の瞳は信頼と希望に満ちているように見えた。

 

「そうか。ありがとう」

窓から見えるブルネイの空は夕日に照らされて赤くなっていた。それは何かを象徴しているかのようだった。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。
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