「これは楽しみですねっ、お姉さま!」
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オトナ「艦これ」「ブルネイの旭日」(みほ5ん)
:第42話(改)<僻地でも前線へは従順に参ります>
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<<廊下:金剛型着任>>
ちょっとムキになっている金剛をみて祥高さんがなだめる様に言った。
「そういえば金剛さん、大淀さんからの連絡で今回美保に金剛型の戦艦が着任したそうですよ」
「ええ!それは本当デスカ?」
思わず叫ぶ金剛。
同時に比叡も続ける。
「祥高さんそれは誰です?榛名さんですか、霧島さんですかっ?」
比叡の勢いに、ちょっとタジタジの祥高さんは応えた。
「それはまだ分かりませんけど……また確認しておきますね」
「わぁ~これは楽しみですねっ、お姉さま!」
嬉しそうに金剛を振り返る比叡。
「そうネ」
金剛はゆっくりと立ち上がると、珍しく遠くを見詰めるような眼差しをして窓際に立った。夕日に染まった屋外の景色と差し込む光で鎮守府本館の廊下も真っ赤になっている。金剛はそんな赤い景色を無言で眺めていた。
直ぐに後から近づいた比叡は金剛の腰に軽く手を添えて側に寄り添っている。二人は何も語らなくても絵になっている。姉妹って良いな。
漠然とその様子を見ていた伊勢と最上も軽く目配せをして、少し離れていた日向に近づいた。日向もまた軽くうなづいて一緒に窓際へ向かった。
結局、先ほどまでの騒動がウソのように皆が落ち着いてくれたようだな。やれやれ、改めて見ると赤い夕日に照らされた艦娘たち……なかなか良いな。青葉は……ああ、カメラ持っていないか?だがしっかりと非常用のコンパクトカメラを持っていて撮影していた。さすがプロだな。
<<廊下:軍令部の意向>>
帝国海軍の金剛型は全部で4艦居る。いま美保にはその金剛と比叡が居るから着任したのは残りのどちらか?ということになるわけだ。
改めて思い起こすとこの夏に美保鎮守府へ私が着任した当初、戦艦は山城さんだけだった。そこに比叡が来て、後に金剛も来た。山城さんにも後に扶桑さんが来たよな。確かに同型艦が揃っていくのは運用面からも助かる。
私は祥高さんに言った。
「しかし金剛型といえば使い勝手も良いから、どこの鎮守府でも引っ張りだこだろうに良く廻してくれたな」
彼女は答える。
「そうですね。やはり軍令部も量産化が実用段階に入ったことで早々に気を遣って下さったのかも知れません」
「気?」
不思議そうな顔をした私に祥高さんが説明する。
「はい。私の予想ですが今後は艦娘を製造する工廠も中央から優先的に設置されていくと思います。美保鎮守府は一番最後になる可能性がありますね」
「あ、そうか……」
それは思い当たる節はある。日本において何事も後回しにされることが多い山陰地方だ。例えば鉄道省でも退役間近の車両は尽(ことごと)くこの山陰地方に廻されると聞いたことがある。まさか軍や艦娘までそうなのか?
私はふと北上が大井(仮)に言った台詞を思い出した。”ここは最果ての地だよ”舞鶴も辺鄙(へんぴ)な土地だが山陰はどうか?実際には住めば都ともいうし名前から連想するイメージほどではないと思うんだが。
むしろわが国には山陰よりも便の悪い場所はいくらでもある。それに比べれば山陰は鎮守府が設営されているだけでも凄いというべきだろう。
祥高さんは続ける。
「他の鎮守府は通常の艦隊と併用されていますから、多少艦娘が減っても十分カバーできる戦力を有しています。でもここ美保は艦娘だけが頼りですから」
「確かにね」
同意しながらも釈然としないものを感じたのは事実だ。だが主軸足りうる艦娘をきちんと廻してくれるだけでも有り難く思う。少なくとも山陰が忘れられたり干されているわけではないから。
青葉も言う。
「司令もご存知かと思いますが鎮守府の運営費って莫大ですよ。それを考えれば美保なんてまだ可愛いレベルだと思います。むしろ少ない予算で一般の鎮守府に匹敵する働きをしてますから十分でしょう。あと今回みたいに遠征でシナを追い返して海軍の株を上げましたから、むしろ感謝されても良いくらいでしょう」
「ああ、そうだな」
それを聞いて考えを改めた。今回のブルネイでの”防衛作戦”の成果が中央でも評価されたといえるのかな。いろんなことを総合的に検討した結果なのだろう。
逆に艦娘たちには人間で言う”左遷”という考え方はあるのだろうか?これは青葉に聞いてみたいな。
「青葉、ちょっと聞いてもいいか」
「何でしょう?」
<<廊下:ただ従順に>>
「変な話だが……」
私は青葉に問いかけながら、こんな話題分かるかなあ?と思った。だが相手は情報通の青葉だから普通の艦娘よりは”アンテナ”も高いことを期待しよう。
「お前たち艦娘は人間で言う”左遷”っていう考え方はするのかな?この山陰のような便利の悪い地方に赴任させられることに不平とか不満は抱いたりしなかったのだろうか?」
「ああ~それですか」
さすが青葉、すぐにピンと来てくれたようだ。
「それは無いと思います」
彼女は、意外にもあっさり答えた。
「え?」
単刀直入だな……正直、拍子抜けした。
彼女は続けて言う。
「私たち艦娘は初めから戦うことを目的に生まれていますから、戦場が何処であれまったく意に介していません。ただ敵が居てそれを叩く。そこに無上の喜びを感じるものだと理解してください」
至極、当然の答えだったな。言うまでも無く艦娘とは兵器である。そこに、たまたま人間的な感情が乗っているだけともいえるのだ。
この話題には祥高さんも付いてきているようで彼女も軽くうなづきながら言った。
「艦娘の運用についてこの一ヶ月の間、司令がご苦労されているお姿は私も間近で見てきました。でも多くの提督がそうであるように艦娘を単なる兵器として扱われたとしても基本的に私たちは従順に従うだけ。反逆とか反抗という感情は芽生えません」
「そうなのか」
私は少々絶句した。まさか艦娘自身からその台詞を聞くとは思わなかった。
また青葉が続ける。
「もちろん艦娘全員が戦闘に特化しているわけではありませんから、例えば私は取材を重視します。寛代ちゃんだったら通信が主になりますね。でもそれはすべて海軍という主目的に沿って運用されることが大前提です。その大原則に沿って十分に使って頂けることが嬉しいんです」
「そうか……」
彼女たちのあまりのドライさに私は逆に衝撃を受けた。
<<廊下:艦娘の感情>>
「でもテートクの気持ちだって嬉しいんダヨ」
いきなり金剛がカットインしてきた。
「テートクはブラック鎮守府って知っているネ?」
人差し指を一本だけ立てている彼女。
「ああ、噂は聞くよな」
「艦娘には感情があるからネ。どんな酷い命令でも従うケド……やっぱり指揮官が私たちのことを考えてくれているのかどうかくらいは分かるヨ」
金剛は澄んだ瞳で話しかけてくる。ちょっとドキッとした。
彼女に続いて脇に張り付いている比叡も言う。
「私も最初、舞鶴から美保に着任って聞いたとき司令が誰なのか心配でした。でも日本海を走っていて左手に大山が見えて初めて美保の無線が入ったとき……聞き覚えのある司令の声がして私、嬉しかった……っていうかホッとしました!」
瞳をキラキラさせた比叡はそのまま金剛にしがみついた。お前が話しているのは、どっちだよ?と突っ込みを入れたくなったが……そうなんだ。比叡でもそんな感情を抱くんだな。正直比叡がそこまで考えていたのも意外だったが艦娘とはそういうものなんだな。改めて、なるほどと思わされた。
「でも」
今度は日向か。
「いくら艦娘相手でも司令官たる者は普通そこまで考える必要はないと思います」
相変わらず冷静な意見だな日向。だが私はちょっと突いてみたくなった。
<<廊下:ニコニコ前線へ>>
「日向、お前は心の底からそう思っているのか?」
腕を組んだ私にいきなり突っ込まれて少々驚いた表情を見せる彼女。
「それは……どういうことでしょうか?」
きちんと反撃してきたな日向め、面白いぞ。
「私が艦娘をブラック鎮守府の如く単なる兵器としか見ずにこき使っても日向、お前はニコニコして前線へ行ってくれるのかな?ってことさ」
わざと滑稽に言ってみた。これに反応したのは青葉くらいで他の艦娘たちはキョトンとしていた。でも日向もさすがにちょっと返事に窮したようだった。
「それは……状況によりますが……」
困ったような表情を見せる日向。でも私は彼女のこの表情を見て逆に安心した。ポーカーフェイスを装っても日向、お前はやっぱり感情のある艦娘だよな。
「済まない日向。それで良いんだよ」
私は姿勢を崩した。
「艦娘は感情があってこそ意味がある。もちろんそれが行き過ぎると深海棲艦みたいになってしまうんだろうけどな」
私の言葉で一同、安堵したような空気になった。日向もホッとしたように微笑んでいる。
青葉は思い出すように言った。
「確かに……私も暗い海の底でも反発とか恨みの気持ちが起きなかったのが良かったのでしょうね」
「そうだな。それはおまえ自身の日頃の鍛錬の賜物かな?」
私が言うと青葉も笑った。
不意に最上が手を上げて聞いた。
「あの~左遷って何ですか?」
これには全員が笑ってしまった。急に場が和んだ。そのとき廊下を小走りに駆け寄って来る駆逐艦がいた。漣だな。
<<廊下:漣と食堂へ>>
ブルネイの漣は私たちのところへくると敬礼をして言った。
「お食事の準備が整いました!ぜひいらして下さい」
「ありがとう……行こうか?」
私はその場に居る艦娘たちに声をかけた。
そのとき「あ!」と言った祥高さんは少し慌てて「編成表の書類を取って来ます」と断って、再びGR(ゲストルーム)に戻って行った。私はしばらく廊下で彼女を待つことにした。
「ではテートク、私たちは先に参りますネ」
気を利かせた金剛は軽く敬礼をした。
「ああ、そうしてくれ」
私は応えた。
『ハイ』
他の艦娘たちも皆、軽く私に敬礼をして歩き始めた。比叡は相変わらず金剛の腕にまとわり付いている。ペットかお前は?
だたふと気付くと廊下の隅でブルネイの漣も私たちを待っているようだった。意外と真面目だな。そういえば美保にも漣が居たハズだった。あの美保湾の海戦にも出陣していたと思ったが、まだあまり会話をしたことが無かったか。まあ着任間もないから仕方がないか。駆逐艦というとどうしても第六駆逐隊が目立つからな。
「お待たせしました」
祥高さんが出てきたので私たちも歩き始めた。それを確認するようにして漣も後から付いて来た。
私は何気なく彼女に声をかけた。
「君も建造直後から戦闘に巻き込まれたりして、いろいろ大変だったね」
「えっと……」
急に私に話しかけられて戸惑っているような漣だったが直ぐに笑顔で答えた。
「はい。でも私たちは当然こうあるべきだと思いますので全然大丈夫です!」
コロコロといった感じで話す漣。この艦娘も独特だよな。
<<食堂:最後の晩餐>>
ほどなくして食堂に到着した。私たちが入室すると一瞬緊張感が漂ったが私は軽く手を上げてすぐに全体を制した。
「良いよ挨拶は抜きだ。そのまま食べていてくれ」
『はい』
再び食堂には艦娘たちのざわめきが戻る。美保だけではなくブルネイの艦娘も交じっているようだな。あれからまた新たに建造されたようだ。
漣は「直ぐにお持ちしますのでお掛けになっていて下さい」と言って厨房へと小走りに去って行く。
私と祥高さんは恐らく提督用に誂(あつらえ)られた席に着いた。配膳されるまで少し時間がありそうだなと思っていたら祥高さんが「司令、明日の飛行機ごとの配置表素案です」と言って書類を差し出してくれた。
「ああ」
私はうなづきながら書類を受け取り、その内容を確認した。
<大艇>
秘書艦(祥高)龍田(班長)、金剛(旗艦・班長)、夕立、比叡、赤城、最上
<YS11>
提督(司令)夕張、日向(班長)、伊勢、ドイツ武官、U-511、
イタリア武官、リベッチオ、技術参謀、寛代、大井と娘。青葉。作戦参謀、次官(状況次第)
「いかがでしょうか?」
祥高さんが聞いてくる。
「そうだね……だいたい良いと思うが私を旅客機にしたのは何か理由が?」
私は聞いた。
「はい。司令ですので基本的に安全面と接待的な面での対応を想定しました」
「なるほど……」
私は少し思案して言った。
「内容はこれで良いが私と君を入れ替えてくれないかな?」
この提案に彼女は少し驚いたような顔をした。
「よろしいのですか?大艇は恐らく戦闘の最前線になると思われますが。艦娘が多いほうが有利ではないかと思われます」
「うん、その考え方もある。だが私は今回大艇の方に司令自ら判断する可能性を感じるんだ。まあ外れるかもしれないけどね。いざ戦闘になればどちらも同じだろう」
私が説明すると祥高さんも納得したような顔になった。
「そうですね。司令がそう仰るのでしたら特に異論はありません」
「よし。ではその部分だけ訂正して後は皆に伝達してくれ」
「分かりました」
そのときちょうどブルネイの漣と電ちゃんが夕ご飯を持ってきてくれた。
「お待たせです」
おいしそうなご飯だった。そういえば今日はほぼ、断食だったよな。私は祥高さんに声をかけた。
「食べようか」
「はい」
これがブルネイ最後の晩餐か……ふとそんな印象が浮かんだ。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。