「お早うございます、司令」
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オトナ「艦これ」「ブルネイの旭日」(みほ5ん)
:第46話(改)<艦娘たちと迎える朝>
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<<GR:作戦指導>>
開口一番、作戦参謀は私のメモを指差しながら言った。
「この作戦だがな、先に大艇を降ろしてしまうのは拙いと思うぞ」
「はあ」
「ちょっと待てよ」
そう言うと作戦参謀はどこからともなくイスを持ってきて私の机の対面に座った。そして再び資料を指差しながら”指導”を始めた。
「あの寛代はYS-11よりは大艇に乗せるべきだろう。姉貴とは別の機体になるがむしろその方がお互いのために好ましいと考える」
「はい、それは私も検討しております」
「いや、検討ではなく決定した方がいいな」
「はい」
「それからこっちの作戦だがな、天候が急変する際には戦闘を避け嵐の中へ逃げ込むのも一考だ」
「ですが雷雨の場合は電磁波等で不都合がおきる可能性もあります」
「旅客機には雨雲用の電探ぐらい積んでいるだろう。大艇と情報を共有させろ。そうだ対空仕様で気象用電探とか積んだ艦娘は誰か居ないのか?」
「美保には居ないですが伊勢か最上、あるいはイタリアのリベッチオは対空設備で気象用の電探も装備している可能性はあります」
「明日、早々に確認しろ。気象条件は南方海域での戦況には特に大きな影響を与える」
「はい」
「それからこっちの作戦だ」
寝巻き姿で髪の毛が爆発気味の作戦参謀に作戦の指導を受ける構図というのも信じ難いものがある。こういう光景こそ青葉垂涎の的だろうけどなあ~。思わず私が隠し撮りしてやろうかと思ったくらいだ。
<<GR:これも夜戦>>
気がつくと時計は午前3時を回った。既に私は朦朧(もうろう)としていた。しかしさすが本省の作戦参謀だけはある。こんな夜更けになっても頭の回転の速さと的確な判断力はまったく衰えない。繰り出される作戦の豊富さと対応の奥深さは芸術的ですらあった。しかもタフと来た。彼女は艦娘だからタフで当然か。
しかし私の睡魔はそれ以上の魔力で私を何度も襲った。だが彼女はそれには構わず、すべての作戦を精査し指導を行った。お陰で完璧に近い作戦案がいくつも立案された。
彼女なりの”夜戦”の姿を見て私は思った。この粘りと実力があるからこそ中央でも姉妹でやっていけるのだなと。だがふと徹夜してまで私を引きずった彼女の姿は、ひょっとしたら彼女なりの”愛情”もしくは”好意”なのだろうか?
もちろんブルネイ演習部隊を無事に本土に送り届ける作戦も重要ではある。ただそれ以上の何かを感じたことは確かだった。艦娘の愛?思わずブルネイ司令の言葉を思い出した。それがあるから祥高三姉妹は抜きん出ているのかな?
作戦参謀は軽く背筋を伸ばしながらあくびをして呟いた。
「3時か……」
ちょっとボーっとしていた私は、その言葉でハッと覚醒した。すると彼女は続けた。
「だいたい一通りチェックはした。司令は明日、何時に起きるつもりだ?」
「9時前後には、ここを出発ですが点呼がありますから私は5時には起きるつもりです」
私がそう言うと彼女は微笑んだ。
「問題ないだろう」
それから急に優しい笑顔になった。ちょっとドキッとした。
「済まないな遅くまでつき合わせて」
「いえ……自分が士官候補生の頃、船に乗って夜戦をしていた頃を思い出しました」
「そうだな。軍人である以上、24時間常に臨戦態勢だ。それは生涯続く」
彼女は窓の外の夜景を見ながら呟くように言った。
私は応えた。
「心得て居ります」
彼女は再びこちらを向いて言った。
「私は明日、皆と同行するのかまだハッキリしない。だから念のために作戦計画に目を通した。お前は今夜、私の寝巻き姿を見て軽蔑したかも知れんがな……」
「いえ……」
と言いながら実は図星だったかも。
でも作戦参謀は別に感情的にはならなかった。
「だがな、こうしてあいつらと共に私がこの部屋に押しかけたことは結果的には良かったな」
「あ……」
と、思わず私も反応してしまった。確かに作戦メモを見つかってチェックを受けて……確かに結果的にはそういうことになる。偶然とはいえ巡り合わせの不可思議さに私はちょっと驚いた。
私が彼女を見上げると参謀は改めて私を見据えた。その眼光は相変わらず鋭いのだが不思議と威圧感は無かった。ふとあの武蔵様を連想した。タイプは似ているかも。
「客観的に見ても、お前は司令官向きはないよな。だが私も姉貴も美保鎮守府を設置するとき軍人名簿を見て、なぜかお前の名前と経歴が引っかかったのだ。客観的に考えたら不思議だが……そういう書類上の出会いも縁であるし結局はお前自身の運なのだろう。この出会いも必然だったのかも知れない。私は迷信は信じないが運もまた軍人の実力のうちなのだろう」
「ハッ」
どうも運が良いと何度も言われる。だがそれは素直に認めるべきだろう。
作戦参謀はソファを振り返る。
「今から戻るのも面倒だし和室は一杯だろう。もうここで寝るからな」
「はい」
私が答えると直ぐに彼女はタオルケットをつかんでソファに横になった。と同時にあっという間に寝息を立て始めた。どこでも直ぐに眠れるのも彼女の強い理由だろう。いや……私の目の前で寝てしまうのは、信頼されている証でもあるのかな……ふとそんな気もした。そしてちょっと可笑しいのだがまるでミニ武蔵様がそこに寝ているような不思議な感覚も覚えるのだった。
しかしいろんな立場の艦娘がこの部屋……そして私自身の周りに集まってくるのだな。それもまた運なのか縁なのだろう。
「私も寝るかな……」
そう呟いて窓の外を見た。夜景と傾いた月が見える。明日はいよいよ帰還だ。
<<GR:夜明け>>
結局私は机で寝ていたようだ。明け方ふと人の気配で目が覚めると反射的に時計を見た。ああ、まだ4時半なのか。微妙な時間だな……私の身体にはタオルケットが羽織ってある。あれ?かけてくれたのは作戦参謀か誰かだろうか?
「おお、起きたか」
洗面所から作戦参謀の声が聞こえてきた。簡易厨房ではガスレンジで水を沸かしている音がする。おや?……と思ったらそこに秘書艦が居た。
その祥高さんがこちらを見て言った。
「お早うございます、司令」
「ああ、お早う」
相変わらず祥高さんは朝に強いな。やることも多いだろうに良く身体が持つよな。それは作戦参謀も同じか。
「済みません司令、お休み中だったのですが作戦参謀が入室を許可されましたので……」
彼女は詫びる。ああ、そうか。
「良いよ。作戦参謀は私より……」
言いかけてあれ?私も少将になったから並んだんじゃないか?と思ったが私は続けた。
「うん、構わない」
わけの分からない台詞になった。
「はい」
普通に答える彼女。
しかし相手が艦娘とはいえ早朝に軍人同士で早々に身支度をする……兵学校や軍事訓練で最前線で野営をしたときの感覚に近い。ここはGR(ゲストルーム)内とはいえ、ちょっと懐かしさと共に若い頃の緊張感が蘇って身が引き締まるな。こういう状況ではもはや性別……相手が艦娘だとしても……そういう感覚を超越する。まさにここは軍隊だな。
そして隣の畳の部屋では金剛以下他の艦娘たちはまだ夢の中だ。あれを見ているとお盆にうちの実家に艦娘たちが大挙して合宿みたいな状態になったことを思い出した。(金剛もちゃっかり居たよな)まあ状況が普通ではないから何時に起きようが私も敢えて咎めようとは思わない。最近は相手が艦娘だということでたいていのことは容認出来る姿勢が身に付いたな。
祥高さんが問いかけてくる。
「司令も珈琲とパンで宜しいでしょうか?」
「ああ、頼む」
やがて洗面を済ませた作戦参謀がタオルで頭や顔をクシャクシャと拭きながら出てきた。やっぱり一応は異性だから洗面一つ取ってもドキドキしてしまうな。
<<GR:朝食>>
作戦参謀はソファに腰をかけて言う。
「姉さん、私も同じものを」
「はぁい」
姉妹って良いな。そういえば美保にも姉妹艦は居るけど姉妹が仲良くしている光景っていうのは戦闘中か待機中の姿しか見たことがない。こういう洗面とか朝食の準備とか、普通の日常生活での様子っていうのはなかなか見た経験がない。あれか?やっぱり寮とかに行かないと普段の艦娘の素顔って分からないよな。(恥ずかしくて行く気もないけど)
「おい、まだ寝ていても良いんだぞ……机で」
メガネを外して再び頭を拭いている作戦参謀が笑いながら言う。意外と屈託がないから逆に新鮮でちょっとドキドキする。
「いえ、もう起きます」
作戦参謀に冗談を言われるとは意外だった。ただそこまで心情的な距離が縮まったのかと思うと少し嬉しいようなホッとした気分になる。
「お待たせ~」
祥高さんが3人分の珈琲とパンを持ってきた。おいしそうだ。
「済みません、私もちょっと失礼します」
彼女もソファに腰をかける。
私は聞いた。
「他の金剛や大井の分はあるのかな?」
「材料はありますし下ごしらえはしてありますから直ぐに出せます。ココにはお米もあるのでお握りでも作れますし」
それを聞いて私はお握りをリクエストすれば良かったなと後悔したが……炊く暇が無いか。
<<GR:姉妹水入らず>>
私は手を合わせた。
『頂きます』
作戦参謀や祥高さんは手こそ合わせなかったがやはり頂きますと言った。人間社会の中で生活しているから自然に覚えるのだろうけど、ちょっと意外な感じがした。
「はあ~、やっぱり落ち着いて食べる朝食は良いな」
作戦参謀はしみじみと言う。妙に実感がこもっているけど、その意見には同意する。最初はとっつき難いかと思った作戦参謀も意外と気さくであるし、祥高さんはホンワカしているし。不思議な姉妹だよな。
恐らく両参謀が居る中央ではそれほど気が休まる暇がないのだろう。彼女は食事を取りながら呟く。
「姉さんはイイよな。中央に比べたらまだ美保鎮守府の食堂か執務室の方が気が楽だろう」
やはりそうか……振られた秘書艦は珈琲を飲みながら応える。
「そうね。でも美保みたいに小さい基地だと人手も足りないから逆にバタバタするのよ」
珍しく祥高さんが悪戯っぽく答えている。それを聞いた参謀はちょっと苦笑した。
「ちぇっ言ってらぁ」
やっぱり良いなあ~。自然な姉妹の会話って感じで。これが軍隊の作戦参謀と鎮守府の秘書艦の会話だから意外だけど。でもこれはまさに艦娘部隊ならではの光景なのだろう。
<<GR:艦娘たちの起床>>
それとは別で私は作戦参謀に聞いた。
「やはり参謀は今日、我々と一緒に本土へは戻らないのでしょうね?」
彼女は珈琲をすすりながら応えた。
「まだはっきりしないが恐らく私は居残り組だ。姉貴……技術参謀は量産技術のこともあるから早めに戻るよう通達が来ている」
「技術参謀が先に乗って作戦参謀は残る……両参謀は同じ部隊では移動しないということですね」
私が確認すると彼女も応えた。
「ああ、敵襲の恐れもあるし万が一ということがあるからな。軍令部も私たち姉妹を一度に失うのは避けたい意向のようだ」
「そういえば」
私はつい道化……本省のあいつを思い出した。
「そうなると防衛次官も居残りでしょうか?」
すると作戦参謀は珈琲を片手にして、もう片方の手を激しく左右に振った。
「あの色男が見慣れた私と一緒に帰ると思うか?」
それ以上は言わなくても分かった。やれやれ……予想は出来るが。そのうちあの次官、美保に何度も顔を出しそうだな。
そうこうしているうちに空は明るくなり5時半を回った。窓から見える町並みも徐々に輪郭を現している。
「あら?」
祥高さんが反応した。
「今、誰かがドアをノックしたような気がしたわ」
振り返る秘書艦。
「え?」
今まで留まっていた空気が急に流れるような感覚になる。すると不思議なことに畳の部屋で寝ていた艦娘たちが軒並み目を覚ました。
「フア~」
一番目立つのはやっぱり金剛。しかし電探をつけていないストレートヘア(厳密には違うが)の金剛ってやっぱりドキドキするな。だがそれ以前に寝巻きがちょっと肌けて……おい!下着が丸見えだって。私は慌てて目を反らした。
金剛ってこういう場面でも本人は意外と全然気にしていないから、そんな格好でもごく自然に見えてしまうから逆に始末が悪い……。いや内心ちょっぴり嬉しくもあるけどさぁ……あ、大井が直してくれた。安心した。
「サンキュー」
金剛は大井に礼を言っている。
「い、いえ……」
妙に顔を赤らめて大井の方が恥ずかしがっているのも変な構図だな。
「私が出よう」
作戦参謀が立ち上がるとGRの入り口の扉へと向かう。あの~参謀も寝巻きのままなんですけど……。嫌な予感がするな。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。