「指揮官なんてバカ殿みたいなものだ」
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オトナ「艦これ」「ブルネイの旭日」(みほ5ん)
:第48話(改)<最高の敬礼と別れ>
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<<GR:出発指示>>
時計はいつの間にか7時半を過ぎている。私は秘書艦に指示を出す。
「もう時間もないな。すぐに艦娘たちに指示を」
「はい」
彼女は確認する。
「このテーブルも片付けますので今この場から指示を出して宜しいでしょうか?」
「ああ、頼む」
祥高さんは直ぐに無線で指示を始めた。まずは全体に通知して、その後各班長にチャンネルを切り替えて順次、連絡をしている。
そうだ私も荷造りしないと……とは言っても着替えをまとめるくらいしかないよな。普通の演習だったら、ちょっとはお土産くらい買う余裕もあっただろうけど。今回は敵の攻撃とかその後の処理とか本当にいろいろあったから、それどころではなかった。
そして私は苦笑した。そもそも、お土産買う人が居ないんだ。寂しいハナシだけど……まあ境港の両親くらいかな?
やがて祥高さんが報告する。
「通信完了。各班長より追って連絡が入ります。後はテーブルを片付けます」
「分かった」
祥高さんは立ち上がるとテキパキと机を片付け始める。私も直ぐに準備だ……スーツケース一つだけど。立ち上ってまずは忘れ物が無いか部屋を一通りチェックする。
すぐに祥高さんは片付けも終わり私に報告する。
「司令、片付けは終了しました。私も部屋に戻り荷造り及び最終確認をいたします」
「ああ、頼む」
敬礼をすると彼女は退出した。私は特にすることもないから早々に出よう。最後にGRの窓から朝日を浴びる街の景色をちょっと眺めた。さらばブルネイ。そしてスーツケースを持つと私は廊下へと出た。
<<鎮守府本館:食堂>>
まだ出発までは少し時間がある。私は取りあえず食堂へ。そこには数名の現地隊員と艦娘が居た。彼らが敬礼をするので私も軽く返した。
私がいつもの責任者コーナーみたいなテーブルに腰をかけていると直ぐに祥高さんもスーツケースを持って降りてきた。彼女は軽く敬礼をしてから私の対面に腰をかけた。
「こちらの総務部長さんに確認をしました。出発15分前、08:45には兵員輸送トラックが到着します」
私は聞く。
「トラックの運転手は、やっぱりあの義兄さんかな?」
「恐らく……」
そのときその総務部長らしき人がメモを持って慌ただしく入ってきた。
彼は私の前で敬礼をすると直ぐに言った。
「す、済みません総司令官。今ブルネイ政府からの連絡で空港まではブルネイ政府側からリムジンバスを出しますとの連絡が入りました」
私と祥高さんは思わず顔を見合わせた。
「それは……凄い」
私は思わず絶句した。直ぐに私の脳裏にはあの王宮や政府関係者の顔が浮かんだ。
やがてブルネイ司令も食堂に入ってきた。隊員たちの敬礼を受けながら彼は私たちの席へ来る。
「オイ聞いたか?バスの件」
「ああ……驚いたよ」
私が答えると彼は立ったまま申し訳無さそうな表情をした。
「いや義兄にトラックを依頼しながら本当は申し訳なくてね……普通の演習なら気にしなかったんだが、このたびの国家的な功労者たちをこんな形で送り出してイイのかなって。もちろん空港まではさほど時間もかからないから軍人なら別に気にしないんだろうが……」
彼は言い訳のように言った。
「良いよ別に。お前だっていろいろあったし非常事態の連続だったからな。艦娘たちだって気にしないさ……まあ、結果的にブルネイ側が準備してくれたが」
私が言うと彼はちょっとホッとした表情になった。
「ココももっと大きくなればな、いろんなことも出来るようになるだろうが……」
「ああ、きっとなるさ」
私の言葉に彼は微笑んだ。
「そうだな。ありがとう」
私は言った。
「私だってたまにはトラックの荷台に乗るのも悪くないと思っていたよ」
それを聞いた彼は驚いた顔をした。
「なんだ?お前もトラックに乗るつもりだったのか?」
「なんだ?違うのか?」
彼は呆れたような顔をした。
「バッカだな~総司令官殿をトラックの荷台に押し込むほどオレも失礼な奴じゃないぞ!」
「あ、そうか……鎮守府にもVIP車はあったな」
私たちはお互いに笑った。
<<鎮守府本館:食堂>>
やがて朝8時を回る頃には食堂にも徐々に艦娘たちが集まり始めた。美保側の艦娘は軒並み荷物を持っている。ブルネイ側の艦娘たちは美保の艦娘たちを見送るために、それぞれ集って来ているようだ。
私は祥高さんに言った。
「バスも早めに来るだろうし人数が揃ったら前倒しで点呼をしようか」
「はい」
祥高さんが無線で艦娘たちに指示をすると直ぐに班長である金剛と日向、龍田さんが集まってきた。
私は昨夜のことがあってつい金剛の頭を見てしまった。当たり前だがいつもの電探を載せた彼女だった。私は妙にホッとしていた。そんな私の表情を見た彼女はなぜかスッとブイサインを出す。私も思わず親指を出して反応していた。
私たちの妙なツーカーぶりに向こうにいるダブル比叡が唇をかんでいる。オイオイ気にし過ぎだって。それに金剛はムードメーカーだから明るいのが一番なんだ。そこは理解してくれよな比叡たち。
祥高さんは各班とも人数が揃い次第バスに乗ること。そのバスはブルネイ政府が直接手配してくれたことなどを説明している。嬉しそうにお互い顔を見合わせた金剛と龍田さん……日向だけは相変わらず無表情だけど……まあ良いか。
直ぐに艦娘たちの元へ戻る班長たち。腕を組んで一連の動きを見ていたブルネイ司令は言う。
「やはり良いものだな艦娘というのは」
「そうだね。私もようやくそう思えてきた」
彼は私を小突いて言った。
「お前はな~気付くのが遅そ過ぎなんだよ!」
「ははは」
私は笑った。
<<鎮守府正面:リムジンバス>>
ある程度の点呼が進んでいる間にドドドという重低音が響いてきた。敷地内にリムジンバスが入ってきたようだ。
「おい、リムジンバスなんて珍しいな。見に行こうぜ」
急に少年のようなことを言うブルネイ司令。
「ああ」
と言って私も応じて彼と一緒に外へ出る。
『おお!』
外へ出て私たちはつい叫んでしまった(ガキか?)。鎮守府正面には、やたら豪華なリムジンバスがロータリーで車体を回転させていた。絢爛豪華というかまるで動く迎賓館だな。しかも車高が……二階建てなのか?
『わぁ~』
数名の艦娘たちも玄関から出てきて一様に目を丸くしている。そうだよな、本土に居る艦娘たちは戦時統制下でこんなリムジンバスを見る機会は初めてだろう。ましてや自分たちがこれに乗るんだから良い思い出になるな。
そこでふと考えた。そうだ私は鎮守府の車で行くんだっけ……ああ~私もこっちに乗りたくなってきたな。
「おい」
また横から小突かれる。
「良いんだぜ、こっちに乗り替えても」
ブルネイ司令は少年のように悪戯っぽく笑った。
「良いのか?チェンジして」
「まあ。こんな車は軍隊とまったく無縁だからな。指揮官ってのは可能な限りいろんな体験をしておくべきだ」
「助かるよ」
……ということで私もリムジンバスに乗って空港へ向かうことになった。
<<リムジンバス:王宮御用達>>
玄関前に付けたバスの運転手と車掌が降りてきて私たちに敬礼をした。彼らは正装だ。私とブルネイ司令も敬礼をする。直ぐに彼らは乗り口に赤い絨毯(じゅうたん)を敷いたり横の荷物扉を開いている。乗り物なんて普段は軍用車か艦船しか乗っていないから、こんな皇室御用達みたいな扱いは初めてでドキドキするな。
そういえば運転手や車掌は白い手袋をしているし対応が手馴れている。つまりこのバスは一般の観光バスでないことは直感で分かった。バスの手すりはすべて黄金だし車内にはカーテンにシャンデリアって……やっぱり小さな迎賓館。これって恐らく王宮関連のバスじゃないか?恐れ多くなるな。
やがてバスの荷物を入れるサイドパネルのところまで赤い絨毯が敷かれた。マジか?カーペットではなくて毛足の長い絨毯だ。思わず靴を脱ぎたくなる。
私はハッとした。見とれるのはこのくらいにしよう。早く自分の荷物を持って来なきゃ……そう思って引き返そうとしたら
「司令~、お持ちしました~」
龍田さんがいつものホワっとした表情で気を利かせて私のスーツケースを玄関まで持って出てくれた。
「ああ、済まない」
私がそう言いながらスーツケースを受け取ろうとすると彼女はそれを軽く押し留めた。
「ウフ……良いのよ司令、私がお持ちしますから」
そう言って彼女はバスの横のトランクルームまで軽々と運んでいく。そうだよな……彼女は艦娘だからスーツケース一個くらいは軽いだろう。
担当の運転手がバスの横で龍田さんからスーツケースを受け取ると荷物室へ入れた。私がそれを見ていると日向が髪の毛を気にしながら少し恥ずかしそうに声をかけてきた。
「司令、やはり貴方が一番最初に乗るべきだと思う」
「ああ、そうか……」
時間はまだちょっと早いけど。私が祥高さんを振り返ると彼女もうなづいている。
「分かった」
私が絨毯の上を歩きながらバスの入り口へ向かうと近くに居た艦娘たちが一斉に絨毯に整列をして敬礼をする。旗艦である金剛を先頭に比叡、赤城さんと最上までいる。もちろん日向とその横には伊勢も来て敬礼をしていた。何か妙に嬉しかった。それは今までに私が艦娘たちから受けた敬礼の中でも最高に嬉しいものになりそうだった。
「ぽい~」
ああ、お前も居たな夕立。
<<リムジンバス:龍宮城>>
『いらっしゃいませ。ようこそ』
車内に入るといきなり車掌さんに挨拶(英語)されて驚く。
『あ、ああ』
私は軍隊に居るから部下以外には外の乗り物で挨拶なんかされない(境港市は例外)。そもそも乗り物だって軍用車か艦船、あるいは輸送機くらいしか乗らないからな。
彼は続ける。
『司令の席は奥になりますので、ご案内します』
『ありがとう』
私は入り口からバスに乗り込む。迎賓館でもそうだったがVIPというのは逐一案内されるものなんだなと思った。
しかしバスというと学生時代に乗った遠足のバスくらいなもので、こういう車内のレイアウトからしてまったく異質のリムジンバスなんて初めてで戸惑う。外から見るのと中から見るのではまったく印象が違うものだな。とにかく豪華絢爛としか言いようがない。
床は当然足長の絨毯だ。イスはほとんど対面で回転式。しかもほとんどのイスがまるで執務室のそれより上等じゃないか?冷や汗が出そうだ。
車内はTVはもちろん静かな音楽も流れている。また何かの品の良い香りも漂う。それにバスの中とは思えないくらいに静かで湿度も気温も快適だ。つくづく軍人にはアンマッチだよな。
『では、こちらへどうぞ』
車掌に案内されて私はまるで玉座のようなイスに案内された。本当に座って良いのかな?私は一瞬躊躇してから腰をかけた。
おお!生まれて初めて座る超”しっくり”するイスだ。何だこれは?
私の驚きようを見て彼は説明する。
『このイスは座る方に合わせて自然に圧力を変えます。また手元のレバーでイスの傾きやヒーター、それに音響はもちろん車内後部のすべての照明や調光などコントロールして頂けます。また私に何か御用の際は呼び出しボタンもございますので、いつでもお申し付け下さい』
『ああ、ありがとう』
やれやれ……やっぱり公用車かトラックの方が気楽だったな。
やがて艦娘たちも順次、乗車してきた。彼女たちも私と同様バスの内装を見て度肝を抜かれ、あとは執事のような車掌に案内されて呆けたように口を開けている。私はフッと龍宮城にやってきた浦島太郎を連想していた。
<<リムジンバス:司令との別れとエール>>
だが彼女たちはそれぞれ着席するや否や直ぐにペチャクチャとお喋りを始める。そうか~この雰囲気はまさしく”女学生”だよな。だからほぼ遠足の気分だ。でもよっぽどのお嬢さん学校でもなければ、この戦時統制下に豪華なバスに乗って移動することなんて滅多にないことだろう。国が違えば変わるものだな。
美保の艦娘たちが乗車し終わった頃、ブルネイの比叡や榛名さん、それにちょっと意外だが加賀さんも様子を見に来た。みんな目を丸くしている。続いてブルネイ司令も乗ってきた。
「おお、こりゃ凄いな~」
そして奥の席に鎮座している私を見て恭(うやうや)しく頭を下げた。
「これはこれは、美保の王様」
その姿を見て艦娘たちも一斉に笑う。何だか良い雰囲気だな。私は恥ずかしくなって言った。
「やめてくれ。自分がバカ殿になった気分だよ」
「指揮官なんてバカ殿みたいなものだ」
そういって彼は私に近寄ると手を差し出した。
「いよいよ帰還だな。空港ではすぐに出発になるだろうからオレは敢えて見送りはしない。ここでお別れだ」
「ああ、いろいろ世話になった」
私たちは握手をした。なぜか艦娘たちも感極まったのだろうか?パチパチと拍手が湧き起こる。彼の後ろに居た比叡や榛名さんに加賀さんまでもが拍手をしている。
「そうだ……空港ではオレの家内と娘に義兄が見送りに行くらしいから出会ったらよろしく頼むよ」
「最後まで気を使わせて悪いな」
「いや、あいつらが自分から言い出したんだよ」
微笑みながら彼は言うと、そのまま振り返ってブルネイの艦娘たちと共に車の外へ向かう。ふと見ると名残り惜しそうに金剛と比叡それにブルネイの比叡が共に抱擁して最後の別れを惜しんでいる。金剛型姉妹って本当に良いよな~。
やがてブルネイの比叡は最後に車外へ向かったが出口のところで車内を振り返るとサッと敬礼をした。私たちも全員敬礼をした。彼女の顔はいつになく凛々しかった。いろいろあったがこれからも頑張れよ比叡。心の中で私はそう応援するのだった。
彼女を見て私はなぜか五月雨を連想していた。気のせいか、彼女もこの場に居て笑ったような気がした。うん、お前も元気でな……五月雨。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ5ん」とは
「美保鎮守府:第五部」の略称です。