こんな拙い文章で大丈夫ですか。私は気が気がじゃありません。。。
今回は短め。
日常と言えるかわかりませんが、3本目です。
紅魔館の門番を務める紅美鈴は闇夜の中、一人駆けていた。
追っ手はわずか一人きり、しかし敵は侮れない。
中級妖怪、いやその中でも強者に部類される程だろうか。
先ほど対峙した時に読んだ”気”で大よその見当をつける。
きっかけは、咲夜さんがレミリアお嬢様に使いを頼まれた日。
もっと言えば、咲夜さんが”初めて門の外に出た時”だろう。
私の『気を使う程度の能力』とは比喩や喩えでは無い。
文字通り生を受け、気を発するもの全てを見て感じる事ができ、また己自身の気を力に変え、戦闘技術として昇華した力だ。
改めて確認する。間違い無い。敵は中級妖怪の中でも上位に位置する妖怪だ。
自らの能力に何ら疑いは無いが、紅美鈴はその結論を疑わずにはいられなかった。
幻想郷で悪夢として語り継がれる『吸血鬼異変』。
紅美鈴達を含めた吸血鬼による幻想郷侵略戦争は、吸血鬼側の敗北で終わった。
当時の侵略者達は紅魔館の住人を除いて、皆殺しとなり、他に例外は無い。
レミリアお嬢様が八雲の連中から聞き出したし、私自身も”戦争中”に、八雲の手を逃れた
確信している。奴らに生き残りなどいない。
ならばなぜヤツの様な妖怪がいるのか。
しかも結界の内側に。
私が今の今まで気づかなかった以上、ヤツは気を絶つ事が出来るのだろう。
パチュリー様の魔法による検知も例外では無い。
だがお嬢様の力なら?
私にはそのような事は言って無かった。あるとすれば門番を命じた事くらいか。
…………なるほど、そういうことか。
さすがはレミリアお嬢様。あんな化け物に”昔の私”はよく挑んだものだ。
敵の見当がつき、その力についても大よそ見極めた。
(この辺なら、多少音を立てても大丈夫だろう)
美鈴は、一気に速度を落とし、静止する。
風と一体化するように佇み、静かに敵を見据えた。
「出てきたらどうだ、もう逃げないぞ?」
「…………ほう、やはりワシに気づいておったか」
先ほどまでは、何も無かったと思っていたのに、気づいたら目の前に
わざわざ目の前に現れ、気色の悪い笑みを張り付かせながらじっとこちらを見つめている。
発する気の大きさがただの馬鹿では無く、余裕故の行動だと裏づけする。
「なぜワシに気づいた? 隠れんぼは得意なんだがのう」
「貴様に興味は無い。さっさとかかって来い」
「…………つまらんやつだな」
ヤツから余裕の気配が消えた。
おおかた会話から私がどうやって気づいたか、探りたかったんだろう。
おまえの様な妖怪はきっと”そう”する。私の経験が告げていた。
目の前にいた妖怪が、突如としてその”存在”ごと消えた。
気配が一切が感じられない。まるで初めからいなかった様に。
私は浅く息を吸い込み、ゆっくりと吐く。
視える範囲全てが私の間合いだ。
樹木から風に煽られ木の葉が舞い落ちる。一枚。二枚………。
「っ!」
刹那の瞬間、紅美鈴は後方へと振り向き様に手刀を放った。
「な、なぜ…………」
再び存在を得たはずの妖怪は、見事に首と胴が別れ、支えを無くしたかの様に胴だけが無残にも崩れ落ちる。
残った首は地面に転がり、苦悶の表情で呻いた。
「なぜ、なぜと。五月蝿いハエだ」
グシャッ……
何の躊躇も無く美鈴は妖怪の頭を踏み潰した。
原型を留めていないソレを浚い、残った胴体を埋めるべく行動する。
それにしても、
(結界で封じられる”前”から内側にいたなんて余りにも都合が良すぎるな。)
やはりあの胡散臭い八雲の仕業か。
はたまた未だ見ぬ妖怪ないしは勢力の差し金か。
――――いずれにしてもここもそんなに甘くはないな。
◆
「ふわぁ~、んんっ」
昨日の戦闘自体はすぐ終わったけど、なかなかヤツが釣れなかったからここしばらく徹夜続きだった。少し眠いな。
思わず大きな欠伸をして、ついでに少し伸びもする。
「美鈴、また欠伸なんかして、お嬢様に見つかったら叱られますよ」
ふと後ろから、気遣わしげな声が聞こえた。
「ん? あ、咲夜さん。おはようございます」
「おはようございます。美鈴」
咎める言葉ではあったが、本音は心配してくれての事だろう。
咲夜さんからはいつも温かい気配を感じる。そこが嬉しくもあり少々後ろめたい。
「あはは、みられちゃいましたか」
「もう。
私の知っている美鈴は一体どこへいってしまったのですか」
ぶつぶつとそんなことを言っている。
相変わらず無表情で声に抑揚も無いが、拗ねているようだ。
初めて会った時から、表情の読めない子だったが、馴れてくるうちに内面はとても表情豊かな子だとわかった。
「はい、朝食を持ってきました。
しっかり食べて真面目に警護してください」
「ありがとうございます!
最近はメイド妖精ちゃん達ばかりでしたから、久しぶりに咲夜さんからもらえてうれしいですね」
「!」
今ちょっと表情が動いた。きっと恥ずかしがってくれているんだろう。
「さっさと食べて警護に戻ってください」
からかわれたと思ったのか、咲夜さんは踵を返して門の中へとかえっていってしまった。
――――本音だったんだけどな。
朝食を食べながら、先ほどの妖怪のことを思い出す。
私に気配を悟らせない能力はやっかいで、力自体も中級と決して弱くはない。
もし咲夜さんに手を出していたならどうなっただろうか。
いくら時を止められる咲夜さんと言えど、不意打ちは決まったかもしれない。
でも決して負けたりはしなかっただろう。
ああいった手合いは、必ず弱った相手を見てまず愉しむものだ。一撃で仕留めないという愚を冒してまで。
そうなれば、咲夜さんがその隙を見逃すはずが無い。
体術に関しては、そろそろ私の手を離れつつあるし、独自に時間を操る力を利用した技も磨いているようだ。
それでもまだ届かないが、私は人間という種族の恐ろしさをよく知っている。
ついこの間まで小妖怪に苦戦していた彼女が、今ではそれらを圧倒するほどになっている。
逆境に立たされることで劇的な進化を遂げるのだ。咲夜さんにはその為の資質が十分にある。
(…………私も追いつかれない様に精進しないとな)
「ふわぁ~。それにしても、やっぱり眠いですね」
美鈴は再び大きな欠伸する。
紅魔館は今日も平和だった。
紅霧異変前に、戦闘面でもう少し咲夜さんの成長について触れたほうが良いかなと思って書きました。
あと、ベタなのも好きです。
※16/04/04 全話改訂しました。