2話連続投稿、こんなもの見なくても別に困りはしません。
本編が見たい方は一話戻って頂き、速やかにここから立ち去りましょう。
番外編
――――時を遡り、異変開始前夜。
闇夜の下、静かに佇む一人の吸血鬼がいる。
屋敷のバルコニーで腕を組み、夜風に晒されながら紅い霧で少しぼやけた月をぼんやりと眺める。
大方満ちかけた月も明日には、満月となる。
いよいよ明日は出番となるだろう。
コン――、ガチャ
突然、ノックはしたものの部屋の主の応えも待たずに、入室して来るものがいた。
「…………レミィ、いるわよね?
例の封印の件はもう最終段階に入ったわ」
「…………パチェか」
不躾な入室者は我が親しい友人のパチュリー・ノーレッジだった。
パチュリーとは百年来の付き合いである為、大変気心の知れている仲。
追い払うという選択肢は微塵も無く、レミリアは名残惜しそうに月を見ながらゆっくりとパチュリーの方に振り返った。
心なしかパチュリーの顔には疲労の色が見える。
月夜に照らされたレミリアをパチュリーは見つめながら喋り始めた。
「本当にいいのね? 今ならまだそう時間を掛けずに元にもど…………せ、るわ…………」
「…………? どうしたの?」
パチェはなぜかしゃべるに連れて語気が弱まっていき、最後の方が聞き取れなくなっていく。
不審に思って問いかけてみたが、呆けたまま固まってしまった。
どうしたものかと考えてみるが、心当たりが無い。
いったい何に呆けているのだろうか。
「あ、あなた…………。それ本気?」
「………………?」
本気とは。
私はいつも本気だが、いったい何についてであろうか。
頭に疑問符を浮かべるがなかなか答えは出てこない。
「………………、っ!」
なるほど。
気づいてしまったか。
いや、驚くのも仕方ない。私の身体から溢れ出る
やはりわかってしまうか。ちゃんと押えていたつもりだったが、どうやら押え切れなかったようだ。
「これは済まないな。
押さえていたつもりだが、やはりわかってしまうか、
「えぇ、あ、あぁ。
押えるというか前面に出てるけど、そうね。十分すぎるほど
「ふふふ。そうか、そんなにか」
紅い霧のお陰でおよそ十日に渡り、常時力を蓄える事が出来て、体調は嘗て無いほど良い。
明日は満月だ、吸血鬼という種族は満月に最高の力を発揮出来る。
その前夜という事もあり、レミリアの内に含有する魔力は目に見えてわかるほどに増大していた。
(さすがのパチェも私の
「ふふ、ふふふ。
さすがのパチェも中てられてしまったか。今夜は実に気分が良いな。
…………そうだ。これを機に親友から義姉妹と関係をさらに深めるというのは?」
「嫌よ。そもそも
「むむ、残念だ。実に残念よ。
私の溢れ出る
レミリアの実力もその在り方も十分すぎるほど認めているパチュリーだったが、偶にしでかす
「ヒトが真面目に働いている時に、馬鹿な事はよしなさい。誰が見てもわかるでしょう。その
「何を言っている。普段の私を知っているものでもそこまで感じとれるヤツはそうそういないぞ、この
「………………え?」
「はぁ」
一度冷静に、レミリア自身について見直そう。
彼女の二つ名は『永遠に紅い月』、『夜の王』、層々たる面々を召し抱えた『紅魔館の主』。
なるほど、幼いながらも彼女には一線を画す程の力があるのだろう。
だが、問題は見た目だ。
具体的にはまさに今の見た目。もっというとその格好。
彼女の格好はいつかの咲夜のアドバイスに従って、
黒のドレスを着て、首元に小さなルビーをあしらったネックレスをしている。
そして極めつけには背中には羽織った深紅のマント。
少々派手だが。ある意味、
だが。
だがしかし。
顔を見たときに誰もが
その顔には、その目元には、
もうお分かり頂けただろうが、パチュリーが呆けたのは何も
レミリアも漸く、自分の勘違いを理解した。
「…………咲夜が泣くわよ、主人ならちゃんとした格好をしなさい」
やれやれ、といった感じで、パチェは溜息を吐きながらはき捨てる。
それを見たレミリアは憤慨して抗議した。
「なんだと!?
このハイセンスがわからないとは……。
前言撤回だ。義姉妹はなしよ!?
…………でも、今なら謝れば私の義妹にしてやるぞ?」
「けっこうよ」
即答である。
若干涙目になりつつも、レミリアはなおも抗議する。
なんの収穫も得られないまま抗議は数分間続けられた。
とにかく。
レミリアが封印の件で露程にも悩んでいないのは、十分過ぎるほどに良くわかった。
「それじゃ、私は最後の仕上げにかかるわ。
何度も言うけどその仮面は外しなさい。もし付けたままなら私達の友情は明日で終わりよ」
「くっ、あぁ頼んだ。
なぜわからん。この素晴らしいセンスはやはり時代の先を進み過ぎているのか」
後ろ手にドアを閉めて、今一度パチュリーは深い溜息を吐いた。
――…………はっ、私とした事が!
――私に時代が追い付いつく運命はいつだ!?
――くっ、見えん! 忌々しい能力めっ…………。
ドアの向こうで未だにお馬鹿な館の主が何か言っているが、パチュリーの耳にはもはや入っていなかった。
こうして、レミリアの名誉という名のカリスマはパチュリーの献身的な働きによって、崩壊を防がれたのだった。
これのせいで送れて済まないとは思っているが後悔はしていない(キリ)
補足:
パチュリーが止めなければ例の玉座で霊夢と似た様なやり取りをしていました。
※16/04/04 全話改訂しました。