EP26.白銀の雨と大賢人の消失
「ねぇ、どうしてそんなに人間が好きなの?」
「そんなことないわ」
そこは俗世から遠ざかり、どこか浮世離れした丘の頂きにある楼閣。その庭は大変見事なもので、古き良き和風の特色を色濃く残す楼であった。
二人の少女は楼の縁側に腰掛け、その良く見知った庭園を眺めながら他愛も無い言葉を交す。
「でも、貴女が
「違うわ。多くの妖怪が安穏に暮らせる理想郷をこの目で見てみたかっただけよ。人間はそのついでに、――」
「――ほらやっぱり人間の為じゃない」
「………………」
一人の少女の強引な物言いに、もう一人の少女は続く言葉を失う。
だが、そう言い張るには彼女なりの確かな根拠があった。
「捻くれてる貴女はそうやってさもそれらしい答えを用意して、後に本心を隠すのよ。
だいたい人間が好きじゃないとわざわざ
「………………」
紫と呼ばれた少女は扇子を口許に当て、再び押し黙る。
彼女が親友と認める少女の指摘は、本人が自覚すら出来ているか怪しい心の内を時に熟知する。
伊達に人の一生の何倍以上も親友をやっているわけではなかった。
艶やかなウェーブのかかった桃色の髪を肩口まで伸ばした少女は縁側から庭へと歩きだし、やがてかつては立派な枝々に春の錦を彩ったであろう老大木の前で足を止めた。
その老いた大木からは不思議と桃色の少女と似た雰囲気が感じられ、どこか命の精気を失って、まるで生の息吹を感じ取れない。
「ねぇ、紫」
「何かしら、”幽々子”」
しばらく考えに耽り押し黙っていた紫は、幽々子と呼んだ少女の方に目を向ける。
「この桜、満開になればとっても素敵だと思わない?」
「…………、それも良いかもしれないわね」
幽々子の突拍子も無い提案に紫はある種の同意を示す。
二人が見上げるその大きな老木には、妖しさに魅入られ思わず触れてしまいそうな、そんな惹き寄せられる不思議な力が感じられた。
◆
『白銀の雨と大賢人の消失』
季節は既に立夏を迎えて、露の様に降り注ぐ春雪は未だ止む事を知らない。ある日の夜、『大賢者』八雲紫が消息を断った。
――――文々。新聞
普段であれば朝日が白銀の地面に反射して眼がくらむほど眩く光るはずなのだが、深く積もった雪の地面にはいくつもの包みが落とされているだけで明るい所か辺りは薄暗くなっている。
地面に落とされた包みとは、すなわち新聞紙。
わざわざ一部一部油紙で巻かれたそれが、贅沢にもたくさん投げ落とされ、無造作に地面に投げ置かれているのだ。
わたしはその一部を手にとってお屋敷に持ち帰り、エントランスに続く玄関口で丁寧に油紙を解いてその新聞の見出しとあらすじを目で追った。
(…………)
簡単に言うと、こうだ。
いつもなら春も終わりを迎えているというのに未だに冬の様に雪が止まないのは明らかにおかしい。
それに加えてある日の雪が降る夜を境に、幻想郷を管理するはずの八雲紫まで突然いなくなってしまった。
つまりこれは異変だ。
あらかじめ知識の中で前もって知っていたが、レミリアお嬢様からお声が掛かるまではそのまま待つ事にした。
そろそろ博麗の巫女も動き出す、時期にわたしにもお声がかかるだろう。
だがその前に、今一度わたしはこの紙に書いてある、”ある言葉”が間違いで無いか、確かめるように見つめ直した。
――――『大賢者』八雲紫が消息を断った。
(やっぱり……)
知らない。そんな事、わたしの知識の中には無い。
前々からいくつも食い違っている事はあった。
だが、もう無視出来ないほど違って来ている。
最初に気付いたのはわたしという偽りの存在。
だけどそれでもなお、これまではある程度その知識に沿って歴史が刻まれていっていたのだ。
しかし、先日の異変でその結果も大きくズレてしまった。
紅魔館にいるはずの無いルーミア、お嬢様の能力とその風貌。そしてフラン様が囚われていた理由。
それをきっかけに重要な事がいくつも食い違ってしまった。
そして今回もそう。
『幻想郷の管理者』の消失。
紫様は本来であれば冬眠しているはずで、幻想郷で大々的に周知されたという知識はわたしには無い。かといってまさか彼女程の大妖怪が命を落としたなど到底信じられない。
となれば、今回もそういうことだ。
状況は似通えど、結末が食い違う。
覚悟していかなければならない気がする。
それこそ、原作という先入観が逆に仇となってしまうような……。
「――咲夜っ」
「……、フラン様」
思考の海に沈んでいたわたしに、フラン様が飛びついてきた。頭が現実へと引き上げられる。
太陽が昇っているというのにフラン様はこの時間からしっかりと起きていらっしゃる。
一瞬慌てたがなんとか彼女を受け止め、優しく撫でた。
「えへへ。ねえ、咲夜! お姉さまが呼んでるよ!」
「ありがとうございます、フラン様」
遂に来た。異変に赴く命が下る。
これからお嬢様の部屋で正式に異変解決を命じられるのだろう。
「うんっ、どういたしまして!
ねぇ、私も部屋まで一緒に行っていいかしら?」
むむむ、困った。
呼ばれているのはわたしだけで、勝手な一存でフラン様を同席させるわけにはいかない。
だがしかし、キラキラとした瞳で見つめられるフラン様を拒絶する事はわたしには出来ない。それがなぜ出来ようというものか。
扉の前までなら、レミリアお嬢様もお咎めはしないだろう。
「……えぇ、ですがお部屋の前までですよ、フラン様」
フラン様を抱っこする様な形で伴い、レミリアお嬢様の部屋まで向かう。
レミリアお嬢様も当然の様にこの時間から起きていらっしゃる。
どうやら、魔理沙達に会う為に早起きをしているフラン様にご自身も合わせていらっしゃるようだ。
フラン様にお礼を告げ、ドアをノックしてお嬢様に入室の許可を頂く。
「では、フラン様。ありがとうございます、行ってまいりますね」
「うん!」
コンコンコン――
「……咲夜か、入りなさい」
いつもの慣れた所作で入室し、見上げたお嬢様の雰囲気はいつかの光景にとても良く似ていらっしゃった。
じっと窓の外を眺めながらその背中を見せ、表情は伺えない。
違うのは、白銀のベールが邪魔な太陽を遮断している為、窓辺に立ち右目には黒い皮の眼帯を巻いているということか。
「咲夜、異変よ」
「はい。存じております、お嬢様」
振り返ったお嬢様は、いつの間に回収したのか執務机に置かれた例の新聞を見つめながらそう告げられた。
「そう。では命令よ、咲夜。
こっちへ来て跪きなさい」
「はい、お嬢様」
ご命令など。
ご命令頂かなくともわたしがお嬢様の仰ることに異を唱えることなどありませんよ、お嬢様。
お嬢様の前へと進み出て、片膝をつき失礼の無いように目を伏せる。
一見すると、騎士が女王に敬意を示して跪いている様な構図。
お嬢様は左手でわたしの顎を引き上げて、金の眼がわたしの瞳の奥底を覗き込む。そして、ゆっくりと右手で何かを掴む様に握りしめた。
つまりそういうことだ。
わたしに連なる運命からこの先に起こる異変を覗かれたのだろう。
きっとそこにはこれから待ち受けるいくつもの試練が映ったはずだ。
だが、少しだけ様子がおかしい。
お嬢様も半ば予想していたと思われるが、それ以上に驚かれた。
「なっ!?」
「……どうなさいました、お嬢様?」
「い、いや。……なんでもないわ」
コホン、と一つだけ咳払いをされて、改めてご命じになる。
「行きなさい、咲夜。
おまえは私の誇り。この紅魔館を代表するに相応しいわ」
「かしこまりました。お嬢様」
「えぇ……」
お嬢様にしては少々歯切れが悪い様だが、わたしとしては予想が必ず起こる運命となっただけで、不都合は無い。しいて言うなら、お嬢様のご様子が少々気になる程度だ。やはり知識以上の強敵や展開が待っているということだろう。
立ち上がってお嬢様の元から数歩退く。
さあ、あとは出発するだけとなった所で、突然フラン様が乱暴に扉を開けた。
「――まって!」
飛び込んで来たフラン様の表情とそのタイミングが先ほどのやり取りを盗み聞いていたと物語っている。
お嬢様はわかっていたとばかりに静かにフラン様を見つめた。
「フラン、盗み聞きははしたないわよ」
「あっ……、ごめんなさい、お姉さま。
でもわたし――――」
「――――だめだ」
「っ!? でもっ」
きっとそのあとに続いたのは、『行きたい』というセリフだろう。
少々厳しいかもしれない。
それでも、フラン様の事を思ったからこそレミリアお嬢様はきっぱりと拒絶なされた。
「フラン、おまえは力の制御を完璧にこなせるのか?」
「っ」
言葉はあくまで穏やかに。
しかし残酷にフラン様に事実を突きつける。
お嬢様は決して態度を崩すことは無く、あくまでも厳格な姉やあるいは主がそこにはあった。
「…………まだ出来ない」
「そんなおまえが、咲夜の足手まといにならないと言えるかしら?」
「言えない。ごめんなさいお姉さま。私、我侭を言ったわ」
手をぎゅっと握り込み、悔しさを滲ませながらもフラン様は賢明にも自ら引く事が出来た。
「……わかればいいのよ。ならば貴方の出来る事は一つ。一日も早く”強く”なりなさい」
「…………うんっ」
外という新しい世界を知ったばかりのフラン様には辛いだろう。
だけど、レミリアお嬢様とフラン様の間には少しも誤解無く理解しあう。
やはりお嬢様の元にいればわたしが間違う事など有り得ない。
たとえ歴史がズレようともわたしにとっては本質的に些細な事だ。
この幼くも聡い姉妹を守る為ならば喜んでこの命を捧げよう。
これまでの決意を壊し、より強固なモノに築きあげ、わたしは扉の向こうへと進み出る。
「では、いってまいります。お嬢様方」
「いってきなさい」「あ、咲夜。
フラン様と玄関先で別れ、門で美鈴からマフラーを受け取り、いよいよわたしの二度目となる異変へと飛び出した。
――――――
「………………」
レミリアを残し、他にだれもいなくなった彼女の自室にはしばしの沈黙が流れる。
やがて口許に当てた手から顔を離し、扉の向こうを見つめてつい先ほど浮かんだばかりを疑問を口にした。
「咲夜、おまえはいったい……」
◆
「………………」
「何よ」
いったいどうしてこうなってしまったのか。
いや、わたしが単に早く着きすぎてしまっただけなのだけど。
異変解決に当たってまずは主役というべき彼女の下へとやって来たわけだが、半眼で睨む彼女にわたしは出鼻を盛大に挫かれてしまった。
白黒の普通の魔法使いの女の子はまだ来ていない。
目の前には腋が開いているという大変寒そうな巫女服を着て、湯気の出る湯飲みを傾けている人間の少女。
彼女はこの幻想郷を覆う大結界を管理する一族の何代目かの巫女で、名前は 博麗霊夢 という。
一族といっても、血が繋がっているという訳では無いらしく、その役目を担うものが『博麗』の名前を襲名するのだそうだ。
場所は当然彼女の家で、ここは『博麗神社』の離れ。
勢い良く出発したのは良いものの、わたしは今ある理由から窮地に陥っていた。
(もしかしなくても、わたしって霊夢に嫌われているんじゃ・・・)
どうして今の今まで忘れていたの、咲夜!
考えてみれば、好かれる要素なんて無いじゃないっ。
でもまって。ちょっとまって。
霊夢の性格ならそれはそれと割り切ってくれるはずだよね。
うん、きっとそう。そうに違いないっ!
――初めて霊夢に会ったのは紅霧異変の時で、しかも敵として対峙していた。だが霊夢なら解決した今、気にはしないだろう。
良かった。本当に良かった。
まだ霊夢との仲は終わっていなかったんだね。
それなら、何よりもこれからが大事。
まずは会話だ。
楽しい会話が関係をより良いものにするのよ、咲夜。
少ないけど今まで話した事を何か話題に出来れば、霊夢と仲良くなるいいきっかけになるんじゃないかな。
わたしは、必死に霊夢との過去のやり取りを思い出した。
しかし、そもそも霊夢とは事務的な会話以外、いっさい話をしていない。
わたしは、悲しみに包まれどうしようもない現実に打ち拉がれた。
(ど、どどどうすれば、いったい何をすれば霊夢と打ち解けられるのっ)
窮地で固まったままのわたしにしびれを切らせた霊夢が半眼で睨みながら再度問いかける。
「だから何なのよ――」
「――そのっ、良ければこれをどうぞ……!」
結論、わたしは大変居た堪れなくなり、結果、モノへと逃げた。
思い直せばそもそも挨拶もしていない事に気づき、無我夢中で作り置いておいたとっておきの品を手土産として渡す。
指を弾いて出したそれは、丸いバスケットの中で綺麗に扇状に切り目が入れられたアップルパイ。
大変良く出来たものは、もしもの時の為に常に余分にとってあるのだ。
これはちょうど昨日作ったもので、フラン様を始めパチュリー様からもまた腕を上げたとお褒め頂いたばかりの自慢の一品。
当然、能力で時間の経過を停止させているため鮮度も常に新鮮だ。
後になって考えてみればあまり物事に左右されない霊夢には、こんなもの何の意味も無いかもしれない。浅はかだと自分を恨みつつも恐る恐る霊夢の様子を伺った。
「………………」
なんだろう。霊夢の瞳孔が開いてる。
わたしはなおも恐る恐るバスケットに入ったそれを霊夢に手渡すため近づいていくのだが、霊夢のカッと開かれた大きな瞳がパイを食い入る様に見つめたまま追いかけてくる。
これはもしや。
わたしはある予測を立てて、バスケットを右へ左へと動かしてみた。
「………、………」
霊夢の大きな瞳と小さな顔が、動くバスケットに合わせて左右に傾く。
これはもう間違いない。わたしは最強のアイテムを手に入れてしまった。
(どうか卑怯だと言わないで。わたしは霊夢とより良い関係を築きたいの……!)
「良ければ今からお召し上がりになりますか? 僭越ながらこの私めが給仕させて頂きますわ」
「っ、……いいの?」
――後に知った話だが、この時霊夢は空腹の極地であったらしい。
結界の維持や妖怪退治は当然行っていたわけだが、その報酬は普段から紫様を通じてもらっていたようだ。
生活の必需品や、食糧を買う金銭まで全てもらっていたため、その彼女が突然居なくなってしまい、食糧が底を尽きた。余分には無いそれをいつも以上に切り詰めて、切り詰めて、とうとう無くなってしまい、昨日から何も食べていないとのこと。当然、お茶も出涸らしどころか
「こちらは紅茶、ストレートティーでございます。
少々苦味がございますが、アップルパイに良く合いますよ」
「っ!? ……おかわりちょうだい!」
渡したカップがものの数秒で空になって突き返される。
慌ててわたしは追加の紅茶を注ぐ。
未だ挨拶も異変についても切り出せていないが、食事の邪魔をするわけにはいかなかった。
霊夢の幸せそうな顔もそうだが、メイドとしての誇りがそれを決して許さない。
しばらく無言ながらも満たされた時間が流れる。
一人の量としてはかなり多いが、アップルパイがちょうど半円になり、さらに一切れ霊夢が手に取った所で、ようやく魔理沙が到着した。
「霊夢異変だぞっ! お、咲夜も来てたのか、ちょうどいいぜ」
箒に跨って直接神社の離れに下りてきた魔理沙は、自然な流れで部屋へと上がり込む。そしてテーブルの上にあったそれを見つけた魔理沙はその一切れに無造作に手を伸ばした。
(なんておろかな事を)
「お、咲夜のアップルパイか、美味いんだよなこれ。一つもら――」
――――バシィ!!
「いってぇ! なにしやがるっ!?」
「……魔理沙、それに、手をつけたら、殺すわよ」
「ひぃっ」
鬼がいる。腋の開いた巫女服を着る女の鬼が。
小さく悲鳴を上げた魔理沙を激しい形相で凄んだ後、次に魔理沙の伸ばしかけたままの手をじっと凝視する。
それに気づいた魔理沙が震える手を引くが、鬼は目で追いかけながらそれが終わるまで決して離さなかった。
やがて完全に引っ込められると、鬼は再び食べかけのパイへと戻るのだが、、眼光は未だ魔理沙を捉えたままだった。
食べ物の恨みは人をも殺す。
恐ろしい、これが異変か。
わたしは平和な世界を願って、予備のアップルパイが入ったバスケットを”二つ”取り出した。
「魔理沙、これ良かったら食べて」
「あ、いや……霊夢にやってくれ。私はいいよ」
「大丈夫、霊夢様にはこちらがございますわ」
「……あんた良いやつね。様はいらないわよ」
豊かとはなんと素晴らしい事か。
鬼は居なくなり、魔理沙もきちんと
霊夢が”二つ目”のバスケットを空にするまで、皆でテーブルを囲みパイをつつく。もちろん魔理沙は別のバスケットだ。わたしは給仕で合間を縫って紅茶を頂く。
一時は顔を青くしていた魔理沙だが、今では「なんだこれっ、こんなの食べたことないぜ!」と笑顔でパイに舌鼓を打っていた。
全て平らげてすっかり元の調子を取り戻した霊夢が、紅茶の入ったカップを傾けながら思い出したかのように問いかけてきた。
「……で、あんたたちなんか用なの?」
「っ!? そうだよ、暢気に食べてる場合じゃないぜ!
異変だぞ、霊夢。雪は止まないしあの八雲紫がいなくなったなんてどう考えても異変だぜ」
「……私もその事で来ましたわ」
魔理沙の答えにわたしも肯定する。
魔理沙は懐から先ほどわたしも読んだ新聞紙を取り出して、テーブルの上に広げてみせた。
それを霊夢が軽く眺めた後、再び視線をわたし達へと戻す。
――ちなみに魔理沙のバスケットもしっかりと空だった。
「妖怪達も紫の奴がいなくなったって騒いでやがるぜ」
「ふーん。まぁ確かに最近ちょっと寒いし、何よりわたしのお給金を
「いやいやそこかよ!? というか霊夢は紫がどうなったか知ってるのか?」
「知らないわ。でもお給金を払ってないのは確かよ」
霊夢にとって大事なのは
ちょっと寒いと言うが、その格好からして霊夢は寒さに強かったりするのだろうか。
霊夢の言葉を飲み込んで魔理沙はなおも質問を続ける。
「……なるほど、じゃああいつが消えちまったのは本当なんだな。
霊夢、最後にあいつに会った時何か言ってなかったか?」
「そうね、しいて言うなら前の異変についてちょっと話したくらいよ。
未だ一年も経っていないし、
「ふむ、それは別におかしくは無いな。
となると完全に手がかり無しってことになるな」
「そうなるわね」
あんたたち、の所で軽くわたしを見ながら話す霊夢。
魔理沙の言う通り、霊夢と紫様の二人が話し合ったところで幻想郷を守るという役目がある以上、わたしにも疑問に思う事は無い。特に紫様にはその後も随分とお世話になったものだ。
議論していてもこれ以上は望めない。紫様についてはひとまずここまでだ。
今は目に見える事態から対処すべきだろう。
「じゃあ、まずはこの『止まない雪』からだ。
いつも通り私は霊夢とは別行動だぜ。
咲夜、おまえはどうする?」
そう言って魔理沙がわたしに振り向く。霊夢も追ってわたしを見遣った。
「……よろしければ霊夢に同行させて頂きたいですわ。ついていったからといって何かあるわけでもありませんが、紫様には大変なご恩があります」
「ふーん、邪魔しなけりゃ何でもいいわ」
「わかったぜ、じゃあここからは別行動だな。
みてろ、私が先に解決してやるぜ!」
紅魔館の代表として来ているからには、紫様が何かしらの事態に巻き込まれているのであれば、今後の為にも霊夢と協力してお力添えする必要がある。
そして、わたし個人としてもこのままさらに霊夢とより良い関係を築きたかった。
魔法使いの少女はひとり人里を目指し、二人の巫女と
見守る者の不在のなか、少女達の春の季節を取り戻す
誰とは言いませんが、二人は少女です。少女なんです。
補足:
霊夢が寒い中、腋の開いた巫女服を着ていた理由。
実は備えていました。
勘で予期した霊夢はそろそろ魔理沙達が来るだろうと待っていたわけです。
寒さが平気なわけではありません。我慢強いのです。
※16/04/20 締めの文章に誰の事か加筆。