私が十六夜咲夜であるために   作:pumpkin

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前回の続きから。

書き始めて知ったのですが、十六夜には「月が躊躇する」というような意味があるのですね。

※本小説の十六夜咲夜は基本的にびびってます。
※苦手な方はブラウザバックを推奨致します。


EP2.主の命令は絶対

 ――――紅魔館でも一番豪華な部屋

 

 コンコンコン――

 

「起きてるわ。入りなさい咲夜」

 

 ノックの少し後、主の返答をしっかりと待ち、メイド見習いは静かに入室する。

 

 ドクンドクンドクン・・・・・・

 

「失礼致します、朝食をお持ち致しました」

 

 音が立たぬよう丁寧にドアを閉め、食事が乗ったカートを

主が座るテーブルの前にまで咲夜が運んで行く。

 

 手早く食事をテーブルに並べていき、最後に赤い液体の入ったグラスを

 添えるようにテーブルへと配膳していく。

 

「食べ物の方にもきちんと アレ(・・) を入れてくれたかしら?」

「もちろんでございますお嬢様」

 

 満足げに頷づきながら我が主こと、レミリア・スカーレット様は微笑を浮かべた。

 ――――上げた口角の隙間からわずかにするどい犬歯を覗かせている。

 

 ドクンドクンドクン・・・・・・・・・・・ドクンッ

 

「吸血鬼である私には、あなたの コレ(・・) は極上の供物よ。

 特に咲夜のは濃い味なのに飲み口はスッキリとしていてとても私好みだわ」

「お褒めに預かり光栄でございます、お嬢様」

 

 レミリアお嬢様はもう一度グラスを傾け、より一層笑みを深めた。

 先ほどから アレ(・・) や コレ(・・) と行っているのは、当然吸血鬼が好んで呑む赤いものと言えば ソレ(・・) である。

 

 ドクッ、ドクッ、ドクッ

 

「どうかしたの、咲夜?」

「いいえ、何でもございません」

 

 レミリアお嬢様が不思議そうに見るが、咲夜は否定する。

 

「さて、咲夜。今日は貴方に命令があるわ。里でここに書かれた品を手に入れてきなさい。それと中身を確認するのは人里についてからよ」

 

 レミリアお嬢様はそう言いながら、いつの間に出したのか小さく折り畳んだ羊皮紙を指し示す。

 わたしはそれを手に取りつつも浮かんだ疑問を尋ねた。

 

「ですが、お嬢様。紅魔館は周囲を結界で覆われ、我々は現在結界の向こうへ渡ることは不可能では無いでしょうか?」

「いいえ、間違っているわ。正確には結界を渡る事が出来ないのは妖怪だけ、つまり貴方は例外よ」

 

 わたしの知っている知識では、紅霧異変まで住人は外に出ていないはずだが、よく考えれば一応一部例外もあったらしいと思い出した。

 つまりわたしのことだったのだろう。

 

「なるほど、ですが――――」

「これは命令よ。行きなさい」

「っ! かしこまりましたお嬢様」

 

 威圧を込めて放った主の一言を受け、

 メイド見習いは腰深くかしこまり、足早に退室していった。

 

◆

 

 ――――少し間を置いて、同室

 

「ふふ、ちょうど紅魔館を出た所ね」

 

 レミリアは三度満足そうに頷き、メイド長が煎れた紅茶を楽しむ。

 

「意地が悪いわよ、レミィ。あまり虐めるものじゃないわ」

 

 部屋にレミリアのものでは無い声が響く。レミリアが唯一無二の親友と認める図書館の主にして七曜の魔法使い パチュリー・ノーレッジ が咎めるように答えた。

 

「ふふふ。だって楽しいじゃない。咲夜ったらあんなに怯えてしまって気づかれてないと思ってるのよ。

 もう、可笑しくって仕方がないわ」

 

 怯えるものを見て、嗤うレミリアにパチュリーはさらに顔を顰めた。

 

(素直じゃないわね)

 

 パチュリーも認める我が親友はそんなことを言いつつも、本音では彼女が愛おしくてたまらないのだ。

 そんな相手に対してついついからかってしまうのは彼女の短所なのだが、同時に畏怖を与え、圧倒的なカリスマ性を見せる長所でもある。

 

 それは極一部で他にも数多く存在するのだが、素直に褒めたりしない程度にはパチュリー・ノーレッジは捻くれていた。

 

「…………それで?」

「運命の歯車は動きだしたわ。あとは待つだけ」

 

 口に出して問うてみたが、答えはわかっている。

 伊達に数え切れないほど親友をやっていない。

 

「そう、まぁ貴方の事だから必然なんでしょうね。

 心配してないわ、レミィ」

 

 去り際に言い残してパチュリーは図書館へと帰っていった。

 

 

 

 

 

「頑張ってね。私の可愛い咲夜」

 

 今の顔を本好きの親友が見たら、是が非でも止めただろう。

 先ほどの表情など跡形も無く、レミリアの唇から一筋の赤い血が流れた。

 

◆

 

「ひー、ひー、ふー」

 

 既に紅魔館を出て、結界も無事越える事が出来たのに私は未だに震えていた。

 理由は我が主である。

 

(何が知識だ。全然当てにならないじゃないかっ)

 

 お嬢様の獰猛の笑みを見たときは、心底震え上がり思わず何かの一線を越えそうになった。

 何時も偉そうにしているが、強く言われると何かがブレイクして「うー、うー」と叫んで頭部をガードしたり、「私は運命を操れるわ、すなわち世界は私のもの!」な、なんちゃって能力者など、この世にはどこにも存在しない。

 

 我が主は、幼いながらも圧倒的なカリスマで数多の妖怪を従え、運命という名の神にも等しい力を操り、かつて彼の地にて絶対的な支配者として君臨していたのだ。

 

「ひー、ひー、ふー」

 

 まるでお産の時、しっくり来る様な呼吸を繰り返す。

 なぜだろう? それでもとても落ち着くので道中繰り返しながら進んでいった。

 

 もちろんまだ飛べないので徒歩である。

 

 紅魔館を出て、妖精が棲むと言われる霧の湖を越えて、森を目指す。

 この森を抜けると、人里があるとメイド長に教えてもらった。

 

 途中、妖精が棲むと聞きいつイタズラ(物理)されるかとヒヤヒヤしたが、どうやら遠目にこちらを見やるだけで運良く見逃されたらしかった。

 

(は、早く用事を済ませて帰ろう)

 

 幸い人里へと続く森は距離自体は短く、幻想郷の妖怪に出会う可能性も低い。

 ポケットに羊皮紙があることを改めて確認し、いざ森の中へ入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「おー? ニンゲンなのかー?」

 




あとがきに謝罪、
執事・メイドのイロハがちゃんとわかってませんorz
実力不足によりお嬢様の圧倒的なカリスマが書けませんでしたorz


3話目にしてやっと、この小説を書きたいと思った話に入ります。
…………かけるのだろうか。


※レミリアとパチュリーの会話を手直ししました。

※16/04/04 全話改訂しました。
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